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Hacking the Brain: The Future of Prosthetics(全1記事)

脳と体をハッキングする——義肢装具の未来

もしも、神経システムや筋肉をハッキングすることができたら? まるでSFのような話ではありますが、世の中にはすでに人の神経システムをハッキングすることに特化した研究があります。脳波を読み取るだけでなく、筋肉との連携ができるようになれば、麻痺した体を動かせるようになるかもしれません。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、人体をハッキングするさまざまな試みとその可能性について紹介します。

人の神経システムをハッキングする研究

ハンク・グリーン氏:「ハッキング」と聞くと、誰かが地下室かどこかで大量のコードをコンピューターに打ち込んで、あなたの銀行口座にアクセスしようとしている様子を想像するかもしれません。しかし、実際はすべての「ハッキング」が悪いものではありません。それに、必ずしもコンピューターシステムに入り込むということがゴールでもありません。

世の中には、「BCI(Brain-computer Interface)」とも呼ばれる「脳コンピュータインターフェース」を用いて、神経システムをハッキングするという分野だけに特化した研究が存在します。「BCI」は人が自分の意識だけでなく、その感覚で人工装具をコントロールできるようにしてくれます。そしていつか、その技術を使って麻痺した患者を助けられる日が来るかもしれません。

現代の人工装具はだいぶ進歩してきました。例えば、以前よりかなり軽量化されましたし、自然に見えるものもあれば近未来的なデザインのものもあるなど、そのデザインも幅広いです。

しかし、それでもさらに多くの障害が存在します。多くの人工装具は動くことができません。それに、動いたとしても、利用者が音声による司令を出したり、他の神経や筋肉と連携しなければなりません。

それに、ほとんどの人工装具は、本物の四肢とは違い、四肢が何をしているかという情報を脳に送り返すことはできません。そうなると、自然に指を動かすなどの動作が制限されてしまいます。それに、掴んでいるグラスが滑っているとか、割れたといったことを感じ取ることができません。そこで出てくるのが「BCI」です。

人の神経システムと電気の共通点

考えてみれば、電気と神経システムには類似点がたくさんあります。通常、すべての神経システムは「送受信機」のような働きをしています。つまり、電気でいうところの情報を送ったり受け取ったりできる機械です。

体の中で、このコミュニケーションが動きをコントロールしたり、起きたり寝たりするといったステータスを変更します。神経システムはすべての感覚器官からの情報を受け取りますが、人工装具の場合、最も重要なのは触った感覚の情報です。触感は体の部位が熱い、または冷たい、もしくは緊張しているかリラックスしているかといった情報を脳に送り、体の残りの部分にとって、どの位置にそれがあるのかを記憶してくれます。

脳は非常によく組織されているので、科学者はこの触感の情報にアクセスすることができます。例えば、モーターと体性感覚皮質は体の動きをコントロールし、触感をプロセスし、体の部位によりアレンジされます。もし、体の各部位を処理するのに脳がどれくらい使われているかを表にしたら、かなり調和がとれていないように見えるかもしれません。

しかし、その脳の部分はとてもよく組織されているので、研究者は「BCI」を使って、触覚のチャンネルにつなげてそれを聞いたり、自分の信号を送ることすらできてしまうのです。電気と神経システムはその働きが似ているだけではなく、互いに調和しているのです。

両方とも電流を使って情報を流します。神経システムを構成しているニューロンは、荷電粒子やイオンを膜組織で動かすことにより、電気化学的に情報を送ります。これらのイオンは電流を作り出し、それが活動電位と呼ばれる電気信号の発信を促し、その信号をネットワーク内の次のニューロンへと送ります。

活動電位は、神経システムをコンピューター化します。なぜならそれは二成分、つまりそれには二つの選択肢しかないからです。ちょうど1や0がコンピューターで用いられるのと同様に、活動電位も「発する」か、「発さない」かしかありません。

脳コンピューター「BCI」を搭載した人工装具の登場

EEG(脳波)センサーを使って、研究者は頭蓋骨のすぐ下で起こる、そうした電気信号を読み取ることができます。

それに、電極を直接脳に埋め込むことにより、体から行き来する信号を記録することもできます。

そのような道具を使って、彼らは四肢をコントロールする脳の部位の動きを見て、いつどのニューロンが働いているのかを知ることができるのです。その「発する」か「発さない」かのパターンが神経コードを作ります。人がコップ一杯の水に手を伸ばした時、静かに座っている時などの動きに応じた、ユニークなパターンができます。

それができたら、次に研究者がやらなければならないのは、その神経コードを、コンピューターがロボット四肢をコントロールするのに用いる時の言語に翻訳することです。

人工知能の進歩とともに、「BCI」搭載の人工装具はすでに利用されています。エンジニアは利用者が自分の意思で四肢が動くように「BCI」を訓練するのを助けています。そうすることによって、もっと自然に四肢をコントロールすることができるからです。

それに、最近の人工神経の進歩により、人工四肢は神経システムにフィードバックを送ることができるようになりました。例えば人工の触感神経は、圧力や振動を感知できるセンサーがあります。それが義手の指先にあれば、利用者がテクスチャーを感じたり、力を入れて握ったりできるので、グラスを落として割ってしまう失敗を減らすことができるでしょう。

人体をハッキングできれば、麻痺した体を動かせるようになる

この技術は十分実用的なので、すでに利用者がいます。彼らは脳に電極を埋め込んでいたり、EEGの機械を身につけています。それでもさらなる改善が必要です。例えば、「BCI」は非常に高価なので、それを利用できる人は限られてしまいます。しかも、バッテリーの持ちも良くありません。

それに忘れてはならない点として、これは「ハッキング」することが必要なので、「BCI」が進歩したり、多く利用されるようになれば、デジタルセキュリティも考えなくてはなりません。現段階では、科学者たちが「BCI」の利用範囲を広げることにより、それを車椅子や軍事外骨格、スマートウォッチや車などに応用できないか実験しています。

また、彼らは進歩したバージョンで、麻痺した人や脳性麻痺などで体を動かすことに制限がある人を助けられないか研究しています。その技術は、人工装具よりずっと複雑です。なぜならその場合、「BCI」は脳が四肢に送る信号を学ぶだけでなく、筋肉と正しくコミュニケーションを取らなければいけないからです。

そのようなチャレンジがありますが、「BCI」は、すでに世界中の多くの人々の生活を変えています。私たちはすでにまったく新しいタイプの人間と機械の融合を目の当たりにしているのです。「BCI」を用いて人工装具を改善するのは、ハッキングを良い仕方で用いる方法かもしれませんが、通常ハッキングは悪いことです! もしあなたが使うインターネットが保護されてない公共のネットワークだった場合、自分がしっかり保護されているか確認するべきでしょう。

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