2024.10.10
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宮田大介氏(以下、宮田):なるほど(笑)。ここで『マリオRPG』自体もヒットしたというところで、クリエイターとして大きな手応えを感じて、スクウェアの中でもわりと「倉島さんデキるな」みたいな感じになってたっていうところですかね。
倉島一幸氏(以下、倉島):それまではけっこうね、雑務が多かったんですけど。『マリオRPG』終わったあとはわりと、塩対応から胡椒ぐらいにはなってますかね。
宮田:胡椒対応(笑)。そこからまた激動の、ヒストリーポイント③に移っていくんですけれども。
『マリオRPG』で成果も出して、扱いもだんだん良くなってきた中で、クリエイターとしてちょうど年齢的にも……この時がおいくつぐらいでしたっけ?
倉島:これは26ぐらいですかね。
宮田:一番、いい意味で調子に乗ってた時期、みたいなことをお聞きしていて。
倉島:調子こいてましたね、一番。
宮田:(笑)。ここで、スクウェアさんで「じゃあ次のタイトル、次のタイトル」っていくのではなく、当時、新しい会社のラブデリック社に合流するっていう感じですよね。
倉島:そうなんですよ。本当は、スクウェアさんの中で扱いが良くなってきたから「これはもっといると、もっと扱いが良くなるぞ」と思って、辞める気なかったんですけど。工藤(太郎)さんが「辞めて新しい事務所作るから、クラちゃんもおいでよ」って。
なかなか「うん」と言わずにのらりくらり逃げようかなぁとしてたら、例えで出されたのが当時はやってた小室哲哉のエイベックス。「エイベックスに居残りたいのか、それとも電気グルーヴとかそこらへんの、攻めた音楽を作りたいのか」って言われて。じゃあ電気かなぁ……ってことで(笑)。
宮田:なるほど(笑)。攻めた音楽作りたいなっていう。音楽というか、ゲームでですけど。
倉島:しつこかったんですよね、けっこう(笑)。
宮田:工藤さんが(笑)。『マリオRPG』でかなり、工藤さんと倉島さんのタッグといいますか、そこの相性が良くて。
倉島:そうなんですよ、だから「この人が抜けちゃうんだったらおもしろくないなぁ」と思って。「まだもうちょっと作りたいわ」という欲はありましたね。
宮田:なるほどですね。工藤さん自体もやっぱり、スクウェアさんでこのあとやっていくより、さっきの「尖ったゲームを作りたい」みたいなのがあったんですかね。
倉島:ラブデリックって、わりと洋ゲーが好きな人が多くて。背景担当の上田(晃)とかもそうですし、なんていうんですかね……バンドとかやってて、洋ゲー好きで。「大人数でわーっと作るのもいいけど、こそっとバンドみたいに集まって、とんがったもの作ろうぜ」みたいな口説き文句は、何回も言われましたね。
宮田:なるほど。そういったメンバーがドッと集まってきて、みたいな感じですよね。
倉島:後々10人、11人ぐらいになるんですけど、最初は4、5人で作ってましたね。
宮田:メンバーもみなさん、かなり尖られてるみたいな感じだったんですかね。当時の中で。
倉島:調子こいてましたね、僕を筆頭に。
宮田:(笑)。ちょうどみんな同じぐらいの年代の方々で。
倉島:20代半ばとかが多かったですね。だからやっぱり、いい気になりますよね。
宮田:(笑)。でも本当に話聞いていくと、それこそゲーム制作会社が新しくできたっていうより、新しいバンドが生まれたみたいな感じの話がすごく合いますよね。
倉島:うん、バンドのノリでしたね。
宮田:「新しい曲作ってスターダムにいこうぜ!」みたいな感じの(笑)。
倉島:原宿の、しかもわりと一等地に事務所借りて。
宮田:そうなんですね、高い所に。
倉島:高いですね、今だったら信じられないですね。上にタイクーングラフィックスっていう、当時イケイケの、いろんなCDのジャケットとか作ってるところがあって。そこのエレベーターで、安室(奈美恵)ちゃんに会ったんですよ(笑)。
宮田:(笑)。
倉島:どうでもいい話ですよね(笑)。その安室ちゃんを見て「うわっ! かわいいし、顔ちっちゃい!」って思って描いたのが、『moon』のキャラのクリスちゃんっていうアイドルの。
宮田:はいはい、アルバイトしてる(笑)。そこにつながってくるんですね(笑)。
倉島:それぐらいインパクトがあったんです。どうでもいい話で、すいません。
宮田:大事なインスピレーションの話ですね、そこらへんもすごい聞きたかったんですよね。じゃあ事務所はすごく豪華な感じだったんですか?
倉島:豪華っていうか、場所は豪華でしたね。で、ノリ的には事務所用のスペースじゃなくて、住居スペースをぶち抜いて、ほとんど“人んち”みたいなノリ。マンションの一室でやってたので。あんまりしゃちほこばった感じじゃなくて、みかん箱で働かされる人もいりゃあ……。
宮田:(笑)。
倉島:あと、まかないでおにぎり握ってくれて、和気あいあいとみんなで食べたりとか。楽しかったですね。
宮田:本当、クリエイター集団みたいな感じでやってた感じですよね。みんな意外と、クリエイターといえば誰もが一度は憧れる感じの。実際は大変だったことも、たぶん多いとは思うんですけど(笑)。
倉島:でも楽しかった思い出ですね、ほとんど。それまで、もちろんスクウェアさんにいた時も楽しかったですけど。大きなところでやってたのが、解放的な感じでこぢんまりと、わりと好き勝手にできてたので。楽しい思い出しかないですね。
宮田:いいですね、さっきの「このキャラクターは実は安室ちゃんが元だった」みたいなところもあったと思うんですけど。『moon』自体、やっぱりこう「新しい作品のイラストを描きまくる」というふうに書いていて、トラックレコードのところでは「今までの王道RPGへの反骨心と『マリオRPG』で経験したメジャー感」というところが合わさって、傑作の『moon』が生まれてくるっていうところなんですけど。
プレイされた方はすごくわかると思うんですけど、されてない方はぜひやっていただきたいんですけど、けっこう世界感が独特で。すごく尖ったキャラクターがたくさん出てくるじゃないですか。ああいったのってどういうふうに産んでいったのかな? っていうのはすごく、やっぱり個人的には気になっていて。
倉島:プチ宣伝ですけど、『moon』のボックスが出まして。そちらに開発資料みたいなのが入ってるんですけど。
そこにもいっぱいありますけど、とにかくキャラクターの絵を描いて。それまで、もちろん『マリオ』は『マリオ』の時に、『マリオ』の世界観に合ったものを描いてたんですけど、そこに合わないというか。
個人的に好きで描いてるイラストとか、ポストカード作って売ったりとかしてたんですけど、そういう自由な絵をとにかくいっぱい走り描きして。で、その好き勝手に書いていった絵を企画の人と一緒に「こいつだったらこんなキャラ」とか「こんな名前」とかっていうのを割り振ってもらって。僕はもうとにかく「こんなのいたらおもしろいかな」っていうのをいっぱい描いて、選んでもらった感じです。
宮田:じゃあ設定とかがあって、それに基づいて描くというよりも。
倉島:そういうキャラもいはしましたけど、最初の出だしとしてはけっこう自由にやらせてもらって、チョイスしてもらったりとか。そういうノリでしたね。
宮田:なるほど。本当にじゃあ「天から降りてくる」じゃないですけど、次々生み出しまくってっていう感じのやり方なんですね。
倉島:そうなんですよ。なんかこう、湧き出て。“湧き出る20代”でしたね。
宮田:(笑)。次から次へと作品が。
倉島:今は“枯れた50代”ですけどね。
宮田:そんなことはないと思いますけど(笑)。なるほど、それもすごくクリエイター冥利に尽きるじゃないですけど。
倉島:なんかね、調子良かったのか調子こいてたのか。でもそういう時期は必要なんだなって思いますね、今考えると。とにかく生意気でしたね。
宮田:(笑)。「これはすごいキャラだぞ!」みたいなのを……。
倉島:「なんでわかんねぇんだ、これが!」みたいな生意気なことを、酔っぱらって言ってた気はしますね。
宮田:でもそういうのは大事な時期、っていうことですね。
倉島:そうですね。
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