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第二部 パネルディスカッション「炎上とフェイクニュースのこれから」(全5記事)

“原則オフレコ”のClubhouseでも起こりうる、炎上事案 「報道に値する」と認識すれば、報道機関は記事を出す

デジタル上で発生したクライシス(危機や重大なトラブル)を研究する日本初の研究機関、シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所。同研究所が、一年間の研究成果をまとめて発表する『デジタル・クライシス白書』の発行を記念して、オンラインイベント「デジタル・クライシスフォーラム」が開催されました。本記事では「第二部 パネルディスカッション『炎上とフェイクニュースのこれから』」の模様を公開します。

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信念を持ってやっているからこそ、対処がブレない

桑江令氏(以下、桑江):ではこの流れで、印象に残った事例についてお伺いさせてください。今、古田さんにおっしゃっていただいたので、山口さんの中で印象に残った2020年での事例などはありますか?

山口真一氏(以下、山口):それは炎上という文脈でですか?

桑江:そうですね、まずは炎上の文脈でお願いします。

山口:炎上ではないんですけども。炎上の中でもけっこう賛否両論あったというか。いろんな意見が出た事例として……これ、取り上げていいのかな(笑)。

「第1回 JDCアワード」を)辞退されたというお話を聞いたので取り上げにくいんですが、某アパレルメーカーさんの事例ですかね。私も非常に良い手だと感じていて「なんで先ほどの賞に入ってないんだよ」と思っていたら「辞退された」という背景があってですね(笑)。あれはすごく印象に残りましたね。

実はコメントにも書いていたんですけど、どう表現していいか……。伏せながらお話するのは難しいですね(笑)。まぁ事例として挙げる分には問題ないと思いますのでお話します。NIKEさんのCMについてですね。

アスリートの実体験をベースに、ああいう問題を提起したってことですよね。その一連の動画の内容。並びに決して暗い話で終わらずに、最後は希望を持たせるようなコンテンツ内容になっているんですね。

やっぱりコンテンツとしても、非常に優れていたと思います。また、あの後に批判するような人も世の中にはいたワケですが、その声が多少大きくなったとしても、まったく対処がブレなかった。「おそらくそういったコメントも付くだろう」と思っていたかもしれないですし。

もう1つ、やっぱり信念を持ってやられているからこそブレないんだろうな、って思ったんですよね。なのであの事例はすごく、ほかの企業にも参考になる点が多かったんじゃないかと思いまして。非常に印象に残ったし、素晴らしい取り組みだったなと感じております。

桑江:なるほど、ありがとうございます。

「ポジティブな声」と、ほぼ相関している「ネガティブな声」

古田大輔氏(以下、古田):今のお話、僕もまったく同感です。シエンプレさんのほうでも記事にされていましたけど、僕もあれが出てきた時に「これはすごい賛否を呼ぶなぁ」と思っていました。そして、このテーマを取り上げたのは本当にすごいことだなと思いました。

あれは間違いなく企画された方々、携わった方々全員が「賛否両論がすさまじいことになるな」ってわかってたはずなんですよね。わかった上であれをやった。

でもそれは別に炎上商法みたいなものとは違うワケです。いわゆる炎上商法ではなく、きちんとメッセージ性があり、山口先生もおっしゃったみたいに、最後には希望も抱かせるような内容を作り上げた。

そこで賛否がワーっと来たけれども、それに対する釈明をするわけでもない。修正もせず、そのまま淡々とコンテンツを示し続けたっていう。あの対応は、企業のあり方の1つとして非常に参考になる学びの場でもあったなと思います。

加えて、シエンプレさんが記事の中で公開されていたデータも非常におもしろいんですよね。コンテンツを出したあとに、バーッとポジティブな評価が増えて、それに伴ってネガティブなコメントも増えていく。それで一旦収まるんだけど、もう1回話題になる。

その時に「ポジティブなコメントの山」と「ネガティブなコメントの山」がほぼ相関してるんですよね。テーゼとアンチテーゼの関係みたいな感じで。あるポジティブな声が盛り上がると、ネガティブな人たちも一生懸命ネガティブなコメントを言って、それが対応している。

特にTwitter上の「分断されているけれども、それぞれの極にいる人たち」がお互いのことを気にしていて「賛成の声が増えてるなら俺たちも」みたいな感じですね。こういう状況が起きるというのは、非常に興味深いなと感じました。

桑江:なるほど。そして、その話に絡む事例で言えば「マルちゃん正麺」もそうですよね。ユーザーからの批判や、それをまとめた記事が出て、それに対してしっかりと対応して、撤回せずに主張して終わった形でしたので。

そういった毅然な対応を見極める中で、企業のポリシーをしっかり出していくところは、やはり2021年も重要になってくる気はしますよね。

古田:そうですね。そのためにすごく重要なのは「どういう反応が来るか」、きちんと想定しておくことだと思うんです。「『マルちゃん正麺』だったらこういう批判は来るよね」とか「『お母さん食堂』だったらこういう批判が来るよね」と。そういう時に、どういうメッセージを社内で持ってるのか。きちんと社内の中でコンセンサスがないと、対応は難しくなるだろうなと感じます。

桑江:そうですね。社内的な調整について、今日お越しのみなさまの中でも「大変苦労してるんだよ」という意見をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんね。

間違いなく出てくる、Clubhouse発の炎上事案

桑江:では炎上パートについて、あと1個だけ伺いたいのは、この1~2週間で一気に広がった「Clubhouse」を含めた「音声SNSのリスク」について少しだけ見解いただければと思います。

Clubhouseは使い方も手探りで、どうなっていくのか? というところはあるかと思うんですが。Clubhouse以外でも音声SNSという観点で、気になっている部分があれば、一言ずついただきたいと思っています。お二人はClubhouseを使っていらっしゃいますか?

古田:僕はClubhouse使っています。登壇といいますか、スピーカーに上げられて話をしたりとか。今度Clubhouse上でスピーカーになってイベントを開く予定もあります。

そして、炎上という文脈であの場を考えるとしたら、絶対、Clubhouse発の炎上事案は出てきます。間違いなく。「いや、あれは原則オフレコの場だから、そんなの記事にならないんじゃないの?」と思ってる方がいるとしたら、そんなことはないです。

例えば3日前ですかね。イーロン・マスクがClubhouseに出てきて、スピーカーになって話をしたことが話題になりました。そこでイーロン・マスクは、今アメリカで話題になってる『Robinhood』という投資アプリについて発言をしたんです。それに対して欧米のメディアは、こぞって記事にしてるんですね。「イーロンマスクがClubhouse上でRobinhoodの対応を批判した」というように。

なので発言っていうものは記事になるんですよ(笑)。「Off the record」って言っとけば本当にオフレコになるなんてないんですよね。もしその発言が本当に「報道に値するもの」という認識になれば、報道機関は記事にします。

なので、例えば差別的な発言をClubhouseの中でやってしまうと……。そして実際に、そういう事例はもう出てきてるんですよね。なので、音声内の発言が記事になってもおかしくない状況であることは、みなさん認識しておいたほうがいいと思います。

「一時的な音声は炎上しないか」といえば、そんなことはない

桑江:アカウントが紐付いてたり、アカウントが消せないとか、いろんな問題もあったりしますよね。気軽に話しているだけでも、それが自分の会社や所属先に紐づいて批判が来ることって、絶対にありますよね。そういった意味では、山口さんいかがですか?

山口:まさに古田さんのおっしゃってること、そのままだと思います。音声SNSということで、「(Instagramの)ストーリーズ」とかでも見られる現象なんですが「その場限りで話しているから、炎上しないんじゃないか?」と思われている方がけっこういるんですよね。

どっちがリスクがどっちが高いか? と言えば、もちろん文字で残り続けるほうがリスクは高いんですけども。じゃあ一時的な音声が炎上しないかといえば、そんなことはぜんぜんなくてですね。リスクがないなんて思うと、非常に大きな失敗をする可能性があると。

一般の方であったとしても録音するなんてことは今、簡単にできる話なので。そういったことで「証拠の音声もある」みたいなことで、炎上はおそらく今後起こります。

なので、そういったところを十分に気を付けた上で利用するべきですよね。先ほどおっしゃってました「オフレコはない」って言葉は、私も本当にそう思うところでして。

今日もGMOさんが「決算発表をClubhouse上でやる」みたいなことをおっしゃってましたけども。実際に行われたのか確認はしていませんが、今後、企業は音声SNSを活用していくと思うんですけども、そこにもしっかりとしたリスクがあるし、それが音声ということで新たなリスク出てくると思っています。なので、そういった実態をしっかり検証していくことも大事なのかなと考えています。

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