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Will Humans Ever Be Able to Hibernate?(全1記事)

人間は「冬眠」することができるか? 研究者たちが考えるリスクと可能性

SF映画では、「長い冬眠から目覚めたら、そこは未来の世界だった……」なんてことがよくありますが、人間を冬眠させるというアイデアは果たして本当に可能なものなのでしょうか? 実際に、日本のハイカーは転倒したことにより腰を負傷し、意識不明のまま食べ物や水がない山で24日間生存したという例はあります。つまり、人間は遺伝的には冬眠するために必要なものを持っていると考えられています。しかし、もちろんそこには問題もあるのです。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、人間が冬眠する可能性について説明します。

人間は冬眠ができるのか?

オリビア・ゴードン氏:寒い朝に目を覚まし、ベッドであと5分、あるいはそれ以上寝たいと思ったことがありますよね? 例えば、5日、数ヶ月、または数年の眠りにつけるとしたらどうでしょう?

多くの研究者が、この課題について検討してきました。人間を冬眠させる方法を見つけ出すことは、救命治療の可能性にも繋がります。そして、おそらくものすごく遠くの世界に旅することさえも可能になるでしょう。

この研究の鍵となるのは、まったく縁のなさそうなファットテールのキツネザルと、腐った卵の臭いをもたらす硫化水素になります。

冬眠は、食べ物の少ない寒く乾いた季節の厳しい時期を、動物が生き抜くための省エネルギー戦略で、あらゆる種類の生物が冬眠します。冬眠は、特徴的な脳波と眼の動きを持つただの睡眠と同じではありません。

冬眠時は、低代謝・低体温の状態で長期間の活動を行いません。北極のジリスのような、いくつかの動物はすべて冬眠に入ります。冬眠の間、彼らの核心温度は、3週間で摂氏0度以下まで低下することができます。

現在、人間は明らかにこのようなことを行うことができません。しかし昏睡状態や極限状態のように、人間が深い冬眠に入るという逸話も存在しています。

例えば、日本のハイカーは転倒したことにより腰を負傷し、意識不明のまま食べ物や水がない山で24日間生存しました。人間は、遺伝的に冬眠するために必要なものすべてを持っていると考えられます。

マダガスカルのファットテールのキツネザルは、乾季に年間最大8ヶ月間冬眠し、尻尾に脂肪を溜めて暮らします。彼らは私たちよりも小さく、毛皮がかっているかもしれませんが、彼らは霊長類なので遺伝子の97パーセントが人間と共通しています。

これを調べている科学者は、重複しない遺伝子の3パーセントに特別な冬眠の遺伝子はないと考えています。代わりに、彼らは遺伝子のオンとオフをコントロールすることによって、冬眠状態にできるようです。例えば、彼らは眠っている間に、脂肪分解に関わる遺伝子を何らかの形で抑制し、炭水化物を処理する遺伝子を制御します。

研究者が遺伝子をコントロールしたり、あるいはまったく別の方法でも、人間を冬眠させる手段を見つけ出せれば、医学において非常に有用なツールになる可能性があります。

冬眠時は、臓器を機能させるために必要な酸素量が少なく、呼吸は遅くなり、心臓を速く動かす必要がなくなります。なので、もし誰かが悲惨な自動車事故にあい、冬眠のような状態に置かれたら、失う血液量は少なくなるでしょう。

さらに、出血が原因で臓器が十分な酸素を得られない状態でも、酸素量は少なくて済むので生命を維持することができます。よって結果的には、受けた外傷よりも軽い症状で済むのです。

このように、重傷を負った人々は長く生き続けることができるので、患者を医療センターまで搬送する時間の猶予ができます。

人工冬眠は死に繋がるおそれも?

もし人間の中に冬眠するための潜在能力が隠れているなら、どうすればそれを引き出すことができるのでしょうか?

その解決策の1つは硫化水素にあることが判明しています。そうです、腐った卵のような臭いを放つ化合物が、私たちを冬眠させるのに役立つかもしれないのです。少なくとも、マウスにはその効果が出ています。

私たち人間と同様に、実験用マウスは自然に冬眠をすることはありません。しかし、硫化水素ガスにさらされたマウスは、一時的に活発状態になり、通常は生命維持できない低酸素の環境で何時間も生き延びました。

硫化水素は動物の体に多くの影響を与える一方で、大量になると死に至る場合もあります。また、硫化水素はミトコンドリアの中にある重要な酵素に結合することがわかっており、そのミトコンドリアは化学エネルギーを作り出す細胞内に存在します。

硫化水素分子がこの酵素に結合すると、それらは酸素を遮断します。そして、身体のパワーハウスをシャットダウンさせる手助けをすることで、代謝を低下させ、ある種の冬眠状態をもたらします。

冬眠状態からマウスを起こすために必要だったのは、ただ硫化水素をマウスから取り除くのみで、その後行動的にも神経的にも問題は見当たりませんでした。

もちろん、それがマウスに機能するからと言って、同様に人間に作用するというわけではありません。しかし、次の可能性を考えてみてください。もし宇宙の植民地化が始まったときに、宇宙飛行士を人工冬眠させれば、旅は楽になりますし食糧やその他の資源を節約することもできます。

そうでなくとも、人間の臓器の一部だけでもこの冬眠のような作用が働けば、それは医学の大きな一歩となり、移植するための臓器をより健康な状態に保ち、保存期間を延ばすことができます。

しかしながら、今たとえ研究者が硫化水素や他の方法によって人間を長期間の睡眠につかせることができたとしても、完全機能的な「人工冬眠ポッド」を得るにはまだまだ問題が残っています。

例えば、人間の体は長期間にわたって静かに滞在するのに適していません。なぜなら、人間は血栓を生じやすい体質で、死に繋がる可能性があるのです。そして、寝たきりの人や宇宙飛行士は筋肉を失いがちで、骨も弱くなります。

なので、人間を冬眠させることができたとしても、体を健康に保つ方法を見つけなければならないのです。だから、冬眠に基づく治療を救命室で受けたり、冬眠中の宇宙飛行士を宇宙に飛ばす前に、たくさんのテストや調整が必要となります。

今後、人間の冬眠はSFのような幻想ではなく、むしろ実際の科学に近付いていくでしょう。

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