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第二部 パネルディスカッション「炎上とフェイクニュースのこれから」(全5記事)

口コミサイトへの書き込み問題、企業はどう対応すべき? SNSより影響の大きい「Googleマップ」の永続性

デジタル上で発生したクライシス(危機や重大なトラブル)を研究する日本初の研究機関、シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所。同研究所が、一年間の研究成果をまとめて発表する『デジタル・クライシス白書』の発行を記念して、オンラインイベント「デジタル・クライシスフォーラム」が開催されました。本記事では「第二部 パネルディスカッション『炎上とフェイクニュースのこれから』」の模様を公開します。企業担当者の風評被害への対応策や、今後もデマ・フェイクニュースのターゲットになりやすいテーマなどについて意見を交わしました。

1つ前の記事はこちら

口コミサイトに対する書き込み問題、企業はどう対応すべき?

桑江令氏(以下、桑江):なるほど、ありがとうございます。今Googleマップの話が出ましたので、少しだけそこに脱線させていただきたいんですが。

現状、我々もさまざまな事例をウォッチしていくと、今までSNSや匿名掲示板が攻撃対象だったものが、Googleマップのコメントに移ってしまうケースが増えている印象なんです。星1で「こんな対応ひどい」とか「ネットで見たとおりひどかった」とか。そういうことを書かれてしまうと。

SNSの場合は、一定の時間を凌げば見えなくなるんですが、Googleマップだと永続的にお客さんなどに見られてしまうわけですよね。それがけっこうな影響だよね、ということを、実は去年感じていまして。デマからは少しズレるのですが、「この辺りも困るよね」という話だと思います。

そういった中で、デマ・フェイクニュースおよびGoogleマップのコメントを踏まえて、被害にあった場合に、企業としてどうすればいいのか。よくあるのが「ファクトをちゃんと出しましょう」という話かと思うのですが、企業の担当者としてどう考えるべきか。最後に伺えればと思います。

古田大輔氏(以下、古田):口コミサイトに対する書き込み問題は、本当に「古くて新しい問題」ですよね。ずっと言われ続けていて、その時々の人気サービスによって、コメントする場所が変わってくると思うんですけれども。

これに対しても、ある程度マニュアルを作って対応していくしかないと思うんですよね。明らかにおかしな書き込みに対しては、「落としてくれ」というプラットフォーム側への連絡であったり。同時に、書き込みをした対象にアプローチするのであれば、弁護士的な対応をするであるとか。

それをある程度マニュアル化して、一律に対応していくしかないですよね。これは本当にもぐら叩きで。非常にお金も時間もかかるけれども、なにか対応するならば、それぐらいしか方法がないのかなと思います。

もう1つ付け加えると、桑江さんもおっしゃったような「打ち消すと同時に正しい情報の発信をする」という2軸の方法ですよね。これをやっていくことしか、現場において方法はないのかなと感じています。

ただし、そういった対応を取れるところは、ある程度リソースに余裕があるところじゃないとやりにくい場合もあってですね。そこは本当に議論になっているところですね。プラットフォーム規制に関する議論でも、そのあたりをなんとかしていきたい。手続きをより簡素化できないか? という議論がまさに進んでるのかなと思います。

桑江:なるほど、ありがとうございます。

事実の公表に徹し、場合によっては法的措置を取っていく

桑江:では山口先生いかがでしょうか。

山口真一氏(以下、山口):少し繰り返しになってしまうかもしれないのですが。やはりまず、デマやフェイクニュースの被害にあった場合には、最初にやるのは事実確認だと思うんですよね。まず、そういったことがあるのか検証する。そして、その検証結果を客観的に公表することが非常に重要であると。

私がよく言うのは「事実の公表に徹する」ということです。自社に非があればもちろん謝罪ですけども、事実無根の場合でも、先ほども申し上げたように「消費者批判をしないこと」はけっこうポイントでして。

あくまで「こういう事実です」ということで、1人を批判するのではなくて、ほかの人たちに安心感を与えることが重要だと考えています。先ほどのローチケさんの場合は、「システムに不具合は特になかったんだ」とユーザーは安心しますよね。やはり、事実関係の公表に徹することは、鉄則としてはあると思います。

なおかつ、その質ですよね。例えば同業他社がデマを流しているような事例は、やっぱり弁護士案件でどんどん裁判していくしかない。それを「コストがかかる」とか「時間がかかる」「お金がかかる」ということで、やっていかないと恐らくダメですよね。

なので私は対応したほうがいいと思っていてですね。そうすると、社会全体としての抑止力にもなっていきますので。虚偽の内容での中傷であれば、けっこう裁判できる案件だと思いますので。そういったことを、もっと積極的にやっていく必要があるのかなとは思います。

さらにですね、そういった火種を早めに検知することも重要で。別途ソーシャルリスニングを依頼するであるとかですね。あるいは、自社が展開している店舗のGoogleマップ上のコメントに対して、「チェックすべきコメントが付いた」ということを迅速にキャッチして、その事実確認を行うと。そういったことが企業対応としては、適切なのかなと考えています。

桑江:なるほど、ありがとうございます。

2021年は、日本でのデマやフェイクニュースの分水嶺

桑江:では最後に、お二人から「2021年で注目している部分について」あるいは「こういう年になりそうだ」といった一言をいただければと思っております。古田さんからよろしいでしょうか?

古田:はい。僕は「デマやフェイクニュースに関する分水嶺がきた」と思うんですね。それはやっぱり1月のワシントンの大混乱ですよね。アメリカにおいて、これがバックラッシュになったんですよね。

それまで「デマをバンバン流しまくったら、ある一定数の支持者がつくから、いいじゃんもうデマで」みたいな感じで、ひどい情報が出まくっていたわけですよね。

でもそれに対して、ワシントンの大混乱があったり、山口先生もおっしゃっていた「法的に処置しますよ」みたいな話が出てきた場合、デマを流してた人たちが一斉にやめる流れが今回来たわけです。

例えばNewsmaxというアメリカのメディアでは、トランプ支持を明確に打ち出して、いわゆる「選挙の陰謀論」や「ドミニオンは怪しい」という情報を流しまくっていたことがありました。しかし、「訴えるぞ」と言われてから、そういったニュースをピタッと流さなくなったんですよね。

そういう流れがある中で、「デマでもフェイクでもなんでもいいから流しまくったら、一定の強固な支持者層がつく」という、1月までのアメリカの方向性に日本も行くのか。それとも、アメリカで起こったようなかたちで「それをやりすぎると法的な対応が来るぞ」とか「最終的に大混乱につながるから、そこまではいかないようにしよう」という方向に日本が行くのか。僕はまだわからないと思ってるんです。

なので僕はずっと、インフルエンサーやそういったグループをフォローして見ています。そこが今後どうなるのか。それが今年の注目点だなと思ってます。

桑江:なるほど。実際に視聴者のコメントからも、メディアに対しての牽制などに関するコメントも多く寄せられていました。その辺りを含めて、この2021年がどうなるのか見ていきたい、というところですね。ありがとうございます。

今後も起こりうる、炎上の引き金

桑江:では山口先生お願いできますか。

山口:今日は、炎上と疑義言説という2つをお話してきたと思います。まず、炎上という面で言うと、引き続きジェンダー関連は炎上していくんだろうなと、今日も強く思いまして(笑)。

日本のジェンダーギャップ指数は121位ということが有名な話ですが、特に分野で言うと政治・経済の分野で低くてですね。政治だと確か144位だったと思います。調査対象が153ヶ国ぐらいなので、ほぼ最下位レベルなんですが、そういったことが起こっていると。

そして炎上のタイプとか見ると「ステレオタイプの価値観での発言」や「過剰な一般化」みたいなところが、炎上の引き金になっていることが多いです。ですので、そういった発信は、企業としては今後も注意していく必要があるだろうと感じます。

そして、デマ・フェイクニュースに関して言いますと、2つのテーマがあるかなと思って。1つはやはりワクチンですよね。ちょうどワクチンデマの調査研究をやろうかな、と思っているところなんですけども。やはりそこが大きくクローズアップされると思います。

もう1つは国政選挙があるだろうと。恐らくそれに関連してデマも広がるのかなと感じております。そして、このフェイクニュースという文脈で、世界的に注目されたのがTwitter社の対応だったと思うんですね。ほかのソーシャルメディアも、かなり活発にやっていましたけども。

例えばTwitterであれば「発信に対するラベル付け」を自社で判断してやっていたりですね。そして最終的に、元大統領のアカウント凍結をやったわけです。これに対しては、いろんな意見が出て、賛成する人もいれば、ドイツやフランスのように「それは法律に基づいてやるべきだ」という発言もあったりして、いろんな見方がありましたと。

私の個人的な思いで言うと、もちろんそういった対応を検討して実施した、という事実があると思うんですけれども。それに対して、効果の検証ならびに透明性の確保が重要かなと思っています。

つまり「どういう基準で」「どうして実施したのか」というお話をジャック・ドーシーさんもされてましたけども。そういったアクションを起こしても、常に透明性を確保していくことが重要なのかなと感じています。

お互いが完全に違うフィールドに行く「分断」が起きている

山口:もう1つ考えなきゃいけないのが、Twitter等が軒並みそういった対応をしたことによって、アメリカで何が起こったかというと、「そういう対応をしないSNS」にみんながバーっと移ったわけですね。彼らの支持者たちが。そこでも1回AWSから弾かれて、また新しいサーバー見つけて云々ってことを今やってると。

これで何が起こるかと言うと、もちろん民間サービスなので、どんなタイプがあってもいいわけです。それは自然な状態だと思うんですけども。例えばさっきの古田さんのお話にあったとおり、支持する人が発言すると、それに呼応してアンチが発言することもあったように、これまでは同じフィールドだからこそ、分断と言っても、相手のことはなんとなく見えてる状態だったんですよね。

でもそれが、完全に違うフィールドに一方が行ってしまうことは、ものすごい分断ということになるわけですよね。そういった中で、この社会全体がどうなっていくか。ソーシャルメディアはどうやって対応していけばいいのか。そういったことを、もっと検討していく2021年になるのかなと感じております。

桑江:ありがとうございます。これらを踏まえて、2021年を引き続きウォッチしていくということですね。それでは第2部は以上で終了となります。山口先生、古田さん、ありがとうございました。

山口:ありがとうございました。

古田:ありがとうございました。

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