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猪子寿之氏講演会(全4記事)

「宿題もテストも“班”でやらせろ」チームラボ猪子氏、“社会の要請とはまるで逆”と学校教育を批判

チームラボ代表の猪子寿之氏が、大学生に対して「デジタル社会の未来と生き方」をテーマに行なった講演。チームによる創造性の高いアウトプットが求められるなか、暗記中心で個人の結果のみを判断しようとする日本の学校教育を批判しました。

チームラボはどういうプロセスで作品をつくるのか

猪子寿之氏(以下、猪子):せっかくなので質問を受けて話そうかな。

司会者:質問したい方は挙手していただいていいですか?

質問者:チームラボとして何を次につくるかというのはどういうふうに決めていらっしゃるんですか? 例えば誰かがアイデアを出して、それをみんなで話し合うプロセスなのか、それともみんなでテーマを話し合ってそこからアイデアを出すというものなのか。そういうプロセスをちょっとお聞きしたいんですけれども。

猪子:基本的には仕事の9割方は相談があって、その相談に対して答えていくみたいな感じ。例えば、Pepperというロボットが出たんですけれども、Pepperのお披露目イベントみたいなのがあって、そのお披露目イベントの演出をしてくれという依頼が来て。

これは僕が担当していないんですけれども、メンバーがプロジェクトを組んで、このプロジェクトを担当してる。最終的には観客がみな自分のスマホを持っていて、自分のスマホのアプリを立ち上げて、観客がスマホをかざしていると、こんなふうに、Pepperと何が関係するんだという要素があるんですけれども、Pepperが指揮棒を振るとみんなが持っているスマホが光ってスマホから音が鳴る。

観客自身のスマホにアプリさえ入っていれば、アプリを通して各自のスマホが、どこにあるかというのを把握する。そして、それによって空間全体で演出を、光を右から左にうつしたり、左から右にうつすというようなことが出来る。

完全に指揮棒と合わせて空間全体の光が変わって、音も各自のスマホが鳴ることによってオーケストラになるというものを、うちのメンバーがそういう企画をして実際こういうふうにやりました。

チームラボは汎用的な作品を好む

猪子:なんでこんな話をしたかというと、比較的チームラボは汎用的なことをすごく好むんだよね。汎用的なというのは、この演出自体は、例えばこれがある技術を僕らがつくっていて、GPSで場所を取っているわけじゃなくて、人が結構ぎゅうぎゅうにいるじゃないですか。あんまりぎゅうぎゅうだとGPSで違いが取れないですよね。

しかもこれ、たまたま地下2階とかでGPSが全く取れない場所なんだけれども、みんなにここでiPhoneを出してもらって、アプリさえ出してもらえると相対的な位置関係がバーッとわかる技術だったり、それを制御して空間全体で映像をつくったり演出したりして。

観客は演出の一部、自分たちが何か演出の一部になっているみたいな体感をするというものなのだけれども、さっきも言ったように、究極Pepperじゃなくてもいいじゃないですか。でも我々はそういうことを好むんですよね。

つまりほかの何か案件が来たときに、これ自体がプロダクトになっていてそれを提案して、少し変えることによって基本的な技術はそのまま使って少し変えることよって演出することができたり、それを通してまた基本的な技術のバージョンを上げていくみたいなことをしていて。

だからいろんな相談が来て、いろいろ答えていくんだけれども、普通の会社と違ってよりそれぞれの担当がピュアにクリエーションしているというよりは、より誰かが汎用的なものをつくってそれをまた誰かが再利用して、汎用的なものがバージョンアップしてというのをできるだけ繰り返すようなつくり方をしているのね。

質問者:汎用的な仕掛けとか技術云々というのは、わりとオファーに合わせてというより普段から何か誰かがどんどんつくっていくという、オファーに合わせたものではないんですか?

猪子:そうですね、オファーに。でもこれ自体はオファーに合わせてつくったんだけれども、これ自体は。

質問者:それはいろいろな場合が。

猪子:これは1個の汎用的なものとしていろんなものに使っていこうかなと思っているというような。

質問者:なるほど、ありがとうございました。

テクノロジーにより生活は変わったのに、教育は変わらない

司会者:ほかにいらっしゃいますか。

質問者:お話ありがとうございました。僕は名古屋のさっきの水族館とか動物が象形文字で出てくるやつとか見に行ったんですけれども、あそこで感じたのは説明のところにパターン認識力とかクリエイティビティを養うみたいなことが書いてあって、そういった意味で教育的なものに使える技術をつくろうとしていらっしゃるのかなと思ったんですけれども、その辺何かビジョンがあればお話いただきたいです。

猪子:行ってくれた「チームラボ 学ぶ!未来の遊園地」というのは、さっきも言ったように共創の体験をするという知育、体を動かしながら学んでもらおうというような教育的な場所でもあって、それはたまたま遊園地のプロジェクトだったわけで。

自分らがアートをつくっている中で、作品があることによって作品がある空間に一緒にいる人々の関係性に対して影響を与えようという、作品をつくっていくうちにそういうふうに思ってきました。それを使って、新しい遊園地であり、新しい何か知育の空間みたいなのができたらいいなと思ってやっているのね。

ちょうど創業したメンバーたちにみんな子どもができはじめていて、ちょうど大体0歳から6歳ぐらい。みんな子どもがいて、学校とか行くと結構衝撃を受けるみたいで、こんなに自分たちが小学校のときと生活そのものがすごく変わっているのに、教育の現場というのはそんなに変わっていなくて。僕はちょっと子どもいないからわからないんだけれども、同い年ぐらいのメンバーがみんな衝撃を受けていて。

本当は例えば、何か覚えたりすることとかほとんど意味ないのに覚えることが中心になったり、逆にこれからの時代というのは創造性みたいなものが極めて重要なのに、創造性を鍛えるような場所というのがない。

宿題もテストもチームでやるべき

猪子:あと僕らは、チームラボという社名どおりチームでものをつくるんだけれども、僕自身もそうなんだけれども、個人で考えたり個人で作業をするというよりは、チームで考えてチームで作業しながらまた考えていくという、結構共同作業的なことが仕事のほとんどなんだけれども、あんまりチームで何かものをつくるとか、チームで何かアウトプットするということと真逆なんだよね、今の教育は。

例えば宿題は個人でやりなさいだし、テストなんて共同的にチャレンジしたら捕まっちゃうじゃない。でもそれ意味がわからないわけじゃんね。別にコピーで済むような問題を出すほうが悪いというか、コピーで済むようなことはコピーしたほうがいいじゃん。

だから全く概念が違っていて、個人で何かアウトプットを出すよりも、共同的で創造的なアウトプットを出すことを大人になってすごく求められているのにそういう場がない。なので、せめて学校の外で遊ぶような場所をつくって、そこを共同的で創造的な体験をする場所にしたい。

3歳と5歳の子どもがいる社員が自分の子どものためにつくりたくて始めたというそういうプロジェクトです。

質問者:ありがとうございました。

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