2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
How a Sick Chimp Led to a Global Pandemic: The Rise of HIV(全1記事)
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マイケル・アランダ氏:今までscishowでは素晴らしくも複雑で奇怪な発見、そして現代の認識につながるような科学のストーリーについてお話ししてきました。
今回お話するのは、もっとも奇妙で、まだ私たちもその詳細には触れていないことですが、とても重要なことです。何十年もかけて理解しようとしたHIVとエイズとは何かということ、そしてどのように防ぎ、治療するのかということについてです。
エイズ危機から7,000万人がHIVに感染しています。そのうち3,500万人は亡くなりました。数字にはやや不確かな部分もあありますが。これらはこの病気のストーリーについて語るものであり、とてつもない数の喪失にもなりました。しかし正しい薬へのアクセスがあれば、必ず死ぬということは無くなりました。
12月1日の世界エイズデーを記念してこのストーリーをお届けします。語るべきことも多いですから。このエピソードは、HIVとは何か、そしてエイズに変わるときについて、そしてウイルスはどこから来るのかについてお話しします。
次のエピソードでは、初期治療や抗レトロウイルス薬について。ちなみにこれは画期的な発明でもあります。そして予防と治療について科学者のクリエイティブな考えについてお話しします。
まずは基本について。HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は免疫細胞に影響を与えるレトロウイルスです。CD4T細胞として知られています。レトロウイルスはリボ核酸を使うウイルスで、遺伝子要素としてDNAの親戚のようなものです。HIVが細胞に感染すると、特殊な酵素でDNAバージョンのゲノムを作り、それを宿主ゲノムに挿入します。
なんだか怪しいですよね。これがHIVの治療が難しい理由です。これについては次回で詳しく説明します。
HIVが感染、もしくは殺したCD4T細胞はTh2細胞と呼ばれる白血球です。危険を感じると膨らんでタンパク質を流し、免疫反応の手助けをします。体に必要な要素です。
HIVは体液、精液、母乳で拡散します。そのため、セックス、汚れた注射針、体液の交換で感染していくのです。しかし1つだけ例外があります。唾液はこれらの体液とは違います。唾液にはHIVを防ぐほかの成分が含まれます。抗体や抗菌タンパク質などです。唾液に大量の血液が含まれるなどといったことがない限りHIVには感染しません。
HIVに感染した場合、インフルエンザ、風邪、頭痛、湿疹、喉の痛み、筋肉痛や関節痛などを感じます。なぜならウイルスが体のあちこちに感染し、反撃しようとしているからです。しかし抗体ができるため、数週間でそれらの症状はなくなります。
そのあとは長い間、全く問題なく感じます。何十年も感じないこともあります。しかしある日、突然体調が悪くなります。多くのT細胞を殺し、体が病原体にうまく対抗できなくなるからです。あらゆるものが感染しやすく危険となります。
この状態がエイズです。後天性免疫不全症候群と呼ばれるものです。血液のマイクロリットル中、T細胞が200以下の状態においてエイズと診断されます。通常の500~1500からはるかに低い数値です。さらに進むと日和見感染という状態になります。
通常の状態なら簡単に対抗できる感染もあります。しかしHIVがT細胞を殺すため、エイズ患者は病気になり、死にいたることすらあります。こういった場合はほとんど日和見感染です。
ここで一旦、HIVについて全く知らないと仮定してみてください。なぜなら80年代はこういった基本情報は知られていなかったからです。
突然、医者にかかった健康なゲイの男性が珍しい感染とガンにかかり死んでいきました。最初にこのパターンに気づいたのはUCLAの免疫学者でした。
1980年の秋から春にかけて、20~30代の5人のゲイの男性が肺炎にかかったのでした。肺にカビが生えていたのです。通常問題はなく、肺に感染するということはありません。しかし彼らは違いました。呼吸がしづらくなっており、口腔カンジダ症に感染していました。CD4T細胞の数が少なかったのです。
6月までにアメリカ疾病管理予防センターの死亡率および罹患率に結果を報告することになります。その2人の患者が死亡したのです。1ヶ月後、ニューヨークの皮膚科医がレポートに加わることになります。カポジ肉腫でした。ぶつぶつの紫の傷の珍しいガンです。
それから2年半が経ち、ニューヨークとロサンゼルスの男性がカポジ肉腫を診断されました。奇妙な真菌性肺炎が見受けられました。そして8人が死亡しました。
今では考えられないことですが、科学者には病気の原因がわかりませんでした。病原菌なのか、もし感染でなければ、なぜ広がっているのか。つまり警告のしようもなかったわけです。ゲイ男性の団体にも大きな営業がありました。この未知の病気はGRID(Gay related immune deficiency)と呼ばれていて、ゲイのがんやゲイの病気などと思われていたのです。
しかしこの病気はゲイに限られたものではありませんでした。他人の血液によって血栓を治療する血友病患者にも見られたのです。医者は静脈内注射を行うドラッグ使用者や女性の胎児、ヘトロセクシュアルの男性にも病気が発生することを確認しました。とくに、ハイチからの20パーセントの移民が病気になり、ゲイは9人でした。
これらの情報は重要でした。なぜなら結果的にエイズと呼ばれるこの病気は感染し、その感染経路は血液であるということを知るきっかけになったからです。B型肝炎もこのように感染します。
1983年3月、アメリカ疾病管理予防センターは輸血に気をつけるように、また男女ともにセックスを通して感染するという警告を医者出しました。唾液によっても感染するかといった詳細は後に議論されます。
しかし感染の媒体はなんなのか。この病気の原因を解明する科学者の競争が始まりました。フランスの分子生物学のリュック・モンタニエはウイルスを疑いました。なぜなら最初は、血友病患者が使った血液はバクテリアや真菌のためにフィルターされたからです。ウイルスは小さすぎて捕まらなかったのです。
そこで同僚のフランソワーズ・バレ=シヌシとエイズ患者からとった細胞を研究し、レトロウイルスを発見したのです。
その頃、アメリカの国立保健研究機構のロバート・ガロもエイズ患者からのレトロウイルスを発見していました。1983年5月にどちらも研究を発表し、そのあと別の研究チームが別のレトロウイルスを発見しました。
すべてのレトロウイルスに違う名前がつけられ、当初は同じもののようには見えませんでした。しかしこれらは同じです。そして1986年にHIVという名前が公式に決定しました。これがHIV問題なのですが、果たしてどこからやってきたのか。そしてなぜ何十年もたった今になって流行しているのでしょうか。
エイズ感染の原因を理解するのに研究者は奮闘している中、マカクザルにもエイズに似た症状に苦しむ者がいることに気がつく科学者もいました。病気のマカクザルから血液サンプルを取ることにより、1985年にHIVに似たウイルスを発見したのです。SIV(サル免疫不全ウイルス)と呼ばれていました。
HIVは種のバリアを超えて霊長類から来ていると考えるようになりました。そして病気の流行にはチンパンジーのSIVに非常に類似していることに気づいたのです。これらが人間に感染したという考えです。
しかしどうやって? 詳細の説明はできないままでした。
SIVが人間に感染したのは、野生動物を食すことによるスピルオーバーが原因だと科学者は考えました。猿やチンパンジーの肉です。ハンターの切り傷という仮説があります。猿の肉を処理する際にハンターの手の傷に感染したり、口に血が入るというものです。
人間のハンターに感染するだけの生物学的類似性があります。時間をかけてハンターから他の人に感染し、現代HIVとして知られるものになったのです。スピルオーバーはこのようにしてよく起こります。なぜならウイルスはすぐに変化するので、遺伝的な違いを見ることによってウイルスの血統を特定できます。
そしてそれぞれがスピルオーバーに関連しています。チンパンジーの尿や糞を分析して流行の1つを特定し、コンゴ近くのカメルーン南西にそのチンパンジーが生息すると考えました。
今でこそHIVとわかった1959~1960年の血液サンプルによると、人間にHIVが感染したのは1908年頃だと考えられます。昔のように感じてしまいますよね。しかしウイルスにはそのくらい時間がかかるのです。
1920年代までにウイルスは人を媒介として川を下り、発展しつつあるキンシャサという町にたどり着きます。
当時はベルギーの植民地のレオポルドビルとして知られていました。そこには売春婦以外に女性はあまりいませんでした。そういう環境でHIVは広がったと専門家は考えています。性病や熱帯病を治療する注射針も原因ではないかと考えられています。
使い捨てシリンジが使われる前のことでした。大勢の人をたった数人のナースが治療していました。そのためにシリンジはアルコール消毒されるだけで使いまわされていました。病気の拡散を防ぐための方法が、逆に広めてしまっていたのです。感染したキンシャサの人は町を去ると、もう止められません。
ウイルスはすぐに変化することから、9つのサブタイプに分けられます。アフリカの中央からどのようにHIVが広がっていったのかがわかるのです。いくつかはアフリカの別のところへ行き、サブタイプCは南下してインドに上陸しました。サブタイプBはハイチへ、そしていくつかの歴史を経てアメリカに上陸しました。
最初は1960年、ベルギー人がコンゴを去った時でした。医者や弁護士として働くためにフランス語を話すハイチ人がコンゴにやってきました。しかし1965年にザイールが誕生し、移民は受け入れられにくくなりました。そしてHIVと共にハイチに戻ったのです。
そこではとくに早くHIVが広がりました。血漿分離交換センターが関係しています。血漿を寄付することでお金が支払われていました。複数の人から採取した血液を混ぜていたため、ウイルスの感染を許してしまったのです。
1982年までに、ポートプリンスのスラムの若い母親の8パーセントがHIVに感染しました。極めて高い数字です。HIVがアメリカに入ってきたのは1969年だと考えられています。ハイチからのたった1人の感染者、もしくは1ユニットの血漿によるものと考えられています。
人々が気づくまでに何十年とかかりました。しかしその時にはもう遅く、アメリカだけでなく、ヨーロッパ、アジアでも流行は始まっていました。
しかし現代では、その戦い方を理解する必要があります。これに関しては次のエピソードでお話しします。
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