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CBD: Marijuana Without the High(全1記事)

ハイにならない大麻の成分「CBD」の可能性

大麻の使用は日本の法律で禁じられていますが、「医療大麻」という言葉もあるほど、大麻が病気の症状を緩和するという点においての有用性に医師や研究者が注目しています。一方で、大麻にはまだまだわかっていない点も多く、なによりも「ハイになってしまう」という点で、危険視されてもいます。最近の研究では、大麻に含まれるCBD(カンナビジオール)という成分が注目を集めています。CBDには、ハイになることなしにさまざまな効能をもたらしてくれる可能性があり、今後の医療への活用が期待されているのです。今回のYouTube科学系チャンネル「SciShow」では、大麻に含まれるCBDという成分について、現在わかっていることを解説します。

医療用大麻の可能性

ハンク・グリーン氏:大麻が病気の症状を緩和する点で有用ではないかと、医師や研究者、一般の人からさえも注目されています。一方で大麻にはまだまだわかっていない点も多く、しかもハイになってしまうため、及び腰になっています。

しかし近年ある研究者たちは、カンナビジオールという、病気の症状を緩和しつつもハイにはならない大麻の成分を研究しています。

大麻の葉に含まれるもっとも有名な成分はTHCとして知られる、Δ9-テトラヒドロカンナビノールという向精神成分でしょう。THCは細胞のカンナビノイド受容体と結合する、カンナビノイドという物質の1つです。通常この受容体は、体内で作られるエンドカンナビノイドという化学物質と反応します。

カンナビノイド受容体には2種類あり、それぞれ体内で異なったはたらきを見せます。CB1は脳内で、CB2は免疫システムや末梢神経系でそれぞれはたらきます。

基本的には脳や脊椎自身には神経がありません。そのためカンナビノイドの効果は脳とそれ以外で大きく異なり、さらにこれまで行われてきた大麻の研究は主にTHCのみでした。

ところが大麻には60種類以上ものカンナビノイドが含まれており、とくにCBD(カンナビジオール)という物質が非常に注目されてきています。

CBDも大麻の主要な成分であり、THCとは兄弟のような関係で、化学式も同じで原子の配置がわずかに異なるだけです。

しかし構造が異なっているためCBDはTHCとは違ってカンナビノイド受容体と結合せず、そのためCBDではハイにならないのではないかと研究者たちは考えています。それどころか、カンナビノイド受容体に対しての阻害薬、ブロッカーとしてのはたらきも持っているようなのです。

さらにCBDは、カルシウムを細胞内に取り入れるGPR55や、体温や痛みと関係のあるTRPチャネルといった種類の受容体とも結合するようです。

いずれも推測であって、CBDが脳や体にどういった影響を及ぼすか確かなことはわかっていません。それでも、ハイにならないカンナビノイドを元にした治療には多くの魅力があるため、この10年ほどでCBDの研究が爆発的に増えました。

CBDに関する実験結果

例えば、大麻はてんかんの発作を治療するために昔から使われてきましたが、信頼のおける研究がこれまで行われてこなかったため作用の仕組みははっきりしていません。一方で、CBDが持つハイにならない治療効果は、発作だけでなく通常の治療においても効果が期待できそうです。

1歳から30歳までの薬が効かない難治性てんかんの患者に対して、CBDが安全で効果があるのかどうかを調べる研究が行われました。162人の患者に対して安全性を確認したところ、何人かは腹痛や過眠などの症状が表れ対象から外されましたが、CBDの副作用かどうかははっきり言えません。

結局137人の患者に対して、CBDが発作に対してどれほど効果があるかを調べられました。約35パーセントの患者に発作の緩和が見られ、何人かは試験期間中にまったく発作が出なかったので、深刻なてんかんに対して効果があると考えられます。

しかしこれはごく小規模な試験で、しかも事前に伝えられていた試験だったため、全員が試験内容を知っていました。標準的な治療として用いるためには、副作用やリスクについてのさらなる研究が必要です。

ほかにもCBDには炎症を抑える成分も含まれているようです。マウスの脳で行われた実験では、サイトカインという炎症と関係したタンパク質レベルを下げる効果がありました。

このタンパク質は、アルツハイマーから偏頭痛まで、人間のあらゆる体調と関わりを持っています。またニューロンに対してCBDが抗酸化作用を示し、アルツハイマーなどの病気によって細胞が退化するのを防げるかもしれません。こうした効果の臨床試験はまだ行われていませんが、いずれ実際の脳でも同じ効果を確認できるようになるでしょう。

これまで大麻は慢性的な痛みを一時的に緩和するために処方されてきましたが、最近ではより一層の活用が研究されています。臨床試験のなかには、THCやCBDを処方された患者がプラセボ効果以上に痛みの緩和効果が確認できた、というものもありますが劇的なレベルではありません。

大麻が痛みを緩和させる仕組みは解明されていませんが、痛みを感じるTRPチャネルとCBDが結合しているなら、やはりCBDが大きな役割を果たしているのでしょう。

最後にもう1つ、CBDには吐き気を抑える効果もあります。ある研究ではマウスにCBDを投与して、吐き気と関係のある脳内のセロトニン受容体にはたらきかけることで、吐き気を抑えられたと報告しています。

抗ガン剤治療に伴う吐き気を、CBDによって抑えられる可能性があるのです。

CBDには安全性や治療の効果などわからないことがたくさんあります。カンナビノイド受容体の結合の仕組み、ハイにならない理由、長期間に渡る投与で脳や身体にどのような影響が起こるかなどです。

THCのようにハイにならずに慢性疾患を治療できるというのは、投薬治療の新境地を開くでしょう。オピオイドのような長期的に投与し続ける必要のある薬だけではなく、別の選択肢も増えるわけです。

CBDがそんな代替薬になるかどうか、さらに研究する必要がありますね。

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