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How Studying Animals Is Helping Us Make Better Drones(全1記事)

“完璧なドローン”のお手本はコウモリや昆虫 科学者たちが注目する、動物たちの飛行能力

ドローンの実用化にはたくさんの期待とさまざまな課題があります。パーフェクトなドローンを開発するために、エンジニアたちが手本にしているのは、実はコウモリやアブラヨタカ、昆虫などです。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、3億年以上も前から自由に飛行していた自然界の生物たちの優れた能力と、今後のドローン活用の可能性について紹介します。

ドローン開発のお手本は自然界の生物

マイケル・アランダ氏:ドローンは素晴らしい技術ですが、まだまだ改良の余地はあります。例えば、煙や霧の中では、ドローンは無力です。

また、機体がまだ大型であることも課題です。僕なら、指先にちょこんと乗る、虫のような手乗りドローンがあればいいな、などと考えてしまいますね。

このような課題を解決し、パーフェクトなドローンを開発するために、エンジニアたちは、自然を手本にしています。なにしろ、動物たちは3億年以上も前から空を飛んでいた、大先輩なのですから。

いずれドローンは「聴覚」によって飛行できるようになる?

自然界から学べることは、ナビゲーションや機体の小型化、さらには飛行に最適な色に至るまで、多岐に渡ります。

ドローンが周囲にある物を認識できると役に立つシチュエーションは、いくらでも思いつきます。例えば、燃えさかる建物の中、煙が充満した室内で進路を確保できれば、人が閉じ込められている可能性があるエリアをスキャンして、消防隊の人命救助に役立ちます。

煙の中で視界を確保するのは、微細な分子が可視光線を拡散するため、非常に困難です。煙だけでなく、霧、雪、ホコリなど、光を拡散してしまう大量の分子は、行く先の視界を極めて悪化させ、レーダーでさえ惑わせることがあります。

ドローンがこのような状況下でもナビゲーションできるように、科学者たちは、目以外でも「見る」ことができる動物たちを研究しています。

コウモリは、発した音波が反射して戻って来るまでの時間を基に周辺の環境を把握する、エコロケーションを使って、周辺の環境を把握します。音は圧力波の一種であり、分子に跳ね返されることなく、大気中を進むことができるのです。

科学者が2人ほど、コウモリを参考にしてドローンを開発しましたが、実はコウモリを真似することは、非常に困難です。コウモリは、今日開発されている多くのドローンよりも小さくて機動性が高く、脳と身体の多くの機能をエコロケーションに特化し進化させており、簡単には真似できません。

そこで、別の科学者チームは、コウモリではなくアブラヨタカに目を付けました。アブラヨタカは、南アメリカに生息する鳥で、エコロケーションを使って洞窟の中の様子を把握します。

アブラヨタカは、コウモリよりも体格が大きく、エコロケーションの機能もそれほど繊細ではない上、頻繁には使いません。明るい所では主に目を使い、あたりが暗くなると、徐々に耳に切り替えます。このようなシステムの切り替えは、ぜひとも全自動ドローンに取り入れたい機能です。

とはいえ、アブラヨタカにヒントを得たドローンが市場に出回るのは、当面先のこととなりそうです。ドローンが「聴覚」によって飛行するには、アブラヨタカの脳が、周囲の多角的な情報をどのように一枚絵にまとめているかを知る必要があるからです。

極小ドローンに穀物の受粉を行わせる研究

現行のドローンが、アブラヨタカと互角である点は、大きさがほぼ同じであることですが、ドローン技術の大きな課題の一つが、小型化です。問題となってくるのは、小型ドローンは物理法則上、大型ドローンと同等の飛行ができない点です。

現行のドローンは、飛行機のように固定された翼か、ヘリコプターのように回転するブレードを持っています。固定翼や回転ブレードのわずか数センチメートルの長短の差で、ドローンは滞空する揚力を失います。そして小型であればあるほど、大型の物が受けるような空気の流れは得られません。空気は停滞し、ちょっとしたランダムな気圧の差に影響を受けて安定性を失い、飛行で得られる揚力を失ってしまうのです。

とはいえ、小型の物であっても滞空できることは、昆虫の存在が証明しています。研究者たちは、昆虫を手本に小型化を研究しています。例えば、昆虫は回転翼も、固定翼も使いません。常に羽ばたいて滞空しています。そして小型の虫ほど、羽ばたきの回数は多くなります。滑空するのではなく、空気を押す飛び方が適しているため、小型の物が飛ぶには、羽ばたく翼の方が優れているのです。

そこで、エンジニアたちは、羽ばたく昆虫をモデルに、「小型羽ばたきドローン」を誕生させました。現在は、極小の機体に搭載できる性能のバッテリーを開発中です。また、この小型メカ昆虫に、実際の昆虫と同等の安定性を与えるべく研究が行われている最中です。

極小ドローンには、将来的に、精密農法での穀物受粉を行わせることなどが想定されているようです。ハチを訓練して受粉を手伝わせる手もありますが、常に人の指令通りに働かせることは困難でしょう。だとしても、クラシックな黒と黄色のスーツで、びしっとキメたハチを、どうして責めることなどできましょうか。

少ないエネルギーで移動するためには、すべてのドローンの色は黒であるべき

ところで、ハチにもさまざまな色のものがいますが、それはドローンもまた同様です。彩色は、ドローンの見栄えをよくするだけでなく、飛行性能も向上させることが、動物を研究することによりわかってきました。現行のドローンは、おおまかに黒か、それ以外の2種に分けられますが、実はすべてのドローンは、黒であるべきなのかもしれません。

さて、多くの動物は、体の下部は明るい色彩で空に溶け込み、上部は暗い色彩で下の物に溶け込む「カウンターシェーディング」です。少なくともこれまでは、そう考えられていました。

しかし、鳥類やイルカ、オルカなどをモデルにした実験によりますと、背中が暗い色彩である利点は、カムフラージュだけではないことがわかってきました。背中の暗い色は、空中、水中のどちらにおいても、熱を吸収・放射するため、動物が移動する際の抵抗を減らします。太陽光で速やかに温まり、周辺にその熱を伝達するため、周辺の大気や水の密度が低下し、移動が容易になるのです。

つまり、可能な限り少ないエネルギーで移動するドローンを手に入れるには、本能的に「かっこいい」と感じる色、つまり黒い物を選択するべきなのです。

ですから、あなたに「黒を着すぎじゃない?」と言う人には、「空気力学を応用しているんだよ」と教えてあげましょう。そして、ちっちゃな黒いドローンが、金属音をたてて頭上を羽ばたいて来た時は、この驚嘆すべきテクノロジーの礎となった動物や人に、ぜひ感謝の念を抱いてくださいね。

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