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That Time the US Government Poisoned Alcohol(全1記事)

お酒を飲んで数百人以上が大量死 約100年前のアメリカで起こった、アルコールをめぐる騒動

古今東西、お酒は多くの人に愛されてきました。ほどよく飲めば、ストレス解消になるお酒が、過去に大量死を引き起こしたことはご存知でしょうか? 今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、アルコールを巡って、約100年前のアメリカで起きた騒動について紹介しています。

約100年前に起こったアルコールでの大量死

ステファン・チン氏:1926年のクリスマスイブ、ニューヨークのある病院に60人以上の患者が運び込まれました。患者たちはみんな重篤で、精神錯乱していました。そして医師たちの懸命な処置にもかかわらず、数日のうちにそのうち半分の患者が亡くなりました。

原因となったのは病原性インフルエンザでも毒キノコでもありませんでした。原因となったのはアメリカ政府により毒を入れられたお酒だったのです。そうやって聞くとただの陰謀説のように聞こえるかもしれませんが、これは本当に起こった話です。

1920年代、政府政策者と違法なアルコール飲料販売業者の間での化学戦争は結果として何万人もが毒を摂取し、何百や何千人もの死者を出したのです。

アメリカにおける「狂騒の20年代」は、ジャズ、フラッパードレス、スピークイージー(アルコール飲料の密売所)、そして映画『グレート・ギャツビー』に出てくるような贅沢なパーティーであふれていました。

しかし、当時のアメリカは禁酒エリアだったのです。18期改正により、アルコール飲料の製造、販売、輸入と輸出が禁じられ、それが1920年代に施行され、1933年まで撤回されることはありませんでした。それが時には命を脅かすことになったのにもかかわらず、それでも非常に多くの人たちが飲酒を続けました。

アルコールは違法になると、人々はお酒を求めて闇取引に行くようになりました。しかし通関手続き地の厳しい管理のせいで、密輸業者は大量のお酒を密輸することができませんでした。そこで、酒類密輸業者は代わりに工業用アルコールを盗むようになりました。

エタノールはアルコール飲料に含まれる主なアルコール成分ですが、同時に化粧品や医薬品、家庭用のペンキなどの様々な物に含まれています。しかし世紀の変わり目に、エタノールは飲むこともできたので、そのような用法で純粋なエタノールを使うために輸入される時の輸入税が非常に高額になりました。

そこで、酒類が禁止される15年ほど前の1906年、アメリカ政府は工業用アルコールを安価にするため、毒性の化学物質を加えるようになりました。その方法はすでにヨーロッパで採用されていたのです。

工業用アルコールにはよく知られた毒性のガソリン、クロロホルム、メタノールが加えられるようになったのです。そのようにして飲料用でなくなった工業用アルコールは、18期改正法案が施行された時、禁止されませんでした。しかし、工業用アルコールを飲めるようにするには、「蒸留」さえすればよかったのです。

「蒸留」とはアルコールを沸点まで沸かして、蒸発したものを集めて冷やすという作業です。

この作業をきちんと行えば、有毒物質の沸点とアルコール物質の沸点が異なれば、少量の有毒物質でも取り除くことができるのです。アメリカ財務省によれば、禁止令が出されてから初めの数年間で、飲料用のアルコールにするために数千万ガロンの工業用アルコールが盗まれました。

そして1926年、カルビン・クーリッジ大統領は科学者の力を借りて、すでに有毒だった工業用アルコールを、メタノールを加えることにより、さらに猛毒にしました。

工業用アルコールにはすでに幾らかのメタノールが含有されていましたが、政府はもっと多く、時には製品の10%もの量のメタノールを加えるようになりました。この政策こそが、人々の中毒と死の原因となってしまったのです。

アルコールが身体をむしばむメカニズム

アルコールを全く飲まないのも健康にはいいですが、メタノールはエタノールよりもずっと有害です。これら2つの成分はたった1つの炭素と2つの水素が異なるだけですが、その違いだけで、片方は飲料に、もう片方は有毒になるのです。

肝臓の中で、アルコール脱水素酵素と呼ばれる酵素がアルコールから水素を取り除きます。

エタノールはアセトアルデヒドに変わり、その後、酢に含まれる酢酸と同じ成分のものになります。

メタノールもまたこの同じ酵素により分解されますが、水素を失うとホルムアルデヒドを生み出し、代わりに蟻酸になります。

この蟻酸が有毒なのです。蟻酸は、細胞が糖分と酸素を有効なエネルギーに変えるのに必要なカギとなる酵素を阻害してしまいます。それで、たくさんの食物を摂取しても細胞が飢餓状態のままになってしまいます。

それゆえ、蟻酸が体内にたまると、胃や腸に穴が開いたり、吐血したり腎臓機能停止などの恐ろしい状態を引き起こしてしまうのです。

その中でもっとも共通の症状は幻覚です。ちょうど1926年のニューヨークの病院に運び込まれた患者たちが経験した幻覚症状です。なぜなら、視神経という、目から入った視覚情報を脳に伝える神経はたくさんのエネルギーを必要とするので、蟻酸の毒の影響を一番先に受けてしまうのです。

それにその後遺症はなくならないことも多く、それによりメタノール中毒患者はよく失明してしまいます。

原則的には10%のメタノールでも蒸留をすることで取り除くことができますが、酒類密輸業者の化学者たちは十分な機器を持っていませんでしたし、大変せかされていました。それにアルコールは違法でしたから製品が安全かどうか確認する人もいなかったのです。

はっきりとわかってはいませんが、1933年に禁令が解かれるまでに、政府により毒を混入されたアルコールにより命を落とした人は一万人以上に上るとみられています。人を殺害するためにされたことでなかったのですが、結果的にそうなってしまったのです。

それにこれらの死は大きな政治問題になってしまったので、1920年代の終わりには取締人たちは徐々に、蒸留でもの取り除けない有毒成分の代わりに、毒素の少ない染料を使うようになりました。

例えば、1930年にアメリカ政府は腐った卵のような匂いのする硫黄化合物であるアルコール変性剤を発見したと発表しました。そんな匂いのするジン・トニックは飲みたくないでしょう。

現在でも、いくつかの工業用アルコールの中にはメタノールを含むものもありますが、18期改正が取って代わられた後、それを飲む理由もなくなりました。ですからありがたいことに、現在、アメリカで報告されるメタノール中毒の報告は少なくなっています。

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