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スポーツで「言われたとおりに」直しても、逆に下手になった気がする理由

スポーツは1人で習得できるものではありません。多くの場合、監督など指導者が必要です。そんな時の指導方法は、「動き」と「言葉」によるものです。しかし、「言葉」による指導は、時として悪い結果につながることもあります。というのも、体の特定の部位を指定して言葉で指導を受けると、その部分ばかりを意識してしまい、かえって他の部位が緊張してしまう可能性があるのです。では、言葉による指導をうけたら、どうすれば良いのでしょうか? 武道の考え方を用いた運動法をレクチャーするYouTubeチャンネル「理論スポーツ」。今回は、言葉とスポーツの関係性を解説します。

言葉にとらわれるとどうなるか?

高橋氏:こんにちは。理論スポーツ管理者の高橋です。今回お話ししたいのは、「スポーツにおける言葉」です。

今日お教えしたいのは、「言葉によってスポーツの実力が下がる可能性がある」ということです。本を勉強することや、指導を受けて指導を受けた通りに行うというのはすごく大事なんですが、全て指導者が言葉を発しますよね。あるいは、「こうした方がいいですよ、ああした方がいいですよ、こういうことを意識した方がいいですよ」と言葉があります。そして、それを実行するわけですね。そしたら、見た目はそのようになるので、良いのかと思いきや、実は実力が下がってしまう可能性がある。

言葉と言ってもわからないので具体的な例をあげます。スポーツにおいてよく出るのが、「股関節と肩甲骨」。この2つの言葉は、どの指導書にもよく出てくるわけです。「股関節を意識しなさい」「肩甲骨を意識しなさい」。あるいは「肩がズレている」とかあるいは「首がズレている」とか「背骨が曲がっている」とか。こう言ったものがよく言われるんですね。

そうすると多くの人はどうするのかというと、頭の中で、まず背骨を意識するんです。「あ。背骨をまっすぐにしないといけない」。そうすると背骨をまっすぐに意識しようと頑張るんです。そうすると、首と太ももの裏側。ここが緊張してしまいます。だから言葉というのは怖い。

素直にちょっと曲げた状態で走らせた方がスピードが出るのに、「背中が曲がっている」「もうちょっとしっかりしなさい」とか、あとは肩甲骨とか股関節ですね。「肩甲骨を意識して動かしましょう」、「肩甲骨を意識して投げましょう」って言われると、多くの人は肩甲骨って言われるとここだって思うんですよ。

みんなさん「背中の後ろを動かした方がいいんだ」って思うんです。ところが、肩甲骨を動かせば確かに腕を振るという動作はよくなるんですけれど、問題はスポーツの実力が上がるかどうかなんです。肩甲骨を意識して動かすと、腕の振りはよくなるんだけれど、それだけを見てスポーツの動作がよくなるか実際に検証すると、かえって下がる可能性がある。

資料とか本というのは「外観」、つまり外面を見ている。あなたがプレーしている外観を見て、動きを見ている。じゃあここで悪い部分を見てください。そしたら悪い部分が悪くならないように股関節をなおしましょう、肩甲骨をなおしましょう、肩がズレているからなおしましょう、首がズレているからまっすぐにしましょう。背骨が曲がるからまっすぐにしましょう。というふうにいうわけです。

例えば「肩がズレているから揃えるようにしましょう」って言うと、上半身。胸が前方に突出しやすくなったり「首がズレているからまっすぐにしましょう」というと、首の部分のズレを気にするばかりになって動きがちょっと悪くなったり。

だから指導というのは、言葉で何かしら伝えるというのはすごく難しいんです。良かれと思って言った言葉、言葉自体は合っているんですよ。肩がズレているから揃えることは大切なんです。

でも、揃えようと頑張ると別の部分が緊張してしまって、かえってうまくいかない。指導者とか本に「まっすぐにしたほうがいい」「まっすぐにしなさい」「体幹がブレているからまっすぐにしましょう」と言われると、受け手は、つまり選手はどういう風に思うかというと、これを「まっすぐにしよう」と思うんですよね。

まっすぐにしようと思うと胸が出たり、太ももがちょっと張ったりということが起こったりするんです。でも、言葉に対してこうしようと思うことは悪くないことなんですが、実はかえってスポーツの実力が下がってしまう可能性があるという。

肩のブレを正そうと思って、肩を動かさないで走ると胸が前に出やすい。あるいは背中をまっすぐにしようと思うと、背骨の筋肉が固まる。それによって首の筋肉や太ももの裏の筋肉、ここが力みやすくなったり。良くしようと思ってやったのに他の部分が悪くなって、その結果、ここ一番の場面でかえって他の緊張で動きが悪くなる。だからシンプルに「もっと気持ちよくやれ」って言われたほうが姿勢が良くなったりすることがあるわけです。

「する」のではなく「なる」

では、こういった言葉をどういう風に捉えればいいのか。「背骨をまっすぐにしなさい」と言われた時に私の場合どうするかというと、「あっじゃあ、上半身の力を抜いて、首の筋肉を伸ばしましょう」と。私の場合だったらこうしています。首の筋肉は上半身の一番先端なんですね。この部分が伸びることによってどうなるかというと、周りの背骨の筋肉とかも、負担がなくなって結果的にまっすぐになるんです。

だから別の動作をやって、まっすぐになるというのが大切なんです。だけど、言葉とか本で「背骨をまっすぐにする」って言われちゃうと、みんなはまず背骨を意識しちゃうんです。背骨を固くしたり、背骨を動かしにくくすることによって、かえってほかの筋肉を固くしたり、ほかの筋肉が力んだりが起こっちゃうんですね。

なのでどうすればいいか。誰かにアドバイスされた、本でこう言われたという場合は「どこを意識すれば動きがよくなるか」。肩甲骨を動かそうとするのではなく、肩甲骨が動きやすくなるように別の意識をする。それによって結果的に肩甲骨が動かしやすくなる。

「する」のではなくて何か別のことやって、「なる」「なりうる」。そういうような動きがいいのかな。その動きこそがかえって動きが良くなるんですね。

なので、見た目で指摘された部分をそのまま鵜呑みにして、その部分だけをよくしようと思うと、かえってほかの部分が悪くなるんです。特に言葉というのはそうなんですよ。

言葉にとらわれると外見をこうしようああしようと思って、中の筋肉とか自分がそもそも持っている姿勢や体の動きというのをかえって殺してしまって、それで、悪くなってしまう可能性があります。

なのでまっすぐにしようと思ったら別の意識をして、例えば目の使い方であったり足の指の使い方とかそういった部分をかえることで背骨がまっすぐになる。そういう風に本や言葉を読む時に、背骨をまっすぐに「する」って考えるのではなくて、別の部分を意識することで結果的にまっすぐにしたかった部分がまっすぐになる、というような考え方で本を読んだり、指導者が言っていることを自分なりに勉強してみたり。

そういう風にやることによって、実力というのはメキメキ上がっていくのでぜひ、言葉の捉え方を、そのスポーツならではの動きや考え方を言葉で捉えて勉強してみましょう。

以上で説明を終わります。ありがとうございました。

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