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生き方改革のためのライフデザインとは? ライフシフト・ジャパン代表に学ぶ『ポスト平成のキャリア&ライフデザイン』(全2記事)

真の働き方改革は「生き方改革」 ライフシフト・ジャパン代表の“人生を再設計する10ヶ条”

2018年6月27日、早稲田大学日本橋キャンパスWASEDA NEOにて、「生き方改革のためのライフデザインとは? ライフシフト・ジャパン代表に学ぶ『ポスト平成のキャリア&ライフデザイン』」が開催されました。ライフシフト・ジャパン株式会社代表の安藤哲也氏が登壇し、世界に類を見ない少子高齢化社会を迎えている日本で、「働き方改革」の先にある「生き方改革」に着目し、人生100年時代のライフデザインについて語ります。

プロミュージシャンを目指した大学時代から出版業界へ

安藤哲也氏(以下、安藤):そこで、ここからは僕のこれまでのライフシフトのお話をしたいと思います。別にこれがロールモデルという意味ではありませんよ。僕もぼんやりした青春時代を過ごしてしまいまして、実は大学4年になっても就職活動をしていなかったんですね。なぜかというと、ミュージシャンになりたかったから。

中学生の頃からギターをやってバンドを組んで、大学も明治大学の軽音楽部という、宇崎竜童さんや阿木耀子さんを輩出したサークルの後輩なんです。やっぱり、かなりうまいプレーヤーがいっぱいました。自分もミュージシャンになれるかな? と思ってやっていたのですが、4年生の10月ぐらいに才能がないと気が付きました(笑)。

そこから就職活動をしようと思っても、ほとんど残ってはいないわけですよ。でも、あの頃のマスコミは10月からスタートといった感じでした。音楽の次に好きだったのが本なので、講談社、小学館、マガジンハウスまで全部受けましたが、15社全敗(笑)。

そりゃそうでしょう、なにも勉強していませんでしたからね(笑)。あの頃は、やっぱり出版社の採用倍率はすごく高かったですから。それで、「しょうがない、留年でもするか」なんて思っていたら、翌年2月1日の新聞の求人広告で、あるちっちゃな出版社が「新卒者募集」とあったので、すぐ電話してみると「じゃあ面談に来て」と。行ったらその場で受かっちゃったんです。その会社からすれば9年ぶりの新卒(でした)。

(会場笑)

安藤:前の年に(本が)1個当たったらしくて、人を採らなきゃとなったらしく、その場で入社して3月1日から働いていました。(その会社で)やっていた仕事は出版営業と言って、担当する全国の書店をルートセールスして、自分のところの本を置いてもらっていたんです。

それを2、3ヶ月ぐらいやって、まあそれなりに面白くはあったのですが、「別にこれ、俺じゃなくてもいいや」と気づいちゃいまして(笑)。いろいろと業界の知識はついたので、その半年後には1社目を辞めていました。 2社目は自分の好きな分野の出版に携わりたいと思って、音楽雑誌を出している出版社に行きました。そこでも営業をやってました。

ただ、音楽(関係の)出版社にいると、コンサートの無料招待券などがいっぱいくるんですよ。それで(コンサートに)行って、気が付いたんです。「やっぱり、タダだとつまんねえな」と(笑)。昔、高校時代に、外タレがくると夜中までチケットガイドに並んでね。それで(コンサートに)行くと、やっぱり興奮するじゃないですか。

タダでもらったコンサートチケットやCDは、やっぱりぜんぜんおもしろくないですよ。だから、趣味と実益をいっしょにしたくないとそこを辞めました。3社目は、男性ファッション雑誌(の出版社)に入りました。当時はバブルで、広告売上がすごかったんですよ。月刊誌だったのですが、号あたり2億、多いときは3億ぐらい広告が入る時代で、アルマーニなどが流行っていました。

ポルシェや外国のブランドがぶわーっといるような感じで。当時、僕は29歳で、冬のボーナスに1回200万も出たことがありましたね。でも、そのあとに、バブルがはじけて広告収入が落ちてしまい、目の前でリストラの憂き目に遭う先輩たちを見て、「あ、これからは会社に入って言われたことだけをやっていたんじゃだめだな」と(感じました)。

初めての子どもを授かった書店員時代

とはいえ、手に職がないので、なにかここで違う分野へ入ってみて、少しそこで修行を積んで、その業界のなかでのステータスを取りたいと思いました。そこで、僕は30歳で今度は本屋さんになったんですね。

まったく関係なくはありませんが、本をつくるメーカーから、今度は流通のほうに行ってみた。若い頃はスーパーで販売のバイトなどもしていたので、わりと接客が好きなんですね。本の知識もちょっとあったのでやってみたら、「これはおもしろい!」とハマってしまって、自分でお店を2つ切り盛りしていました。

オーナーではなく雇われ店長でやっていたのですが、そのときに風変わりな町の本屋をつくって、それが評判になりました。30代ぐらいで、はじめて仕事での達成感を持つことができました。その書店時代に2つ目の大きなライフシフトがくるのですが、ここでまさにライフ、35歳で自分の子どもが生まれるんですね。

冒頭で言ったように、今までの日本は、子どもが生まれたときに男は仕事して母親が家事、育児だったのですが、これからは男性もやったほうがいいんじゃないか? と。つまり、育児というものにコミットしてみることで、自分自身が成長したり、仕事にも好影響が出たり、あるいは人生が豊かになっていくようなイメージが頭にありました。

おっぱいの代わりに用意した100冊の絵本

一人目の子は娘が生まれたのですが、妻のお腹にいるのが娘だとわかった瞬間に、僕、絵本を100冊も買って誕生を待っていたんです。なぜかというと、男は丸腰では(赤ん坊に)向き合えないだろうと。母乳というリーサルウェポンもないし、なにかコミュニケーションツールが必要なんじゃないかと思いました。

本屋をやっていたんで、安く買えるということもあり(笑)、100冊の絵本と本棚まで買って、誕生を待っていました。それで、娘が生後6ヶ月ぐらい経つと首が座っておすわりをするんですね。「今日からだ」と思って、はじめて松谷みよ子さんの『いない いない ばあ』という本を読んだら、娘がキャッキャッと笑ってくれて。それで、もう「キター!」と(笑)。

俺の35年間、この日のためにあったような感じです(笑)。その日から、毎晩欠かさず2冊ずつ娘に絵本を読んできました。それがあるから、今日は仕事を早く終えて帰ろうと。今でいうワークライフバランスを自分で実践するようになったんですね。

義務的にやらされている育児や家事だとそうはなりませんが、絵本を通して(子どもと)コミュニケーションを取ることが、1日のなかでも最高の癒しタイムでした。

あとは、子どもというのはやっぱり、年齢や絵本によって、ぜんぜん反応が違うんですよ。同じ絵本でも、成長していて、脳が発達しているので、どんどん(反応が)変わってくる。それ(子どもの成長)を見るのがすごく楽しくて、ハマってしまいました。

ファザーリングジャパンの誕生

でも、もちろん仕事もしていましたし、趣味でロックバンドもやっていましたから、自分事というのを、切り分けずにやっていました。この子育てをしたことで、3つ目のシフトが起きたのです。

(僕は)保育園、学童の父母会長、小学校のPTA会長をやったりしました。今でも学校で読み聞かせをやったりして地域活動を楽しんできました。そして、「父親であることを楽しもう!」というコンセプトで、ファザーリング・ジャパンという、パパ支援のNPOをつくることができた。

20代の頃は、まさか自分が40代になって転職して、子育て支援のNPOの代表になるなんてぜんぜん思っていませんでしたからね。当時はバブルだったし、転職を繰り返して年収をあげて、キャリアを積んで、最後はお台場あたりの高層マンションで毎晩素敵なワインを飲んでいる、というようなプランでした(笑)。

(会場笑)

安藤:そんなイメージが、僕のキャリアのビジョンだったのですが、ぜんぜん違う方向にいきましたよね。人生とは予期せぬことが起きるんだなと。

それを変えてくれたのは、子どもだったんです。子どもってすごい力を持っているなと思いました。だから「お父さんになったら、せっかくだから(子育てを)やったほうがいい、育児にコミットすることで自分が変身できるチャンスが掴めるかもしれないよ」とパパたちには伝えています。

そういうことで今は、6枚の名刺を持っていろんな活動をしています。けっこう毎日いろんなテーマで仕事が来るので、名刺を切り分けて使っているような状況です。でも、今後もなにが起きるかはわかりませんから(笑)。このまま終わるのもつまらないので、もっと楽しむためにいろんなシフトを目指していきたいです。

だから、こうした新しいみなさんとの出会いを大事にしたいなと思いまして。僕は、ひょっとしたら、この中に僕の人生を変えてくれる人がいるかもしれない、という感じで今日も来ています。

天秤型と寄せ鍋型のワークライフバランス

そのときに心がけたこととしては、やっぱり仕事だけの人生、子育てだけではなくて、ぜんぶをひっくるめて楽しめないかと思ったんですね。これがファザーリング・ジャパンでお父さんたちに提唱している、「寄せ鍋型のワークライフバランス」というもの。ハッピーになるためのバランスの取り方だと思っています。

つまり、今までは仕事か育児かのように、ほとんどの人が二択の天秤型だったんですね。僕も最初はそうだったんです。父親になって3年ぐらいは「子どもに会いたいんだけども、今日は残業があるから無理だ」と帰れなくて悩んでいたり。あるいは、育休なんか取ったら、やっぱりキャリアに傷が付くんじゃないか、というようなありがちな考え方でした。

揺れる天秤のように、どちらかを犠牲にしてどちらかを成り立たせることを、トレードオフの関係というんですね。そうすると、本当に一瞬しか平衡にならない。いわば、常にワークライフ・アンバランスな状況になっているんですよ。

アンバランスだと、人にとっては不安だったりストレス(を感じる状態)ですから良くはならないですよね。それを解消するにはと思って、なにかの本を読んだときに「あ、こういう(寄せ鍋型のワークライフバランスという)考え方があるな」と思いました。

だから、自分の人生に起きることから逃げずに、仕事も育児も趣味も、まるで寄せ鍋のように、具材として放り込んでしまう。それでいろんな味がブレンドされますよね。相乗効果も生まれる。その味わい深い人生を日々で楽しめばいいんだということがわかったんです。

実際に僕は、仕事は出版社でマーケティングや広報をやっていたので、それが実は学校のPTA活動に活きました。「なんだ、これはお父さんたちも、自分の会社の本業が学校や地域でいろいろと使えるじゃん」と思ったんですよね。あとはやっぱり育児をやったおかげで、父親の介護も少しできました。

育児と介護は、けっこうやることが同じなんですよ。ご飯をつくって食べさせたり、お風呂に入れたり。ただ体重が20倍になっただけですから(笑)。ぜんぶイクメン時代に経験しているので、そこのハードルは低かったということはありますね。

ボランティアで広がる「絵本ライブ」

あと、僕は趣味がギターで、育児で絵本を読んでいましたから、今はパパ仲間と「絵本ライブ」というものをやっています。『ぐりとぐら』、『すてきな三にんぐみ』といった有名な絵本に曲をつけて、よく保育園や図書館で子どもたちやパパママと楽しみます。

それを見ているお父さんたちも「あ、俺もギターやってるから、ちょっとやってみようかな」というような感じで、今、その輪が全国に広がっていっているんですよね。なんだか、そういうのを客観的に見ることで自分のキャリアの概念が変わってきたんです。これからのキャリアは、自分の人生を構成する、あるいはやってくる一連のできごとから、逃げずにそのステージ上で楽しいダンスを踊るようなものなんじゃないか、ということです。

やってきた出来事やチャンスをどのように受け止めて、楽しめるか。それによって思わぬキャリア形成につながっていく。そういうことなのかと、自分でやってみて感じました。ライフシフトにはいろんな考え方があると思いますが、僕は考え方や行動指針の基本としてこの「寄せ鍋型ライフ」がいいんじゃないか、これが変化のきっかけになるかもしれない、と思っています。

そこで大事なのは、どれも100パーセントではやらないことですね(笑)。どれも7掛けぐらいでこなしていく。だって24時間は増えないわけで、自分の睡眠時間を削ってやるのはあまりよくないと思うから。仕事も「今日はこのくらいでいいかな」と。あるいは子育ても完璧は目指さない。

だいたい人間は完璧を目指すから、理想が高いから現実に悩むんです。だから、あらかじめ6~7割ぐらいで仕上げるような意識は、とても大事だと思ったりしますね。

一番ハードルが高かったパートナーの理解

あとは、今は情報発信の時代ですから、自分だけのことではなく、そうしたものを外に発信するために、どういったインパクトを持たせられるかという点で僕が心がけていることがあります。それは、常に逆張りをすることです。みんなが否定したり、関心なさそうにしているもの、つまらなそうにしていることを、どう楽しむかという方法を開発して、それを発信するといったことをしています。

ライフシフトにはいろんなリスクも伴うので勇気のいることなのだけど、僕が楽天を辞めてNPOの代表になったときに、確かにリスクはありました。なにがというと、やっぱり経済的リスクです。ここだけの話、年収が当初3分の1になったのですね。

でも、家族や地域の人といる時間が4倍になりました。それをどう見るかということですよね。自分の中にはNPOの事業でもやっていけるという自信があったので、緻密な事業計画をちゃんと立てて、それで日本政策金融公庫から借金をして、やってきたんです。

1番ハードルが高かったのは、妻ですね(笑)。パートナーの理解というのが、ないままにやるとあまりよくないなと思ったので。でもちょうど、転職したいんだといったときに、妻のお腹の中には3人目がいたんですよ。「普通こういうときに夫は仕事辞めないわよね」と言われました(笑)。

(会場笑)

安藤:「いや、そうじゃないんだ。自分にしかできないことで、楽しく仕事がしたいんだ。」と言って。三日三晩、妻の前でプレゼンをしました。そこでようやく「あんたがそこまでいうんだったらやってみなさい」ということで、応援してくれるようになりました。

ライフシフトには、勇気だけじゃなくて、周囲の理解といったものを、どううまく形成できるかがポイントだということ。あと、「成長していくとわかっている企業をどうして辞めるの?」というようなことを、いろんな人からも言われたんですよね。あのままいけば、たしかに役員ぐらいにはなっていたと思いますが。

でも、僕はリスクを取らないでそこに居続けることのほうがリスキーなんじゃないかと。つまり、一般的にいわれているリスクというものは、先ほどの話では有形資産のようなものですよね。

それをあえて削ることで、無形資産を増やしていくようなやり方や考え方があってもいいんじゃないかと思ってやってみたということです。結果、無形資産を足がかりにした事業もそれなりに上手くいって、自分も家族も満足する結果に至りました。

こんな考え方の中で僕はライフシフトしたんです。ただし、これは強制じゃありませんよ。僕自身がやってみてそうだっただけの話なので、なにかみなさんの参考になればと思って、紹介させていただきました。

真の「働き方改革」は「生き方改革」

今、巷でやっている「働き方改革」というものも、僕らから見ると、単なる「働かせ方改革」になっちゃっている企業が多いわけですよ。「残業しないで早く帰れ」とか、「もっと休みを取りなさい」というような。また人から言われてやるんですか、という(笑)。

どうも日本人は、目的と手段が逆になっちゃうことが多いんですが、働き方改革が目的なのではなくて、本来の目的は、一人ひとりの「生き方改革」なんですよ。今ハッピーな人は別に変える必要はないのだけど、なにかモヤモヤしているんであれば、それを変えるために、一人ひとりが生き方、働き方を変えていく。僕が娘と絵本を読みたいから、今日は会議を早く片付けて帰ろうと思ったように。

たぶん、その先にある充実感や幸福感のようなものが目的であって、そのために、自分の働き方をどうアレンジしていくかということなのだと思います。最近は女性活躍などとよく言われていますが、決してフルタイムで働くだけではなく、自分が働ける時間にだけ、自分の能力を発揮できて、報酬がもらえて、社会に還元できる。そうした働き方もいっぱい出てきていると思います。

どうでしょう、みなさんの会社でも働き方改革をやっていると思いますが、上司で勘違いしている人がいっぱいいますから(笑)、このことを教えてあげていただきたいな、と思いますね。

人生再設計の10ヶ条

そうしたわけで、ライフシフト・ジャパンでは、一人ひとりのいろんな人生の再設計を応援するために、行動指針として10ヶ条をつくっています。

まず1番目は「ownership」。自分の人生の主人公は自分であると自覚していること。これはもう基本です。あとは、さっきの僕だと育児、介護、PTAなどのいろんなテーマがいろいろと出てきましたが、そのときどきの自分のライフテーマを追求できているかどうか。やらされているんじゃなくて、自分で組み立てができているかどうかということだと思います。

あとは、人生に起きる変化を楽しんで、常にことを起こしていること。大きな変化だけではなく、毎日の小さな暮らしの変化がありますよね。日本には四季折々いろんなものがあって、僕はそれもすごく好きなのです。例えば、僕がいつも心がけているのは、電車に乗るとき、絶対に同じドアから乗らないと決めています。

降りる階段が近くにあるからと同じ車両に乗っちゃうのだけど、だいたい同じ時間の電車には同じ顔触れが乗っていますから、あまり変化がなかったりする。だから僕はいつも変えます。今日は1番前に乗ってみよう、といったように。あとは、どこかに行くときにも、車でもなんでも、行った道を絶対に帰らない。ちょっと寄り道して帰ったりすると、ぜんぜん違う風景が見えてきます。

「あれ、なんかこの温泉よさそうだから入って帰ろう」ということで、そこで出会ったパパ友が2人ぐらいいます(笑)。子どもと入っているので、話しかけると友達になっちゃって、Facebookでつながって帰ったり。そうした小さな変化の中で関係をまた増やしていくというやりかたですね。

人と違うことを選ぶ

あとは、どんな事柄でも学ぼうという姿勢があるかどうか。逆に、学んだことや成功体験を捨てる勇気を持っているかどうか。これからは、これがけっこう大事ですね。どうしても自分の知識や体験にしがみつきがちですが、それはそれとして、いいところは残していけばいいし、それを捨ててもっと新しい地平に向かっていくことが大事だと思っています。

あとは僕が得意なことなのですが、みんなと同じでなくても平気だということ(笑)。これは日本人じゃ苦手かもしれませんが、僕は昔から天邪鬼ですし、小学校でもよく先生に「右向け右」と言われても、左ばかり見ていましたから。つまり、大人が「右向け右」ということは、「絶対に左側に楽しいことがあるに違いない」と思うタイプ。

(会場笑)

だから、僕は常に先生からマークされていましたね。でも、逆に「いい人」といわれたくないというか。よく女性から「いい人だったんだけどね」とバッサリふられるじゃないですか。だから、「いい人といわれたら人生終わりだぜ」なんて、よく男性たちとは共有しています(笑)。「あいつバカだね」と言われ続けた方が価値が高いというか。そんな感覚があります。

あとは、3つ以上のコミュニティに所属していること。家と職場のだいたい2つ(のコミュニティが)ありますよね。この往復だけじゃなくて、趣味仲間のコミュニティでもいいし、地域でもいいし、3つ目のなにかがあって、そこに常に顔を出していることが大事だと思います。

あと、さっきの寄せ鍋に通じますが「有意義に公私混同できている」こと。そして、見えない資産を大切にすること。あとはタイムマネジメントです。残された自分の人生時間をどうマネジメントできているか?

ライフシフト10ヶ条。自分がどれができていて、どれができていないかという指針にしていただければと思っています。

ライフシフト・ジャパンではこの秋以降に、ライフシフト度を診断するツールをリリース予定です。一定数の質問に答えると、自分の強みと弱みがぜんぶ診断できるようなツールを開発中ですので、お楽しみに。

新たな出会いの化学反応を楽しむ

では、人生100年時代のキャリアライフについてのまとめです。僕は人生100年を楽しむためには3つのことが必要だと思っています。まず1つは、「時間を何に使うか」。目の前のこと、あるいは週末、1週間という顕微鏡的視点になりがちですが、やっぱり望遠鏡的視点を持つといい。

僕の場合、今、1番下(の子ども)が10歳なのですが、あいつが20歳のとき、俺65だよな、と。10年後、俺はなにをやってるのかな? といったことですね。大学に行けばお金がかかりますよね。じゃあ仕事はどうしていたいか。そんな風に、ちょっと遠くを見る。

バイクでも自転車でも、運転するときはなるべく遠くを見ているほうが安全です。近くばかりを見ていたらシミュレーションができませんから、望遠鏡的視点を持つ。その上で時間を今、なにに投資するかという考えを持つことが大事ですね。

2つ目は「重要な他者に出会うかどうか」。僕もやっぱり、ライフシフトの局面、局面で会っているんですよ、重要な他者に。かつては会社の上司だったり、NPOを一緒にやろうといった仲間だったり。そういう人(ライフシフター)、自分の人生に変化をもたらせてくれるであろう人物と出会っているかということが大事です。

職場にはあまりいませんね。やっぱりいるのは第3の居場所。サードプレイスにわりといる。だから、婚活のセミナーもやらせてもらっていますが、よく独身の女性たちには「いい男がいないなんて嘆いていないで、例えば子育てボランティアとかやってみれば?」と言っています(笑)。

そこに来ているような男性はやっぱり子どもが好きで、イクメンの予備軍だから。ひょっとしたらいい出会いがあるかもよ、と。だから職場とか、これまでの付き合いの延長じゃない所、自分にあまり関係のないところにちょっと行ってみて、そこで思わぬ人と出会ったりすることがあるかもしれないよね、と伝えています。

みなさん、これまでにどれだけ重要な他者に出会っていますか? 逆に、自分自身が誰かにとっての重要な他者になっていくことが、たぶん楽しいのです。そうなったときには誰かの人生を変える人になっていますから。それはそれで、なにか自分のなかで達成感が持てるのではないかと思いますね。いろいろな出会いは、またその先の新たな出会いから起きる。その化学反応が拡大していく感じです。

最後の3番目はよくいわれますが、「自分の好きなこと、得意なことで生きていく、食べていく」。やっぱり、これが1番いいですよ。あまり関心のないこと、やりたくないことでは、どうしても早く辞めたいと思うし。

「定年延長が嫌だ」といっている人に聞くと、やっぱり今の仕事がおもしろくない人たちなんですよね。今の仕事がおもしろい人たちは、別に定年が延びてもいいというか、もっと働きたいからというビジョンがあるのですが、今の仕事が退屈な人はどうしても早く仕事を終えたいと思ってしまうものです。

では、「好きなことがない」「得意なことはなんだっけ?」と思ってしまう人は思い出していただきたいのが、10代の頃の自分なんですよ。よくセミナーで「10代の頃に夢中になったことがなにかありますか?」と聞くのですが、今日はどうでしょう。みなさんも好きだった部活、好きだった趣味、アイドル、ゲーム、漫画などいろいろあると思います。

なぜそれが好きだったのかを自分で思い出してみると、原点に返れる感じがしますね。実は「人は10代の頃に必ず還っていく」という言葉があるのですが、10代の頃はピュア本当に楽しいことしか、実はしていないのではないかと思うのです。それが本当に好きなんですね。だからそれを、それに似たことを40歳になったら始めてみればいいと思います。きっと楽しくなってくるはずです。

みなさんも、ぜひ10代の頃の自分に返って、好きなこと、得意なことをもう一度再認識していただくと、ライフシフトのテーマにつながっていくのではないかと思います。

レクチャーのほうは以上になりますが、最後になにか質問などがあれば、お受けしたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

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