2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
Instant Fish Just Add Water Salamanderfish(全1記事)
リンクをコピー
記事をブックマーク
マイケル・アランダ氏:オーストラリア南西部を訪れる機会があれば、一見何もなさそうな泥に水を注いでみてください。小さな魚がたくさん、水たまりの中に現れるかもしれません。
サラマンダーフィッシュは、長い胴を持つ小さな魚で、オーストラリア南西部の泥炭の干潟に、一時期だけ現れる池の中だけで見つかります。
1月から5月下旬にかけての夏期、サラマンダーフィッシュが生息する池は消えてしまいます。しかし、1989年に発表された2人の魚類学者の論文によりますと、この驚くべき小さな魚は、そんなことは歯牙にもかけません。
2人は、ほとんど知られていないサラマンダーフィッシュを研究するために、22か所の池をモニターしていました。水面位が徐々に低下していく様子を、底があらわになるまで観察し続けましたが、乾いた砂底に魚の姿は見られず、2人は当惑してしまいました。
そこで、さらに底を掘ってみると、地下水面の砂層に、生きたサラマンダーフィッシュが見つかったのです。2人は、ここであるアイデアを思いつきました。消防車を使って、2千リットルもの水を注ぎ入れ、人工的に水たまりを作ってみたのです。
すると数分以内には、サラマンダーフィッシュが泳ぎ回っていたのです! 文字通りの「インスタントフィッシュ」ですね。水を加えるだけでできあがりです。
その後、研究者たちは砂地の地下60センチメートルもの深部でも、サラマンダーフィッシュを発見しました。体長がわずか数センチメートルであることを考えると、サラマンダーフィッシュにしてみれば、ずいぶん深く掘らなくてはならないように思われます。
ところが、これは十分納得が行くものです。なぜならサラマンダーフィッシュの体は、穴掘りにはうってつけの構造をしているからです。V字型の頭骨は、湿った砂の強い圧力に耐えうるものですし、椎骨の間や、通常より本数の少ない肋骨の間には、隙間が空いています。どちらも、名前の由来となったサンショウウオ(注;英語名サラマンダー)のように、身をくねらせるには有利な構造です。
当然のことながら、数か月を地中で生き抜けなければ、砂の中に潜伏することはできません。サラマンダーフィッシュは、その点でも解決策を見出しています。水が戻って来るまで地中で暮らしている間、サラマンダーフィッシュは「夏眠」という休眠状態に入ります。冬眠に似ていますが、夏眠は高温で乾燥した状況下で起こります。サラマンダーフィッシュは、夏眠状態で、数か月間生存することができるのです。
砂の中では、エラ呼吸できるほどの水が無いため、皮膚呼吸を行います。
さらに、目や生殖孔などの特に重要な部位は、乾燥を防ぐために粘液で覆われます。摂食は行わず、蓄えた脂肪分を消費します。
非常に過酷な状況ですが、池に水がある状態でも環境は劣悪です。腐敗した葉やその他の有機物により、池の水は黒褐色に濁り、平均pHは4です。これは、通常の水の1000倍も高い酸性度です。
さらに池の水温も、24時間周期で摂氏16度から34度まで大幅に上下に推移します。
つまり、サラマンダーフィッシュは、穴住まいの達人であるだけでなく、究極のサバイバーなのです。
さらにサラマンダーフィッシュは、太古からこのライフスタイルを続けています。なんと、2億4000万年も前に他の魚類から分化しており、科の中での単一の種なのです。
サラマンダーフィッシュが世に知られるようになったのは、わずか数十年ほどのことですが、研究が進むにつれ、極限の生活環境で生き抜くために備わった他の特徴も、明らかになることでしょう。
とはいえ、これはサラマンダーフィッシュが今後も存在していればの話です。残念なことに、気候変動により生息地の乾燥化がさらに進んでいます。人間が救済の手を差し伸べない限り、サラマンダーフィッシュの隠れ身の術が見られるのは、この夏が最後かもしれません。
関連タグ:
2024.11.13
週3日働いて年収2,000万稼ぐ元印刷屋のおじさん 好きなことだけして楽に稼ぐ3つのパターン
2024.11.11
自分の「本質的な才能」が見つかる一番簡単な質問 他者から「すごい」と思われても意外と気づかないのが才能
2024.11.13
“退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方
2024.11.12
自分の人生にプラスに働く「イライラ」は才能 自分の強みや才能につながる“良いイライラ”を見分けるポイント
2023.03.21
民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?
2024.11.11
気づいたら借金、倒産して身ぐるみを剥がされる経営者 起業に「立派な動機」を求められる恐ろしさ
2024.11.11
「退職代行」を使われた管理職の本音と葛藤 メディアで話題、利用者が右肩上がり…企業が置かれている現状とは
2024.11.18
20名の会社でGoogleの採用を真似するのはもったいない 人手不足の時代における「脱能力主義」のヒント
2024.11.12
先週まで元気だったのに、突然辞める「びっくり退職」 退職代行サービスの影響も?上司と部下の“すれ違い”が起きる原因
2024.11.14
よってたかってハイリスクのビジネスモデルに仕立て上げるステークホルダー 「社会的理由」が求められる時代の起業戦略
2024.11.13
週3日働いて年収2,000万稼ぐ元印刷屋のおじさん 好きなことだけして楽に稼ぐ3つのパターン
2024.11.11
自分の「本質的な才能」が見つかる一番簡単な質問 他者から「すごい」と思われても意外と気づかないのが才能
2024.11.13
“退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方
2024.11.12
自分の人生にプラスに働く「イライラ」は才能 自分の強みや才能につながる“良いイライラ”を見分けるポイント
2023.03.21
民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?
2024.11.11
気づいたら借金、倒産して身ぐるみを剥がされる経営者 起業に「立派な動機」を求められる恐ろしさ
2024.11.11
「退職代行」を使われた管理職の本音と葛藤 メディアで話題、利用者が右肩上がり…企業が置かれている現状とは
2024.11.18
20名の会社でGoogleの採用を真似するのはもったいない 人手不足の時代における「脱能力主義」のヒント
2024.11.12
先週まで元気だったのに、突然辞める「びっくり退職」 退職代行サービスの影響も?上司と部下の“すれ違い”が起きる原因
2024.11.14
よってたかってハイリスクのビジネスモデルに仕立て上げるステークホルダー 「社会的理由」が求められる時代の起業戦略