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Hotter Than Death Valley Weird Places(全1記事)

地上で一番ホットな場所「ダナキル低地」からわかった、ヒトの進化過程&大陸の未来

地球上には、さまざまな条件によって、生物にとって過酷な環境となる場所があります。東アフリカは、“暑さ”が特徴の地域。中でもエチオピアの「ダナキル低地」は、平均気温で見ると世界一暑いエリアで、場所によってはガスマスクなしでは喉がただれてしまうほどの過酷な環境です。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、ダナキル低地を過酷たらしめる原因や、そこで見つかったヒト科の祖先の骨から見えてきた人類の進化過程と大陸の未来について紹介します。

地上で一番ホットな場所、東アフリカの「ダナキル低地」で起こっていること

ハンク・グリーン氏:地球上で一番“ホット”なエリアは、東アフリカです。しかし、ここで興味深いのは「地熱」だけではありません。

地球上でも稀有な溶岩湖が形成され、溶岩が常に表出しています。また、地球上で最も高い水温・塩分濃度・酸性度を誇る自然湖だってあります。

とはいえ、現生人類を含むヒト科は、何百万年もの昔からこの地に住んできました。極限環境の宝庫、エチオピアの「ダナキル低地」です。

ダナキル低地は乾燥しきった砂漠気候なので、主な河川は海へたどり着く前に干上がります。

さらに、ダナキル低地は極めて高温です。最高気温は、カリフォルニア州のデスバレーで記録されていますが、年間平均気温で言えば、地球上でもっとも暑い場所はダナキル低地です。しかもその記録は、ぶっちぎりでトップです。

記録によると、ダナキル砂漠の平均気温は摂氏34℃。これは、地球上のどこよりも2℃ほど高く、デスバレーより少なくとも9℃は高いのです。

ところで、高温の原因は太陽だけではありません。

ダナキル低地は、海抜マイナス125メートルという低地に位置するため、その名がつけられました。これほどまでに低いのは、ここがヌビアプレート・ソマリアプレート・アラビアプレート、3つの構造プレートの境界であるためです。

これらのプレートは互いにだんだん離れており、この地帯は沈下しつつあります。ダナキル低地は、この地域の他の特徴と同様、プレート境界としては異色です。

ガスマスク無しでは喉がただれるほどの過酷な地に棲む生物

東アフリカの地底には、地下深くから上昇するマグマの塊「マントルプルーム」が存在します。

マントルプルームは地殻に向けて上昇します。その理由は、科学者たちには完全には解明できていません。このマントルプルームにより、プレートは互いから離れつつあるのです。その結果、もともと一つだったソマリアプレートとヌビアプレートは、ダナキル低地付近で完全に二つに分かれると予想されています。

つまりダナキル低地は、「何億年も前、地球最初期のプレートが形成された過程を直に観測できる可能性」のある、貴重な場所なのです。

この地域では、頻繁に地震が起こります。また、地殻の深部でたぎる“カオスの生き証人”、有数の火山が存在します。

ダナキル低地の火山は、みなさんがイメージするような“モノクロの砂漠”とはまったく異なる様相を呈しています。ひび割れた大地は驚くほどカラフル。貴重な水は、火山から出る鉄分や銅、硫黄と岩塩などが混ざり合い、まったく泳ぐ気が起きない虹色です。

水の酸性度は、蓄電池に使用される希硫酸とほぼ同等であり、バクテリアを死滅さしめる胃酸の濃度の10倍で、地表下のマグマによって煮えたぎっています。

大気も極めて危険です。場所によっては高濃度の塩素を含有し、ガスマスク無しでは喉がただれてしまいます。

驚くべきことに、このような場所においても、極限環境微生物と呼ばれる、通常であれば生息不能な環境と思われるような地に適応した生命が見つかっています。しかも、一種だけではありません。頑健で小さな生命が、少なくとも2種類が見つかっています。

多様な極限環境に耐えうる生命は、「複数の極限環境ストレスに適応した生物(polyextremophiles)」と呼ばれています。

ヒト科の祖先「ルーシー」が発見され、進化の道筋が明らかになった

現在のダナキル低地は、灼熱の気温や喉がただれる大気、煮えたぎる酸性のプールなど、極めて過酷な環境。そのため、大型の生命体は見られません。そんな中でも、人類は時折り訪れていました。

1974年、科学者の一行が、かつてこの地に住んでいた、“アウストラロピテクス・アファレンシス”というヒト科の骨格の一部を発見します。その夜、ビートルズの曲に耳を傾けていた一行は、発見した骨に「ルーシー」という素晴らしい名前を付けました。

「ヒト科」とは、数百万年前に、アフリカの類人猿から分化した、すべてのヒトを指します。ルーシーは、3百万年弱前に生きていました。

一行が彼女を発見した時点では、ルーシーは、これまで発見された中で、最古にしてもっとも保存状態の良い初期人類でした。ルーシーの発見により、ヒトの進化の道筋は明かされ、多くの疑問点が解明され、さらなる謎が生まれたのです。

ルーシーの知名度に相反して、ルーシーや彼女に近い親類が、人類の系譜のどこに位置するのかは、実はいまだよくわかっていません。でもご安心ください。科学者たちは究明するでしょう。それが、彼らの仕事ですから。

何百万年か先、アフリカとアラビアは遠く離れているかも?

ところで、今わかっているのは、ルーシーが生きていた時代には、ダナキル低地は現在のような様相を呈してはいなかったということです。

プレートテクトニクスによる灼熱のマントル上昇や、高い酸性度、火山活動の独特のコンビネーションは、恐らく過去1世紀で活性化したものであり、永遠には続かないでしょう。

何百万年か先の未来では、アフリカプレートとアラビアプレートは遠く離れ、近くにある紅海の海水が、今まさに作られつつある低地に流れ込むでしょう。そして、かつてルーシーが樹上生活を送っていた場所には、新たな海が創られることでしょう。

このように奇妙でユニークな地が存在し、実際に観測したり議論したりできる。まさにその時代に地球上に生きる私たちは、なんと幸運なことでしょう。

幸運という言葉はちょっと大げさかもしれませんね。でも、すばらしいことだとは思いませんか。人類は、未知を究明することが大好きです。ダナキル低地のように、隔絶された過酷な地を研究し、世界を知ることに駆り立てるのは、まさにこのような知的好奇心なのかもしれません。

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