2024.10.10
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奥田浩美氏:今回、この『会社を辞めないという選択』を書かせていただいた奥田と申します。よろしくお願いします。
簡単に自己紹介させてもらいます。そんなに今日は長い自己紹介を用意してません。一言でいうと、起業家です。3回起業しています。
あとは、IT系のイベントのプロデューサーをしていまして、直近で言うと新経済サミットですとか、グーグルさんですとか、そういったコーディネートをしています。
ここ(未踏プロジェクトについて)ちょっとわかりにくいんですが、いろんな、天才的なIT人材を発掘するような、プロジェクトの審査員をやっていたり、あるいはIT人材白書というようなものの、委員をやったり、いろいろなことをやっています。
私は今まで300くらいの会議をずっとプロデュースしてきまして、ひとつひとつは説明しませんけれども、こういったたくさんの最先端の技術を日本に紹介するような仕事をしてきました。
株式会社ウィズグループという会社と、株式会社たからのやまという徳島の過疎地に本拠を置く会社を2つ経営しています。
こちらの株式会社ウィズグループは25年ほどやっていまして、日本にはじめてやって来るようなITのプライベートショーとか、最先端の技術を伝えるようなショーをずっとサポートしています。ですから、最先端の舞台を創るいろんなイベントをやっています。一方で、これが私のもう一つの舞台です。この町はですね、鹿児島県の肝付町という、まさにこの本をすでに買っていただいた方は、この最終章に出てくる場所なんですけれども、
これは鹿児島県の大隅半島というところの南部にある地で、実は私が生まれた町の2つ南側の町です。
ここの集落は8戸11人が住んでいて、最低年齢のお婆ちゃんが80才。その80才のおばあちゃんが「デイケアにいらっしゃい」っていう風に、ケアワーカーさんが言ったら、「私のような若い者がいなくなったら、この集落で見守りをする人がいなくなるから」って言った町です。
なぜこの写真かというと、私はこの舞台(最先端)と、この舞台(過疎地)を、ずーっとずーっと、1週間おきくらいに交互交互に行き来してるわけです。
8戸11人しかいないこの集落というのは、平家の落人伝説が残る町で、見守りができないくらい町の中心部から1時間くらい離れていて、次の集落まで1時間離れていて、ケアワーカーさんは1日ですべてのおじいちゃん、おばあちゃんを回ると1/3くらいしか回れないっていうような地です。
そういうところに、タブレットであるとか、テレビ電話を入れて見守る仕組みを作りました。
それが作られたときに、実際、見守る仕組みを作ったつもりが、実際はこの町で井戸端会議が始まった。
つまり、人って何かツールをこちら側が与えるもので使うのではなく、新たな使い道としてどんな場所にあっても繋がろうってするような現象が見られて、私たちは実際ここの町の、システムを作ったわけでは全然ありません。
ただ、こういう場所を行ったり来たりすることで、本当にこういう技術が何のために必要なのかってことを考えるようになりました。
私が今回、会社を辞めないという選択、今までお話をした背景からなぜこの本が生まれたのかってことを、これから話して行きたいと思います。
私が最初に自己紹介で起業家ですと言いました。実際にもう、何年でしょう。1991年から自分で立ち上げた事業を次々と展開するということをやっていますので、24年くらいですかね。起業をしているわけです。
なぜそんな奥田さんが会社を辞めないっていう本を書いたんですかっていうことは、実は、このことは中には書いてませんけれども、背景があります。
私の周りは起業家がとっても多くって。会社の中では何も好きなことができないから自分で独立して起業するんだって人が。かつて、そうですね、1000人くらいに会ってきました。
実際今も数百人が私の周りに起業家として存在して、「雇われていたら何もできない」「会社じゃ何もできない」みたいなことを言いながら、みんな起業して自分の会社を作ります。
「会社じゃ何もできない」って、あなたが作った会社は何ですか? っていう。ということは、会社を辞めて自分の会社を作るということは、会社というものにものすごい意味があるんじゃないだろうかと。
じゃ、辞めた会社とあなたの会社の出発地点とか、意味ってなんだろうと。なので、ここに書いてある「会社を辞めて会社を作る不思議」ということから、私はこの本を書きました。
私はその中で会社っていうものはそもそも、社会の中に何かをもたらす組織で、一番チームとして相応しいと思っているから会社という枠組みにしたんじゃないだろうかっていうことを、ずっと考えています。
ですから辞めた会社って、チーム戦が上手くいかなくなって、上とか周りの人と上手くつながれなくなったから1回外に出るけれども、再び会社を作る時にはやっぱりチームをつくらなきゃっていう、チームがちゃんと社会に繋がるような、チームの編成のし直しみたいなことをやるために出る人が多いのかなっていう風に思って。
それがあれば、自分がゼロから1を作って、10人、20人の会社を作るよりは、まず、自分が辞める前の会社を見直して。そこで会社というものはどういうものかが大事で。
その後どういうことが財産でやっていけるのかを一旦辞めないという選択というポジションに立って、今の会社を見て、ちゃんと会社というものをキチッと解析してから次に進めばいいという思いでこの本を書きました。
ですから、私はこの会社を辞めないという選択という意味を、会社にしがみつけとは1回も、言ってませんし、もっと言うと、これを読んで会社を辞めなさいとも言わないし、会社を辞めないという選択に1回立って、あなたが次の進むべきところを決めたらいいんじゃないですか。
そのためにどういう振り返りができるのかを何十項目に噛み砕いて書いた本だと思っています。
「会社」「社会」縦書きか横書きかわからないくらい、つまり、縦とか横とか、結局会社って社会をグルグルグルグル回しているような文字なんだよなってことを、漠然と考えながら2つを並べてみました。
私はここにすごい意味づけをするつもりもなく、眺めてると、何か、人それぞれ「会社」「社会」っていうのの意味付けがそれぞれ生まれてくるのかなと思って、今並べてみただけなんですけど、絶対何かがあると思っています。
あともう一つ、私がこの会社を辞めないという選択を書いたのが、今年っていうのにすごく意味がありまして、私は実は今年50才です。
私の50才より上の世代が今管理職で、いろんな大企業をまわしているんじゃないかっていう風に思うんですけども、私の上の世代はですね、みんな笑うかもしれないんですがGNPやGDPっていう言葉を聞くと燃える世代だったわけですよね。
GNPが、数字が上がるぞって聞くと、なんとなく頑張れちゃうみたいなことを体感できた時代で。でも、今ここにいらっしゃる方でGNPっていうのに燃える人っています? 手を上げてください。
おそらく今、このどっちの燃えるかわからないんですけど、燃えない世代がほとんどだと思っています。
でも、燃えない世代がこれだけ台頭してきてる中で、会社というのは基本的には経済成長を目指す、国力増強を目指す、つまり右肩上がりを目指すっていう人たちが作っている組織だった中にいろんな価値観が生まれてきていて、逆に私より10才上のそういう価値観の人って、だんだん少なくなっていく時代になると思います。
じゃあ20代、30代の人が会社でどうやって働いていったらいいのか。あるいは、20代30代がどういう価値観で働いているのかを、解き明かすためにこの本を書いたとも言えます。
これまでの組織の発想っていうのが、私が今言ったように、説明しましたけれども、右肩上がり。とにかく、相手の領地をたくさん取るとか、お金をたくさん得るとか、自分の領土を増やす、米を増やすみたいな。
とにかく、戦いの中で得ていく、増強させていく、生産価値を増強させていくっていう意味で、戦う組織から今の会社っていうのはでき上がっているんじゃないかなと。
そんな中で、今の20代30代と、私が接する機会がある7、8割はそういう世代ですが、起業家だったり、フリーランスだったり、新しい価値観のもとで働いている人を見るにつけ、やっぱり、今までの統率とか、競争とかいう、価値観の中に位置づけられた人から、これからは多様とか共創みたいな、価値観を重視する人たちが増えて来ているなーと思うわけです。
増えてきていますっていうのは、別に分析で言っているのではなく、確かに私の周りはそういう人だらけな感じです。それは、なぜ私の周りがだらけなのかって言うと、みんなやっぱり未来に何があるかを自分の力で探しに行っている人たちが集まってきている。
あと、自分が体験してみて、こういう価値観もあるんだよという風に発信している人が多いという意味で、今新しい価値観を作っている人は、多様だったり共創だったりっていうような、発想の人がこんなにたくさんいます。
じゃ、会社員ってダメなの? みたいな言い方をするんじゃなくって、実をいうとこういう発想をした時に、これから社会に生み出せるものの価値を大きくするためには、会社の中にいる人がそこをキチンとキャッチボールができるような人が増えれば、日本っていうのはすごく、ある意味右肩上がりの、なんかこう、GNPみたいなものを目指すんじゃなくって、キャッチボールができれば社会にいいものを作っていける時代になるんじゃないかと思っています。
今まで会社というのは誰かが前に作って、作った中で自分がそこにジョイン、加わって、そして何か自分が貢献してできていくものっていう風に思っている人が多いと思うんですけども、これだけ時代の流れが速くて確かなものがなかなか手にできないような時代が押し寄せていて、まさに2020年には今の職業の半分くらいが無くなりますよと言われている時代なんですよね。
みんなそれは頭でわかっていながら、自分の会社だけはどうにかなると思っているから会社にいるんだと思ってるんです。どうにかなるって、甘い意味じゃなくって、そこにいる理由を考えれば、これから10年くらいの間に変わっていくと。自分たちの会社と一緒にどんどん変わっていけば、あなたの会社も生き延びられるし、あなたも生き延びられる。
でも、会社に守ってもらえる時代ではもうないので、何か不満があったら、これからは会社を変えようという提案に変えるような時代になってきてるかと思います。
ですから、私はここに「会社は完成品ではない」と書いたのは、実はスタートアップ、起業家、ベンチャーではみんな当たり前だと思ってることなわけですよ。
会社って生まれたばっかりで、これから成長していくんだから、完成品を作ってくんだっていう風にみんな思ってるんですけど、大企業って、もう、完成品じゃないよって思ってる人って少なくって、でも実を言うと会社って時代に次々と合わせていかなきゃいけないので、ベンチャーと同じレベル、大企業だろうと未完成品。
結局ずーっと100年経っても200年経っても続いている企業があるとすれば、常に未完成品から完成品を、常に、常に回している感じ。
なのに、大企業という枠の中にいると、自分たちは完成品の中で働いているような気持ちになってるという人が多いと思います。とはいえ、私がこの本を書いた大きな理由は、そうじゃない人がものすごいたくさんいると思うからです。
もうすでに会社の中で外と中を行き来して、新しいものをどんどん生み出す、新しい価値観を見い出すっていうような人がすごく多い。私はこれを理論として書いたんではなく、実際にそういう人が増えていて、私がおつきあいしている起業人、つまり大企業の人8割、9割はすでにそういう人たちだと言うことを伝えたいのです。
でも、今日ここにいらっしゃってる方々は、確かにもうその流れが来てるってことはご存知の方ばかりなんじゃないかなと思います。
私は会社というのは、今まで自分の会社に合う人っていうのをずっと就職活動の中で採用してきたんじゃないかなと思うんです。
基本的には会社というのは、いろんな価値観の人、いろんな異なる才能の人が集まってこそ新しい時代に対応できると。
私は異質な人がいることこそがとても健全な社会だと思っていて。異質な人の存在っていうのは豊かさの第一歩だと。
私、15才の娘がいるんですけども。クラス40人いて、例えばうちの娘が数人嫌いな人がいるとしたら褒めます。やっぱりそういう風にあなたが気になるような人がクラスにいるって、すごい健全だよねって。
逆に言うと、その数人からあなたが異質だと思われることも健全で。同質な人が40人いる社会っていうのは、明らかにおかしい社会だから。
何かあなたがちょっとむかつくとか、嫌いとかいう人が、ちゃんとクラスの中で同じように勉強できてることが、健全な学校なんだという風に言ってますし、実際私が今まで過ごして来た会社の中でも、自分が説明したことがすんなり通らない人が、まあ、最初は半分くらいいますね。
それは自分の至らなさがあるんですけども、でも、どうやったら説明が通じるかと、説明しても通じない人もいるんです。説明しても通じない人がいても、健全だと思ってます。自分の会社を回して。
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