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Why Is Autumn More Vivid in New England?(全1記事)

謎と矛盾に満ち溢れた「落葉樹が秋に紅葉する理由」

秋になると各地で見られるようになる、紅葉。鮮やかなオレンジ色に染まった木々を見ていると「綺麗だな」と見惚れる一方で「あぁ、これから冬がやってくるんだな……」と、ちょっと寂しげな気持ちになったりもします。そんな落葉樹の特徴「紅葉」ですが、いったいなぜ彼ら(彼女ら?)は秋に葉を染めるのでしょうか? 実はその理由は、科学が発展した現代においてもハッキリとは判明していないのです。それどころか、そこには謎と矛盾が満ち溢れていたのでした。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では「落葉樹が紅葉する理由」についての、2つの仮説について解説します。

なぜ落葉樹は秋に紅葉する?

マイケル・アランダ氏:アメリカ北東部では秋になると、落葉樹が見事な黄色、オレンジ、紅に変化します。

一方ヨーロッパでは、燃えるようなオレンジや紅の葉はあまり見られず、秋はより黄色味を帯びています。

ところで、その理由は実はよくわかっていないのです。これは何世紀もの間、植物学者を悩ませてきた疑問でした。そもそも、赤く紅葉するようになった理由すらわかっていないのです。もっとも見事な秋の紅葉を堪能できるのは、世界の中でもごく一部である理由について、主な仮説は2つあります。

落葉樹は、体力を温存し、厳しい冬の気候を生き抜くために葉を落とします。しかし、葉を落とす前の数週間の間、樹は葉から養分を再吸収します。葉に蓄えられた養分をただ廃棄するには惜しいためです。

この工程の一部には、葉が緑色に見える色素である、クロロフィルの分解が含まれます。徐々に緑色が消えると、黄色とオレンジ色の中間くらいの色をしたキサントフィルが残ります。この黄色い色素は当初からあったものですが、単に緑色に隠れて見えなかっただけなのです。

ところで、いくつかの樹の種類は、これと同時に新たな色素を生成します。オレンジや赤、紫色のアントシアニンです。その理由はわかっていません。葉を捨ててしまうのであれば、なぜわざわざ赤くするためにエネルギーを使うのでしょうか。

これらの色素は、北アメリカ、アジアの一部、南アメリカなどを原産とする樹によく見られます。さて、ここで明確にしておくべきことは、これは遺伝上の特徴であることです。ある特定の種であれば、どこで生育しようと秋には同じ色を発色します。さらに注意が必要なのは、赤く紅葉する在来種は、北アメリカとヨーロッパ一帯で似たように見られますが、中でも色鮮やかな種は、北アメリカのほうがより豊富に見られることです。

謎なのは、一部の種だけが赤くなる理由です。

仮説その1「光防御のため」

仮説その1は「光防御のため」としています。赤い色素が、日焼け止めのような役割を果たし、光によるダメージから葉を守っているというのです。まず、クロロフィルの通常の働きは、日光の光子を吸収することです。そのエネルギーを摂取して植物の栄養を生成するのです。

しかしクロロフィルが劣化すると、エネルギーを持った光子は取り残され、葉の細胞内部で活動を続けます。これは放置されれば、貴重な栄養素を回収するのに必要な酵素を破壊する危険性があります。

赤い色素は、残された光子を吸収してダメージを軽減することに長けているのです。さらに、低温下では性能が上がります。つまりこの仮説では、赤い色素は、落葉する前の限られた枠内で、樹木が養分をより効率的に吸収する助けになるのです。

さて、2019年に実施されたある研究によりますと、ヨーロッパに比べ、北アメリカの秋は日光が強い条件下にあり、急激な寒波が来る傾向があることがわかりました。

また、アメリカ北東部では、樹木が生育できる季節は短いものです。そのため、だんだん気温が低下する中でも日光が強いままであれば、少しでも多くの養分を吸収できる赤い色素のおかげで、樹木には進化上の利益があったのかもしれません。

ヨーロッパにおいては、このような進化上の圧力は少なかったため、葉は黄色に変色するままに留まりました。

問題なのは、その科学的根拠がまちまちであることです。確かに、天気が良く気温が低いと、樹木は反応して赤い色素の生成を増加します。しかし、日光と気温が原因という説は、日光の照射がそれほど強烈ではない日本でも、彩り豊かな紅葉が見られることを説明できません。そして日光の照射が強いはずのアメリカ西部では、あまり紅葉は見られないのです。

さらに、低温の晴天が続くと葉が赤く発色するとしても、低温の晴天という条件に対して、赤い発色が役に立つわけではありません。仮説その2の支持者が唱える(仮説その1への)反対意見は、以上のようなものです。

仮説その2「警戒色の状態にある」

仮説その2によりますと、赤は「警戒色」もしくは「警告色」の様態だというのです。この説は、植物は色彩を使ってシグナルを示すという考えを元に作られました。赤い葉は、遠からず葉がなくなることや、樹木が身を守ろうとしていることを昆虫に向けて発する警告ではないかというのです。

複数の研究によりますと、昆虫は緑の葉を好んで食べる上、発育も緑の葉を食べるほうが良好です。さらに、赤く紅葉するよう進化した樹木のほうが、年間を通して害虫に対し耐性があるという証拠も出ていますが、これにはすべての専門家が賛同しているわけではありません。

まず、この説への大きな疑問は、それではなぜニューイングランド地方の樹木は、他よりも昆虫に対する警告の必要性が高いのかという点です。

これは、植物史上の問題だと考える者もいます。もともと、ヨーロッパにも赤く紅葉する樹木はありましたが、氷河期に地理的に隔絶されていたことが原因で、赤く紅葉する種は絶滅してしまったのではないかというのです。

北アメリカでは、山脈は北から南へと続いています。氷床が北から南下すると共に、樹木は温暖な気候を求め南へと広がることができました。

しかし、ヨーロッパの樹木にはこれは不可能でした。南下しようにも、氷床に覆われ東西に走るアルプス山脈に、道を阻まれていたからです。

そのため、赤く紅葉する樹木は、ほとんどが絶滅してしまったのかもしれません。同時期、同じ理由から、害虫である昆虫も絶滅してしまったのかもしれません。そのため、ヨーロッパの樹木には、警告を発する必要性はそれほど高くはなかったのではないでしょうか。

この「警告仮説」は、実証実験が困難な部分があります。たとえば、樹木に赤く紅葉するように促した虫が絶滅してしまったのであれば、色に対する虫の嗜好を実証することができません。

いずれの仮説が正しいかを検証したり、まったく異なる要因があるのかを調べたりするには、最終的には実験データが必要なのです。しかも、いずれかの説が一つだけ正しいとは限りません。どちらの説も、なんらかの役割を果たしているのかもしれません。

しかも考慮すべきなのは、これらの研究のほとんどが北半球でなされているということです。世界の他の場所を調べることにより、わかることがあるかもしれません。もっと科学的根拠が集まってくるまでは、まずはゆっくりとこのショウを楽しもうではありませんか。

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