2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
How Does a Box-Shaped Fish Swim(全1記事)
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マイケル・アランダ氏:「魚」と聞いて思い浮かべるのは、なめらかな流線型が水を切るように泳ぐ姿でしょう。しかし、流線型とは程遠い体形の魚がいるのです。
カラフルな箱にヒレをつけたような魚、ハコフグです。魚にしては、非常に効率の悪い形に思えますが、実は驚くべき性能を備えているのです。
通常、魚は抵抗する力、つまり抗力をあまり受けないように水中を泳ぐ必要があります。泳ぐエネルギーの浪費を防ぎ、外敵から迅速に逃れるためです。
ところが、ハコフグは箱型の硬い骨格を持っており、見た目どおりの大きな抗力を受けてしまいます。ところが不思議なことに、このような姿にも関わらず、フグはのろまでも不器用でもありません。いとも巧みに外敵の攻撃をかわします。その点が、研究者たちの注目を集めました。
2002年、ある研究チームが3Dプリンターで作ったハコフグのモデルを使い、ハコフグの体の周囲の水流を調べました。チームは最初は、ハコフグの体の角部の傍に生じる、小さな水渦に着目しました。渦があると、進路変更の際には抵抗が起こります。そこで研究チームは、この渦は、魚が姿勢を維持するための自動修正メカニズムだと考えました。これは、進化がもたらしたすばらしい機能のように見えました。
箱型の生き物が、安定性と敏捷性を兼ね備えていることに興味を覚えたのは、研究者たちだけではありません。1990年代、メルセデスベンツのエンジニアたちは、なんとハコフグをモデルにしたコンセプトカーを開発しました。
さて、ここで問題となるのは、研究者たちが一つの重大なディテールを見落としていたことです。
仮に渦が魚に影響を与えているのであれば、安定しすぎて外敵から逃れる急なターンをしづらいはずですが、明らかにそうではないのです。ハコフグを観察していると、急に身をかわしたり、サンゴ礁の中に突進して身を隠すといった動きを、難なくこなします。
後日、研究者たちは、他の力に比べても、渦はとりたてて強い力を及ぼしているわけではないことが明らかになりました。事実、フグは安定性が高いのではなく、非常に不安定であることがわかったのです。ふらふらと揺れますし、簡単にひっくり返ってしまいます。しかし、フグの高い機動力は、まさにそのおかげであることがわかってきました。
ハコフグは、移動する際には大忙しです。水流の中で姿勢を維持するために、めまぐるしくヒレを動かさなくてはなりません。ところが、クイックターンをする際には適切な方向のヒレでひとかきするだけで済みますし、簡単にひっくり返ることのできる体は、コンパクトな回転をこなします。
外敵が現れれば、このぶかっこうな魚は、どんなに敏捷で快速の魚でも敵わないほど、いとも簡単に反対方向に逃れます。
とはいえ、ハコフグは決して俊敏な泳ぎ手ではありません。ハコフグの受ける抗力は、他の魚のそれの倍近くあります。泳ぐ箱がそんなに速く泳げるはずはありませんよね。そもそも、ハコフグには距離を泳ぐ必要はありません。サンゴ礁の周辺を、うろうろする程度なのです。そのため、速さを失った代わりに得た高い機動力には、十分に価値があります。
悲しいことに、ハコフグがメルセデスベンツの次世代をインスパイアするチャンスは、二度と来ることは無いでしょう。抵抗が大きくて簡単にひっくり返ってしまうのであれば、未来の車とは言えないからです。
しかし、ハコフグに視線を注ぎ続けるエンジニアもいます。高い操作性が要求される水中ロボットや飛行機などは、ハコフグを参考にすることにより、得られるものがあるかもしれません。
のんびりと泳ぐフグですが、ひょっとしたら、未来のテクノロジーを変える力があるのかもしれませんね。
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