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Climate Change Moved the North Pole(全1記事)

気候変動が原因で地球の軸がズレて、北極点は移動する? 発見のカギを握る、2機の人工衛星

最新の研究により明らかになった「気候変動により地球の地軸が変動し、北極点の位置が変わってしまう」という事実。実は北極点が移動すること自体は、目新しい話ではありません。1世紀以上もの間、積極的に追跡調査が続けられており、知識としてはそれ以前から知られています。しかしここ10年で、北極点が変動する方向が、本来の「南方向」から「西方向」へと変わってしまったこと。そして、変動のスピードが加速していること。これらを受けた研究者たちは「気候変動との関連性はあるのだろうか?」と考えました。そこで今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、北極点移動の謎に迫ります。

気候変動が原因で、北極点は移動する?

ハンク・グリーン氏:昨今は、気候変動が引き起こすさまざまな極端な事例を耳にしますね。『Geophysical Research Letters(地球物理研究ジャーナルレター)』で発表された最新の発見は、その最たるものです。ひょっとしたら、サンタが荷物をまとめて住んでいるアパートを引き払う事態になるかもしれません。なぜならこの研究によりますと、気候変動により地球の地軸が変動し、北極点(正確には「北の自転極」)の位置が変わってしまうようなのです。

研究では、この事態が始まったのは少なくとも90年代だとしています。北極点が移動するのは別段目新しい話ではありません。1世紀以上もの間、積極的に追跡調査が続けられておりますし、知識として知られているのはそれ以前からです。

地球が地軸を中心にコマのように回っている様子を想像してみてください。コマはふらふらと揺れますが、地軸も同じ様に揺れます。これは「極運動」と呼ばれます。この運動は予測が可能であり、マントル、大気圏、海洋など、地球を構成し循環している物質すべてと関連性があります。

例えば、北半球と南半球の間で、水蒸気が季節によって移動することにより、極の位置は年間で変動します。また、海洋底の圧力の変化により「チャンドラー・ウォブル」と呼ばれる433日周期の変動を起こします。ちなみに「チャンドラー・ウォブル」は、僕がTikTokで近々投稿する予定のダンスのタイトルでもあります。

長期間に渡る変動もあり、これには「氷河性地殻均衡」から受ける影響などが挙げられます。「氷河性地殻均衡」とは、氷河期が終わり、巨大な氷河の重圧から解放された地殻が少しずつ隆起する運動です。

ところで、ほんの10年ほど前に判明したことですが、北極点が変動する方向が、90年代中ごろに大幅に変化したようなのです。本来であれば南に変動するのですが、西へと方向が変わってしまったのです。さらに、変動のスピードも加速しています。1981年から1995年にかけての平均スピードと比較すると、1995年から2020年にかけての変動の平均スピードは、17倍も速くなっているのです。

2機の人工衛星が発見のカギを握る、「地球ゴマ」の揺れの変動

そこで研究者たちは「気候変動との関連性はあるのだろうか?」と考えました。つまり、90年代中ごろに始まった氷河の急速な溶解により、地球上の水の循環が変動し「地球ゴマ」の揺れが変わってしまったのではないか? というのです。この発見のカギとなったのは、GRACE(Gravity Recovery and Climate Experiment「重力回復と気候実験」)というミッションを担って2002年に打ち上げられた、2機の人工衛星です。

この2機の人工衛星は、氷床、雪、表流水、地下水の位置とその変動によって起こる、地球の重力変動を精密に計測します。

観測の結果、気候変動でグリーンランドの氷床が溶けだしたことにより、2005年ころに北極点が東方向に移動したことがわかりました。同様に、地球規模の大雨や干ばつパターンの変動により、2012年ころに北極点が西方向に移動したことも判明したのです。

GRACE衛星が打ち上げられる以前の90年代に起こった、氷床の溶解による北極点の移動を証明するのは、非常にたいへんです。今回の研究では、この課題の解決が試みられました。GRACEのデータを元に、過去のデータを推測する技術が考案されたのです。この推測技術を使って、北極点移動の2本のシナリオのモデルが作成されました。

1本は2000年代のデータのみを使ったモデル、もう1本は90年代に実際に起こった気候変動を計算に入れて作成されたモデルです。1本目のシナリオは、21世紀にGRACE衛星が観測したのと同じ事象が、80年代、90年代にも発生していたと仮定して作成されました。このシナリオでは、北極点は実際の位置には来ませんでした。

そこで次には、実際に記録された、90年代に急激に溶解が進んだ世界中の主な氷床地域のデータが入力されました。これで北極点の移動推移が正確に算出されれば、90年代の気候変動で加速した氷床の溶解が、北極点の移動に変化を与えたと考えられますね。果たして、90年代半ばの北極点変動を正確に予測したのは、この2本目のモデルでした。

論文の著者たちは、水の循環を変えて極の変動を起こした原因は、気候変動以外にもある可能性を示唆しており、これも良いニュースではありません。その一つが、農地などにおける、人間による持続可能性の無い地下水の利用による「陸水」の変化です。

とはいえ、この研究では興味深い結果も出ています。論文の著者たちは、この技術を応用してもっと過去のデータを推測することも可能だとしています。氷床溶解のデータを元に北極点の推移を予測する以外にも、現在手元にある北極点の位置データを利用して、20世紀中に起こった地球上の陸水の減少を推測することが可能だというのです。つまり、精密測定が不可能な時代についても、水の移動や氷床の溶解などの地球史を調べることができるのです。

いずれにせよ、気候変動が引き起こす驚くべき事態の一つとして「地球の地軸が動いてしまう」ことが判明してしまいました。

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