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The Key to an Artificial Heart ... and Open-Heart Surgery(全1記事)

多くの命を救った人工心肺は、どんな進化を遂げてきたか

これまで数多くの人命を救ってきた人工心肺ですが、現在の形にいたるまでにさまざまな試行錯誤がありました。人体にダメージを与えないバイパス技術の変遷とは? 今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」は、人工心肺と開胸手術の歴史を振り返ります。

心臓バイパス手術の歴史

マイケル・アランダ氏:心臓切開手術は想像すると、なんて恐ろしい話なんでしょうか。医者が患者の胸郭を切開し、心臓の動きを止めます。この手術は何時間にも及ぶ場合があります。人工心肺が血液を循環させ、酸素を供給することで身体の状態が保てるので、そういった手術が可能なのです。

人工心肺の役割は血液をポンプで送り出し、酸素を供給するのみではありません。

1800年代の初め頃、科学者は体内で血液を出し入れする方法を探ってきました。しかし、手術を安全に行えるバイパス装置は、現在も改良され続けていますが、1950年まで作ることができませんでした。

体内の臓器が機能するには血液からの酸素供給が不可欠です。例えば、脳に酸素供給が3~10分ほど中断されるだけで、深刻なダメージを受けてしまうのです。ということは、もし誰かの心臓が止まったときに血液に酸素が届かなったら、心臓切開手術はできないのです。

バイパス装置の歴史は19世紀にさかのぼります。ある外科医が、血液を送り続ける簡易的な手法を使って、機能が停止した臓器を復活させようと試みました。しかし、血管を離れた血液はすぐに凝固するため、失敗に終わりました。

普段であれば、傷口から血液が流れ続ける状態は好ましくありませんので、血液が固まるのは良いことです。しかし、医者が治療の一環として一時的に血液を採取する際にも固まってしまうので、治療には役立てられません。

1916年、ある医学生が「ヘパリン」という抗凝固薬を偶然発見したことで、この問題は解決に近づきます。ヘパリンは、血液を凝固させるタンパク質である「フィブリン」の生成を防ぐので、体外に出た血液も液状を保てるのです。

血液と酸素を混ぜ合わせるために

しかし、ヘパリンは役立ちますが、血液中に酸素を供給する問題を解決するものではありませんでした。

19世紀の手術では、ボール状の器の中で血液と空気を混ぜ合わせて、体内に戻すという驚くべき施術をしていました。その方法が成功する場合もありましたが、それはあくまで、小さな1つの器官に限ったことでした。

この方法では血液が古くなってしまうため、医師は新しい装置を探していました。その時に考案されたのが、純度100パーセントの酸素の気泡を血液に送り込む「気泡型人工心肺」と、回転する円盤の表面にあるフィルム上で血液と酸素を混ぜ合わせる「フィルム型人工心肺」の2つの装置でした。

しかし、それでも、血液は身体を十分に機能させる量の酸素を吸収できませんでした。

1930年代にアメリカ人のジョン・ギボン医師が解決方法を見つけ出し、状況は好転します。まず、彼は血中での酸素交換を活発に行うため、フィルム型人工心肺の円盤を円筒の形をした容器に取り替えようとしました。

しかし、すぐに、身体機能を維持できる量の酸素を血液に供給するには、とてつもなく大きな容器が必要だと気づきました。十分な酸素を確保した血液を保存できるように、スクリーンを重ねた装置を設計しました。

この装置は血液の流れを調節でき、血液循環を妨げる血栓や気泡を確認できるセンサーを備えた改良ポンプが備えられていました。

1953年、ギボン医師は自身の人工肺を使い、バイパス装置を使った開胸手術を最初に成功しました。これは歴史的な出来事でした。しかし、そこには大きな問題点がありました。ギボン医師のバイパス装置たちは人工肺と直接つながっていたのです。患者の血液を直接空気中にさらしていたのです。

血液は空気中に直接さらされると、酸素を取り込みすぎることがあり、酸素不足と同様の致命的なケースに陥ります。血流速度と圧力が異なることで血液中の細胞が破損し、細胞の死滅や凝固障害を招く恐れがあります。つまり、人を生かすことはできますが、バイパスは血液にたくさんのダメージを与えてしまいます。

バイパス装置の課題と将来

血液を丁寧に扱うため、次世代のバイパス装置では、酸素が適切に処理された血液を空気に直接さらさず、薄い膜に透過させています。イメージとしては血液が肺の穴を通して酸素を吸収するようなものです。

この膜は、酸素を取り込んで二酸化炭素を排出する際、血液を守る防壁としての役割を果たします。しばらくの間、酸素を透過させるほど薄く、強度のあるシリコーン膜は、バイパス装置を作るのにひっぱりだこでした。

血液のダメージを減らすため、丁重に扱う方法が次々と考案されました。最近、医師が用いているのは、「微多孔中空繊維」を用いた装置です。微多孔中空繊維には、水の分子よりも細かい穴が開いていて、酸素との交換性能も優れています。

ただ、問題は時間が経つと血しょう成分が漏れる点です。開胸手術中にそんなことは避けたいですよね。なので、いまだにシリコーン膜を用いている装置もあります。

研究者は次の装置で使えるもっと長持ちする微小孔構造の繊維を探しています。心肺停止中に長時間生きている状態でいるために、解決しないといけない問題が残っています。

バイパス機器を使うには多少の危険が伴いますし、最新の人工心肺でも、最大でも数日しか人を生かしておくことはできないのです。しかし毎年、開胸手術で何千もの患者の命を助ける手段となっています。それに、血液と空気をボールで混ぜ合わていた頃に比べると、随分進歩しています。

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