2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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尾原和啓氏(以下、尾原):でも、さっきの話の中でちょっとヒントになるなと思ったのが、やっぱり想定外って怖いじゃないですか。やっぱりスナックに行く怖さって何かっていうと、ボッタクられるんじゃなかろうかとか、変な人が現れて連れ去られるんじゃなかろうかみたいな。
要は怖さって2つあって「やったことがないことをやる怖さ」と「やったことがないところに行くと、生命の危機になるんじゃないかみたいな怖さ」の、2種類あって。
大事なことって、後者の怖さはないんだけれども前者の怖さだけがある空間みたいなのが、想定外では安心で。ある意味、なんというかサプライズと呼ばれる「ザ・リッツ・カールトンはなぜ人を呼ぶのか?」とか「ディズニーランドはなぜ?」というと、そういう生命の危機はないんだけれども、想定外の喜びがあるみたいな空間だし。
ある種、ULTRAというのも、想定外の大きい塊みたいな。でもそこで別に命を奪われるわけじゃないし。ああいう場所に行くと、なんか暴力を振るわれるんじゃないか? というのはまったくないし。
生命的な安心性と、その想定外な、いい感じの怖さのミックスみたいなところを、小橋さんはもしかして設計されてきているのかな? と思ったんですよね。
小橋賢児氏(以下、小橋):まさにやっぱりこう日々……。特に日本人って本音を言ったりとか、感情をあらわにしたり、苦手じゃないですか。日常的に。
尾原:そうですね。はい。
小橋:でもああいうフェスみたいな、10万人とかが「わーっ!」ている圧倒的な場所に行くと、普段はおとなしかった人も気づいたらすごく我を忘れて踊っているとか、気づいたら泣いていたみたいな。
かくいう僕も、27のときに休業してアメリカに語学留学したときに。友達とアメリカを、車で横断したんですよ。そのゴールがたまたまマイアミで、路上で偶然にも友達のDJに会って。導かれるように紹介されて行ったのが、ULTRA MUSIC FESTIVAL。
当時、僕はもう1回人生をやり直すぐらい、自分探しをしていた。でも、そのときに「うわーなんだ!? すごい! こんな世界があるんだ」って、世界中の人たちが音楽という共通言語でつながっている。でもそこに来ている人たちはふと我に返ると、自分もそうだったんですけど、自分探しをして不安な自分。リストラに遭った人がいるかもしれないし、ある人は失恋した人かもしれない。
尾原:そうだ、そうだ。
小橋:でもそこで変化するわけですよね。なんか一心に、我を忘れて、頭で考えることを忘れて……。
尾原:確かに。
小橋:踊ることによって、そこで確かにふと自分の内側の小さな気づきとかが、生まれてくるんだと思うんですよ。
小橋:でもそういう我を忘れるような体験というのが、今はあまりにもないじゃないですか。インターネットや情報によって、思考が忙しすぎて。
尾原:いろんな外の物ばっかりが見えちゃって。
小橋:1分間、目をつぶって瞑想するとわかると思うんですけど、思考というのは過去や未来をうろうろ移ろって、人間の心の癖として、嫌なもんには反発し、嫌悪し、心地よいものには執着し。
尾原:どうしても執着する。
小橋:そうやって移ろって忙しい状態。この今この瞬間にいることというのは、とても難しくなっていって。それを強制的に、ある意味で本当に飛ばすというか、思考をなくす。
僕はWell-beingとかフローとか、自分もいろんなことを体験しているんですけど。何をしているかというと、さっきの恐怖の山登りを一生懸命やるということよりも、その瞬間に集中していくんで思考が止まるんですよね。瞑想もそうですけど。
尾原:だってもう、それをすることだけに脳がいっぱいになりますからね。生命の危機の、クライミングとかをやっていると。そうですね。
小橋:そう、クライミングとかそうじゃないですか。たぶんフェスとかも一心にやっているときに「今日の晩ご飯、何にしよう?」って思いながら踊らないじゃないですか。
尾原:考えるやつはいないですね(笑)。
小橋:そうやって、世の中でふだん持っている不安とか、過去と結びつけて未来へ飛ぶというような移ろいが、この瞬間、フォーカスしているときになくなるじゃないですか。
なんかその経験というのが、僕はこうフェスと……。フェス体験もそうだし、もちろん瞑想もそうだし、山登りもするしサーフィンもするんですけど。その体験にあるんですね。
旅しているときもそうじゃないですか。ちょっとこう、不安だったり、好奇心。その瞬間に、余計な思考が飛ぶんですよ。そういうときに自己変容というか、本当の自分につながるようなきっかけが生まれてくるんで。
やっぱりこういうものっていうのは常に、たぶん自分の中で意識しているというのがあると思います。
尾原:これ、今のお話を聞いて思い出したのが、共通の友人に水口哲也さんという、本当にすばらしいゲームクリエイターの方がいて。
彼が『テトリス・エフェクト』というゲームを出したとき、いろんな事例を探している中で、彼と話していた話があって。
ゲームの良さって何かという中に、東日本大震災のときにお父様を亡くされたりとか、心が傷つくお子さんみたいな人たちがいっぱいいて。
その人たちの中で、あまりPTSDとかにならなかった子ども。傷ついて、それがトラウマになってしんどくなる人とならない人というのがいて。その違いは何かみたいな話をしたときに、実はゲームを与えられた人たちのほうがトラウマ・PTSDにならなかったという話があって。
これが何かというと、実は人間というのは、起こった時点で傷つくのではなく「あのとき私がもうちょっとなにかをしていたら助けられたかもしれない」「あのとき、最後に……。ああいうふうに別れちゃった」みたいなことが、ずっと心を捉えて離さなくて。
それをどうしても脳みそが反芻してしまうから、その中でどんどん自分が閉じこもって小さくなってしまっていくみたいなものがあって。
それが実は、外から見ると不謹慎に見えるかもしれないけど、夢中になってしまうようなゲームを置かれると、そのゲームをやっている瞬間は、それから離れることができるんですよね。ゲームをやっていると、それが止まるから。止まるということで傷つかないし。
でももっと大事なことは、止まったという自分がいるということと、止まったという自分を許せることということが、すごく実は大事だみたいなことがわかってきていて。
実際、水口さんの『テトリス・エフェクト』というのをやっていると、他のことを考える余裕がないぐらい、世界が同じトーンのリズムに包まれて。しかもテトリスって、むちゃくちゃアホみたいに脳みそのCPUを使うから。もう集中して、しかもそれが全部きれいな世界と音とで全部包まれると、他のことを考えられなくなるんですよね。
だから僕は最近は、マインドフルネスや瞑想の代わりに『テトリス・エフェクト』を10分やるというほうが、実は瞑想効果が高いっていうのがあって(笑)。
小橋:でもあの『テトリス・エフェクト』自体は、本当に「テトリス瞑想」ぐらいな感じで。
尾原:そう、そう。言ってもね。「テトリスマインドフルネス」って言ってもいいぐらい。でも今思ったのが、結局『テトリス・エフェクト』って、VRのおかげでたった3分間で他の心の動きが止まるぐらいのことに集中する「忘我の経験」をさせてくれるという話で。
尾原:さっき小橋さんがULTRAとかのお話をされたときにいいなと思ったのが、結局、フェスに行く人たちだったり旅に出る人たちって、やっぱりなにかのhave toにまみれて、ちょっと心が狭くなったり、心が寂しくなったときに、それを回復したいなっていってフェスに行く人たちって、たぶん多いはずで。
その弱さを持っているが故に、解放されたとき、セカンドIDであるもう一人の自分に会える自分になれているという。その空間設計って優しくていいですよね。
小橋:僕はそのULTRAを日本にローンチしたときに、どういう人たちにアプローチ……。いったら「若い人たちを集めたかったんですか?」とか、逆に「今までダンスミュージックの人口なんか2万人ぐらいしかいないと言われていたのに、どうやって集めたんですか?」とか。僕は自分自身もそうだったんですけれど、やっぱりどこか心の奥底で「やっぱり変わりたい」と思っている人って、すごくいっぱいいるなって。
その人たちに目の前の小さな奇跡を見せることで、自分自身が変わっていく「気づきのきっかけ」になればいいなと、すごく思っていた部分があったんですね。でも今はたぶん時代が変わって、コロナ禍になるとああいうフェスみたいなものって……。
尾原:そうですね。今度はできないじゃないですか。
小橋:僕、でもね。こんなこと言ったらすごく不謹慎だと思うんですけど、めちゃくちゃチャンスだと思っていて。
これだけ大きな時代の変化にいられるということは、いわゆる日本というか、自分の場所にいながら世界を一周しているような感覚で。
尾原:おっしゃるとおりですね。
小橋:なんか旅している間って、好奇心もあるけれどもいろんな不安もあるじゃないですか。知らない異国の土地で襲われたらどうしよう、だまされたらどうしようとか。電車も予定通りに来なかったり、道がわかんなくなるとか。いろんな不安があるんですけれども。
今、このコロナ禍って本当にめまぐるしく毎日いろんな変化が起きているんで、不安もいっぱいあるんですけど。でもこの不安自体をどう捉えるかによって、ものすごく自己変容していける、日本にいながら世界一周していけるような。
尾原:そうですよね。確かに。
小橋:ものすごく変わっていけるチャンスだなと思っていて。だから本当に、今このコロナが起きたことによって、たぶん自分がしていた行動というのをないがしろにしないほうがいいなと思って。
小橋:最近、25歳未満の無料トークイベントをやっているんですけれども。
尾原:へー、いいですね。
小橋:みんな「何者かになろう」と思ってくるじゃないですか。
尾原:くるわけじゃないですかが、もうまんまんですよね。もうなんだったら小橋さんとつながって、なんか新しいイベントをやれるかもしれないぐらいの気持ちで来ますよね。
小橋:でも「なんかコロナなんで仕方ないんです、今、家にいなきゃしょうがないんですよ」とか「コロナなんで」とかで、不安って言っているんですけれども。
でも逆にコロナがあったことによって、今あなたは1人で自分で行動して、この無料イベントに来て発言しているんだよって。この奇跡に気づかなきゃいけないっていう。
尾原:そうですね。後ろ向いたら、こんなに歩いてるじゃん、君は、と。
小橋:そのことによって、自分が変わっていくかもしれないわけで。
尾原:確かに。
小橋:本当に自分に都合のいいことばかりやってきちゃって。大きなことが奇跡だと思って、目の前の小さな奇跡に気づかないというか。
尾原:もったいないですね。
小橋:これが起きたことによって出会えた人、これが起きたことによって、知ったこと。スティーブジョブズも言っていましたけど、“Connecting the dots”。
尾原:“Connecting the dots”ですね。
小橋:この小さなdotsに気づいていくということが、本当に……。まさに数字からおりるっていうのって、数字ってまあ宇宙の共通語かもしれないですけれども、ある意味で、良くも悪くも過去のデータに縛られるという。
尾原:ああ、そうですね。どうしても、そうですね。過去の栄光を追いかけたくなる。未来の数字ってあんまりないですからね。
小橋:やっぱり本当の自分というか、変化していく自分って、本当は目の前の小さな奇跡をどう捉えていくかだと思うんですよね。
尾原:うん。そうですよね。だからその点、さっき「小さな想定外を作るといいですよ」みたいな話をいろいろ言っていましたけど。まさにコロナによって、毎日想定外が起こるようになってしまっていて。それの被害者になるのではなく、その想定外の中でなにか動いていたら、後ろを向けば、実は気づいたら遠くまで来られていて。しかもその想定外の中で、当然これはアウェーを受け入れなきゃいけないから。
そうすると、新しい自分のきっかけみたいなものにつながっていくかもしれないという。めちゃめちゃいい話をありがとうございました。今日は、もうあっという間の1時間で、本当にありがとうございました。
小橋:でも、1番は本当に尾原さんの本で、本当にドンズバっていうか。これからの時代に本当に大事な「利他」という、何者かになるんじゃなくて「誰かの何者かになる」というのは、本当に今一番必要だし。
僕は、21世紀って心の時代だって思っているんですね。20世紀は物質文明で、経済とか物質が優先されていった中で、情報がこれだけあって、みんな疲れていった中で、やっぱり改めて心というかハートがすごく大事だよねって思ったときに……。
やっぱり、一見自分にとって生産性があるとかないってことじゃなくて、やっぱりギブしたことによって、自分が本当に心が気持ちよくなっていくことを、やっぱり知っていく。そうすると必ず出会いが、見えないところでやってくるじゃないですか。
尾原:そうなんです、そうなんです。どこかでつながってくるんですよね。そうなんです。
小橋:これがわかっていくと、なんかそのギブして直接……。尾原さんが毎日20人ぐらいに……。
尾原:ああ、20人ぐらいにメールしてますね。今でも(笑)。はい。
小橋:そんな、必要と思われるような情報を送ったりとか。
尾原:ずっと。はい。
小橋:でもその人になにか……。ギブアンドテイクってみんな勘違いするけど、ギブアンドテイクってもともとテイクありのギブじゃないですか。
尾原:そうですね。ぐるーっと回って、情けは人のためならずを、己のためというのを、ぐるーっと回って己に戻ってくるからですかね。
小橋:なんかそこを急がば回れじゃないですけど、ペイフォワードみたいにやっていくと、本当にこの星というのは、愛と奇跡で循環した星になるんじゃないのかなって。
尾原:そうですね。
小橋:僕は希望を捨ててなくて……。
尾原:でも、今日ずっと対談していていいなと思うのが、やっぱり小橋さんが人になにかをギブする話だったり、なにかを人に提供する場を作るときの表情が、やっぱり本当に腹の底から笑顔で話しているというのが(いいと思う)。
たぶんそういうことを、そのさっきの25歳以下の若者とかが触れると「ああ、やっぱこういう笑顔に俺もなりたいなと」か、やっぱり「こういう笑顔に人もしたいな」って。なんかそういう笑顔の連鎖が起きる気がしていて。
そういう外れた生き方が起こればいいな、と思いました。今日は本当にお忙しい中、ありがとうございます。
小橋:すみません。とんでもないです。ありがとうございました。
尾原:もう、最後、本当に興味を持った方がいらっしゃったら、ぜひこの『セカンドID』
も一緒に読んでいただければということでございます。本当に今日はお時間ありがとうございました。
小橋:どうもありがとうございました。
尾原:ありがとうございます。
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