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ゲストによるトークセッション(全4記事)

多様化する働き方と画一的なままの子育て--当事者らが語る「#フリーランスが保活に思うこと」

「保育園落ちた日本死ね!!!」というブログエントリが世の注目を集めてから約1年。「保活問題」はメディアや国会でも社会問題として取り上げられています。2017年3月1日、プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会とハフィントンポストの共同開催で「#フリーランスが保活に思うこと」と題したイベントが行われ、フリーランスの保活問題の課題と今後について議論されました。本パートでは、ゲスト3人が保活体験談や問題意識について語った模様をお届けします。

「保育園落ちた日本死ね!!!」から大きく変わった保活問題

竹下隆一郎氏(以下、竹下):今日は「#フリーランスが保活に思うこと」という、イベントのタイトルにもなってるんですが、ハッシュタグにもなっています。ぜひイベントの最中も、Twitterをお使いの方、Facebookをお使いの方はつぶやいてください。そっちに集中しすぎて、こっちに注目してくれないのは悲しいんですけど、同時進行でやっていただければと思います。

それと今日は、会場の雰囲気からもおわかりのとおり、みなさんと対話をしながらやっていきたいなと思います。前半のトークセッションでも途中でちょっと質問の時間を挟みながら、もし間に合わなければ、最後にたっぷりとQ&Aの時間を設けますので、ぜひご意見・感想をみなさんとシェアしてもらえたらなと思います。

初めに、今回なぜこういう会をやろうと思ったかというのを、私からご挨拶も兼ねて説明させていただきます。

みなさんご存じだと思うんですが、昨年……ちょうど2月15日に「保育園落ちた日本死ね!!!」というブログがすごく有名になりました。

そのあと、私、ある政治家の方とお話をしたんですけれど、そのなかで印象的だったことがあります。今までもこういったデータは何度も官僚や政治家に示してきたけど、あのブログ……もちろん賛否両論ありましたし「悪口じゃないか」とかありましたが、あそこで本当に(状況が)変わったんです。

「保育園(に入れられない)は本当に大変なんだな」と。みなさんからしたら今さらだと思うんですが、やっと社会が気づき始めた。

厳しい「フリーランス保活問題」の現実

さらに大変なのは、今日のテーマになっている「フリーランス」です。

今、フリーランスで保活が大変だという人は1,000万人くらい日本にいらっしゃるんですかね。なぜフリーランスの保活が大変なのか。「フリーランス、家でお子さん見れるんでしょ。だったら保育園なんて預けなくていいんじゃないか」という発想もまだあったり、制度で足りないところもまだまだあったりします。

そこを今日は、単に「ここが悪い」「日本死ね」とかじゃなくて、「こういう制度だったら、みんな使いやすいよね」、あるいは今日解決策が見つからなくても、せっかくこの時間に集まったみなさんはすごく不思議なご縁だと思うんですね。なので、Sansanのアプリで名刺を交換しながらでもいいんですが、今日会った人同士でアイデアを交換していけば、「乗り切れる」という言葉はあまり使いたくないんですが、乗り切れるかなと思うんです。

せっかく春を迎えて楽しいはずの季節なのに、保活という、すごくネガティブな記事ばっかりハフィントンポストに載っちゃうのがすごく嫌なんですね。来年の春は楽しい記事が載ってほしいなと思って、今日、この会を開きました。ちょっと長くなりましたが、そんな思いで開いています。

まず、3人の方から自己紹介を兼ねて、お名前と今のご職業、あと保活・育児に関してどんなつながりがあるのかを語っていただきたいと思います。では、さっそくお願いします。

入園後もつきまとう転園の不安

吉野ユリ子氏(以下、吉野):吉野ユリ子と申します。よろしくお願いいたします。

私はフリーランスで、編集、ライティング、コピーライターなどをやっております。女性誌などを中心に活動しているんです。

保活に関していいますと、娘が去年の2月1日生まれで、今日で1歳1ヶ月になりました。自宅はわりと(保育園の環境に関して)悪名高い目黒区なんですけれども(笑)。

受かるか受からないかは別として、2月5日まではぎりぎり4月1日の申込みにできる、ということで、去年は運良くちょっと早く破水してくれたので、申請だけは出しました。旦那さんに走ってもらったんですけど、まあ、やっぱり無理で。

結局、妊娠5〜6ヶ月ぐらいから、認可・認証合わせて20〜25園ぐらい見学して申請をしたんです。そこで、本当に運良く1園だけなぜか区外で、電車に乗って行くところですけど、認証保育園で入れてくれるところがあったんです。そこに1年間通いました。

その間、認証も認可も空き待ちはずっとしてたんですけど、もちろんぜんぜん入れず。今年4月から、大変ラッキーなことに、家から近い認可の保育園に入れることになりました。ちょっと転園の不安とかもあるんですけれども、よかったと思っております。

よろしくお願いします。

竹下:お願いします。

(会場拍手)

「学童保育」も潜在的課題

竹下:次は新倉さん、お願いします。

新倉暁子氏(以下、新倉):新倉暁子と申します。私は現在、片付け収納アドバイザーとして、お客さまのお宅にうかがって一緒に作業したり、あとはセミナーなどで片付けの楽しさをお話をしたりしております。

私の保活については、現在小学校1年生の息子がおります。保活はだいぶ昔のことのような感じなんですけれども、まず認証保育園を探すことから始めました。

というのも、その時は仕事をストップしておりまして。もう真っさらの状態。そこから保活に入っていきました。当時は時代が良かったのかもしれないんですが、運良く8ヶ月後には認証保育園からOKのお知らせが来まして、無事、入園できたという経緯があります。

しかし、実は来年度の学童(=学童保育)で落ちてしまいまして。区立の学童に落ちたので、「実は(保活の次に)学童問題もあるよ」ということをお伝えしておきたいなと思います。よろしくお願いします。

(会場拍手)

竹下:ありがとうございます。そのさらに先にもまだ問題があるってことですね。

新倉:そうなんです(笑)。

働き方も子育ても、より自由な在り方を

竹下:では次、菊地さん、お願いします。

菊地加奈子氏(以下、菊地):みなさん、おはようございます。社会保険労務士の菊地加奈子と申します。

先ほどご紹介にあったように、私は自分で保育園を運営しております。社労士としては、会社のなかで女性も男性も育休を取得・復帰できるような職場環境整備を中心に、女性活躍や両立支援のアドバイスを行いつつ、会社のなかに保育園を作る支援も行っています。

なぜ私がそういう取組みをするようになったのか。私には子供が5人いるんですけれども、最初からずっと働き続けていたわけではなくて、3人目までは専業主婦をしていたんです。なので1人目のときから保活をがんばるお母さんたちを、本当に心から尊敬しています。

社労士の資格を取って、ようやく社会復帰を……保活をするとなった時に、まさに「フリーランスで保育園に入れる問題」に当たりました。そのなかでも認可外、横浜に住んでいたので横浜保育室……いわゆる認証保育園のようなものをそれぞれ経験しました。そして、認可にも無事に入れたんですけれども。

次に思ったのは、フリーランスになってせっかく自分で自由な働き方を築き上げたのに、保育園だけが画一的で、保育園の自分の子供だけはサラリーマンのような生活をしている。そして、自分だけが自由だっていうのはおかしいなと思って。「じゃあ、もっともっと子育てのあり方も働き方も、両方自由にクリエイトしていけるような保育園を作りたい」と、自分で保育園を作りました。

会社のなかでも今、内閣府の企業主導型保育事業だと会社の働き方に合わせた保育ができるということで、自由に子育てのあり方を変えていきたいなと思っております。そういったことも今日、お話しできればと思います。どうぞよろしくお願いします。

(会場拍手)

多様化する働き方、変化が難しい保育

竹下:菊地さん、ありがとうございます。まず、菊地さんからうかがいたいんですが、今「画一的」というキーワードが出てきたのがおもしろいなと思ったんですね。やはりフリーランスの方が象徴的なように、日本人の働き方ってすごく多様になっているのに、子育てだけが少し型にはめられている……という言い方はいいかわからないんですが、そういうふうに見えるんですね。今の日本の保育はどんなところに課題があって、どうすればもっと自由になれると思いますか?

菊地:私はフリーランスの方たちにもたくさんお話を聞いたりしていて、その中で今の私の保育園を使っている方とも話すことがあるんですね。そこで「フルタイムじゃないと今は認可保育園に入れない。なので、本当はそこまで働きたくはないんだけれども、がんばってフルタイムで復帰しようとする」といった話を聞くことがありました。

みなさんも「フルタイムで働いていますよ」という証明を出してなんとか入ろうとしてると思うんですけれども。そうじゃない働き方があっても、私はいいんじゃないかなと思っているんです。べつに「2〜3日働く、子供を2=3日預ける」でもいいんじゃないか、と。

みなさんも「どこかお客さんのあるところに行く以外でも仕事はつねにあるよ」と言われるかもしれないんですけれども、子供との時間も作りつつ、保育も仕事も柔軟であってほしいなと思っているんですね。

竹下:実際に保育園を経営されているわけですが。保育園の関係者、あるいは行政の方も変化はわかっているんですよね。どういうふうに思っているんですかね?

菊地:保育園の経営者目線で見ると、やはり子供が月曜日から金曜日まで常態で、同じ子が毎日来るという環境が一番ありがたいんですよね。

子供がお昼寝の時間になったらお布団に行く、ちゃんと座ってお話を聞ける状態は、保育士さん、保育園側からいうと、いわゆる「安定した保育」ができるので、すごくありがたい。

なので、週2日来るとか、週1回しか来ない、お昼から来るとかいったら、「もう絶対困っちゃう」となったりするんです。

「そんな、働き方に保育を合わせるなんて、子供のことを侮辱してる」と言われる方もいらっしゃるんですけれども。でも、その柔軟性をもっと保育側も受け入れて、一緒に工夫していく必要があると思います。

固定的な預かり時間のメリットとデメリット

竹下:そこはすごく難しいですよね。一方で、言葉が悪いですけど、管理しないといけなかったり、組織として運営しないといけないところは難しいと思うんですね。

吉野さん、目黒区のケースも含めてうかがいたいんですが、今の変化に対して行政機関や保育園関係者はどう受け止めていらっしゃいますかね?

吉野:今、おっしゃっていたような?

竹下:そうですね。はい。

吉野:目黒区に関していえば、今、感じていらっしゃるとおりの、本当に時間(の問題がある)。

例えば、認可保育園でいえば、だいたい7時15分から18時15分が普通の預かり時間。遅くても20時15分なのかな。それ以上はほとんど預かれるところがないので、働き方自体も「お洋服屋さんの人とか、レストランの人とかどうするんだろう?」「会社員の人でもすごい大変だろうな」と思うんですけれども。

あと土日の仕事ですね。私たちがふだんエンドユーザーとしてお世話になっているサービス業のほとんどが土日に仕事をやっていますから「みんなどうやってるんだろう?」ってすごく不思議なんですけど。

先ほどの話からすると、私自身はやっぱり、突然私がサラリーマンになったような感じで、「真面目な人間に生まれ変わったな」と思っているんですけど(笑)。

というのも、それまでは本当に、起きる時間・寝る時間も(自由だったし)、夜中でもがんばって働くけど、一方で昼間に友達とランチに行ったり、映画見に行ったり、ネイルサロンに行ったりしていたんです。

混んでいないときに、そういうエンターテイメントや病院に行ったり、仕事の時間と自分の時間は自由に組み合わせられていたんです。でも、今は完全にそれができなくなって、子供の時間になったんです。どちらかというと「いいところかな」と私自身は思っています。

やっぱり小さい子供……(私の子供は)0歳児なので、お手本に書いてあるような、夜8〜9時に寝かせるのはぜんぜんできていなくて、0時とかに寝かせてるんですけど(笑)。

保育園に18時半まで預けているんですが、(家から)遠いので19時半近くに家帰って、ごはん作って食べさせて、お風呂入れて、寝かしつけて、ちょっと仕事でなんだかんだして……となると、0時ぐらいになっちゃうんです。そうすると、今成長中の骨が育っている途中の人間を預かっている身として、「これ以上仕事のために子供を預けちゃだめだな」って感じる。

あと、一時保育にときどき預けることもあるんですけど。週末の仕事のときや予防接種受けに行った日の午後にどうしても仕事が入っちゃった日はもう1回預け直したり。そういうときにやっぱり不安になる。

毎日会ってるお友達や先生と、お昼寝したり公園にお散歩に行ったりすることは、子供自身にとってもすごく幸せなことだし、「あのお友達が寝返り打てるようになった」「あの友達が歩けるようになった」がとても励みになっているような気がするんです。私の子供にとっては、このサラリーマン的生活はよかったなと思っています。

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