CLOSE

話し言葉の「書き起こし」から、読み手を惹きつける文章を生み出すには?(全4記事)

Webライターの仕事は"執筆"ではない 現役編集者が明かす、読み手を惹きつける文章作成フロー

「書く」を学び合い「書く」と共に生きたい人の共同体「sentence(センテンス)」。2016年に発足したこちらのコミュニティは、オンライン・オフラインの両軸で、全国各地の会員さんと「書く」を学び続けています。これまでは現役編集者によるトークイベントなどを開催してきましたが、2020年から新たな取り組みとして、ライブ配信イベント「sentence LIVE」を始動。その第3弾となる本企画では「書き起こし〜執筆におけるノウハウと心構え」について、2名の編集者が考えを語ります。こちらのパートは登壇者の経歴と、イベントの趣旨説明を行います。

現役編集者2名が「読み手を惹きつける文章」を語る

小山和之氏(以下、小山):どうも、こんばんは。夜も8時なのにこんなに集まっていただいて、ありがとうございます。

今日は「『書き起こし』から、読み手を惹きつける文章を生み出すには?」というテーマで、お話できればと思います。最初は簡単に自己紹介を。岡島さんからお願いできますか?

岡島たくみ氏(以下、岡島):はい。みなさま、はじめましてかな? こんばんは。よろしくお願いします、岡島と申します。ライターとか編集みたいな仕事を始めて、2年ぐらいになるんですかね。

モメンタム・ホースという会社の長谷川リョーさんに弟子に取っていただいて、1年半ほどお世話になって。主にビジネス系の媒体で編集だったり執筆の仕事をしてから、4月にアルという漫画のサービスをやっている会社に入りました。「アル株式会社の編集者」と偉そうに名乗っていますが、まだアルでなにもしていないです。

今日はすごい恐縮なんですけど、未熟者ながらいろいろお話させていただきますんで、よろしくお願いいたします。

小山:お願いします。僕は、岡島くんとも一緒に仕事をしていたりするインクワイアという会社で編集者をやっています、小山と申します。僕はどれくらいだろう、6~7年くらいですかね。最初は副業でライターを始めて、それから1本に絞って編集とかライターをやってきたりしています。

インクワイアで編集者として働きつつ、自分は自分で編集の会社をやっていたりして。ビジネス系・デザイン系をテーマに取り扱って、発信をしています。

「書き起こしの記事化」についての方法論

小山:ではさっそくですが、イベントの趣旨説明を。実はこの企画には、始めた経緯がありまして。岡島さんが「ライターは『汲み取り』と『言い換え』ができるといいよね、という話」というnoteを3月頭に書かれていて。

これをきっかけに「書き起こしから記事化するところって、方法論があるはずだけどあまり言語化されていなかったり、体系的にまとめることができていないよね」という話を、この記事を読んだときsentenceという「書くを学び合う会員制コミュニティ」の中だったりとか、岡島くんとかとしていて。

もうちょっと「具体的にどうやっているのか?」みたいなのとか「こういうことを実は考えられているんだけど、実際はみんな気づいていない」とかを整理して伝えられたらいいねって話をした結果、それがイベントになりました。

今回は岡島くんの方で「執筆フローをベースに、どういうことを考えてやっているか」というのを、整理して話す準備をしてくれているので、それに沿って話をしつつ。質問があったら拾いながら、お話を膨らませていければと思っています。

岡島:そうですね。すいません、僕、ちょっと元気ないですね。元気を出していきます(笑)。オンラインでしゃべるとアレですね。声とか張らないとね、張っていきます。

小山:4割増しくらいでお願いします(笑)。

岡島:4割増し、やってみます。よろしくお願いします(笑)。

Webライターの仕事ってなんだろう?

岡島:そもそも「Webライターの仕事ってなんだろう?」という部分から、話せればと思います。Twitterのbio(経歴欄)に「“ライター・編集者”って絶対書いてある」みたいなのあるじゃないですか。しれっと書いているけど、どういう仕事をやっているんだっけ? みたいなのがあると思っていて。

僕も長谷川リョーさんに拾ってもらったときに「とりあえず両方名乗っておけばええやろ。それっぽく見える」と、Twitterのbioに書いていたんですけど。

仕事をやっている中で、数学で習ったベン図みたいに(ライターと編集者は)被っている部分はあるんですけど「執筆の仕事はもうちょっとこっちかな?」というのがある程度は具体化されたんで、それを整理してみたのが(スライドを指して)これですね。

「『執筆』というより、ミクロな『編集』」と書いているんですけど、僕はWebライターって自分で文章を書かないと思うんですよ、あまり。取材とかだと、喋ってもらったものを直すという仕事がメインだと思っていて、このように書いているんですけど。「あるテーマ」についていいこと言えそうな人・予測される人の主張を、企画を立てて聞きだして。それを音源からテキストに文字起こしして、話し言葉から書き言葉に変えて。そこから言葉の抽象度、順番を整えて、読んで伝わりやすいかたちに整えるという仕事だと思っています。

小山:(笑)。「取材対象者の言いたかったことを、適切に伝える」みたいなことですね。

岡島:そうですね。書くというより「取材対象者の発言を編集する、整える」ものだと、僕は理解しています。そもそも執筆という表現に、違和感があったりするんですけど。ミクロな編集という意味での執筆について、今日は喋っていければなと思っております。

執筆のフローは6つに分けられる

岡島:次は僕が考える「『執筆』のフロー」。6つあります。人によって順番が違うと思うんですけど、最近、ジモコロとかをやっているHuuuuさんと、CAIXA(かいしゃ)という取り組みをやっていまして。モメンタム・ホースさんの小池真幸さんという、僕の面倒をすごい見てくれた方と、Huuuuの友光だんごさんという2人がメインで進めてくれているんですけど。

僕のsentneceのイベントの元になったnoteから「人によって書き方とか編集のやり方が違うよね」という話をする勉強会をやって。(スライドを指して)ここで書いてあるフローとぜんぜん違う、という方もいらっしゃったんですけど。今日あくまでも「僕が考える執筆、僕がどうやっているのか」というのを元に、進めていければなと思っています。

まず「文字起こし」です。僕の執筆のフローと書いてあるんですけど、やってないです、ほとんど(笑)。クラウドワークスで募集をしたりとか、モメンタム・ホースでインターンをしてくれていた子とかで、文字起こし速い人がいるので。そんな方々に業務委託でお願いするほうが多いです。

文字起こしって大変ですよね。ここに参加されているみなさんは、経験ありますかね。速い人でも1時間の音源を起こすのに、だいたい3時間ぐらいかかる印象なんですよね。普段の執筆って、キーボードをめちゃくちゃ打ちっぱなしにすることってないじゃないですか。考えつつ書いているので。文字起こしすると、指がね……。僕は指がそんなに長くないんですけど。

小山:長さの問題ですか。

岡島:長さの問題もすごいあると思うんですよ。カタカタってきれいにできないんで、ミスタッチすごいいっぱいで。1時間の音源起こすのに5時間くらいかかっちゃう。小山さんどれくらいかかります?

小山:内容によりますけど、やはり3時間はかかりますね。

岡島:かかりますよね。内容にもよりますよね。たぶん知っている知識だけだったら、パッと聞き取って書けるんですけど。知識とタイプ速度の掛け合わせが必要なので、むっちゃ大変だなと思っていて。

ただ、それ(文字起こし)でがんばって稼ぐべきかと言われると、そうじゃない気が僕はしているんで。一方で、文字起こしをやりたいという方もいるので。それはやりたい人にお願いして、ライターだったり編集の仕事をやりたいという方は、そっちに集中したほうがいいんじゃないかなと思っている派です。小山さんはどうですか? 自分でされています?

小山:僕も基本は、お願いしちゃうことが多いですね。(Zoomの)コメント欄を見ていると、みなさん2~3時間から6時間とかかかったりとか。「音源の3〜5倍はかかる」って意見が多かったりするんですけど。

岡島:見てて思ったのが「音声入力がうまく動くようになると、だいぶ楽になるな」というのが。

小山:気になりました、僕もそれ。やっている方もいらっしゃる気がしますけど。もうちょいしたらたぶん、いい感じに自動化できそうな感じします。

岡島:コメント欄に「AWSの文字起こしツールを使ってます」という意見もあったので、Amazonにがんばっていただきたいところですね、これは。

小山:(笑)。そうですね。あとは、コメントで思ったのは「表記統一してるともうちょっと時間かかる」というのが、けっこう大事な話かなと思っていて。

何人かにお願いしているとあると思うんですけど。「同じ音源からの文字起こしでも、クオリティ的に差が出る」みたいな、けっこうありますよね。書くときの癖がぜんぜん違うみたいな。表記統一されてるとか。

岡島:難しいですよね。雑談だけどニュアンスを残したほうがいい箇所とか。でもここは全部取ったほうがいいとか。多少は日本語統一したほうが……統一というか2つの動詞が言っていることがほとんど一緒だから統合したりとか。ある程度慣れている人じゃないと、うまくできないのかなと思いつつ、難しいですよね。

小山:「専門職感」ありますよね。

岡島:ありますね、職人という感じ。ライターもですが、文字起こしの話はすごい盛り上がっちゃうので、時間かかっちゃいますけど(笑)。文字起こし、みんな言いたいことありますよね。チャットがものすごい勢いで動いているんですけど(笑)。ありがとうございます。

小山:次に行こうかなと。お願いします。

元原稿から「書く人」と「削る人」がいる

岡島:「不要な情報を削る」。さっき、書き方がけっこう違うという話をしたんですけど、大きく2つで。「書く人」と「削る人」といるのかなと、周りの人を見て思いました。「文字起こしを見て、別のドキュメントに文章を書く人」と「文字起こしのテキストを直接削る人」がいるのかな? とも思うんですね。

僕は「削る派」なんです。文字起こしを貼り付けたGoogleドキュメントに、そのままカーソルを入れていきます。というのもあって、(それを)「執筆」と言うのに違和感があったりするんですけどね。

僕が書くことを教わった長谷川リョーさんも削るタイプで、それを勝手に見て学んだ感じになります。「個人的にここが1番むずいです」と(スライドに)書いているんですけど、マジでむずくて。

文字起こしって2万字くらいあると思うんですけど、それを半分くらいに削るというのが……。どれだけ削っても、あとで記事を完成させようとするときに「やはりここ、いらんかった」みたいに3000字くらい吹き飛ばしたりするんですけど。そこの見極めを最初にするというのが、すごい難しいなと思っています。

文字起こしのドキュメントを何周もスクロールして、って(スライドに)書いているんですけど。上から「ここいらないだろうな」というのをガーッと削っていって。削りつつ、なんとなく「ここが見出しの塊になる区切りだろうな」と考えながら、区切りは区切り線みたいなのがドキュメントにあるので、それを入れつつ削っていきます。

「この雑談はさすがにいらん」みたいなところは削りつつ、あとオフレコっぽいやつですね。どうしても使いたかったらコメント残して「ここちょっと表現を丸くしたんで、使えないですか?」という感じで、取材対象者に聞いたりするんですけど。そういう部分を削っていきます。

あと「どんだけおもしろくても、記事の主題からそれちゃうものは削っちゃう」というのが大切だなと、僕は思っています。

削るのってなかなか心理的なハードルがあるので、僕はGoogleドキュメントで横に「削ったものをコピペするドキュメント」を作っておいて。そっちに載せておくから「欲しかったら後で引っ張ってくればいい」と思って、全部削ってコピペしていくというのをやっています。小山さん、どんな感じで書かれます?

小山:今の「2万字から1万字くらいに削る」というのは、とにかく削る(初期段階の)作業でそれくらいまで落とすって感じなんですかね?

岡島:それくらいまで落としますね。でも1周目で1万5千字、2周目で1万字みたいな感じで削っていって、7〜8000字くらいになったあたりから、次の工程に行く感じですね。もちろん取材音源の長さだったり、文字起こしのテキスト量にもよるんですけど。

小山:それと合わせて、さっきおっしゃって区切り線を入れて、要素ごとに情報のまとまりみたいなのを分けていくのを、やっている感じですかね?

岡島:やっています。ある程度まとまりができて、使わないだろうなというところが削れたら、次の工程に行きます。

日本語は「結論から話す」構造になっていない

岡島:そして「並べ替え」ます。さっきの削った塊を、近い要素ごとにガチャガチャっとパズルのように並び替えていきます。話された順って、基本的に読みやすい順じゃないので、それを直していきます。

就職活動とかで「結論から喋れ」って教わるんですけど、そういう喋り方ができる人は、結局そんなにいないんですよ。言い方がめちゃくちゃ悪いですけど、日本語がそもそもそういう構造になっていないと思っていて。

英語だったら「It is なんちゃら、because〜」って理由節が後、結論が先に来るんですけど。日本語って「こうだから、こうじゃん」みたいな感じで、理由が先に来ちゃうじゃないですか。

どうしても(話し言葉は)読みやすい順番になっていないので、その文章を小さく小さくなんですけど、最初でっかい文章の塊をガーッと組み替えた後に、見出しの中の更に小さい文章単位で「主張」「根拠」「具体例」の順に並び替えていくというのをやっています。

文字起こしに載っている情報って、この3つしかないんですよね、基本的に。「じゃあこの中のどれだ?」を考えて「Aの主張がBの主張の根拠」になったりもするので。「こう思うから、こう」みたいな。僕の日本語、めちゃくちゃ下手なんですけど。主張同士の関係を整理していくことをやっていますね。

その中で「ここは具体例が弱い」とか「根拠が何個あるけど根拠として成立してないっぽい」みたいなのが出てくる感じです。根拠があまりにも曖昧だったものとかは、②の工程(「不要な情報を削る」)で削りきれなかったもので「言いたいことはわかるが、さすがにこれはこのまま使えない」みたいなものが見つかったりするので、その後に削るみたいなこともやりますね。

小山:③をやりながら、また②にも戻るという感じなんですかね。

岡島:そうですね。それが一通り終わると、次の工程に入る感じですね。これは今日のメインテーマっぽいので、後でしっかり話します。(スライドを指して)「話し言葉」を「書き言葉」へと書いておりますが、今、③の工程でも喋ったんですけど。口頭で喋っているときって、言い方悪いですけど、人間は適当なので。言葉の精度がそこまで高くないので、いろいろと欠けちゃいます。

根拠が欠けていたりとか。当たり前なんですけど、それをいちいち全部説明している人の話を聞いててもしんどいだけなんで。「話してて気持ちいい言葉」と「読みやすい言葉」は違うんじゃないのかなと思っています。

なので、書き足していきます。主語、目的語が欠けていることがすごい多いかなと思うんですけど。「それをちゃんと汲み取って書こうね」というのが今日のテーマですね。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?

人気の記事

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!