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イベントサロンオンラインVol.2「”持続可能な音楽”」(全5記事)

オンラインフェスはリアルイベントを超えるか? 感情の可視化が生み出す“一体感”の正体

新型コロナウイルスの蔓延を受け、たくさんの人が集まる「イベント」が次々に中止となっている、昨今。特に、CD販売+ライブ&物販でマネタイズする音楽業界への影響は甚大です。そこで「集まれない時代の”持続可能な音楽” とは。配信や投げ銭などLIVEの次を考える。」と題して、これまで数多くのイベント企画を手掛けてきたアフロマンス氏と音楽メディアSpincoaster代表の野島光平氏が「アフターコロナ・ウィズコロナ時代の音楽」について語る、本企画。こちらのパートでは、オンラインライブの演出と投げ銭の意味について話します。

47万人の感情が可視化される

藤田祐司氏(以下、藤田):この前BLOCK.FESTIVALに実際に参加させていただいて、コメントとハートがバンバン入ってくるじゃないですか。あれ見てるだけでも、なんか巻き込まれてる感じになるというか。すごく楽しい気持ちになるっていう。

アフロマンス氏(以下、アフロマンス):そうなんですよね。僕も散々リアルばっかやってたので、正直言って「まあ、オンラインでしょ」って思ってたんですよ。でもオンラインの一体感とか心動かされる感じって、(リアルとは)違うものがあって。

例えばこの間のときって、トータル47万人くらい見てたんですけど、47万人のフェスなんてないじゃないですか。

藤田:ないっすね(笑)。

アフロマンス:あんなに人の動きが可視化されることもなくて。普通だったらステージから見た「すごくいっぱいの人」っていうことだと思うんだけど。それはやっぱり熱量だとか空気感とかで伝わるんだけど、それとは違う、画面からにじみ出る「みんなの楽しいな」みたいな。そういうの伝わるから、あれはあれで楽しいですね。

藤田:オンラインのおもしろさって、今、アフロさんが言ったキーワードで言うと「可視化される」。感情が可視化されるところにあって。今日でも、我々はコメント欄を見ながらお話させていただいていたりとか。ハートが送られたりとか拍手が送られたりとか、あれによって感情がね、通常だと目に見えないものが見えるかたちになってるというのがものすごく特徴だし、おもしろいところですよね。

アフロマンス:コールアンドレスポンスとかやってましたね(笑)。

白勢竜彦氏(以下、白勢):なるほどなるほど(笑)。

アフロマンス:「聞こえるー?」とか言って、返すんですけど。参加者側は声出しても伝わらないので、コメントが一気にブワ~って来るみたいな。そういうのも「オンラインだけどつながってる」っていう感じがして、すごくいいなと思って。

アーティストとの“つながり”を感じる

白勢:オンラインだからこその演出みたいなところは、けっこうあったりしますよね。だからこそみたいな。そういう意味だと、今の配信とかの話だとラジオとかアーカイブの動画とかと違って、オンラインのライブ配信だからこそみたいなことって、意識してたりとか、なにかあったりするんですかね? 野島さん、ラジオとかアーカイブ動画との違いって何なんだろう? みたいな。

野島光平氏(以下、野島):そうですね。オンラインならではの演出で言うと、さっきのようなコメントを読み上げて反応するとか。視聴者から質問を募集するとか。インタラクティブであるほうが絶対いいなと思います。普通のライブだけの映像を配信するっていうのは、それはYouTubeでライブ動画を公開するのとあんまり変わりないと思うんですよね。

YouTubeのプレミア公開だとチャットとかもできるので、そことちゃんと差別化したものであるほうが……やっぱりライブ配信ってリスクもすごくありますし。そのリスクを取るからには、そういうインタラクティブ性があるべきかなと。

kZmさんの試聴会とかだと、曲を流すまで客演を発表していなくて「客演、誰だと思う?」とかを視聴者側に聞いたりとか。急にコメント欄にAwich(エイウィッチ)さんとか、有名なラッパーの方がパッと出てきて盛り上がるみたいなことがあったりとか。そういったところが、オンラインならではの楽しみ方なのかなと思いました。

藤田:今、コメントで「ニコ動の初期みたいな新鮮な感じですかね」みたいなのも入ってたりするけど、その感覚はありますよね。ちょっと懐かしい感じというか。

アフロマンス:そうですね。収録の動画とライブの違いで感じていることがあって。音楽を「コンテンツ」として思うのか「アーティストという人」として思うのかの違いな気がするんですよ。

要は、コンテンツって思ったら一番クオリティが高いほうがいいし。きれいなほうがいいし。映画みたいな。それがいいと思うんですけど。今、求められているのはコンテンツっていうよりは、人というか。

今、この状況もそうですけど、画面を通じて向こう側にちゃんと生きた人がいて。その人と会話をしているという。人とつながってる。ライブでいくならば、アーティストとつながってるというのを感じられるのが、ライブ配信だと思うんですね。

それが今、人と会えないこの状況なので希少性というか。求めるものになってきている。だって実際は、(ZOOMでトークしている今を指して)鉄とガラスの箱に向かって喋ってるわけですから。

藤田:そうですね(笑)。

アフロマンス:そこに人間はいないんだけど、でも僕は「画面越しにつながってる」と思ってるじゃないですか、今。これがリアルタイムじゃないと、そう思えないんですよね。それが収録映像との違いだなぁとすごく思います。

藤田:生っぽさみたいなのはありますよね。

アフロマンス:そうです。人が今、演奏してるから心を動かされるというか。DJとかも一緒だと思うんですけど、極端な話「MIX CDかけときゃいいじゃん」みたいな。そうじゃなくて、リアルタイムにその人が選曲をしてるから人を感じて、なんかわかんないけど心が動かされる。

さっきラジオの話があったんですけど、これはむしろラジオに近いと思いますよ。参加型だしね、ハガキ職人とか。あれは「パーソナリティとつながる」っていうアナログなメディアなんだけど、今、逆にそういうのが求められているなと思います。

ライブ配信をアーカイブするか否か

白勢:今「一緒につながってるからこそ」みたいな話が出てきましたけど。そういったものを意識した演出とか、さっきのMCの掛け合いがあるとか、そういうのが鍵になってくるってことなのかなということですね。

アーカイブ動画って、今、なんでも簡単にアーカイブができるわけじゃないですか。YouTubeも含めて。それにどこまで、どういう意味を求めているかってどう思いますか? ライブ配信をアーカイブ動画にすることについて、みたいなところは。

アフロマンス:それって、これからよりいろんな人がいろんなかたちをやっていって、答えらしきものが見えてくるような話だと思うんですけど。今まではどっちかというと、ライブ配信も映像のYouTubeも「コンテンツ」だと思うんですよね。「人とつながってる」という感覚よりも。

でも今、リアルタイムで2度と同じことはできないみたいなところに、むしろ希少性があるわけじゃないですか。ライブもそのときにライブハウスに行かなきゃ見れなかったし、同じようにライブ配信っていうのもこのタイミングじゃないと参加できない、というほうが価値がある。

例えば今回、投げ銭したらフェスTが自宅にとどくって話も、買えるのはライブやってる時間だけにしたんですよ、あえて。これで中途半端に「後々まで買えます」となったら、意味が変わってきますよね。これは記念すべきこの日の思い出なのか、いわゆるグッズなのか。

そういう意味でいくと、リアルに近い、そのときその瞬間しか味わえないことをオンラインでやっていこうと思うと、アーカイブしないほうがいいのかなと思います。

白勢:Spincoasterさんはどうですか? アーカイブとか反応、反響とか。

野島:アーカイブに関して言うと、まずアーティストの意向が最優先になってまして。僕らの場合は、そもそも音楽メディアとしての立ち位置があるので、アーティストの演奏をちゃんと記録して、高いクオリティのものをリスナーに届ける。残せるものはできるだけ残したいという考えでやってます。アーカイブではMCをカットしたりとか、一部の曲はカットしたりとか手を加えることはありますが、なるべく残すようにはしてますね。

アフロマンス:やっぱりメディア発想とイベント発想で、違う気がします。

白勢:そうですね。たしかに。

アフロマンス:メディア的な視点だったら、絶対どんどん残していったほうがいいと思うし。ただリアルイベント的な感覚でいくと、むしろ残さない感じのほうがいいと思うんです。2人のそもそもの立ち位置の違いもあるのかなと。

野島:そうですね。

白勢:おもしろいですね。本当に間だから。どっちなのか、みたいな感じで出てくるんでしょうね。

アフロマンス:今ちょうどコメントで「ライブ配信だったら投げ銭して『この曲歌って~』とかできますよね」って来てるんですけど。そういうことですよね。収録じゃできない。

野島:そうですね。

藤田:結局ライブ配信の場合って、もちろん主催者のやり方にもよるんですけど、参加者がイベントに絡めるんですよね。「自分ごと」になるのがより強いっていうのが、ライブ配信。コメントに関しても、アーカイブで見てると絶対に自分のコメントは届かないしピックアップされることもないから、やっぱり巻き込みが弱いと思うんですよ。

だけど生で見てると、しっかりと巻き込まれていくって感覚が大きな違いで。なので「アーカイブが良い悪い」っていうよりは、アフロさんが言ったとおり「イベント視点」なのか「メディアとして残していく視点」なのかっていう。その差はあるのかなと。

ライブ配信への投げ銭で、グッズが手に入る意味

白勢:そういう意味だと、巻き込みや演出、イベント視点だと投げ銭みたいなのがありましたけど。そういった演出と投げ銭みたいなのを組み合わせていくことが、今この時代の「配信プラス投げ銭」みたいなところには、たぶん合ってるのかなという感じは、なんとなくするんですけども。

ここから、マネタイズとかお金のほうの話にいくんですけど。アフロさんは物品と組み合わせたみたいな話をしていますけども、逆に物品と組み合わせることによる功罪みたいのもあるのかなと思っていて。

そこに関して、例えばTシャツを何枚も欲しがるのかとか。フェスのグッズで言うと、何個も何個も欲しいのかみたいな。逆に物で残るからこそみたいな。何個も何個も作るんだっけ? 買うんだっけ? みたいなところも出てくるのかな、と思っているんですけれど。

そういった「物を作ることの功罪」みたいな話はなにかあったりしますか? 次の仕掛けかもしれないですけど。

アフロマンス:功罪っていうのは懸念点っていうことですね? マイナスの部分もあるんじゃないかっていうことですね。

白勢:そうです。

アフロマンス:まず大前提として、可能性のほうが高いと思ってます。これからいろんな組み合わせがあると思うんですよ。例えば、ドリンクが届いてもいいし、フェス飯が届いてもいいし。もしかしたら、音楽に合わせたアロマが届いてもいいかもしれない。あとすごく大事な考え方のポイントとしては「物を売ってるって考え方をするな」と。

藤田:なるほど。

アフロマンス:これはすごく大事で。投げ銭って何なのか? という話で。白勢さんはクラファンでTシャツの支援メニューを選ぶ時、Tシャツを買っている訳ではないですよね。応援したいからクラファンにお金を入れるんですよね。意味を買ってるんですよ、それって。

そう思えば、ライブ配信の投げ銭のリターンでTシャツが届くというのは「アーティストを支援したい」とか「このイベントにすごく感動したから感動にお金を払う」とか。「すごく楽しかったから、この日を忘れないために思い出として買う」とか。

そもそも服屋に売ってるTシャツとは、意味が違うと思うんです。だからあんまりネガティブには僕は考えてない。

白勢:そうですよね。LINEのやつ、770万くらい集まってるということで。

アフロマンス:そうですね。ちなみにあまり表に出してないですけど、Tシャツは1300着くらいでした。

藤田:ワーオ!

白勢:おぉ~(笑)。

藤田:めっちゃ売れておりますねぇ。

白勢:名前入りきるのかなぁ(笑)。

アフロマンス:やりながらおもしろいなと思ったのは、リアルイベントのフェスとか行くと、ライブ中にグッズ買いにいけないじゃないですか。

白勢:はいはい。

アフロマンス:グッズ買いに行こうと思ったら長蛇の列、とかあるじゃないですか。というときに、オンラインだったら行列がまったくなくて。しかもライブ中に盛り上がって、ほかの人がボンボン買ってるのが見えて。

藤田:あれ、めっちゃいいですよね。

白勢:あ~なるほどね。

アフロマンス:買ってるの見て、俺も買わなきゃ! みたいな感じで買うとかね。これって本当に、オンラインフェスだから起こる現象だなみたいな。リアルなショップがあって、そこに並んでという話だったり……あと大事なのはシームレスな感じ。「外部サイトで今グッズのショップがあって、そっちに行くと買えるんで、みんなアクセスしてね」とか言ったら、売れる量って10分の1だと思うんですよ。

藤田:はいはい。

アフロマンス:ライブと一体となった演出だからみんながワーっと盛り上がって、その場でポチッとするみたいな。

藤田:そっか。ライブを楽しんでるあの画面の中で、シームレスで買えるわけじゃないですか。拍手も含めて。そのつながり。1回外に出ると冷めちゃうっていうか。しかも出ないですよね、ライブ見てたら。そこはすごい設計ですよね。なるほどね。

あとコメントで「物じゃなくて、もしかしたらデータ的なものでもいいんじゃないか」っていうのが来てて。例えばデジタル的なもの。拍手って、ある種デジタルだったと思うんですけど。画像がもらえるとかでも嬉しいかもしれないよね、という。

この時代でいうと、例えば背景画像。ZOOM用の背景画像、バーチャル画像をこのフェスで売るよみたいなのだと「買う~!」みたいな人いるような気がする。

アフロマンス:これから先ありますよね。絶対それ。ビジネスとして考えたら大正解で。功罪みたいな意味でいくと、当然、物は原価がかかるんですよ。配送費もかかるし管理も大変だし、大変だらけなんですよ。ただ、僕はちょっとでもリアルの要素は残しときたいな、っていう気持ちもあってやってます。

藤田:肌触り感ですよね。

アフロマンス:そうそう。

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