2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
8 Animals That Only Live in One Place(全1記事)
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マイケル・アランダ氏:動物のなかには、世界中どこにでも生息している種もいます。たとえば我々ヒトは、その大きな脳を駆使し、多様な環境下で生息することが可能です。
しかし、孤島や山頂で、あるいは深い洞窟の中に潜んで、仲間から孤立して生息する動物もいます。ある種の動物がただ1つの地域にのみ生息する場合、それが1つの湖であれ、1つの大陸全体であれ、その動物は地域の「固有種」と呼ばれます。
これから挙げる8種の動物は、ユニークな生息地に、時を経て特異な発達を遂げ適応したものです。
まずはじめにサンタクルーズカンガルーネズミから見ていきましょう。カリフォルニア州の狭い地域である、サンタクルーズ砂丘でしか見られない、小さなげっ歯類です。
カンガルーネズミの名は、強い後足で飛び回り、長い尾でバランスを取るさまがカンガルーに似ていることから付けられました。カンガルーネズミには23種いますが、この種は特に、砂地や灌木が生い茂る地域での生息に適しています。サンタクルーズカンガルーネズミは、成体になり繁殖できるようになるまでに時間がかかるため、エネルギーを節約し干ばつ期間を生き延びることができます。
一方で、こういった特性により、住環境が失われるなどのダメージを受けると、個体群が回復することは難しくなります。これは、環境と個体群の双方にとって痛手になります。なぜならカンガルーネズミは、その生息地において、生態系に大きな影響を与える重要な生物であることが判明したからです。カンガルーネズミが絶滅すれば、残された生息地は二度と元の姿に戻らない可能性があります。
カンガルーネズミはたくさん穴を掘り、後日エサとするために種を埋めます。これははからずも、植物の成育を助け、手入れをしていることになります。
1900年代の終わり、カンガルーネズミを砂漠の灌木地帯の狭い生息地から、10年以上にわたり、引き離す実験が行われました。カンガルーネズミがいなくなると、この地帯には付近の別の動植物が移り住み、草が生い茂るようになりました。
つまり、カンガルーネズミはサンタクルーズ砂丘の固有種というだけでなく、他の多くの動植物に、砂漠の灌木地帯という住環境を提供する、重要な役割も果たしているのです。
テキサス州ヘイズ郡の、水中洞窟群があるエドワーズ帯水層には、まるでSF映画から出て来たかのような生物がいます。テキサスメクラサンショウウオは、亡霊のようなピンクがかった白で、目はありません。真っ暗闇で生きているため、色素も視覚も必要無いのです。
この奇妙なサンショウウオは、視覚に頼る代わりに、周囲の水の動きを感知し、微細な水棲無脊椎動物を狩ります。また、極めて環境汚染に弱く、生きるためには酸素を豊富に含んだ、非常にきれいな水に住む必要があります。
1950年に起きた干ばつでは、エドワーズ帯水層はほぼ干上がってしまったため、この固有の両生類が生きているかどうかがたいへん心配されました。事実、テキサスメクラサンショウウオは、1966年の絶滅危惧種保護法が制定されてから最初の合衆国保護対象種リストに載りました。その個体数の少なさと分布区域の狭さから、今日においても種としてたいへん脆弱です。
しかし、野生の個体群に災厄が起きても、人間の飼育下で人工繁殖を行っているので、種の存続は可能という希望はあります。
両生類にしては珍しいことに、世界でただ一種、海に棲むトカゲがいます。ウミイグアナです。
この温厚な草食動物はガラパゴス諸島の固有種です。おそらくは、なんらかの理由で南アメリカから漂流して来て、海で暮らせるよう適応したイグアナの子孫だと思われます。時を経て、強靭でやや平たい尾を進化させた彼らは、これをプロペラのように用いて、海中深く潜水し、藻類や海草類をエサとして食べることができるようになりました。
頭部には特殊な腺があり、海水やエサから取り込まれる余分な塩化ナトリウムや塩化カリウムを漉し取ることができます。この腺は鼻に繋がっており、くしゃみをして塩分を排泄します。
1900年代終わり、小さな島に棲み、繁殖期が重なる陸生のイグアナと、ウミイグアナが、頻繁に異種交配することが観測されました。しかしラバやライガーのように、ハイブリッドのイグアナは不妊です。
爬虫類界のサーファーとして知られるウミイグアナですが、チャールズ・ダーウィンには受けが悪かったようで、「醜悪な外見を持つ」と描写されています。
しかし我々現代の科学者は、ウミイグアナと塩辛いくしゃみは、なかなか素敵だと考えていますよ。
さて、何千年もの昔に海面が上昇し、南太平洋パラオの島のある湖に、海水とクラゲが流れ込みました。
現在、湖は海から切り離されましたが、ユニークな黄金色のクラゲが取り残され、そこで生きるように進化を遂げて、今も生息しています。
クラゲの黄色い色は、体内に細胞内共生させている褐虫藻という原生生物からきています。この二者は相利共生の関係にあります。これは双方の生物が、同所的に生活することで、互いに利益を得ることを指します。
原生生物が光合成を行いエネルギーとなる分子を合成できるよう、クラゲは1日を通し日光を追って移動します。クラゲが狩りをする時もありますが、原生生物が生成した化学物質を代謝に使うこともあります。老廃物は、現生生物に還元されます。
この湖は、クラゲと一緒にシュノーケリングができる人気観光地なので、聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。クラゲの刺し針は、人間に害を与えるほど強くはありません。観光客は深く潜りすぎないように気をつけさえすればよいのです。湖底には、有害な硫化水素やその他の化学物質が層を成しているからです。
この層の中にも、他にも多くの微生物が生息しています。クラゲの日課である移動は、湖の栄養分や微生物を攪拌し、このユニークな食物連鎖を支えています。
しかし、今年のクラゲの個体数は減少しており、その原因は研究者にもわかっていません。エルニーニョ現象により引き起こされた干ばつが原因で、湖の塩分濃度が上昇し栄養バランスが崩れたせいだとする研究者もいます。
いずれにせよ、クラゲの個体数が元通りに増えない限り、湖の生態系全体が危険に晒されることになります。
たった1つの湖に棲む黄金のクラゲは素敵ですが、話はまだまだ続きます。
次の動物は、目視することすら困難です。世界一小さなトカゲであるこのカメレオンは、マッチの頭の上に乗せられるほど小さいからです。
尾を含めてもたった2センチメートルで、地球上でもっとも小さな脊椎動物である可能性があります。マダガスカル沖に位置するノージー・ハラという島に生息しており、つい最近の2012年に、研究者により落ち葉や茂みの中から発見されました。
このカメレオンは、孤島の種は限られた環境下で生存するために矮小化する傾向にあるという、「島嶼化」の極端な例です。
マダガスカル島には、たいへん小さなカメレオン種が他にも生息しています。研究者は、この極小のカメレオンは、島嶼化が重複した結果なのではないかと考えています。つまり、元から小さかったカメレオンが、ある時マダガスカル島からノージー・ハラ島に移り住み、さらに小型化したというのです。
島嶼化により極小のトカゲが生まれることもありますが、一方で島嶼化により巨大化する場合もあり、驚くべき結果を生み出します。オーストラリア東海岸沖にほど近い、ロード・ハウ島のロードハウナナフシがそれです。
枝から枝へ飛び移る甲殻類を思い浮かべてしまいますが(注:英語では、tree lobsterというため)、実際にはロードハウナナフシはエビではありません。しかし大きく、時に赤い色の、外骨格を持っています。彼らは、巨大化した飛べないナナフシなのです。
島嶼部は資源に乏しいですが、同時に外敵が少なく、競争も激しくはありません。ゆえに島嶼部に生息する動物は、小型化ではなく、時を経て巨体化することがあるのです。全長約12センチメートルの彼らは、世界でもっとも重い昆虫の一つです。
この巨大なナナフシは、島の入植者に早くから知られていましたが、1960年代以降、目撃されることはなく、外来種のネズミによって絶滅に追いやられたと考えられていました。しかし、一縷の望みが残っていたのです。
2001年、研究者たちがうわさを頼りに探したところ、ボールズ・ピラミッドという石柱付近の茂みの陰に、わずか24匹ほどのロードハウナナフシを発見したのです。現在、人工繁殖が成功し、メルボルン動物園でロードハウナナフシのコロニーが飼育されています。最終的には、研究者たちは外来種のネズミを駆逐してからナナフシを元の生息地に戻そうとしています。
サルと聞いて思い浮かべるのは、木々の間をブランコして移動したり、森の中に暮らしている姿でしょう。しかし、エチオピア高地の固有種であるゲラダヒヒは、大部分の時間を地上で過ごしています。
地上生活を送り、草類を食べるサルの群れが、アフリカのほぼ全土にいた時期がありました。しかし今日では、属を形成する現生の種族は、このゲラダヒヒのみです。大きさは通常のヒヒと変わらず、標高の高い草原を大きな群れを形成し移動します。日がな1日、まるまると太った尻で座り込み、石のように固い植物を、特化した歯を使って食べます。夜間は、外敵を避けて崖の岩だなで眠ります。
人里離れた山間部で生息しているにも関わらず、ゲラダヒヒもまた、人間の侵略に脅かされ始めています。生息地が端から徐々に農地として開墾されつつあるため、保護・保全の試みと努力がなされています。
最後にご紹介しますが、他に負けずとも劣らないのがマメクロクイナです。「近寄りがたい島のクイナ(注:英名Inaccessible Island rail)」という英名が、このクイナのすべてを表しています。
このクイナが生息しているのは、接近が極めて難しい地域です。クイナは、湿地帯で地上に暮らす、ツルの仲間です。クイナはたいていが飛べる鳥ですが、マメクロクイナは全長17センチメートルの世界最小の飛べない鳥です。外敵がまったくいない小さな島で生息しているため、飛ぶ必要がないのです。
小さな家族のグループを作って生活し、草を使ったドーム型の巣を営巣し、小さな無脊椎動物や実、種などを食べて過ごしています。
彼らの暮らしぶりは平凡ですが、その生息地は極めて興味深いものです。イナクセシブル島は、わずか16平方キロメートルの、南太平洋の絶海の孤島で、切り立った崖に囲まれた死火山です。南アフリカから船に乗っていくよりほかに、たどり着く手段がありません。
もしあなたがバードウォッチャーで、このクイナをリストに加えたいと願っているのなら、幸運を祈るしかありません。
進化とは、動物たちがテキサスの水中洞窟の暗闇から、オーストラリア沖の岩場まで、あらゆる場所で生きていけるよう適応していく力です。しかし、たった1ヵ所でしか生活しない点については、悪い面が確かにあります。自然災害や人災により絶滅に追いやられる可能性があるため、ことわざにあるように、たった一つのかごに卵を収納してはいけないのです。
研究者たちは、生態系の破壊を防ぐため、これらユニークな動物たちの保護を図っています。彼らがいなくなってしまえば、地球は前より少しつまらない場所になってしまうでしょう。
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