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「1日1万歩」には根拠なし 健康維持の秘訣は歩数よりも運動時間 

1日1万歩歩くことが健康にいいと聞いたことはあるでしょうか。世界初の「万歩計」が開発された日本がルーツのようですが、実際のところ、1万歩という歩数に関しては科学的根拠はないのです。運動をすることが健康維持に役立つことは確かですが、重要なのは運動の歩数ではなく時間でした。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、1日1万歩の由来について解説します。

「1日1万歩」に科学的根拠はない

ステファン・チン氏:フィットネストラッカーや歩数計の注意書には、可能であれば、健康維持のためには少なくとも1日1万歩は歩くべきだとあります。しかし、これはどういった理屈なのでしょうか。もちろん、運動が健康維持に良いことは当然ですが、なぜ医師や科学者は、健康と美容に良いのは「1万歩」だと断定したのでしょうか。

結論からいうと、医師も科学者も、どうやら関係してはいません。単に、耳障りがよくキリの良い数字というだけで、「1万歩」には、実際には科学的根拠は無いようです。

わかっている範囲では、この歩数のルーツは、世界初の携帯式万歩計が開発された1960年代半ばの日本のようです。万歩計を開発した企業は、このデバイスを「万歩計」と名付けました。これは、翻訳すると「1万歩メーター」という意味です。

1964年の東京オリンピックに合わせ、このような「誇大広告」のプロモーションが行われました。

この巧妙なマーケティングの余波で、何十年も経った今も、人々は、この膨大な歩数を達成しようとウォーキングに励んでいます。しかし、それ以上の意味は、なんらありません。

ウォーキングその他の運動で重要なのは、歩数よりも時間

最初に呈示したとおり、1日に1万歩歩くことが、健康維持のためのゴールだと結論づける証拠は、どこにもないのです。その代わり、ウォーキングその他の運動においては、スピードの方が、ずっと重要であるという研究が数多く存在します。

また、適度もしくは激しい運動が、不安の軽減・睡眠の質の向上・骨の増強など、うつ病の症状を抑えることが、複数の論文で示されています。公に出されているヘルスガイドラインが、運動の歩数ではなく運動時間を指定しているのは、このためです。

例えば、Physical Activity Guidelines for Americans(「アメリカ人のための身体運動ガイドライン」)には、「成人には最低でも、毎週150分の適度な運動、もしくは75分の激しい運動が望ましい」と記載されています。

時速4キロで1日2,100歩歩けば適度な運動になる

ところで、こういったガイドラインを歩数に直したいと真剣に願う場合は、実はそれは可能なのです。ためしにこれを、「適度な運動」に変換してみましょう。「適度な運動」を行うには、普段よりエネルギーを3倍多く燃やす必要があります。ある研究によれば、これは成人であれば、1分100歩のペースでのウォーキング、時速でいえば4キロメートル程度のそれと同等です。

アメリカのガイドラインを充足させるには、一週間このペースで1万5千歩、もしくは一日約2,100歩歩けばよい計算になります。万歩計にはダメ出しをされるかもしれませんが、心拍数は着実に上がります。

とはいえ、この歩数に達していなくとも心配はいりません。一定量のウォーキング運動以外にも、運動の方法はいくらでもあります。肢体が不自由であったり、身体に障害があっても、万歩計に監視されることなく、健康的でアクティブな生活を送っている人は大勢います。

いずれにせよ、健康を維持するには「適度な運動」または「激しい運動」を行うに越したことはありません。

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