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Could Climate Change Make Plants More Toxic?(全1記事)

毒素を増やして、他の植物を襲う「侵略種」も…… 地球のCO2増加で、植物にあらわれた変化

大気中の二酸化炭素の増加は、光合成にCO2を使う植物の成長速度を速めると言われています。しかし、CO2の増加を、単純に「植物に有益」と喜ぶことはできません。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、気候変動が植物に与える影響に迫ります。

二酸化炭素の増加で、植物にあらわれた影響

ハンク・グリーン氏:「気候変動」は環境を破壊するものと認識されています。実際にそのとおりですが、実は植物に関してはそう単純ではありません。植物は光合成に二酸化炭素を使うため、増加で恩恵を被るものもあります。たとえば、二酸化炭素の増加で植物の成長速度が速まることなどが考えられます。

ところが、これは1個体の植物にとっては有益でも、総体的には有害な事態につながりかねません。思いがけない結果を招く可能性があります。植物は、毒や薬になるさまざまな成分を生成しますが、そのメカニズムに変化があれば、生育環境そのもののバランスが崩れかねないのです。

大気圏の二酸化炭素量は、全体のわずか0.04パーセントとそう多くはありません。しかし、産業革命前と比較すれば激増しています。産業革命前の二酸化炭素は280ppmであったのに対し、現在は415ppmから420ppmの間を推移しています。つまり、産業革命前と比較して約1.5倍も増えているのです。

二酸化炭素の増加が植物に与える影響の調査が始まっていますが、驚くべき結果が出ています。たとえば、理由はまだわかっていませんが、野菜の栄養価が一部で低下しているのです。つまり二酸化炭素の増加が食品栄養価の低下につながっている可能性があります。これは、飢餓に苦しむ地域をはじめとする人々の健康に多大な影響を及ぼします。同様に、植物のタバコが生成するニコチン量も低下しています。

二酸化炭素が植物へ与える影響が単純なら、今後の予測は比較的容易にできるでしょう。しかし、実際は植物の種類によっても異なります。

植物の中には、医薬品の原料となる有効成分を生成するものがあります。ニガヨモギは、マラリア治療薬となるアルテミシニンを生成しますが、高い二酸化炭素値の下ではその生成量が増加することがわかっていますし、アツミゲシは、アヘン成分の生成量が増加します。

同一種の植物でも、環境変化への「適応・非適応」が分かれる

植物が将来どのような変化を遂げるかはまだ十分に判明していませんが、高い二酸化炭素値によって植物が毒性を増す例もわかっています。中南米原産のゴマギク(famineweed)は、原産地ではその葉をエサとするザイゴグラムマなどの昆虫によって一定数が保たれていますが、原産地以外では繁殖力の高い侵略種です。オーストラリアやアフリカ、インドでは侵略的外来種として認定されています。

ゴマギクは、パルテニンという毒素を生成して周囲の植物の成長を阻害するため、大きな害をもたらします。

毒を持つことで競合する植物を枯らして生育地を拡大し、天敵に喰われるのを防ぐと考えられています。周囲の植物を枯らすだけではありません。ゴマギクは喘息や皮膚のかぶれなどの原因となり、人間にも有害です。侵入を受けた国々では、必死になってこの植物の拡大を抑え込もうとしています。

2021年に『Nature Plants』誌上に発表された論文は、まさにこの点を追及したものです。この論文では、オーストラリアにおけるゴマギクの生育地域の拡大が調査されました。ゴマギクは、1950年代にオーストラリアに持ち込まれました。同時期に持ち込まれた2系統の生物型のうち、1系統のみが定着して侵略種となりました。

「生物型」とは、種の中でそれぞれ同一の遺伝子型をもっている個体群を指し、「系統」とも呼ばれます。そのため、同一種であっても複数の生物型が存在することがあります。

研究グループは、侵略種になったものとならなかったものを分ける、2つの生物型の違いを調べました。すると、ある違いが判明しました。侵略種になった方が、パルテニン生成量が多かったのです。さらに、パルテニン生成には二酸化炭素値が影響していることがわかりました。

産業革命前の環境下の二酸化炭素値で栽培すると、侵略種のゴマギクのパルテニン生成量が野生下よりも低下したのです。

逆に二酸化炭素値を上げると、侵略種のゴマギクのパルテニン生成量は増加しました。しかし、侵略種とならなかった系統のゴマギクは、高い二酸化炭素値下でもパルテニン生成量は増加しませんでした。

生態系のバランスにも影響を与える、植物の適応力

つまり、侵略種のゴマギクは、増加した二酸化炭素の炭素をパルテニンの生成エネルギーとして利用することで、現代の二酸化炭素値の高い環境に適応したと考えられます。二酸化炭素の増加に伴い侵略種のゴマギクの毒性が高まり、侵略能力が増していったに違いありません。

これと同様に、二酸化炭素の増加を利用して毒性を増す懸念が、他の有毒植物でも考えられます。植物毒は、他の植物と競合するためと敵に喰われないよう身を守るためのものです。つまり、より強力な毒性を持つものが他の植物との競争に勝利します。これは、侵略種にとっても、元来の固有の生態系にとっても脅威です。なぜなら、他を圧倒するような適応を遂げた植物は、生態系全体を脅かしかねないからです。

他の植物も、ゴマギク同様に高い二酸化炭素値に適応しつつあるかもしれません。このことは、未来だけではなく今まさに進行している事態を的確に把握することが、気候変動の対処には不可欠であることを警告してくれています。

二酸化炭素の増加が単純に植物にとっての利益にはつながらないとわかった今、植物の生理の変化を研究することは重要です。そしてこれは、研究を要する気候変動が招く結果の1つに過ぎません。

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