2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
Scientists Invented a Jail-Breaking Liquid Metal Robot(全1記事)
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ハンク・グリーン氏:SFは、現実のテクノロジー開発のきっかけになるとまでは言いませんが、すばらしい新技術の実現を予言することはままあります。オンライン会議やデジタルタブレットなどは良い例ですね。
さらには、将来人工知能に対する反乱軍を率いることになるティーンを抹殺するべく、過去に送り込まれる液体金属のロボットも有名です。
……ごめんなさい。タイムトラベルは、まだ開発されていませんでしたね。ところが、オンライン学術誌『Matter: Journal of New Materialist Research』に、液体状のロボットの開発が可能となる新素材について、概念実証の研究記事が掲載されたのです。
従来型の固いボディのロボットは、活動の種類や場所が限られます。この点を解決するべく、過去数十年ほどでソフトボディを持つロボットが開発されてきました。
これらのロボットはボディの形態を変化させ、泳ぐ、登る、転がる、跳ねるなどの多彩な動作で、さまざまな作業が可能です。事前に入力した形態に自在に変形できるロボットも存在します。
しかし、いずれも固体であるがゆえに、ボディより小さなスペースには入れないという壁がありました。例えば、ある機械の内部に直径2ミリメートルほどの穴があり、奥のボルトを締めたい場合、機械を解体しないことには不可能ですね。
こうした壁を克服するべく、液体状のロボットの研究開発が進められてきました。ボディが液体のロボットは、圧縮や流入でどこにでもフィットします。なんと、何本もの流れに枝分かれした末に合流もできるというから驚きです。
しかし、液体ロボットの強みは、実は最大の弱点でもあります。液体は圧を加えると簡単に変形してしまうため、望む場所に到達できたとしても、ボディが脆弱すぎて、できる作業が限られてしまうのです。
ところが、ある国際技術者チームが、新型の液体ロボットの開発に成功しました。顕微鏡レベルの磁性粒子を混入させた素材からなるもので、さまざまな形態のロボットの性能のいいとこ取りです。名付けて「MPTM (磁気活性相遷移物質/Magnetoactive Phase Transitional Matter))」です。
磁性粒子は磁力に反応して動き、変形も可能な上に、ソフトロボットと同等の機動性があります。固体になったり液体になったりと相の変化も自在で、『ターミネーター2』に登場するT-1000のようです。
研究チームが登用したのは液体ガリウムです。ガリウムは海抜ゼロメートル地点での融点が30℃弱で、室温では固体になり、手で持つと融解します。
温度のコントロールにより、自在な融解も可能です。周期的に向きが変わる交流磁界でガリウム内の磁性粒子を反応させて、磁力の方向を頻繁に変化させると熱を発生させるため、交流磁界を発生させればロボットは融解温度を保ち、液体状態を維持します。
磁力による移動や変形も可能です。磁界をオフにすると、冷却され固体に戻せます。温かい物を冷やし固めるのと似たイメージですね。これまでもMPTMのように、固体と液体の間で相変化する物質は開発されてはいますが、粘性が高すぎて実用性がありませんでした。
到達が困難という設定の回路に、小型LEDをハンダ付けする実験では、ロボットは「どこでもスクリュー」のような活躍を見せました。融解したロボットは、ワイヤでつながれた隙間に移動して2つのプラスチック板をつなげたのです。あまり汎用性がない使い道ですが、実験は見事に成功しました。
医療利用を念頭に入れたデモンストレーションも実施されました。固体化したMPTMを模擬胃に入れ、液体化させて異物を包み、再び固体化させて固着させたあと、外部からの磁力操作により異物を包み込んだまま胃の外へ除去したのです。
もう1つのデモでは、医薬品を包んだMPTMを模擬胃の狙った部位で液状化し、医薬品を投入したあと、胃の外へ移動することができました。
現時点では、人の生体の体温はガリウムの融点よりも高いのが課題です。ここを克服して医療へ導入された暁には、これほど楽な治療であればぜひ選択したいですね。
実現には、ガリウム以外の素材の導入が必要となるでしょう。ありがたいことに、人体内で固体を維持できるガリウム合金が、すでに開発途上にあるようです。
さて、今回一番話題になったのは「脱獄実験」でしょう。檻の中に閉じ込められた小さな人型のMPTMは、融解して檻の外へ流出したあとに、再び人型に戻りました。その間、わずか10分足らずでした。
しかし、ご安心ください。暗殺用の液体ロボットの実現には、まだ時間がかかるはずです……たぶんですが。いずれにせよ、MPTMの開発により、到達が困難な場所における緻密で限定的な活動が、磁力によって可能となるでしょう。
さて、磁力つながりでもう1つのニュースをご紹介します。今週『ネイチャー ジオサイエンス(Nature Geoscience)』誌上で発表された論文によりますと、なんと固体の金属でできている地球の内核の回転が停止したというのです。
「パニック映画が現実になるのでは」と心配になったあなた、ご安心ください。同様の事態は、これまで数えきれないほど起こってきたようだからです。
地球の核は、内核とこれをとりまく液体金属でできた外核の1層に分かれます。外核は流体で、地磁気を発生させます。
内核の主な成分は鉄であり、その回転は地磁気に影響を与えると考えられています。内核の回転は、地球の自転とはまったく別の動きであり、回転速度も変化しているようです。
1990年代半ば以降、地震波が地球内部を伝播する時間を計測することができるようになりました。すると、地震波が同じ場所で発生して伝播したはずであるにもかかわらず、走時(地震が起きてから観測点に届くまでの時間)が異なることがあることがわかってきたのです。
内核の大きさが変化する説が唱えられたこともありましたが、近年の研究により、原因は内核の回転速度の変化にあることがわかってきました。内核の回転が速い場合、地震波の伝播スピードも速まり、回転が遅い場合は伝播スピードが低下することが判明したのです。
中国の研究者グループはこれを利用して、内核の回転速度の推移を調べるため、地震計の過去30年間のデータを調査しました。
研究グループが調べたのは、内核での伝播経路が異なる2つの地震の地震波データです。経路が異なれば、内核の回転速度が走時に与える影響も異なるはずであり、内核の回転速度が速ければ走時も異なるはずです。
ところが、1990年代初頭から2009年にかけてのデータには、こうした違いが見られなくなっていきました。そしてなんと、2009年以降の走時にはほとんど差異は認められなくなりました。
こうしたことから研究者らは、「2009年に至るまで内核の回転が遅くなっていき、最終的には停止した」と結論づけました。とはいえ、回転が完全に停止したわけではありません。内核の回転が地球の自転よりも速くなくなったということですね。
30年間という時間は、地球史どころか人類史においてもわずかな時間です。さらに古い記録を調べたところ、同様のデータが1960年代にも見つかりました。この時も、内核の回転スピードは数年間、地球の自転よりもわずかに遅くなったようです。見方を変えれば、「逆回転した」と考えることも可能ですね。
いずれにせよ、2009年から2011年にかけて、地球の内核の回転が遅くなる事態が再び起こったと研究チームは考えています。これには特に懸念はないようで、内核の回転速度の緩急はこれまでにも30年から35年周期で変化を繰り返していると考えられています。しかし、これ以降にさかのぼるデータは存在しないため、残念ながら確証はありません。
地球の気温や地場、一日の長さは、よく似た周期で変化してきたことはわかっています。今後さらに研究が進むことにより関連性が解明されるのではないかと、研究チームは示唆しています。
岩石や金属から成り、生命に満ちたこの地球について教えてくれるパズルのピースが、こうしてまた1つ見つかったのです。
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