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第三部 パネルディスカッション「JDCアワード受賞企業の事例から見る2021年のデジタル・コミュニケーション」(全4記事)

事故を起こした自社の車に「不具合は絶対にない」 “ネット世論”を追い風に、毅然とした対応で大絶賛される企業

デジタル上で発生したクライシス(危機や重大なトラブル)を研究する日本初の研究機関、シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所。同研究所が、一年間の研究成果をまとめて発表する『デジタル・クライシス白書』の発行を記念して、オンラインイベント「デジタル・クライシスフォーラム」が開催されました。本記事では「第三部 パネルディスカッション『JDCアワード受賞企業の事例から見る2021年のデジタル・コミュニケーション』 」の模様を公開します。

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ネットを見ておくと、自社に“追い風”が吹いているのがわかる

桑江令氏(以下、桑江):なるほど。ありがとうございます。あと1つ2つテーマがありますが「これを話しておきたい」という話題がありましたら。

中川淳一郎氏(以下、中川):たぶん「企業がネットを見ていること」ってすごく大事だなと思っていて。ネットを見ておくと、明らかに「我が社に“追い風”が吹いている状況」ってわかるんですよ。それを見事にやったなと思ったのが、トヨタなんですけど。一昨年、池袋で暴走した飯塚幸三って87歳の人がいましたよね。

倉田真由美氏(以下、倉田):ありましたね。上級国民。

中川:あの事件で2人が亡くなってしまったワケです。その時に飯塚被告は「車に不具合があった」って言い張ったんです。でも、ネット上では「そんなワケないだろ」って意見が圧倒的だった。それをトヨタもわかっていて「不具合は絶対にない」って言い切ったんですね。

その結果、トヨタが大絶賛されるワケですよ。飯塚被告が上級国民だったことと相まって。なので、いくら自社の顧客であろうとも「そういうデマは言うんじゃねぇ」っていうトヨタの怒りを感じて、ネットでは大絶賛だった。あれはよかったなと思いました。毅然としていいと思います。

倉田:確かに。

ヨッピー氏(以下、ヨッピー):任天堂が公道をマリオカートで走るグループと裁判沙汰になって喧嘩してたのも「任天堂よくやった!」ってなりましたもんね。

桑江:そうですね。ネット上の世論や風向きをしっかりと踏まえた上で、対応を決めるところが2021年に求められると。

ヨッピー:でも本当はよくないなとは思うんですけどね。そういう風見鶏みたいなのって。ただ必要なことではあるとは思ってます。

桑江:判断の材料にはすべきというところですかね。

謝罪対応がうまいところ、へたなところ

ヨッピー:あと、謝罪対応がうまいところと、へたなところも分かれましたね。東証のシステムダウンの記者会見とかは、ものすごく褒められていて。結局、社長がクビになっちゃったんですけど。その一方で、不倫の謝罪した芸能人でボコボコに叩かれている人もいましたよね。

倉田:逆に出演が増えたような人もいますよね。

桑江:そうですね。やっぱり謝罪対応や危機管理対応で、いかに誠意を見せられるかという話だと思っていまして。私は聞けていないのですが、森(喜朗)さんの謝罪会見が、いままさに炎上しると先ほど聞きまして。

ヨッピー:ボコボコにいかれてるでしょ(笑)。

桑江:逆ギレしたみたいな話を聞いています。そういった意味では、やはり謝罪対応や危機管理対応で、いかに真摯に向き合ってできるのか。その姿勢を見せられるのかは、引き続き必要になってくる部分かなと思いますよね。

ヨッピー:姿勢を見せるのもありますが「自分たちのどこが気に食わなくて、どこを叩かれているか?」ってポイントを把握しなきゃいけないですよね。それに対して、対応策を発表しなきゃダメですよね。

桑江:そうですね。そういった意味では、ネットの情報もしっかりウォッチして、なにかあればすぐに察知すること。かつ、なにか起きた場合には、それがどうなっているのか。しっかり把握することが求められると。

“ワクチン歓迎一色ムード”で塗り潰される、懐疑的な意見

倉田:あと最近は、新型コロナのワクチンの話で、新潮社がワクチンに対する懐疑的な記事を出したと思うんですけど。それがなぜか削除に追い込まれていたんですよね。どういう理由かわからないのが、ちょっと腑に落ちないんだけれども。

最近のワクチンに関する報道を見ていると、歓迎一色ムードで。もちろんそうなっていくのもわかるんだけど。ワクチンに対して「本当に大丈夫なのかな?」って人たちの意見が「とんでもないこと言ってる。この非国民!」くらいの感じになってしまっていることに、ちょっと恐怖心を覚えるというか。

ワクチンを推奨したいがあまり、懐疑的な記事や意見が、本当に1、2ヶ月の間で塗り潰されてしまっている気がして。そういうのは恐ろしい気がしますね。不安に思う人がいるのは当たり前だと思うので。

ヨッピー:それは子宮頸がんワクチンの反省を踏まえているのかなと思うんですよね。「子宮頸がんワクチンにはちょっと危険性があるぞ」みたいな情報をマスコミが大々的に報道して、国も「ワクチンを打っちゃえ」ってことを推奨しなかったせいで、諸外国に比べると日本人のワクチン摂取率が低くて、子宮頸がんになる女性の数が多い傾向があると。

それで亡くなっている人もたくさんいる、みたいなことがあって。それでマスコミもだいぶ叩かれていて。「お前らが、ああやって報道したから……」ということを踏まえて(今回のワクチンの件は)対応しようってことがあるんじゃないですかね。どうなんだろう。

倉田:そうなんですかね。反ワクチンに一票投じるとかのスタンスはまったくないんだけど、懐疑的な意見があまりにもないことがちょっと……。頸がんワクチンに関しても、実際に体に不自由があるって人たちが出たことは事実だし。もしかしたらそれは思い込みなのかもしれないけど。

今はあまりにもワクチン推奨一色になっちゃうことに、ちょっと違和感を覚えるんですよね。新潮社はなんで記事を取り下げちゃったんだろう。

ヨッピー:あれはたぶん、コメントを求められたお医者さんが3人くらいいたんですけど、3人中2人はワクチン推奨派の人たちだったんですよ。それで、ワクチン推奨派の人が専門家としてコメントを求められて答えたのに、記事を見てみたら反ワクチンの記事に自分のコメントが使われていて、「納得いかん!」ということで怒ったんですよね。

倉田:あ、そういう理由で下げたんですか。

ヨッピー:それで記事を取り下げろって言って、取り下げたという。

倉田:あ~、なるほどね。

桑江:そういった背景があったんですね。

2021年は“人の痛み”をみんなで感じあえたら

桑江:盛り上がってきたところですが、時間が差し迫っておりまして(笑)。最後に一言ずつコメントいただければと思っております。

中川:では私から。2021年は「私はアナログ人間ですからね」みたいな言葉を死語にしたいなと思っております。今までは「アナログ人間だ」って言えば、知らなくても許された時代だったと思うんですね。

例えば、スマホも使えないとかも含めて。でも、社会はもうそうなっているんだから、いい加減デジタルに慣れましょうよと。特に働いている人はそう思うべきだと思います。

桑江:なるほど。ありがとうございます。

ヨッピー:僕はコロナでリモートが中心の世の中になって、遠隔会議とかが流行っていて。それはすごくいいことだなと思っているんですけど。たださっきも言ったとおり、高齢者層の人たちとの格差がどんどん広がると思います。そういう層が取り残されているのは、すごく問題だなと思っていて。

なかなか実家に帰省できないとか、おじいちゃんおばあちゃんに孫の顔を見せてあげたいのにとか。そういった人たちは、この機会に自分の親だけにでもiPadを買って渡して、これでテレビ電話できるよって。そういうデジタルリテラシーを上げるようなお手伝いを、みなさんでしていってあげたらいいなと思っています。

桑江:ありがとうございます。最後に倉田さんお願いできますか?

倉田:やっぱりコロナで、多数派の意見が絶えず重視されることを目の当たりにするようになったなと思うんですよね。緊急事態宣言に関しても、もっと早くすべきだったみたいな意見が圧倒的に多かったりとか。「感染拡大を抑えるために時短をやっていこう」みたいな。コロナを恐れて、しっかり我慢してやっていこうぜ、みたいな空気感があると思うんですけど。

でも、実際に緊急事態宣言や時短営業になって、実は大概の人って収入の増減がなくて。「夜飲みに行けなくて困ったな」とか「ちょっと旅に行けなくて困ったな」くらいの人が多数だと思うんですよ。実際のところ。

とはいえ、自営業者もたくさんいます。ですけど、全体で対比した時に、緊急事態宣言や時短の影響で、自分のお財布に影響していない人の数のほうが絶対に多い。その人たちが緊急事態宣言をもっと長くしようとか、もっと早くすればよかったとか。そういう意見で世の中を動かしていっているなと思っていて。

でも、緊急事態宣言が1日延びるだけで大変な損害を被っている人たちの意見って、テレビではけっこう見たり聞いたりするんだけれども。でもやっぱり、自営業者は一部しかいないから、緊急事態宣言をしっかりやって「まずコロナを封じ込めましょうね」って意見が常に勝ってきている。

それが正しいか、正しくないかは、はっきり言ってわかりませんけど。でも、すごく大きな犠牲を払っていること。痛みを感じている人たちや、命を削っているような毎日を過ごしている人たちがいる。

これって忘れがちな気がするんですよね。命と経済と言うと、どうしても「命のほうが大事でしょ」ってなるんだけど。でも経済だって命だから。命と命、どっちが大事ということもなくて。

なので今回、政治が罰則を決めましたよね。刑事罰にはならないけれども、20時以降に営業していたら30万円罰金とか。そういうことにまで手を突っ込みはじめたことに、少し危機感を覚えています。

2021年はコロナが収束するにしろ、しないにしろ、本当に人の痛みをみんなで感じあえたらいいなと思います。

桑江:そのようなことを踏まえながら、デジタルコミュニケーションを消費者や社会と図ってもらえればな、というところで第三部の締めとさせていただければと思っております。御三方ともありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

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