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「就活エリート」の迷走 豊田義博×ひろゆき(全6記事)

「給料安い順に雇えばいいんじゃないの?」 ひろゆき氏、新卒採用の矛盾点を指摘

採用市場に閉塞感をもたらす一因として「採用手法の画一化」を挙げるリクルートワークス・豊田義弘氏。その発言を受け、ひろゆき氏が「給料低い順オークション」なる手法を提唱します。その驚きの内容とは?

SPI 試験で調査する学生の2つの側面

ひろゆき氏(以下、ひろゆき):SPIとかって問題やらされるじゃないですか。あれって何の意味があって、やらされてるのか僕はわからないんだけど。

一般常識テストとか。例えばその会社の全員がSPIテストを受けて営業は点数が低い人の方が成績が良いとか、一般常識テストで高いやつが良いみたいなのがわかったうえで「じゃあ、この分野でこういう点数を取るやつは採った方が良いよね」みたいなのがあればいいと思うんですけど。一般常識を知っている人が採られるみたいな、それってなんか意味があるんですか?

豊田義弘氏(以下、豊田):SPIも我々の関連会社なので、どこまで言えるかわからないんですけど。SPIって2つの側面があるんですね。そういう一般常識や算数とか国語の問題をやっている側面と、性格適性を見る面とあって。

そうしたアセスメントは日本だけでなくて欧米でも採用の際には使われているんですね。こういう性格特性を持っている人であれば営業で活躍できるんじゃないかという風なことを測っているんですね。

ひろゆき:それで気になっているのは、営業で活躍している人にSPIを受けさせて、本当のその会社の営業の持った特性と基準が合っているかの確認はしていないじゃないですか。

豊田:している企業は少ないですね。

ひろゆき:じゃあ、こういう性格だから営業が合っているという考え方は間違っているかもしれないじゃないですか。

「給料低い順オークション」の是非

豊田:現実に多くの企業がどういう風に使っているかというと、算数とか国語といった、一般常識的とひろゆきさんが言ったスコア、ある意味で受験勉強のスコアと近い部分がありますけど、そこで一端足切りしている感じなんだと思います。

ひろゆき:バカは切り捨てるのはわかります。

豊田:あとは実際の使い方で、色んな性格適性を見ていたとか、この時にこういうスコアだったら10年後に活躍しているといったことを一部の企業はかなり研究しているんですけど、多くの場合はまず足切りをする。そうはいいながらも1万人来ても1万人と面接できませんというケースが実態は多いですね。

ひろゆき:それだったら給料の低い順オークションとかやって、月給5万円でいいですという人をとりあえず雇えばいいじゃないですか。その中でダメだったらどんどん辞めていってもらえばいいわけで、そうすると給料が低くてもそれなりにやれる奴はできるんで。そのやり方のほうが採用に関しては楽じゃないですか。

豊田:面白い(笑)。たぶん今の問題で日本という国の難しさでしょうけど、人を辞めさせることが難しい。特に正社員は。

ひろゆき:いいじゃないですか。5万円くらいだったら。給料安いから辞めさせなくても。5万円分だけ働いておけよみたいな。

豊田:5万円は最低賃金法に引っかかるから、5万円はダメなんだと思うんですけど(笑)。

ひろゆき:じゃあ、10何万円とかで。辞められなかったらマクドナルドとかに派遣で働かせておけばいいじゃないですか。時給取ったりして。別に安い給料だからどんな人でも置いておいても、それなりな働きをするわけじゃないですか。

給料が安い順とかにしてまずは採っておいて、その中で十分な人が集まったらそれでいいじゃないですか。

「幹部候補」を求める企業

豊田:今ひろゆきさんの言ったことはすごく極端だと思うんですけど、ひとつだけすごく賛成できるところがあって。今の企業って、大学生をみんな将来の幹部候補として採ろうとしているところが多いんですね。

昔の大学生は進学率が10%とかだったころの大学生って、色んな企業の幹部になったわけじゃないですか。でも今って、ひろゆきさんがおっしゃったように、半分くらいが大学生になっているということで全然違うんです。

企業の中では将来の幹部候補はここから選ぶんだという、だから全員が幹部候補になれるような人を採りたいという気がすごくするんです。

ひろゆき:幹部候補ってそんなにいっぱいいるんですか?

豊田:本当にその通りですね。10%の人が幹部候補であって他の9割の人は現場で頑張る人として長いキャリアを過ごしていくということなんですね。企業がどっかで自分自身の幹部候補の在り方を探している。

実は、就活エリートの迷走を解消するまでに10個くらいの改革のシナリオがあると言っているんです。この上から4番目に大卒のキャリアコースを多様化しようというのがあるんですけど、まさにそういう話で、みんながエリートで会社の中でリーダーになるという話ではなくて、リーダーはリーダーとしてすごく高いハードルを設けるという像を分けてもいいんじゃないか。

でも、現場の仕事をずっとやっていくこという部分も楽しいんですと、そういう人もすごくたくさんいると思うんです。「そういう生き方はどうですか?」みたいなこともあるかもしれない。みんながみんな一律で、初任給が何万円でみんな同じような形で仕事するというやり方そのものに、相当無理が来ているのではないかという。

採用市場に閉塞感をもたらす原因

ひろゆき:兵隊を集めてその中から幹部になるやつを選ぶくらいだったら、優秀な人を外から引っ張ってきて幹部にした方が早いしコストもかからないじゃないですか。そしたら兵隊は兵隊として扱えばいいだけで。なんで割り切りができないんですか?

豊田:おそらく、今おっしゃった幹部を外から持っていくことで成功している部分が、多くの日本の企業で出ないからでしょうね。

ひろゆき:でも、日産のカルロス・ゴーンさんとかは成功例としてワーワー言われていたじゃないですか。

豊田:おそらくあそこまで追い込まれて初めて、ゴーンさんを受け入れて、真面目に日産はすごくいい改革例が行われていると思います。多くの場合はあそこまで追い詰められていないので外様に対する外敵圧力がある。

一方で、日本に限らず欧米でもいわゆるエリートは、カルロス・ゴーンさんは転職組ですけど、他の人たちは意外と生え抜きで入っている人たちって多いは多いんです。いわゆる高等大学院から入って、あるいはMBAみたいなところから、そのままある会社に入っている人がリーダーになっているという。

それはそれであると思うんです。大卒だからというワンパターン、パターンナイズされてしまっている。ないしは昔の大学生のイメージをそのまま引きずってしまっている採用市場になっている、そういうことは改めないとある種の閉塞状況がなかなか是正されないんじゃないかと思います。

高度経済成長期の考え方から抜け出せない日本企業

ひろゆき:今の新卒を採って20年後に幹部になるかもと言っても、20年後にその会社が今の形態をとっているかはわからないじゃないですか。やっぱりなんか、人事部が先を見れていない気がするんですけどね。

豊田:それで言うと、成長期のものの考え方、市場が拡大していき企業もどんどん拡大していくという時代の考え方、それがまだ大学生が一握りのエリートであった時代とシンクロしていると思うんです。

そういうパラダイムから実際なかなか抜け出ていないのではないかという気がします。低成長時代だし、組織の在り方とか、人の採り方も変えていかなくちゃいけないと、頭では分かっている人はたくさんいると思うんですけど、ちゃんと心からスイッチを切り替えられていないという部分は大企業だけでなくて、日本の多くの企業の中であるのかもしれない。

ひろゆき:じゃあ、人事部だけに限らなくて会社の上の方もこの先どうなるのかが自分たちでもわかっていないということがありますね。

豊田:わかっていないでしょうね。

今求められているのは「変化対応型」の人間

ひろゆき:車にしても、ガソリン車でエコな方がいいのか、電気自動車がいいのか、ハイブリットがいいのかは実はまだわかっていない。そうすると幹部がわかっていないのに人事部がわかるわけがなくて。

そもそもトップの方がどういう人材求めればいいのかわかっていないので、なんとなく人事部にまかせて、人事部はなんとなくまともそうに見える人をとりあえず採ってみました、みたいな悪循環に見えるんですけど。

豊田:はい。トップがどれぐらい人材に関して号令を出せるかというと、強い企業は実際に出していると思うんですけど。今の先が見えない状況だからという部分は明らかにあると思います。

今、一部の人が言っているのは、先が見えないという前提にして、その状況の中でどういう立ち振る舞いができるのか。変化ということを前提に置いて、変化対応型の人間を求めるというのを言っていますね。

そういうことと、ちゃんとゴールを決めて頑張るという人は全然違う気がするんです。ここでもボタンの掛け違いが起きている気がします。

ひろゆき:マニュアルで準備できるようなテストをやっている限りは、マニュアルの準備に長けている人が入ってくるわけじゃないですか。試験が何やるかわからないものにして、その場その場でなんとか乗り切れるやつを入れれば、状況が変わったときは対応しやすいということですよね。

優秀な人材をいかにして見極めるか

豊田:例えば、ここ(スライドを指差して)に、「本物のインターンシップを実施しよう」ということが書いてあります。実は日本でもインターンシップをやっていますけど、会社見学会プラスアルファという形で実際の仕事経験はさせていない。

でも欧米だと2、3カ月仕事をするとか、インダストリー・プレイスメントという6か月から1年くらい働かせるインターンシップがあるんです。

それだけ働かせると、人間丸見えじゃないですか。こいつは使えるとか、やっぱりダメとか。それぐらいにお互いにさらけ出してよくわかったうえで採用するということが、日本ではある種の規制もあってなかなか実現できていないんです。

もっとこんなものが広がるとか、採り方も面接の一発勝負じゃなくて全然違うことをいっぱいやるとかも必要だと思いますね。

ひろゆき:そうすると人事部無能問題に行き着いちゃう気がするんですけど。昔の面接の話で、「1週間前のジャンプ持って来い」って言って、その場で学生をワーッて散らばせて持ってきたやつが点数上がるということをやった話があって。

1週間前のジャンプって、どこにいったら手に入るだろうって考えて手に入れる奴って優秀じゃないですか。そういう奴は床屋とかで取ってくるんだけど、もう1回同じことをやったら、それを知ってるやつが来ちゃうじゃないですか。

毎回違うことをやって、そういう手品とか問題を変えていかなくてはいけないんです。そうすると、人事部が面白い問題を毎回思いつくかという人事部の企画力の方向になると思うんです。

採用方法の画一化をやめるべき

豊田:そういう問題はあると思いますし、それだけでなく面接の場で、「何をやりたい」とか「大学時代に何を頑張ったのか」みたいな定番の質問がありますけど、世間話をしたっていいじゃないですか。

例えば、「今日こんなことをしてきたんだ」ってひろゆきさんが言って、それに関してこいつがどう食いつくかを単純に見るだけでも、型にはまった話じゃないところでどんなキャッチボールができるかを見るだけでも、別の観点から見ることができますよね。

確かに、もっと知恵を出してやったほうがよくて。画一化しちゃっているというのは今までの知恵の中でやってしまっていて、新しい知恵が生まれていない部分だと思います。

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