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庄司智のラノベ編集者NIGHT! SIN 【第7回】(全2記事)

Web漫画、つい続きを読んでしまうのはなぜ? マイクロコンテンツ時代の作品作りを読み解く

2000万部ものライトノベルを売った編集者、講談社ラノベ文庫の庄司智氏がパーソナリティを務めるWebラジオ「庄司智のラノベ編集者NIGHT!」。アフタヌーン編集部の高橋正敏氏、声優の内村史子氏とともに、編集者に関するさまざまな話題を語り合います。今回のテーマは「マイクロコンテンツ」。Web漫画やアニメ、ソーシャルゲームなど、コンテンツをより小さい単位で売買するマイクロコンテンツ。1話ごとなど、小さな単位でのコンテンツの販売は、携帯電話の普及によって多くなってきました。では、マイクロコンテンツになることで、消費者や制作者はどのように変化したのでしょうか? 業界人だからこそ分かる裏側を語ります。

マイクロコンテンツってなに?

内村史子氏(以下、内村):「テーマトーク」コーナー! というわけで。

髙橋正敏氏(以下、髙橋):はい。

内村:本日のテーマトークを発表したいと思います。本日のテーマは「マイクロコンテンツ」。

高橋:マイクロコンテンツ。

内村:マイクロコンテンツって、私はあんまり聞き慣れない……。

高橋:とりあえず、マイクロコンテンツのご説明をした方がいいんじゃないんですか?

庄司智氏(以下、庄司):マイクロ……ビキニ?

内村:はいはい。

高橋:マイクロコンテンツっていうのは、電子書籍とかでよく見るかもしれないですが「1話いくら」みたいな。要は全体から分割されて、こう……。

内村:1巻ではなくて1話ずつでいくら、みたいな。

高橋:という感じの認識を持ってもらえれば間違いないかな。最近だとiTunesとかで、アルバムでいくらで、1曲いくらみたいな、あれが、みなさんの中では、マイクロコンテンツの売り方としては正しいというか、オーソドックスなものなんじゃないかなと思います。

内村:なるほど。じゃあ、より細かく売るっていう感じなんですね。

高橋:そうですね。

内村:だから「マイクロ」。

高橋:そうそう。だから、内村さんのことではありません。

内村:ちょっと、これ以上細かくなったら、見えなくなっちゃうので(笑)。

身の回りにあるマイクロコンテンツ

内村:ライトノベルだと、あんまり今おっしゃられた「マイクロコンテンツ」があるイメージってないです。

庄司:あんまりないです。今のところ、まず1冊という感じで、1話だけ売るっていうのはあんまり今のところないと思うけど……。漫画は最近あるよね?

高橋:多いですね。漫画の連載をWebでやって、最新話と1話は無料だけど、残りはポイントとかコインとか。

内村:そうですね。月額制のところとかもありますもんね。

高橋:あります、あります。けっこうそういうのあるなぁ、と思っていて。あと、ゲームで課金するものも同じかね。

庄司:あぁ。

高橋:君らが大好きなやつだよ!

庄司&内村:はい!(笑)。

高橋:あれも1つのマイクロコンテンツの在り方ですからね。ゲームがあって、更にストーリーとか衣装とか、ボイス……声優さんのボイスも含めてですけど、課金をしないと手に入らないものを求めて、みんな課金していきますから。

庄司:コンシューマーゲームとかでもあるよねぇ。普通の本編とは別に、サブ衣装を。

内村:ありますねぇ。ダウンロードコンテンツとかはそうですね。追加でお金を支払って、新しく衣装を女の子に着せたりしますもんね。

高橋:厳密に言うと違うのかもしれないですけど。

内村:ちょっと違うのかもしれないけど、流れ的には似てますよね。

ライトノベルでも1話ごとに販売?

高橋:全体を切り売りするという感覚よりは、世界を広げる感じに近いのかなと思ったりします。ダウンロードコンテンツの場合は、ですけどね。電子書籍は、あんまり、こう……ラノベはないもんね。

庄司:そうね。近いものがあるとしたら、Webで連載してる作家さん達が、割と短めの1話、2話、3話で20話とかで連載して、結果的に1冊分……とかっていうのは、多いかもしれない。

内村:それは、Web独特なものなんですね。

庄司:そうですね、1章あたりがすごい短くて、今やっているWebからの書籍化担当作なんかも、ちょっと近いかもしれない。

高橋:なるほどね。僕、漫画が1話売りみたいなことを言うんですけど。そもそも僕らが子どもの時代、全部1話売りだったやん。っていうか、雑誌の連載をずっと追って、その雑誌を切ってまとめたりしてて。

庄司:かつては、単行本は高いから買えないけど、週刊誌を買って、それをとっておいてまとめて読む……みたいな。

高橋:そうそう。でも、単行本になると単行本の描き下ろしがあるから、それを保管するために買っちゃったりとかして。

庄司:追加コンテンツを。

高橋:そうそう、買っていた気がするんですよね。「だから昔からわりと変わっていないのでは」説が、僕の中にはあって。

意外と昔からあるマイクロコンテンツ

庄司:さっきの例でいくと、アルバムの中の全曲はいらないけど、この曲欲しいというのがあったら買いやすい。

高橋:そうそう、そうだと思う。

内村:確かに。

庄司:そういう買い方する?

内村:私はまとめて買っちゃいますね。ただ、シングルとかだと、歌の入ってないカラオケ音源は、抜きで買うとかはありますね。アルバムはアルバムごとで買っちゃいますけど。

庄司:漫画だとあんまりないかもしれないけど、音楽だと、アルバムの中でもこの曲だけ買いますってあるよね。昔は頭から聴くのが前提だったから、1曲目にこの曲を持ってきて、2曲目にこうで……っていう曲順の流れあったと思うんだけど。そこが個別売りになると、また変わってくる。

高橋:声優さんもなんかありそうですけどね。ファンクラブに入ったら、ボイスが聴けますよ。みたいなとかってありそうな。

内村:昔、まだガラケーだった時……有料で声優さんの着ボイスを落とせるとかはありましたよね。たぶんそれは月額ポイント制で「このボイスを落とすには、何ポイント必要です」みたいな感じだった気がするので、マイクロコンテンツなのかな。

高橋:かたちは変わってるけど、そういうの、けっこう昔からある気がするんだよね。

やっぱりエロは買ってしまう

庄司:ストーリーがあるやつだと、追っていかなきゃ途中だけ抜いてもわかんないけど。料理漫画とかで、1話読み切りのやつとかだと、けっこうなんとでもなるのかね。「肉料理編まとめ」とか……。

高橋:あー……あるのかも。一番オーソドックスなマイクロコンテンツのやり方って、僕らはできないんだけど、18禁のエロのやつがすごくいいんですよ。

庄司:ほう。

高橋:エロシーンの前で、止めるんですよね。

内村:あー、なるほど。

高橋:この続きを見たい人は……っていうのは、けっこうみなさんやってらっしゃってて。

内村:えー。

庄司:買っちゃうよね(笑)。

高橋:買っちゃう。

内村:なるほど、見たいから。

高橋:BLもそうな気がするんですよね。僕、スマホの漫画を研究してた時があって。「そこで止めんの!? ズルい!」みたいな時があるんですよ。

ついつい買ってしまうのはなぜ?

庄司:ゲームに限らず、電子版のバナーをクリックして立ち読みとかもそんな感じだよね。

高橋:うん。

内村:さっきのスマホゲームとかでも、1日5枚チケットをもらって5話分読めます、みたいなやつも、チケットがないとその先が読めなくなって。でも課金すればチケットが手に入るから、結局1日我慢して明日になれば読めるはずのものを、我慢できずにすぐ読んじゃうとかそういうことですよね。

高橋:そういうこと。

庄司:うんうん。

高橋:買っちゃう。

内村:それは、買っちゃいますねー。よく買ってました。

庄司:まるっと1作、まとめた額を出して買うより、ちまちまっとの方が、お金に対するハードルが……。

内村:そうですね、そうなんですよね。100円だしとか、120円だしとか、300円だしぐらいで、指紋認証でピッて終わっちゃうから(笑)。

細切れになることで支払いのハードルが下がる

庄司:僕の場合も、某ゲームの1日1回限定の90円ガチャ……普段は1回300円が、1日1回まで90円っていうのを毎日回してるんだけど。90円だって思いながらやってても、年間通すとそこそこの……。

内村:そうですよね。

庄司:お金を支払うことへのハードルが下がる……。

内村:そうですね。まとまっていくらって言われたら、払うのはちょっとってなるけど、ちょっとずつだったら……。

庄司:いい意味で買いやすい。

高橋:そういうのは、けっこうオーソドックスになってくるんじゃないかなとは思いますけどね。

内村:そうですね。

高橋:続きを読みたくて、バーって買っちゃった経験ってある?

内村:あります、あります。

庄司:電子の漫画ってそんな感じだよね。

高橋:そうなんですよね。

内村:そうですねー。「今、無料で全話読めるよ!」みたいのがあったりするじゃないですか。あれで読んでて、読めるところまで読み切ったあとに「もう、無理!」ってなって、「じゃあもう、そもそも本買うわ!」って、本買いに行っちゃったこととか(笑)。

高橋:あー! 一番いい読者さんですね。

庄司:そういう売りかたを考えるとき、編集として、ちょっと気をつけなきゃいけないのって、各話ごとの引き……終わりかたがすごい大事になるよね。

高橋:大事!

マイクロコンテンツ時代の編集術

庄司:例えば、1話から2話がぬるっと進むよりも、1話の引きでは、その時謎の人物が、ババーン! 2話では、ピンチ! ババーン! みたいな感じで……。

高橋:そういう風潮はあるのかもしれないです。とある大ヒットドラマのプロデューサーさんも、同じように、「話の辻褄が合わなくても、絶対に最後のヒキを優先させる」とおっしゃっていて。

内村:なるほど。

高橋:「なんで、こうなったの?」となっても、次の話で回想から始まってもいいんだって。物語上、ヒキにならないところで終わるよりは、そっちのほうが今は向いている、みたいなことを言っていて。

庄司:話の結論が見えてきた……。マイクロコンテンツ化時代の編集者は、1話ごとのヒキも大事に考えねばならない。

高橋:ヒキの強さって、重要だよね。

内村:そうですね。

高橋:この番組、大丈夫ですか? ヒキ……あんま強くなくないですか?

内村:おっと。

庄司:うわーっ!

(庄司氏、突然倒れる)

内村:えっ!?

高橋:いや、そういうヒキじゃなくてもいいんじゃない(笑)。

庄司:そうですか。

内村:今、何に引かれたんですか?

庄司:撃たれて死んじゃう、的な……。

内村:あー……はい。じゃあ、そんな感じで、お話は尽きないんですが(笑)。

庄司&高橋:(笑)。

内村:そろそろ、おしまいのお時間となります。

庄司&高橋:はーい。

内村:番組ではリスナーのみなさんからのお便りをお待ちしております。庄司さん、高橋さんへの質問も募集中ですので、みなさんよろしくお願いいたします。

庄司&高橋:お願いします。

内村:というわけで『庄司智のラノベ編集者NIGHT! SIN 』番組のお相手は……。

庄司:講談社ラノベ文庫編集部の庄司智と。

高橋:アフタヌーン編集部の高橋と。

内村:ナビゲーターの内村史子でした! それではまた次回もお会いしましょう。せーの。

一同:おやすみなさい。

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