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第1部(全3記事)

赤川次郎が語った大林宣彦監督の「職人としての誇り」 映画の制作現場が舞台の新著にこめた思い

2017年11月16日に講談社新刊書籍説明会が行われ、小島慶子氏、赤川次郎氏らが登壇しました。本パートでは赤川氏が新シリーズ『キネマの天使』の刊行にいたった経緯などを担当編集とともが語りました。

小島慶子の『絶対☆女子』

司会者:続けて、第四事業局の企画を発表いたします。タレントとして、またエッセイストとして活躍されている小島慶子さんのエッセイ集が12月に刊行されます。

女性漫画誌『Kiss』で連載されていたものを『Kiss』編集長の鈴木と、担当の浅子がご説明いたします。

担当者C:本日はお越しいただき誠にありがとうございます。『Kiss』編集長の鈴木と申します。今日はよろしくお願いします。

タレントエッセイストの小島慶子さんの『絶対☆女子』をご紹介させていただきます。

絶対☆女子

こちらは2011年から今年まで、女性漫画誌『Kiss』で連載されたエッセイを1冊にまとめたものです。

『Kiss』は映像化されることが多い、オトナ女子向けの漫画雑誌です。先ほど部下が紹介しておりましたが、東村アキコさん原作の『海月姫』。1月からフジテレビ月9でドラマ化が進んでいます。

漫画誌ということで、小島慶子さんもイラストに挑戦していただきました。イラスト付きでこのエッセイは連載されておりまして、こちらの本にもこのイラストが収録されます。なかなかいい味のイラストかなと思います。

テレビでは賢いキレ者という印象の小島慶子さんですが、実は私お会いしたことがありませんので、担当にどんな方か聞いてみたいと思います。では浅子さん、小島さんはどんな方なのでしょうか?

自分の背筋をのばしてちゃんと生きればいいんだ

担当者D:小島慶子さんをテレビやラジオでご存じの方も多くいらっしゃると思うのですけれども、TBSのアナウンサーをされておりまして、最初にタレントやエッセイストとして活躍されてます。

ラジオのほうでギャラクシー賞の『DJパーソナリティー賞』を受賞されています。私も最初にお会いするとき、毒舌キャラの人なのかと、ちょっと恐い感じのイメージでちょっと内心ヒヤヒヤしたんですけれども。

実際の小島慶子さんはまったく恐いところとかはなく、ただ身長は高いだけです(笑)。

すごく周りの方にいつも細やかに気を遣われている方だなあと感じます。そんな細やかな気を遣われるところも、このエッセイにすごく出てるんじゃないかなと思っております。

担当者C:この部分の内容を紹介させていただきます。仕事や移住先のオーストラリアなどで感じたことを綴ったエッセイで、『Kiss』での連載時には、20代から40代まで、幅広い年代の女性に支持されておりました。

一言でその特徴を言うのなら、「読むと心が軽くなるエッセイ」です。他人と比べずに、自分らしく、自分の背筋をのばしてちゃんと生きればいいんだという、心を軽くしてくれるエッセイで、女性はもちろんのこと、私は職場で女性とのつきあいに苦労している男性の方にもオススメしたい本だなと思っています。

ちなみに、私は部下が約20人居まして、その内女性が15、6人で日々もまれて精進して、仕事をしているんですけれども、このエッセイには女性たちが男性の上司や同僚をどんな目線で見ているのか、ということが書かれておりまして、女性と付き合う上でとても参考になります。ぜひ男性の方にも読んでいただきたいなと思っております。

ど素人がイラストを描いてみました

担当者C:ここで、小島慶子さん。今日はいらっしゃっていないんですけれども、オーストラリアからビデオレターが届きましたので、上映させていただきたいと思います。

小島慶子 氏(以下、小島):『Kiss』で連載をしていた私の『絶対☆女子』が、なんと1冊の本になることになりました。ありがとうございます! うれしいです!

選りすぐりの方々が連載をしているあの『Kiss』で、ド素人の私がイラストを描くという、暴挙ですね! もう誌面の冒涜ですね!

そんなことを許してくれた編集の浅子さん、編集長のみなさん。本当にありがとうございます。なんと、おそろしいことに、あのド素人イラストは単行本に収録されるということなので、本当におそろしいです。いろんな人に怒られそうな気がしますが、ご覧いただければと思います。

あまり深刻な話はなくて、愚痴めいたこととか、だいたいの世の中こととか、軽く読める感じの内容が多いかなと思いますので、気軽にお手に取っていただける1冊になればと思います。ありがとうございました。よろしくお願いいたします。小島慶子でした。

担当者C:では、今一度担当の浅子のほうから、まとめで本の紹介をさせていただきます。

オーストラリアとの往復生活で思ったことをしたためる

担当者D:『絶対☆女子』の担当編集の浅子と申します。本日はお越しいただき、ありがとうございます。小島さんのご挨拶が動画になってしまったことを、小島さんに代わりましてお詫び申し上げます。

『絶対☆女子』は、小島慶子さんが「みんなで一緒に、もっと気楽に。もっと自由に」をテーマに書かれたエッセイです。

自分だけじゃなくて「みんなで一緒に幸せになろうよ」と語りかけてるエッセイでして、人と比べるのをやめて絶対値で生きようということから、この『絶対☆女子』というタイトルが生まれました。

ふだん小島さんは「女子」という言葉を決して使わないんですけれども。「女子会」という言葉も決して使わないんですが、とかく、ちょっと「女子」が取り上げられてしまうことが多いので。

だったらいっそ「女子」として、ポジティブに。ネタとして生きていくしかないよね、ということで、このエッセイを書かれました。

小島さんの38歳から44歳にかけて、テレビ局退社後から、オーストラリアに移住して、往復生活を送る中での日々の人との関わりや、小島さんの感じたことなどが描かれております。

先ほどの動画は、ふだん小島さんが原稿を書かれているダイニングがそうで、貴重なノーメイク、すっぴん姿で、ふだん通りの姿をさらして頂きました。

これが掲載されていた『Kiss』の女性漫画誌なんですけれども、毎回とても多くの読者から投函のおハガキや、インターネットでのご意見、ご感想いただきました。

お手元のチラシにもちょっと一部紹介させていただいてい、先ほどうちの女性に苦労している編集長からもありましたように、ぜひ男性の方にも読んでいただきたい思っておりますので、12月13日発売『絶対☆女子』よろしくお願いいたします。

担当者C:よろしくお願いいたします。本日はご静聴ありがとうございました。

(会場拍手)

赤川次郎の小説は映画の制作現場が舞台

司会者:次は文芸作品を扱う第五事業部です。赤川次郎さんの新シリーズが12月発売の週刊からスタートいたします。担当のBOX・X編集チーム、丸岡が説明をいたします。

担当者E:文芸第3出版部の丸岡です。本日はありがとうございます。お手元の資料にもございますので、かんたんにご紹介をさせていただきます。

赤川次郎さんは、1948年に福岡県に生まれました。76年にデビューされてから、多数の人気ミステリーシリーズを送り出されています。総著作数は600作を突破しています。

本日ご紹介する最新作『キネマの天使 レンズの奥の殺人者』は、映画の制作現場で活躍する『スクリプター』という職業の女性が主人公でして、赤川さんの最新シリーズ第1作です。

キネマの天使 レンズの奥の殺人者

それでは赤川次郎さんにご登壇いただきます。お願いいたします。

(会場拍手)

担当者E:では、最初に一言みなさまにお願いいたします。

赤川次郎 氏(以下、赤川):赤川次郎です。こんにちは。新人賞をいただいてから今年で41年になります。来年は70歳になるんですけど、この歳になって新しいシリーズを作る作家ってほとんどいないと思うんですけどね。

私も編集者の、調子に乗せられてしまって、気がついたら新しいシリーズを作ってしまいました。これから先、何作書けるかわからないですけれども、作った以上はできるだけ楽しくこのシリーズ続けていきたいと思っています。よろしくお願いします。

映画現場に欠かせないスクリプター

担当者E:では、限られたお時間ですが、新作についてうかがいたいと思います。では最初に、今回の主人公・亜矢子の職業「スクリプター」についてお聞かせください。

赤川:スクリプターというのは、本当に縁の下の力持ちというか、私は今まで撮影現場を舞台にした小説も何作か書いているんですけど、ほとんどだいたい、主役はアイドルスターであったり、人気監督であったりするんですが、今回スクリプターという地味な職業の女性を主人公にいたしました。

スクリプターは映画の字幕では、「記録」というふうに出ることが多いです。ほとんどが、99パーセント女性がやる仕事で、昔のフランス映画なんかを見ていても、タイトルにスクリプターのことだけはスクリプトガールと、英語で出てきていますね。それくらい世界的に通用する言葉なんですけど。

映画というのは、順繰りに、脚本の順番通りに撮影するわけではないので、場面が前後したり、ラストシーンを先に撮ったりするわけですから、それを繋いだときに矛盾が出ないように、不自然にならないように、ありとあらゆる細かいことすべてを記録しておくのが『スクリプター』の仕事です。

ですから、すべてを記録し、かつ映画全体の撮影の流れも把握してかなきゃいけないということで。なんかちょっと思いついたときに、「あっ、スクリプターって探偵に向いてるな」って思ったんですね。それで今回新しいキャラクターとして作ってみました。

担当者E:実際お書きになってみていかがでしたか? 探偵役としてのスクリプターは。

赤川:もちろん、本当にスクリプターが殺人事件を解決したり、殺されそうになったりすることはないと思います。ですから、現実のスクリプターさんの仕事をそのままここに書いているわけではありません。

ただ、スクリプターとしての心構えというか。そういうものを書くということでは、ある程度自分の思ったことを書けたかなと思っています。

赤川次郎と映画の出会い

担当者E:ありがとうございます。では、赤川さんと映画の出会いについてお聞かせいただけますか?

赤川:私は父が東映におりましたものですから、2つ3つのころから、当時の東映のチャンバラ映画をずっと観て育ちました。ですから、いまだに時代劇大好きなんですけれども。

ちょっと最近時代劇といっても時代劇らしくないのが多いので、ちょっとさみしい思いをしていますけれども。

そのうちに本格的な映画。ちゃんとした、ちゃんとしたと言ったらおかしいですけれども、芸術的な映画のほうに興味が移って。中学高校のあたりは1930年代40年代のフランス映画とかを一生懸命見まくりました。

今、DVDでそういう過去の作品をたくさん観られるので、とてもありがたいと思っています。映画が私の小説の原点だと思います。頭の中でいつも映像を映写しながら小説を書いていくというのが私の書き方です。

映画の制作現場を実際に見て

担当者E:実際に、映画の制作現場に行かれたことはあるかと思うのですけれども、そちらの思い出等、お聞かせいただければ。

赤川:一番最初は小学生のときに父親に連れられて。日光の方のすごい木造校舎の小学校に連れて行かれました。そこで、まあ父は東映で教育映画部というところにおりました。

若い方はご存じないないでしょうけど。若くない子もご存じないかもしれませんけども(笑)。

(会場笑)

赤川:昔は東映と日活という2つの会社で教育映画というものを作っていまして。これ一般の映画館でやっているのではなくて、学校をまわって上映したりするような、1時間たらずの短編なんですけれど。そういうもののロケに連れて行かれて見物したのが最初です。

当時のカメラマンの人から「ぼっちゃん出ませんか?」とか言われて、慌てて逃げ回った思い出があります。あの時出ていたら、今頃役者になっていたかもしれない(笑)。

(会場笑)

赤川:それ以降、自分の原作が映画化されたときに、現場をいくつか覗かせていただきました。

大林宣彦監督との親交

赤川:一番丁寧に会見したのはやっぱり大林宣彦さんとお付き合いができてるから、自分の『ふたり』とか『あした』という映画のロケに尾道まで泊まりがけで見に行ったのが、一番詳しく見たものですかね。

担当者E:そのときの大林監督の印象的だったお話とかは。

赤川:例えば、昔風の映画の撮り方というのをやっていた、たぶん最後の世代だと思うんですね。その後も新しい映画の現場とか行ったことありますけど、例えば今は、映画を撮るのはデジタルになってしまいましたので。

フィルムで撮った時代には、このスクリプターという職業は絶対に必要だったんです。スクリプターがいないと編集ができない。

ところが今、デジタルになって、撮った画面をその場でモニターで見られるようになったものですから、最近は人件費削減ということで、スクリプターをつけない現場が増えてきたと聞いております。とってもさみしいなと思っています。

この小説の中では、あくまで今回のオーソドックスなスクリプターをつけて、そして監督、カメラマン、録音、照明、いろんな職人たちの人たちが集まって、職人としての誇りを持って映画を撮っていた。

そういう時代のことを書いておきたいと思って、この小説の中ではそういうことをしばしば登場人物にも言わせています。大林さんの現場って、わりとそういうところが残っているんですよね。例えば、大林さんは撮影するとき、モニターを見ません。

今撮影しているカメラがあるところと、ぜんぜん違うところで監督モニター見ていたりするんですけれども、大林さんは絶対にそれをしません。

今の役者さんは、自分が撮った画面をすぐモニターで見たがるんです。大林さんは絶対に見せません。「オーケーを出すのは監督だ」って言って。役者が見る必要はない。そういう姿を、小説の中の主人公を困らせる、頑固な監督の姿に重ねてあります。

担当者E:ありがとうございます。それでは最後に、本日お集まりの方々へメッセージをお願いいたします。

サスペンスとして楽しんでいただければ

赤川:これはエンターテイメントでございますので、スクリプターさんの仕事をそのままこの小説の中で描いているわけではありません。

単なる娯楽として、サスペンスものとして楽しんでいただければよろしいのですけれども、同時に、今お話したような、昔日本映画はこういう人たちの、こういう情熱で作られていたというような、そういう映画作りの現場の雰囲気を少しでも感じていただけたら。

昔の日本映画を見るという、何かを感じるものがあるんじゃないかと思いますので、そのあたりもぜひ楽しんで読んでいただきたいと思っております。よろしくお願いします。

担当者E:ありがとうございました。

(会場拍手)

司会者:赤川さん、ありがとうございました。

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