2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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迷走した理由、3つあるうちのひとつは、先ほどの自分探し、自己分析をちゃんとしようというこの問題が大きなボタンの掛け違いの要因になっていると思っていて。
学問的に言うと、自己アイデンティティーとか心理社会的アイデンティティーを形成することが、自分探しといわれるんです。日本の学生の多くは、特に文系の学生は大学で学んだことをそのまま職業に活かすという人間は少ないですし、職業的なアイデンティティーはなかなか探せない。
多くが会社に入って、自分なりに色々な仕事を経験しながら、こういうのが向いていたんだなということが多かったんです。ある時から「やりたいことを探そう」と、それを持っていることがいいことだと。なおかつ欧米のキャリアデザインのやり方が一部だけ移植されて入ってきている。
結果として自分自身がちゃんとゴールを設定する。先程のアンケートで、5年後10年後をイメージして働きたい、やりたいことができないなら働きたくないといった「ゴール志向」。
キャリアゴールを設定して頑張る、あるいはキャリアゴールをちゃんと設定していないとだめだというような意識だと思っているんです。この意識そのものが一連の就職活動の仕組みの中で非常に強化されるという傾向が強いです。
そうすると企業はやりたいことをさせてあげるよと言っているのではなく、お前はなかなかいい筋があるから会社に入れてあげるよという意味なんですけど、多くの学生は、優秀な学生も含めて、これは私のやりたいことをしたいということを含めた、全人格が評価されたんだと、自分自身はこの職業アイデンティティーでいいんだと思ってしまう。
ひろゆき氏(以下、ひろゆき):フラれたこととかないんですかね?
豊田:ないかどうかはわからないんですけど。
ひろゆき:好きですと言って付き合っていても、嫌なところが見えてきて別れたりとかするじゃないですか。全人格が他人に受け入れられるなんて、まずないということをそこそこ年齢を重ねていればわかるじゃないですか。
豊田:でいうと、彼らの世代に言われていることですけど、競争をしないで大人になったと言われている「ゆとり世代」という言葉もありますけど。学校教育の中でみんなと仲良くということで、競争させるのではなく、個性を大切にする。ひょっとすると、負けたとか、自分を受け入れられたことがあまりなかったのかもしれませんね。
すごい成功体験もなくきて就職活動の中で頑張って自己分析をしてプレゼンテーションしたら受け入れられたというのが自分の中の成功体験だということで、俺はいけるじゃないかということを醸成しているのかもしれないですね。
豊田:もうひとつですね。そういうことが面接という場でもなされる。さっき、ひろゆきさんがおっしゃった、ある種の演技が上手な人の話がありました。今の面接の場って演技の上手な人間に、ある意味では楽勝とまではいわないけど、実際は企業の目をかいくぐって自分自身がある種の人間になりきって突破することができるという風になっているんです。
なおかつ、この就活エリートと呼ばれている人たちは、学生時代を通じて学生の中で空気を読みながら会話する力に長けた人たち。「コミュ力」ということを彼らは口にします。あるいは学校で言う「スクールカースト」の階層があるとすると上の方で、コミュニケーションにすごく長けていて人気者になっている人たちが就活エリートになっている傾向がすごく強いなと。
この人たちって本当の自分をサッとさらけ出して、こうありたい自分をピュアに出しているんではなくて、うまく自分自身を立ち回ったりして、こういうなりたい自分をしっかり決めていないと世の中上手くいかないんじゃないかと思っている。
「自分自身がしっかりしていないとぐらついてしまう」という心理的な質問を最初に投げかけましたけど、自分に対する信頼、他者への信頼、社会全体に対する信頼という所で、社会全体や他者への不信ということがあるんです。
しっかりしていないと足元をすくわれてしまうかもしれない、負け組になってしまうかもしれないという、ある種の不安のようなものが面接でどんどん演技をさせるような方向に拍車をかけているかもしれない。
豊田:さっき、ひろゆきさんが言った、「企業の実態をわかっていないんじゃ?」ということについて、企業にまさに恋しちゃっている感じがあるんです。恋したいと思っているんじゃないかと思っています。
色んな企業、社会全体が信用できない中で、自分が選んでいる会社は良い会社で恋愛対象として素晴らしい会社だって見定めるために一生懸命情報収集もしますし、説明会に行っても、「ものすごくいい説明会だ、素晴らしい!」と考える。
というのは説明会でものすごく情緒的なムービーとかが流れて多くの学生が涙を流すような動きがありますけど、そういう形でどこか託せる会社を一生懸命探したい。「ああ、もう、すごくいい会社だ!」と言って、さっき10%の人が一生勤めたいと言っているように、実はかなり多くの部分が、本当にいい会社に出会ったという風に思っちゃっている。
ひろゆき:でも、企業が魅力的に見えるようにして、学生に一杯応募してもらって、そのなかから優秀な人材を採るという風にするのが企業の一般の採用活動じゃないですか。広告だったりでうそをついて、だましてでもよく見せるというのはよくあるやり方なんじゃないですか?
豊田:だましているというのは、我々も本業なので、だましているつもりはないんですけど(笑)。学生と話していても、リクナビに載っているのは広告ですよね。企業のホームページに載っているのも、ある意味で広告的な売り文句ですよねと分かっているんです。
豊田:それでいうと、わりと表面的な情報、企業のビジョン・理念もそうかもしれません。自分が手に取って触れるようなレベルの情報で、企業の実態というよりちょっと表面にあるような情報に関してはすごく一生懸命調べてすごく信用しようとする。でもそういう部分って、乱暴な言葉で言うと「きれいごと」ですよね?
ビジョン・理念って、その会社がすごく本気でそうなりたいと思っていても実態はそうなっていないんじゃないですか。だから掲げているものであって。
ひろゆき:そもそもそれが成立していたらビジョンや目標にしないですよね。
豊田:おっしゃる通りです。企業のビジョン・理念はまだ実現できていないと。頑張っているかもしれないけどまだ達成していないもの。ただそのビジョン・理念を信じちゃうと、そのギャップに悩むわけですよね。
そういう会社だと思っていたらこうだと。それに関してはすごくナイーブですよね。そういう情報に関して敏感で信じてしまうというのがあるなと思います。
ひろゆき:会社がエコなことをしているかを基準にしている人がいるじゃないですか。超、どうでもいいと思うんですけど。個人でやればいいことであって。
豊田:「環境に関して御社の取り組みは云々……」とかそういうことを言ったからと言って企業が内定をくれるわけはないですけど。
ひろゆき:エコがどうこうより給料をちゃんとくれるかどうか、仕事が楽かといったことの方がはるかに大事じゃないですか。
そういう傾向にいくような趨勢というか潮流が、この20年で出来上がってしまっている。だから彼らは、一生懸命就職活動を頑張ろうとするとこういう風になってしまうという仕組みに組み込まれていってしまっている感じがします。
ひろゆき:でも結局のところそういう人を採る会社があるから、それに学生が合わせていくわけで。合わせた人を採って、「この学生使えない」と言っている企業があるわけですよね。
豊田:実は企業のサイドで言えば、自分たちがやりたいことの絵を描いているんだけど、結果として自分たちの首を絞めちゃっているという。
ひろゆき:今時の学生が使えないっていう話じゃなくて、今時の人事部が使えないと言っている気がするんですけど。
豊田:うん。企業が採用の仕方に関して「きちんと考えていないんじゃないの?」というさっきの話で言うと、画一的になっているというのは、本当に自分たちの会社で活躍できる人ってどんな人だろうというのをわかっていないのではないかということがあって。
自分で問題を解決できる意識をもった自律的な人間みたいなことを企業は言うんですけど、そういう人間も色んな企業に必要だと思うんです、でもみんながみんなそういう人間だったら、だいたいの日本企業はそういう人間を使いこなせなかったりしますよね。
もっとうちにフィットする人間ってどんな人なんだろうと、もっときれいごとの言葉じゃなくて、生身の言葉で考える、あるいは企業の現場現実と合わせて考えるということが本当はもっと必要だと思うんです。そこの部分がきれいごとで、突っ込んだ部分が無くなっているみたいなことを感じます。
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