2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
What We Know About the New Coronavirus(全1記事)
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ハンク・グリーン氏:2019年12月29日、4人の患者が中国武漢市の病院を受診しました。4人とも肺炎を発症しており、生動物及び魚介類を扱う同じ市場で働いていました。この一致は、地元の医師陣の耳目を集めるには十分でした。
その2日後、中国・湖北省武漢市疾病予防センターは、WHOに脅威となりうる新型呼吸器系ウィルスの流行の可能性について警告を発しました。
みなさんは、この新型ウイルスについてもうご存知のことでしょう。新型の感染症の流行は、未知である上に誤報が飛び交うため、大きな混乱を招きます。そこで今回は、みなさんの助けになることを願って、現在わかっている新型ウィルスの概要について解説し、パニックに陥る必要がないことをお伝えしていこうと思います。
みなさんは、このウィルスについて、最初に症例が見られた都市にちなんだ「武漢ウィルス」という通称を聞いたことがあると思います。ところで、今日の科学者たちは、特定の人物や場所、動物に関連付けた名前を、病名にはつけません。
2020年1月31日現在、このウィルスは正式名称が決まってはいませんが、専門家はこれを「2019-nCoV」と呼称しています。これは単純に「novel coronavirus(新型コロナウィルス)」を略したものです。
その名のとおり、これはコロナウィルスの一種です。コロナウィルスとは、ウィルスの大きな分類体系の一つで、王冠のような突起に覆われていることからこの名がつきました。
人や動物に感染し、多くは軽微な病状を呈します。例えば、このウィルスのある系列は、ごく一般的な風邪の症状を起こします。しかし、このウィルスの系列には、2002年と2012年にアジアと中東でそれぞれ猛威を振るった、呼吸器の感染症であるSARSやMERSのように、重篤な症状を引き起こすものも含まれています。
この新型ウィルスの全ゲノム解析は、いち早くグローバルな疫学データベースに掲載されたため、2つのいずれの疾病とも同一のものではないことがわかっています。とはいえ、発熱や咳など、症状は似ています。疫学者たちは、このウィルスは2つの疾病と同様、動物から人へと感染し広まった人獣共通感染症であると考えています。
本来は、ウィルスにとって、細胞に潜りこむ対象の宿主は非常に限定的であるはずです。対象の細胞にうまく適合することは、例えるならば、非常に複雑な構成の錠前にうまく適合する鍵を作るようなものです。しかし、ごくまれに、対象としてぴったりの種に、新たに遭遇することがあります。するとウィルスは、対象に適合する変異を起こすことがあるのです。
SARS、MERSそして新型コロナウィルスはすべて、もともとはコウモリが宿主であったと考えられています。
その後、各々が異なる経路でヒトへとたどり着きました。例えばSARSであれば、ジャコウネコからヒトへと感染したと考えられています。MERSでは、ヒトコブラクダからヒトへの経路で感染が起こりました。
こういった動物の飼育・消費・加工などの濃厚接触を行った人を経由して感染が広まったのでしょう。
さて、2019-nCoVについて、みなさんはさまざまなことを見聞きしたとは思いますが、その感染源とされる動物種は特定されていません。ウィルスの全ゲノム解析が1月中旬に公表され、現在、科学者たちは感染源の動物を特定している最中です。
ある論文は、感染源はヘビであると発表してメディアの注目を浴びました。ヘビは、最初に感染が確認された市場で多く取り扱われていたため、信憑性があるように思われました。
しかし、これまでコロナウィルスの感染が確認されているのは哺乳類や鳥類のみであり、他の専門家は非常に懐疑的です。ヘビが感染源というケースは極めて異例であり、研究による裏付けは脆弱です。さらに、市場がアウトブレークの発生源であるというきちんとした証拠もありません。
最初に症例が確認された4人は市場の関係者ではありましたが、これ以前の症例が、保管されていた検体を調べて発見されたのです。
さて、感染源の特定は、現時点における優先順位はさほど高くはありません。研究者たちは、人体におけるウィルスの働きを調べることに力を注いでいます。
患者数は日々増加しています。その多くは中国本土で、4500人あまりの新型コロナウィルスの症例が確認されています。少人数の症例が、周辺のアジア諸国と、オーストラリア、フランス、アメリカ、カナダなどの各国で見られています。
このように、感染者数は確かに増加してはいますが、正確な重症化率や、本当の感染率などがまったくわかっていないことを留意する必要があります。ヒトからヒトへの感染もわかってはいますが、その割合もいまだ不明です。
かといって、1つか2つの測定基準のみに頼ってしまうと、誤解する危険性があります。例えば、WHOに提出された基本再生産数、通称「R 0(アール ノート)」の暫定推定値は、だいたい1.4から2.5の間くらいと考えられています。
基本再生産数とは、感染率を表す単位です。つまり、この数値が1.4から2.5ということは、だいたいの平均で、感染者1人が生産する新たな感染者が、2人前後になる可能性を示唆するものです。
ネットでも話題になっていたように、これは1918年の新型インフルエンザや2014年のエボラウイルス感染症のような危険な感染症と同等か、それ以上の暫定推定値であり、これだけを聞くと、悪い事態に思えます。額面通りにはそのとおりです。しかし、全体の状況を表したものではありません。
ごく単純に言えば、これは季節性インフルエンザとほぼ同等です。また、R0値だけでは感染症の危険度はわかりません。さらに、R0値は完全に数理モデルに基づいた数値であり、実況を表したものとは言い切れません。R0値は、母集団を感染しやすいものとして想定しているため、実際は、人間の行動により影響を受け変動することがあります。
例えば、西アフリカにおけるエボラウイルス感染症のR0値は、アメリカにおけるそれとは大きく異なるものでした。つまりR0値は、感染症の本質を表したものではないのです。
大事なのは、感染した場合の重症化率は、この数値ではわからないことです。この数値は感染性の高さを示すもので、その病原体が発症したときにどのくらい重症化しやすいかを示す、疫学者がいうところのビルレンス(virulence:毒力、毒性)を示すものではありません。
R0値がはるかに高いのに致死率が極めて低いため、まったく怖がられていない感染症は、たくさんあります。例えば、2004年にメキシコで流行した悪性の流行性結膜炎は、R0=4であったにも関わらず、まったく話題にはなりませんでした。なぜなら、流行性結膜炎で死ぬ人は、まずいないからです。
疫学者が高いR0値を懸念する理由は、病原体が急速に広まることを示すためです。病原体が大勢の人に感染を起こせば、致死率が極めて低くても、亡くなる人が大人数になる可能性があります。
さて、現実問題として、この新型ウィルスの致死率は、現時点ではわかっていません。SARS、そしてとくにMERSの致死率は高いものでした。しかし、他のコロナウィルスのそれは、決して高くはありません。専門家たちは、現時点までの新型ウィルスの致死率を、約3パーセントとしています。しかし、これは必ずしも正確な数値ではないようです。
これはあくまで概算であり、報告を受けている症例及び死亡例を基にしたものであるためです。感染者のすべてが重症化して受診し、診断を受けるわけではないため、実際の感染者数は、もっと多いはずです。
そのため、実際の致死率は、これよりかなり低くなるでしょう。しかも現時点においても、その致死率はSARSやMERSより低いものです。とはいえ、何の対策もなしに世界中にばらまかれた場合には、十分に危険視されるべき高さです。
喜ばしいことに、各国はSARSやMERSから教訓を得たようで、今回の新型ウィルスに対しても、協力して迅速に対策しています。
中国は、ウィルス感染拡大を最小限に抑えるために、北京の春節祝賀イベントを取りやめるなど、さまざまな対策を施行しています。また、他の国も、感染が確認された患者を隔離して感染拡大を防いでいます。
とくに、ウィルスの全ゲノム解析がいち早く公開されたことは、各国におけるウィルス解析と診断テスト開発を可能にしたとして、研究者たちにより高い評価を受けています。すでにワクチン開発とテストが計画されている段階です。
つまり、新型ウィルスは無視できないものではありますが、パニックに陥るほどのものではありません。現時点では、主に心配するべきなのは中国国民、武漢やその周辺地域を最近訪れた人、およびそれらの人との濃密接触者のみです。
みなさんが身を守るため取ることのできるステップは複数ありますし、それにより他の病原菌も防ぐことができます。仮に新型ウィルスがSARSやMERSのようなものであれば、咳やくしゃみなどの呼吸器系の飛沫で広まるはずです。
インフルエンザのウィルスとはそう変わりません。ですからみなさんは、インフルエンザの流行期に行う一般的な対策を取れば対応できます。しっかり手洗いをして、不調を感じた時はしっかり休養を取りましょう。ボーナスとして、インフルエンザの予防にもなります。
ご参考までに、インフルエンザは、現在アメリカで大流行の兆しを見せています。今季の流行はとくにひどく、感染者は目下1,500万人に及び、入院患者数は14万人以上、死者は8,000人以上に及んでいます。
インフルエンザの予防接種がまだの方は、ぜひ受けてください。そして、コロナウィルスについて、パニックを起こさないでください。新型ウィルス発生初期は緊張が走りますが、世界各国の感染症学者が対応に奔走しているのですから。
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