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For Some Animals, The World Moves in Slow-Motion(全1記事)

実は世界がスローモーションで見えている生き物たち

世界には、寿命の長い生き物もいれば、1週間ほどしか生きられない生き物もいますが、彼らにとって時間はどのように流れているのでしょうか。身近なペットである犬や猫、あるいは昆虫たちとの時間の流れは、ずいぶんと異なるもののようです。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、生き物たちの時間の流れ方の違いについて解説します。

生き物は時間の流れをどのように感じているのか

オリビア・ゴードン氏:あなたのペットやその他の動物たちは、時間というものを一体どう感じているのだろう、という疑問はありませんでしたか? 犬にとっての1日は2日に相当するのだろうか、1週間や1ヶ月しか生きられない蚊やハエはどうだろう、なんて。

私たちは動物たちの頭のなかに潜り込み、彼らの1日がどんなものなのかを体験することはできません。

しかし、その1日という時間が一瞬であれ、永遠であれ、感覚情報を処理する方法がなにかあるに違いありませんし、その考え方によると、感覚情報の処理速度が遅ければ、時間は速く感じられ、処理速度が遅ければ、時間はゆっくりと感じられるのだそうです。あなたの仔犬にとっての時間は、あなたが感じているものとは違うのでしょう。

私たちの経験から言えることは、この仮説は直感的な感覚を生み出すということです。例えば、野球選手らやテニス選手らは、彼らがバットやラケットを振る直前に、ボールがゆっくりになるとよく言っています。

時間をゆがめる要因はさまざまで、心理学者はそのことについて日夜思いを巡らせているのです。

生物学者によれば、感覚処理が速いことが良いことかそうでないかは置いておいて、基本的に、だいたいのことは古き良き進化というもので説明がつくのだそうです。

高速処理は素晴らしいことでしょうが、代謝的には高くつくでしょうね。あなたが巨大なオサガメだとしたら、その能力を手にするためには脳には栄養を与えないとならないでしょうし、超音速の処理能力を持つことが意味を成すのかどうかは微妙なところです。特別な食物がたくさん必要でしょうし。

およそ5年前に、イギリスとアイルランドの生物学者が感覚情報の処理速度を公式に調査し、『Animal Behavior』誌に研究結果を発表しました。彼らは、身体の大きさと代謝から時間の経過の感覚機能を予測できる、という仮説を設け、神経感覚的負担度と言われるものを測ることでその証明を行ったのです。

神経感覚的負担度は閃光の速さで、ずっと点滅しているように見えるのですが、そのことが研究者たちに、知覚の処理速度におけるひらめきをもたらしたのです。要するに、これは「motion(動作)」や「moving pictures(動いている画像)」という昔ながらの名前から推測できるように、映画の背景の原理と同じで、静止している画像の連続です。

画像は、私たちが画像と画像の継ぎ目を認識できないくらいに速く動くので、私たちには画像が動いているように見えるのです。人のフリッカー融合頻度(注:動いているものを識別する能力の尺度)は、1秒間におよそ60回です。

しかし、他の動物たちが持っている尺度は根本的に違うのです。15秒毎にしか画像の切り替えができない動物がいるのですが、その間に私たちのように2倍速く画像の切り替えを行っている動物もいるのですから。

ハエには人の動きはスローモーションに見える

研究班は、ほ乳類や鳥、は虫類、両生類、そして魚類に至るまで、あらゆる種類の34種の脊椎動物フリッカー融合頻度を調べるために文献という文献を洗い出したのですが、言ってしまえば、仮説は正しかった、ということになりました。

代謝がゆっくりな大きな動物は融合頻度が低く、代謝の速い小さな動物は融合頻度が高いのです。言い換えると、小さなシマリスや鳩は、毎秒走り回ったり飛び回ったりしながら、たくさんのものを見ているのです。つまり、私たちよりも時間がゆっくりと進んでいるようなのです。

この分野の研究は昆虫の調査はしていませんが、なぜハエ叩きが難しいのかは説明がつきます。視覚情報が速いので、ハエにとっては、あなたの動きがマトリックスのようにゆっくりに見えるからです。その動きから逃げるのは難しくはないですよね。

大きな亀やウナギにとっては、さらに短い時間なので、(小さな動物は)ワープしたようなスピードに見えるでしょう。大きな動物は小さな動物のように速くは動けません。

大きな生き物が、ゆっくりとしか物事を知覚できないのもうなずけるでしょう。速く動けないのならば、高いコストを払って高速の視覚処理を手に入れる必要はないということですね。

大きさの関係は良い目安ではあるのですが、その関係性が当てはまらない場合もあります。ご存知のように、例えば、小さいにも関わらず、視覚処理系が遅い生き物だって存在しますよね。

同じ種類の生き物でも時間の流れが異なる可能性がある

(昆虫の)ハンミョウの場合、視覚は滅多に更新されないので、途切れ途切れの支離滅裂な景色の中で狩りを行っています。

ハンミョウは獲物に向かって全力疾走し、急に止まるので、だいぶ獲物を追い抜いてしまうのですが、1日何キロにも相当する距離を速く駆け抜けてしまう能力を授かっている、というのは、評価されるべきところでしょう。

一方で、けっこうな大きさの身体を持ちながらも、視覚系の発達にとくに力を入れたことが見て取れる動物もいます。捕食性のメカジキの例を挙げると、科学者たちは、メカジキが並みはずれてよい目と頭を持っているために狩りが上手なのだと考えています。

それから、「愛の領域」の存在があります。雄のハエの目には、特別な超高速光受容器を備えている部分があります。彼らは、交尾の際に雌のハエを追いかけるため、より速い神経細胞を持っており、そのため、同じ種類の生き物でも時間経過に違いがあるのではないかと言われています。

それは、私たちにも当てはまるかもしれません。大人と子どもを比較すると、子どもの時間の経過の方がゆっくりだということを示す証拠がいくつかあることは、議論の対象になるでしょう。

どちらにしても、動物界全体に時間が同じように流れているわけではないでしょう。進化論的に言えば、平等に時間が流れる必要性はないのですから。

また、あなたのペットのことを気にしているなら、猫は私たちとはそう違いがないということがわかっています。ほんのちょっと時間が速く過ぎているだけのようですから。

そして犬にとっての時間は、おそらく30パーセントほどゆっくり過ぎているようです。ただ、日にちのずれなど、特別な違いはなさそうですよ。

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