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野球選手がゴルフするのもあながち間違いじゃない? 異分野のスポーツを練習する意外なメリット

一流のスポーツ選手たちは、常に1つの競技に集中して腕を磨いているイメージがあります。築城の短距離の選手は短距離ばかり、長距離の選手は長距離ばかりといったように、自分のスポーツにあわせて体や技術を最適化させることで能力を伸ばしています。ですが、スポーツ界では、別の観点から、ある練習法が認められつつあります。それは「異分野のスポーツ」を練習に取り入れるというものです。1つのスポーツだけでなく、全くことなる分野の練習法を取り入れることによって、新たな気づきを得られるというのです。今日は、そんな異分野スポーツを取り入れるメリットについて、武道の考え方を用いた運動法をレクチャーするYouTubeチャンネル「理論スポーツ」の管理人、高橋氏が解説します。

異分野のスポーツをやるべき理由

高橋大智氏(以下、高橋):こんにちは! 理論スポーツの高橋です。

今回は練習法についてあることをお教えしたいと思います。

スポーツの練習法にはどんなものがあるとみなさん考えているでしょうか? 本を読んだり、知識蓄えたり、理論を勉強したり、イメージトレーニングをしたり。こういったものがあるとおもうんですけれども、こうした練習法の他に、今日お教えしたいことがあります。

それは、異分野なんですよ。

異分野のトレーニング。つまり、今やっているスポーツとまったく別のことをやることで、実力を上げるという練習法が、最近認められつつあります。私もまさに異分野の人間なんですけれども、どうしてこの異分野のトレーニングは良いのか、理由があります。

1つは、やはり異分野というのは筋肉から頭の使い方まで、なにからなにまで違うんですよ。止まっている競技と走っている競技って考え方も違いますし、使っている筋肉も違いますし。そういったところで、なにかスポーツやっていると、実力を向上するために必要な技術というのがありますよね。こういうふうに。

例えば、100mの世界で、これとこれとこれ(注:Aというスポーツを向上するために必要な技術3つ)の技術を身に付けば、10秒が切れると。とすると、こことここ(色を塗りつぶした部分2つ)は、

本で知識を得たり理論を得たり、イメージすることで身に付けることができると。しかし、最後の1つがどうしてもわからないと。何やったってわからない、といったときに、なにか別のトレーニング(スポーツB)があるわけですよ。

これをやると、こいつ(スポーツA)をやっている時の筋肉と、こいつ(スポーツB)をやっている時の頭なり筋肉の働きを理解すれば、今までわからなかった最後の1つの動きがわかるようになると。

そうすると結果的に、本や情報で得られるような走り方や、練習とか理論とか、そういったものだけでは理解できなかった領域が理解できるようになって、それによって記録が伸びるということがあります、

これを体現したのが、日本人で現時点で1番タイムが早い10秒00、伊東浩司選手です。この人は何をやったかと言うと、100mが専門なんですけど、競歩を参考にしたんです。伊東浩司選手の走り方は、あまり膝が上がらない走り方なんですね。これは、競歩からヒントを得たわけです。

「膝はあまり上げない方がスピード出るんじゃないか」と考えて、試した結果9.99秒になったと。伊東光司は他にもいろんなトレーニング方法をやっているので、そこからもヒントを得ていると思います。

でも相反するものによってヒントを手に入れて、結果を出したという例がまさに伊東浩司さんなんですね。

異分野スポーツが活きた例

私本当にこの手の話が大好きで、もう1個、例えば弓道で。

これは私の実体験なんですが、弓道で弓矢を離す時がありますよね。武道、とくに弓道の世界で、弓を離す瞬間というのは右手じゃなくて、胸で離せ、「胸の中筋から左右に離るるごとく離すべし」という言葉があって、胸の中心から離れるように出せ、という教えがあるんですよ。

これ私意味がわからなかったんですよ。なので、こういうふうに弓を持って、紐を弦(つる)って言うんですけど、「弦抱えてるのは右手なのに、なんで胸の中筋なんだ」ってなんだかよくわからなかったんですよ。

ところがこれがたまたま行った釣りによって、胸の動きというのがわかったんですね。どういうことかというと、釣りって体がグルグル動くんですよ。弓道というのはまさに「静中の動」と言われている武道で、止まっている状態で動作が行われるんですね。

でも釣りというのは完全に動いてるんですよ。しかもこの動きというのが、マラソンとかトライアスロンのような一定しているような動きではなくて、揺らされるわけですよ。波なんで、いろんな不規則な動きをするわけです。

その時に、いつも弓道で弓引いてるんで、その時の姿勢の整え方というのを船の上でもやったわけですよ。そしたら、なんだか胸郭が揺れるなと。これだけ下半身の力が使えない状態で立ったら、「胸の中の部分もグラグラ動くなぁ」なんて思ったんですよ。それでその感覚を持った状態で道場に行ったら、これ(胸の中筋を使うこと)の意味がわかったんですよ。

これの意味というのはここではあんまり詳しくは話さないんですけども、解剖学的に首のこの部分の筋肉と

この部分

の肩を落としたと同時に、この運動が同時に働くと、この部分の胸郭が少し動く働きがあるんですね。それが、力で出すというよりは、胸郭を開くという運動なんですね。

胸郭を開く運動の先には、この橈骨(とうこつ)、尺骨(しゃっこつ)

という腕の外側と内側の筋肉が自然とキュッと立つようになって、それによって親指が離れてという、今のスポーツ科学の世界で言うと「キネティック・チェーン」と言われるんですけど、運動連鎖ですね。

運動連鎖のような動作が実際にあります。それが起こるんじゃないかと。それによって離れというか、その前の段階の引く動作というのがすごくやりやすくなった、なんて報告があります。

他に有名なのがマラソンです。これはもう実際に行われていて、マラソン+自転車ですね。

まさにこれも似て非なるものなんですけど、かなり関連してるんですよね。足を動かす競技であるというんだけど、マラソンは、膝にものすごく衝撃がかかるスポーツなんですよ。だけど自転車は、まったく膝に衝撃がかからないんです。

うまく運動の関連してる部分は関連してて、かつ両者のマイナスの部分、そこをうまく補う働きもあると。

そういったかんじで異分野を経験するというのはすごく良いんです。異分野の持つ部分というのは、伊東浩司選手や私の経験談のように、別のことをやることによって腑に落ちたという体験ができると。

もう1つは、お互いの悪い部分、マラソンで言うと膝に衝撃がかかる、自転車だったら衝撃はかからない。マラソンだと足は早く回さない、でも自転車だと早く回す。

自転車は、たくさんお尻の筋肉が身に付く。マラソンにはそれも重要だ。こういうふうに補う関係もできるんです。なので、異分野を試す、異分野のスポーツを練習する、これをぜひ実践に取り入れてみてください。

以上で説明を終わります。ありがとうございました。

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