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Why Is It so Hard to Swat a Fly?(全1記事)

簡単には叩けない、ハエの「脚」と「眼」のメカニズム

静かに狙いを定めて素早く叩いても、なぜかあと一歩のところで「ブーン」と逃げられてしまう…。なぜこんなにもハエを退治するのは難しいのでしょうか? 今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、そんなハエの、自由自在な高速飛行を可能にする身体のメカニズムを解明します。

ハエが自在に飛べる秘密は「内側の2本脚」

ステファン・チン:ハエは人間に隙を見せないので、なかなか叩けません。「逃げ上手」で、外敵の不意をついて自在な方向に飛び立つからです。一匹でも仕留められたあなたは、かなりの運の持ち主です。

ところで、ここでいいニュースです。実は、科学的知識があればハエの「逃げ戦略」に振り回されることにはなりません。それでは、ハエを叩くのが難しい理由を、これまでの研究に基づいて調べてみましょう。

人間は、常にハエに“一本取られて”います。ハエは人間より脚を4本多く持っているからです。

優位なのは脚の数だけではありません。ハエの脚は人間よりも3倍あるぶん、逃げて自らの命を守る役割において優秀なのです。ハエの6本脚のうち、外側の4本脚は立つためのバランスを保ち、内側の2本の脚は最適のアングルで飛び立つために使われます。

たとえば、内側の2本を後ろ脚2本に向けて折り曲げれば、前方に勢いよく飛び立てます。前脚2本に向け前方に折り曲げれば、後方に勢いをつけて飛べます。内側の脚を活用することで、意図した方向に飛び立つ力を得られるのです。

さらに、周囲にそれを悟られることは決してありません。2本の脚はハエの胴の下に収納されているため、真上に来ない限り敵からは見えないからです。

ハエの高速飛行を支える、優れた「視覚の処理速度」

でも人間が真上に来る頃には、すでにハエにはそれがわかっています。ハエの視覚の処理速度は、人間の10倍あるからです。ハエは、高い臨界融合頻度値を持っています。「臨界融合頻度」とは、光を点滅させる速度を早めていって、常に光っているように見えるようになる点滅の頻度を指します。

これは、動画の原理とよく似ています。動画も、連続した絵が高速で入れ替わることにより、あたかも動いているように見えてしまうという視覚効果です。

ハエの臨界融合頻度値は人よりも高いため、毎秒あたりで得られる情報量が多く、人の攻撃を巧みにかわすことができると考えられています。

ハエの頭の動きもまた、ハエが見る物の動きのスピードを低下させ、瞬時に反応することに役立っています。たとえば、ハエはハエ叩きの動きに併せて頭を動かすため、高スピードで接近するハエ叩きであっても、ゆっくり近づいて来るように見えます。

ハエの視覚が持つこの力は、飛行時の視野を鮮明に保つことにも役立ちます。ハエは高速で離陸するからです。このような高速下ではバランスを保つことも重要です。

ハエは、バランスを保つために平均棍(へいきんこん)という部位を使います。平均棍とはハエの後翅が退化したもので、飛翔ではなくバランス維持に用いられます。人間で言えば、バランスが崩れた時にとっさに腕を上げて平均を保つような働きです。ハエは平均棍のおかげで、腕を上げている時のような安定性を常に得られるのです。

しかし、すべてのハエが平均棍を持っているわけではないため、バランス感覚を掴むのにもたついているハエであれば、涼しい顔で安定した高速飛行をしているハエよりも、仕留めやすいかもしれません。さらに人間側でも、ハエ対策道具は年々改良されています。

なお、ハエはたまたますばしこくなったわけではありません。逃げ足が早くなるよう進化を遂げてきた結果なのです。長い時間を経る中、鈍脚のハエは鳥などの動きの早い外敵に食べられて、逃げ足の早いハエだけが子孫を残すことができました。

ですから、そんなハエを一匹でも仕留めることができたあなたには、ひょっとしたらすばらしい才能があるのかもしれませんね。

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