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内山崇×黒田有彩 「2021秋 宇宙飛行士選抜試験への挑戦!」(全9記事)

JAXA職員は一人ひとりに“宇宙開発広報”の使命がある? 内山崇氏が「宇宙飛行士挑戦 エバンジェリスト」になったワケ

昨年、新著『宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶』が刊行された、第5期JAXA宇宙飛行士選抜ファイナリスト/宇宙船「こうのとり」フライトディレクタの内山崇氏。2021年秋の第6期JAXA宇宙飛行士選抜試験の受験を本気で目指す、タレント黒田有彩氏。そんな両者のガチンコ対談「2021秋 宇宙飛行士選抜試験への挑戦!」の模様を公開します。

1つ前のパートはこちら

ようやく気持ちの整理がついた2日後に、次回選抜の発表が

黒田有彩氏(以下、黒田):では間髪入れずに、2部に行ってしまってよろしいでしょうか?

内山崇氏(以下、内山):行ってしまいましょう!

黒田:はい! それでは行きたいと思います。2020年10月23日に「13年ぶりに、2021年の秋に宇宙飛行士を募集をします」という発表がされました。ということで、この第6期宇宙飛行士選抜試験に向けてのお話を、残りの時間でお伺いしていきたいと思います。

まず内山さんは現在、noteでも「宇宙飛行士選抜試験について精力的に伝えること」をされている、と書かれています。そして“宇宙飛行士挑戦エバンジェリスト活動”という、ある意味、肩書きを付けられて活動をされているわけなんですけれども、これはまず、どういうきっかけだったのでしょうか。

内山:そうですね。宇宙飛行士挑戦エバンジェリスト活動。これは一応、キャッチフレーズ的に付けようと思って、自分で付けたんですけど。いろいろな気持ちの整理も含めて、書籍の執筆でまとめて出そうというのが、1つ目のプロジェクトだったんですけど。

宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶 (SB新書)

(著書の原稿を)ほぼ書き終えて、後書きを書き終えた2日後に、(第6期募集の)発表があったわけですよ。

文部科学省とJAXAから「来年秋に」と。「お!?」と思いまして。気持ちの整理が「よし! 完全についた!」という矢先にこの話が来たんですけど。

発表を聞いて「ワクワクはしたけど、緊張はなかった」

内山:ただやっぱり、(発表があった2020年から見て)12年前に10年ぶりに募集があった時の「募集があります」と聞いた時の気持ちと今回では、やっぱり明らかに違ったんですよね。今回、ワクワクはしたんですけど、緊張はしなかったんですよ。

前回の12年前は、やっぱり緊張したんですよね。「いよいよ来た」と。もともと「絶対に受けよう」と思っていたものが、いよいよ来たと。ただなかなか来ないので、ある種、半分は忘れて半分は自分的には怠けているような状態だったんですけど。それが、いきなり目の前に来るわけじゃないですか。「来月から募集を開始します!」みたいな。そこである種、やっぱり緊張するわけですよ。「いよいよ来た」と。

それで自分が挑戦する上で自分の準備が整っているのか? というところで「いやいや、ちょっとがんばらないといけないな」と思い直した時に、緊張が走ったんですよね。でも今回は(そういう緊張が)なくて。そういう意味では、整理がついたのかなとは思ったんです。

僕の前回の経験を、ちゃんと書籍にまとめたわけですよ。いろいろ振り返って思い出すこともあったし、新たな発見というのもあった中で、やっぱりそういうのを伝えていきたいなと思ったんですよね。次世代の方を応援したいと。自分が挑戦する時に、いろいろと情報がなく、一体ゴールがどこにあるかもわからないままチャレンジして、運良くファイナリストまでは行きました、と。

試験を全部知る機会が幸運にもあったといった中で、かつそこでNHKさんのメディアが入ってけっこう情報がオープンになってきたという中で「自分としてできることは、けっこうあるよな」と思って。その次の世代の人たちを応援したいというのが、きっかけですね。本の執筆も終わって、しばらく我慢していたゴルフとかもやりたいなと思っていたんですけど。急遽プラス1年、もうちょっとやってみようかなと。今しかできないよねと思って、宇宙飛行士挑戦エバンジェリスト活動を開始しました。

JAXA職員の一人ひとりが持つ“宇宙開発広報”の使命

黒田:すごい。それもJAXAのお仕事と並行してやられているという。

内山:そうですね。ぜんぜん本職とは別でやっています。

黒田:今日もお昼に、別のオンラインの対談をされていて、すごくおもしろかったです。

内山:ありがとうございます。

黒田:すごく精力的に活動されていますね。

内山:ちなみにJAXAは「一人ひとりが(宇宙開発の)広報のつもりで、しっかりと日本の宇宙活動を国民のみなさまに伝えていく」という使命を持っているんですよ。僕は(エバンジェリスト活動も)その1つだと思っていて。自分としてやれることは、その宇宙飛行士選抜に挑戦したこともそうだし「こうのとり」のフライトディレクタとしてやってきたこともそうだし。自分にできることはけっこうあるんじゃないかなと思っていて、その活動の一環で運良くタイミングがピタッと合ったという。

黒田:すばらしすぎるタイミングですよね(笑)。

内山:そこはもう本当に「(第6期選抜があることを)お前、知ってたんじゃないか?」と言われるんですけど、本当に知らなくて、たまたまなんですけど。ちょうど本を書き上げたタイミングでの発表というのもあって。「この活動をやれ」ということだろうなというのも思いまして、やっています。

黒田:じゃあ誰に言われるでもなく、内山さん自身の熱意で活動されているということなんですね。

内山:そうですね。

宇宙飛行士を“選択肢のひとつ”として、人生設計しやすくなる

黒田:すごいです。今回は10月末に発表があり「来年秋から選抜開始」という言い方がされていますけど、1年ぐらい準備期間があるというのは、前代未聞のことですよね。2008年の時が「募集します」という発表から具体的な募集要項が出るまで、だいたい1ヶ月ぐらいで。過去には、5日前とか1日前とかもあったそうですね。

内山:そうなんですよ。(2008年のときは)直前に出て、しかも10年ぶりなのに1ヶ月前はなかなかですよね。

黒田:そうですよね。

内山:久しぶりに連絡してきて「今夜、飯行くぞ!」みたいな。それぐらいのノリでしたね。今回の準備期間は1年で、さらに「今後は5年程度おきに継続して(募集がある)」ということまで発表されたというのは、本当にうらやましい限りですね。めちゃくちゃいいですよね。当然、やっぱり夢とするには、ある程度は人生設計の中で計画的に受験したいじゃないですか。

狭き門なので、なかなか「なりたい!」と思ってなれるものじゃないんですけど。僕が学生の時は、ちょうど“宇宙飛行士選抜試験バブル”というか。3、4年に1回あったんですよ。大学生になったぐらいかな? そこで「社会人になって1回目は練習でやろう」と。「その次が本番」くらいのつもりで受けようと思っていたんですよね。

そう思えるような試験間隔で来ていて、NASAとかは定期的に4年おきとかでやっていたんですが。いろいろな事情もあって間が空いてしまう期間に入ってしまったんですけど、それをもう一度「定期的なものに戻そう」と。かつ、ある程度は前広にやりますよというアナウンスをすることで、今、学生の方とかも含めて「将来、この時期にこの試験を受けるためにがんばって資格を取る」とか「こういう仕事をしていこう」みたいな計画が立てやすいですよね。

そうすると計画的に宇宙飛行士も夢の1つ、選択肢の1つとして人生設計ができるという、非常に大きいことだと思って。これはすばらしいし、すごいうらやましいと思っています。

前回のファイナリストなら「試験まであと1年」を、どう準備する?

黒田:逆にこの1年という期間の中で、優先順位を付けて自分でマネジメントをしながら、何をしていけばいいんだろう? というところも宇宙飛行士の能力の1つだと思うんです。内山さんなら「これをする」というものを、教えていただけますか?

内山:そうですね。最近のNASAの試験はわりと定期的に行われていて、選ばれている人のバックグラウンドなんかが公表されているんですよね。そういうのを見ると、非常にマルチなタレントの人が多くて。学位もいくつか持っているとか、修士だったりドクターだったりを違う分野で持っていたり。

さらに「軍でパイロットをしていました」とか、そういうマルチな人たちがズラッと並んでいるんですね。やっぱりそこが、宇宙飛行士の能力的に求められていることと合致していると、僕は思っていて。それが「結果的にそうなっている」というのと「宇宙飛行士を目指されている方が『そういう要素が必要だ』と思ってマルチな能力を持つように努力して、その結果として選ばれている」というのがあると思うんですけど。そこを目指すというのが、宇宙飛行士として必要な能力に一番近づける道だろうなと思うんですね。

なので僕の場合は、宇宙工学というのを勉強して、エンジニアリングの分野にいるんですけど。足りないのはそういうオペレーションスキルの中でも、パイロット的な航空機の操縦能力とかそういうところなので。何かしら、それに近い部分を武器として持っておけると強くなるんじゃないかなと、思うんですよね。

“空を飛ぶ者”として、必要な能力を磨いておく

内山:1年という期間を考えると……。その次回の選抜も考えると、6年ぐらいあるわけですよね。その中で計画的に少しその能力を、例えばセスナ機のパイロット免許を取るとか。グライダーとかでもいいかもしれないですよね。いくつか“空を飛ぶ者”として必要な能力を磨いておくという意味での、何か免許を取るみたいなものは、1つ大きな武器になるんじゃないかなとは思いますね。

黒田:私も、もうすでに内山さんからアドバイスをいろいろいただいておりまして。私はまだ免許を持っていないというところで、内山さんから「運転免許は取っておいたほうがいい」と教えていただきました。

内山:自動車の運転免許ですね、はい。

黒田:まずは自動車です(笑)。私も近々、合宿に行きます。マニュアルも同時に取りたかったんですけど、日程的に無理だとなってしまった時に「オートマ限定でも大丈夫だと思いますか? 内山さん」という質問にも答えていただいたりとか(笑)。

内山:車の免許はたぶんアレなんですよね。どちらかというと「生活できるかどうか?」みたいな部分もあって。海外、特にヒューストンを本拠地としてしばらく過ごさないといけない時に、たぶん車がないと生きていけないんですよね。というところが、たぶん1つあると思います。

黒田:2008年の時は「選ばれてから生活を始めるまでに、免許を取得しておいてね」という、ふんわりとした書き方でしたけれど、今回は1年間の準備期間がある中で「取ってないんだ?」となりそうですよね。

内山:そうなるよりは、あらかじめ(取っておいた方がいい)ですね。

“敵を知る”という意味で、選抜試験を分析しておくことが大事

黒田:はい。今、noteでも内山さんは「選抜試験について知っておくことも大事だ」と書かれていますよね。

内山:やっぱりそうですよね。「宇宙飛行士とは何か?」というのはもちろんそうですけど、その資質を見抜くために「一体、JAXAがどういう考えの基に、どういう試験項目を組んで、どういうプロセスをで選んでいくのか?」というところで“敵を知る”という意味では、しっかりと押さえておくべきだと思うんですよね。

そうすると具体的に「じゃあ何が求められて、何が必要になるのか?」というのが見えてくると思うし、その試験を受けながら「こういうところを見ようとしているんだな」というところがわかった上で臨めるというのは、非常に大きなアドバンテージだと思うんですよね。僕の時はわりとわからないことが多くて。そういう中でも、少し情報を本で書かれている方もいたりしたので、得られる情報は得ようと思っていたんですけど。

その中で手探りで受けていたという中で、今はある程度の情報が出ている。分析も可能であるというところでは、徹底的に分析をしておいたほうがいいだろうと思いますね。

黒田:そうですよね。まず内山さんの本を読めば。

内山:そうですね。

(一同笑)

内山:(試験の)流れはよくわかると思います。また、僕はこの本の中ではけっこう内面を出してますし「どういう気持ちで受けていました」という話とか、あとは「仲間の人たちがどういう気持ちで臨んでいて、ダメだった時にどういう言葉をかけてくれたのか」とか「自分としては、どういう気持ちになったのか」みたいなところも、けっこう深く書いていますね。

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