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Why are We So Much Chubbier than Other Apes(全1記事)

なぜ人間は他の類人猿よりも“ぽっちゃり”しているのか?

チンパンジーやボノボなどの他の大型類人猿と比較して、私たち人間はなぜか“ぽっちゃり”しています。この差が生まれる原因には、実は筋肉量や食事の他に、「DNAの収納のされ方」の違いがありました。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、ヒトと他の類人猿の体脂肪の蓄え方の違いを明らかにします。

他の類人猿に比べて、ヒトは体脂肪が多い

ヒトのDNAは、98パーセント以上がチンパンジーやボノボと同じですが、姿はまったく違います。まず明らかに違うのが、手足や顔かたち、体毛の有無などですよね。

ところでよく見ると、チンパンジーの肉体はよく引き締まっています。そう思うのは、私だけではないはずです。その違いは、筋肉量だけではありません。ヒトと、ヒトに近い大型類人猿とでは、体脂肪の蓄え方にも違いがあります。ヒトにとっては、これは長い目で見ると実はメリットだったのです。

ボノボとヒトを平均で比較する場合、特に上半身においては、ボノボの方がヒトよりもはるかに筋肉量が多く、圧倒的に力が強いです。ところが、ボノボとヒトを同量の筋肉で比較した場合、ボノボの肉体的優位性はそれほど高くはないことが、複数の研究でわかっています。

チンパンジーとヒトとで、実際の筋肉繊維の力と働く速度を比較した場合、チンパンジーの筋肉のそれはヒトと比較してもわずかに1.5倍に満たない程度であることがわかりました。つまり、チンパンジーの力がヒトより強いのは確かですが、実際に比較した場合『インクレディブル・ハルク』級の強さを誇るほどではないのです。

チンパンジーがスーパーヒーロー級の強さを持っているわけではないのなら、なぜチンパンジーの肉体はあんなに「仕上がって」見えるのでしょうか? それは実は、ヒトの体脂肪が他の霊長類に比べて多いからです。

ヒトの方が体脂肪が多いのは、ライフスタイルからしてもじゅうぶんに納得できそうですね。ヒトは多様な栄養素を摂取する食文化を持つため、ヒトと他の類人猿との比較は現実には困難です。

動物園の類人猿は野生とはまったく異なるエサを摂取しています。動物園の動物は、必要に応じてきちんと栄養管理されているためです。

ある研究において、人と他の類人猿の体脂肪が比較されました。動物園や研究施設で自然死した13頭のボノボを解剖したところ、飼育下にあるにも関わらず、総体重に対する体脂肪率が非常に低かったのです。

ボノボの平均体脂肪は雌雄ともに、どのジェンダーのヒト成人の平均体脂肪よりも少量でした。ボノボの体脂肪率は、1パーセント以下〜8パーセントをわずかに上回る程度でした。健康なヒトの平均体脂肪率は、14〜30パーセント程度です。

前述したように、これらのボノボは管理栄養下にありました。しかし運動不足であるため、数値はあくまでこれらのボノボの体脂肪のデータであり、すべてのボノボの体脂肪の参考とはなりません。。

脂肪を変換させる指令情報が「埋もれている」ことで得た、人間の恩恵

究明には、さらなる深みを精査する必要があります。それは、DNAが「どのように収納されているか」という点です

哺乳類には、複数種の脂肪細胞があります。ここで取り上げるのは、白色脂肪またの名を白色脂肪組織と、褐色脂肪またの名を褐色脂肪組織です。

どちらも脂肪を蓄える働きをしますが、褐色脂肪は脂肪をエネルギーへと変換する能力に優れています。これは、褐色脂肪の方が白色脂肪よりもミトコンドリアが多いためです。ミトコンドリアは、脂肪などを化学エネルギーへと変換する働きを持つ細胞組織です。

つまり、白色脂肪を多く持つ動物は脂肪を貯蓄する能力に優れ、褐色脂肪を多く持つ動物は脂肪を速やかに燃やしエネルギー源にする能力に長けています。驚くべきことに、白色脂肪は、ベージュ脂肪という褐色脂肪に近い細胞へと変化することができます。すると、蓄えた脂肪はエネルギーへと変換されやすくなります。

白色脂肪をベージュ脂肪へと変化させる指令情報は、DNAが持っています。ここに重要ポイントがあります。細胞内の膨大なDNAのらせん構造は、漫然と放り出しておくわけにはいきません。細胞核内にきちんと折りたたまれて収納されています。

DNAの長いらせん構造は、ヒストンというたんぱく質に巻きつき、折りたたまれています。たんぱく質と共におりたたまれているこのDNA複合体は、クロマチンと呼ばれています。

DNAがどれほど密に収納されているかは、細胞のDNAへのアクセスしやすさに影響があります。密に収納された領域の遺伝情報は、細胞がアクセスして活性化しづらい状態です。しかし緩やかに収納された領域は活性化されています。

2019年の研究によると、脂肪細胞のクロマチンへのアクセスしやすさは、チンパンジーとヒトの体脂肪率の違いをもたらしている原因の1つのようです。チンパンジーの白色脂肪を褐色脂肪へ変換する指令情報を握るDNA領域は、DNAを解読する働きを持つ細胞機構がアクセスしやすい状態です。

対してヒトの脂肪細胞ではクロマチンは固くおりたたまれて収納されており、指令情報が「埋もれている」状態だというのです。その結果、ヒトは白色脂肪をチンパンジーより多く持ち、大量の脂肪を蓄えることとなったのです。

この大量の脂肪は、ヒトに恩恵をもたらしています。脂肪を蓄える高い能力のおかげで、ヒトは大きな脳を発達させることができたという説を唱える学者がいます。

ヒトの脳は、他のどの細胞組織よりも大量のエネルギーを必要とします。サバンナで過酷な生活をしていたヒトの祖先に、「エネルギーを大量消費する考えるマシーン」を養う脂肪の蓄えが少しでもあれば、どれほど生存に有利だったかは、想像にかたくありません。私たちが巨大な脳の恩恵にあずかっているのは、脂肪を蓄える高い能力のおかげなのです。これは、たいへんよくできた仕組みだと言えるでしょう。

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