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How to Cure a Hangover (Maybe)(全1記事)

本当に効く「二日酔い対策」はあるのか? 高麗人参が注目を浴びる理由

気のおけない仲間との飲み会、取引先やお客さんをもてなす接待、新しい出会いを見つける合コン。どんなに楽しくお酒を飲んだとしても、多くの人が翌日に後悔してしまうのは、いまいましい「二日酔い」のせいです。できるならば、二度と経験したくないですよね。みなさんも、あの手この手で対策を取っていることでしょう。でもそれって、“本当に”効いているのでしょうか? 今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、科学的見地から見る「二日酔いを治す方法」について解説します。

その二日酔い対策、本当に効いていますか?

生卵やコーヒー、ピリ辛ソース……。二日酔いに良いとされるものは、その犠牲者のためになるのはせいぜい10パーセント程度で、残り90パーセントは周りを盛り上げる罰ゲームであるべき、という法則でもあるのでしょうか。だって、冷静に考えてみてください。このようなものが二日酔いに実際に効くとは思えませんよね。

ところで、二日酔の予防策、もしくは二日酔いの症状の改善策には、医師が推薦するれっきとしたものが存在します。とはいえそれは、「自分の酒量の限界を知っておく」「こまめに水分補給する」「飲酒前に何かを胃に入れておく」など、飲酒前の一般常識にすぎません。

では、みんなが一生懸命に実践している何千種類もの「民間療法」は、本当に二日酔いに効くのでしょうか。

現実的な「二日酔い研究の実験」は難しい

「二日酔い研究の実験」を計画するのは、実は非常に困難です。しかし、有効であると立証された「二日酔い対策」は、いくつかが散見されます。

二日酔いは個人差が大きく、年齢・性別・体調などが、アルコールの代謝に大きく影響するのです。また、その症状の個人差に関しては、遺伝子の影響がほぼ半数を占めていると考えられています。つまり、こういった個人差の研究には、多様な母集団を用いた実験が不可欠です。

しかし、被験者に何をどう投与するかを決めるのは非常にややこしい話になります。例えば、倫理委員会は、被験者に度を越えた飲酒をさせるのを良しとしません。

また、アルコールに混合されるものによっても、結果が変わってきます。例えば、とある研究室では混じりけなしのウォッカで実験を行い、別の研究室ではクランベリージュースを少々混ぜたとします。

これで、化学反応の結果が大きく変わってくる可能性は十分にあります。そして、実生活の飲酒も、これに似たようなものなのです。

このような理由が、何度でも再現可能で、なおかつ実生活の飲酒に近い実験の計画を難しくしています。

ナイアシン・亜鉛を多く摂っていれば、二日酔いになりにくい?

だからといって、管理された臨床実験をあきらめて、昔ながらの「飲んだお酒の正確な自己申告に基づく実験」に回帰しても、役には立ちません。

専門用語で言うところの「想起バイアス(注;研究参加者に対して、過去の出来事や経験を想起させて得られた回想の正確性や完全性の違いから生じる、系統的な誤差)」が生じる懸念があるためです。

要するに、二日酔いの研究はたいへんややこしいものなのです。ある実験で有効だった二日酔い対策は、別の研究者が異なるメソッドで行った実験において、再現されない可能性が高いのです。

とはいえ、ひどい二日酔いを予防する、もしくは軽減させる、昔ながらの飲み物や日常食は存在するようです。

2019年に行われた小規模な実験では、二日酔いになりやすい被験者に、日ごろの食生活で摂取している特定の栄養素についてアンケートを取りました。主な項目は、全粒粉やキノコ類に多く含まれる「ナイアシン」や、貝類やマメ科の食品に多く含まれる「亜鉛」についてでした。

すると、これらの栄養素を多く摂取していると答えた被験者は、重い二日酔いになることが少ないという結果が出たのです。しかし、すでにこれらの栄養素を日常的に摂取している人にとっては、二日酔い対策にはなりません。

さらに留意すべきなのは、これが自己申告制の実験であったことです。ほとんどの人は、前日にどれだけ亜鉛を摂取したかなどを正確には覚えてはいません。

二日酔いの特効薬として注目を浴びる「高麗人参」

事実上の特効薬として注目を受けつつあるものの一つが、「高麗人蔘」です。2014年に実施された小規模実験によると、複数の男性に液体状の高麗人蔘を摂取してもらったところ、プラシボに比較して二日酔いの症状が軽減されたとのことでした。

2017年に刊行された、複数の既刊論文のレビューでは、高麗人蔘は二日酔いの治療薬として有効だとされました。またこのレビューは、ショウガや中果皮、黒糖などで知られる漢方薬の中でも、シベリアニンジン、韓国梨ジュース、加味造遙散など、多数の漢方薬が有効だとされた証明を引用しています。

これらの生薬は、必ずしも二日酔いの症状を全て解消するわけではありませんが、緩和はするようです。

これらの生薬が正確にはどのような働きをするのかについては、さらなる研究が求められますが、肝細胞にダメージを与える酸化ストレスを軽減しているようです。また、炎症を促進する伝達物質の増産などの、飲酒による免疫系の異変を抑制してくれる可能性もあります。さらに、アルコールを分解する、アルコール脱水素酵素などの酵素を活性化する働きもあるようです。

梨・スイートライム・ココナッツミルクが活躍する可能性も

上で最後に述べた「酵素活性化」については、その可能性を暗に証明しているかもしれない実験があります。2019年に実施された実験では、果物・野菜・シリアル・スパイス・乳製品・コーヒー・茶など50種の食品が、これらの酵素の活動にどのような影響を及ぼすかを試験管内で調べました。

すると、スイートライムジュースなどの一部の食品は、こういった酵素を活性化することがわかりました。一方で、スターフルーツなどの食品は、酵素の活動を抑制することがわかりました。

研究チームは、梨・スイートライム・ココナツミルクの混合液が、実験上では酵素を活性化させるという最終結論を出しました。とはいえ、試験管内で成果が出たとしても、実際に人体に適用させるまでには、まだまだ時間がかかります。またこの実験では、梨・ライム・ココナッツジュースが大好きだと言ってくれる被験者にさまざまな処方を試みました。

二日酔い対策が進化しても、飲酒習慣は変わらない

ところで、どれほど二日酔い薬が進化したとしても、被験者たちの飲酒習慣にはさして変化を及ぼさないことがわかりました。

2017年の実験では、若年の被験者たちに対し簡単なアンケートを行い、良く効く二日酔い薬がある場合、飲酒習慣を変えるどうかを尋ねました。

すると、付き合い程度に酒を飲む人は、そのほとんどが、そのような薬があるのなら活用すると答えるに留まりました。一方で、そのような薬があれば酒量を増やすと答えたのは、13パーセントほどの比較的少人数でした。

論文の著者の主張によれば、ほとんどの人は飲酒の際に二日酔いを考慮に入れることは無く、既に酔っているのであれば、必ずしもそれ以上飲もうとはしないとのことでした。

また、2016年の研究によりますと、二日酔いのひどさの度合いは飲酒量には関連せず、血中アルコール濃度の最高値とも関連性が無いことがわかりました。

要するに、ライムジュースに頼るのは皆さんの自由ではありますが、必ずしも効果があるとは言い切れないのです。もう一度言いますが、二日酔い研究の計画を立てるのは、難しいのです。メソッドもさまざまであるため、論文上で結果を比較することも困難です。

そもそも、二日酔いを100パーセント防止する手段は、酒を飲まないことではありますが、友人たちに流し込まれるコーヒー・生卵・チリペッパーよりましなものは、他にあるはずですよね。少なくとも、味はマシでしょう。とりあえずイブプロフェンを飲んでおくことです。

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