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猪子寿之氏講演会(全4記事)

チームラボ猪子氏「モナリザと鑑賞者の境目がなくなってきている」 デジタル化で、ヒトはアートの一部に

チームラボ代表の猪子寿之氏が、大学生に対して「デジタル社会の未来と生き方」をテーマに行なった講演。チームラボが今まで携わった作品を紹介しつつ、デジタル化がもたらした人間とアートの関係性の変化について言及しました。(早稲田祭2014より)

「秩序がなくともピースは成り立つ」

猪子寿之氏:こんにちは、はじめまして。チームラボの猪子といいます。チームラボという会社を2001年くらいからやっていて、いま300人くらいが働いています。

どういうものを作っているかというと、デジタルアートを作ったり、空間を作ったり、Webを作ったりしています。わかりやすいように、いくつか作っているアート作品をお見せしたいと思います。

これは、「シンガポール・ビエンナーレ2013」で2013年の10月から2014年の2月まで展示していた作品です。等身大のホログラムみたいなもので、ホログラムが彫刻群のようにいっぱい無数に空間の中にあって、その中を観客が歩いて行けるという作品。

みんな、楽器を弾いていたり、踊っていたりしているんです。下にスピーカーが付いていて例えば蛙が太鼓をたたくと、そこから音が鳴るというような感じで、みんな自由に楽器を弾いていたり、自由に踊っていたりしています。ソフトウェアも全部独立していて、キャラクターごとに独立しているんですけども、近隣のものの影響を受けるように設計されています。

引き込み現象というものがあって、例えば蛍って自由に点滅しているんですけど、すごい近くにいると点滅が一致したりするんです。木に大量に蛍が止まると、その木の蛍が全体で完全に一致して点滅するみたいな。とても原始的な作用があって、これは生物のほとんどにあると言われているような作用なんですね。

その引き込み現象が起こるようにホログラムが設計されていて、だんだんと近隣同士のリズムが合うようになっていて、近隣同士が合うことによって全体のリズムが合うというという。しばらくすると完全なオーケストラになるっていうような作品です。

観客が近づくとリアクションをとるようになっていて、反応したあたりのリズムが乱れるみたいな、そういうような作品です。

infinity of Flowers

これは2014年9月に新宿Gucciのギャラリーで作っていた作品。これは1個1個の花が勝手に生まれて、勝手に咲いて、勝手に散っていくっていうような作品です。ほっといてもですね、勝手に生まれるし、寿命が来れば勝手に散っていくという。

それでいろんな場所に「群」として生まれてくるので、延々と見ていても同じ瞬間というのが二度と起こらないようになっている作品です。人が触るとですね、寿命が来ていないのに散るので、こんなふうに人が無理やりさわると一挙に散ってしまいます。

「花と人」

これもちょうど今やっていて、国東半島っていう大分県にある半島で、11月末までやっている作品です。

わかりにくいんですけれど、入口がこんな風になっていて、入口が鏡に囲まれた廊下みたいになっています。そしてその鏡の中で作品の花が咲いていくという作品。鏡の廊下の中なので、鏡に自分が映り込むんですけれど、自分が映りこんだ中に花がこう咲いていくというような。

こんな感じで鏡の中にあるよう作品で、タイトルは「花と人」。こういうインタラクティブな作品は、結構大きな作品を作ることが多いです。

わかりやすく言うと、昔のアートでいえば、モナリザだったら観客が個人としてモナリザを見てどう思うか、美しいと思うとか、なんか考えさせられるとか、個人と作品が一対一で対峙していたと思います。僕たちはデジタルで作品を作るようにしていて、デジタルになるとその今までのアートと何が違うのか。

デジタルの本質は「物質からの解放」

アナログとデジタルの違いって、僕らはどういうふうに考えているのかというと、例えば絵は絵でしかないと。絵が絵としてアナログのときは、単独では存在できなくて、物質、質量、あるいは物質に媒介しないと絵が存在できなかった。

もうすこし具体的に言うと、その絵は絵なんだけど、キャンパスだとか油絵具だとかそういう物質に媒介して初めて絵が存在できる。しかし、デジタルになると絵が絵として単独で存在できるようになるのね。

それは別に絵だけではなくアナログとデジタルって全てがそういう違いで、例えば文章とか文字っていうのは文字でしかないんだけれど、デジタル化される前っていうのは文字単独として存在できなくて、なんか鉛筆の粉と紙みたいなものに媒介させないと存在できなかったのが、デジタル化されると文字が文字として単独で存在出来るようになるみたいな。

いろんなものが質量がある物質から解放されるっていうのが多分デジタルの本質で、そうするといろんなものがとても自由になるんです。

例えば絵でいうと、物質と絵はセットなので絵を折ると、折れ目っていうのが残っちゃったり、絵を破るとそれがもう二度と復元できなかったり、もしくは物質が朽ちるとともに絵も朽ちるんだけれども、物質から解放されると物質が朽ちることによって絵が朽ちるみたいなこともないし、別に折ろうが拡大しようが、ちぎろうがとにかく自由になる。

テクノロジーによって自由に、簡単に変化することができる。でもすごく直感的に言っても、iPhoneとかで写真を撮ったらその場で何か加工したり、加工したと思えばすぐ戻したり、とにかくテクノロジーによってすごく自由にできる。僕らもアートそのものがテクノロジーによって自由になるので変化させることが、すごく自由にできるようになる。

鑑賞者の振る舞いによって変化するアート

チームラボは人々の、アートを見に来た観客、鑑賞者の振る舞いによってアートを変化させるみたいなことをやっているんだけれども、出来栄えによって基本的には変化するので、今まで作品と個人だったのが作品と集団みたいな関係になる。

昔はモナリザと観客っていうのは完璧に対立していたし、違う存在だったのだけれど、だんだんとどこまでが作品でどこまでが作品じゃないかみたいなものが、つまり隣の人も含めて作品かもしれないようなことになっている。

作品と人みたいな関係性がとても曖昧になってきていて、僕らは、それをすごくいいことだと思っていて、すごく面白いと思っている。なのでタイトルも、意図的にそれを感じられるようにしています。

この作品自体はさっきのGucciのときに展示したものと少し似ているのですが、人々が作品に近づくと散ってしまいますし、もうちょっと離れていると作品が勝手に何か人の影響を受けずに生まれては寿命がきたら散っていくというようなもので、人々の作品との距離感が観客の振る舞いによって作品が刻々と変わっていきます。

つまり人と観客とアートみたいな関係が非常に曖昧になってきて、見ている人も含めて作品の一部かもしれないと思っていて、それをわかりやすく体験するために、鏡に人が映るようになっているんだけれど、その鏡の中でこういうふうに作品、花が咲いていってどこまでが作品でどこまでが観客かわからない。そういう作品を作っています。

「呼応する木々」

これは長崎にハウステンボスというテーマパークみたいなのがあるんですけれども、もともとオランダのアムステルダムを参考にしてつくったような場所なので、運河がずっと施設の中を通っているんです。

運河の上に木がずっと生えていて、その木を下からライトアップしているんですけれども、人が木に近づくと木の色が変わって、自分が変わると対岸の木と両隣の木の色を同じ色に変えて、変わるとまたその木も隣の木の色を同じ色に変えていくという。

スピーカーも全ての木についていて、向こうのほうで人が木に近づくと光の色と音が向こうのほうからこっち側にやってくるし、自分が木に近づくと変えた色と音が向こうのほうにずっと届いていくという。運河が曲がっているので全長は撮れなかったんですけれども、実際はこの3倍ぐらいあります。

ここはもちろん私有地で、パブリックの場所ではありませんが、バスとか車が通る場所なのでもちろん街灯はある。しかし今は街灯を消していて、なぜかというと光の色は変わるものの、木はライトアップされ続けているおかげで道の照度が一定に保たれています。なので作品が街灯の代わりにもなるので、街灯を消しているんです。

例えば今まで街の中にアートがあるというのはよくある話なんだけれども、街の中に彫刻があるだとか、街灯みたいなものは公共的で、最大公約数的に役割があるのでつまらないが存在するみたいな形だったんだけれども、よりデジタル化されることによってそういう公共的な、パブリックな役割を果たしながら、それそのものがアートになっていくみたいなことも起こってくるのではないか。

今は都市の中にアートがあるけれども、将来的にはおそらく都市そのものがアートである、みたいな。そういうふうにもなっていくんじゃないかなと思っているんです。

※続きは近日公開!

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