2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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川上量生氏(以下、川上):会社の目的として、ネットの人たちの食うことを最大目標にするっていうことが営利企業にはできない事ですよね。考えたんですけど。だから、そういう形で出来る範囲でやろうと思って。
岡田斗司夫氏(以下、岡田):できる範囲でネットユーザーたちの経済圏っていうのを広げていく。
川上:そうです。経済圏が広がると、例えばニコ動とかにもコンテンツをアップする人のレベルが今だんだん上がってきて1回作って2回目作るっていうのが厳しいわけですよ。人気になっても。そうすると、そこである程度収入が入れば、そこで心が折れずに作れる人も増えるかもしれない。それはニコ動にはプラスだという風に言い聞かせて。
岡田:でも、その方針・考え方のやつって、さっきおっしゃってたリアルな世界からお金が降ってくるわけじゃないって言ってるんですけども、今たまたま日本は時代的に、まだそこそこ資産があるから何となく親の家があったり、部屋があったり、親からの小遣いがあったり、仕送りがあったりなんかしてやってるわけですよね。
だから、ニコ生とかドワンゴってどういう風になってるのかっていうと、最終的には実は今の70、80代の人たちにすごい遠回りの援助をしてもらってるって言えるじゃないですか。
川上:あのね、それは違うんですよ。僕もそれは最初悩みだったんですけど。そうじゃないんじゃないかと。日本のダメな部分を支えているのかと思ったんですけど、そうじゃないんですよ。なぜかって言ったらニコ動はなくても働かない人は働かないんで。別にニコ動のせいで働かないわけじゃないんですよ。
岡田:ちょっと待って。今話ずらした(笑)。
川上:だから、関係ないんですよ。ニコ動以前とニコ動以後とどう変わったかって言ったら、ジャパンエキスポっていったら大昔のテレビアニメのコスプレばっかりだったんですよね。
それが今や初音ミクとか東方とか、ニコ動で流行っているキャラクターのコスプレをする人の方がむしろ多いぐらいなんですよ。要するに、海外で見ているのが昔はテレビアニメだったのが今はニコ動発のコンテンツがYouTube経由で見られていて、それで日本のサブジェクトジャパンっていうのが出来てるんですよ。
ということは、ニコ動っていう装置を通じて本来、全く日本のGDPに貢献しなかったニートの人たちが作った文化が日本という国の宣伝活動をやっているわけですよ。これは日本にとってプラスになっていると思うんですよ。
それはニコ動に参加して関わっている人全員なんですよ。ニコ動自体が盛り上がることによって成立していることであるわけだから、作ってる人もそうだけど参加して盛り上げてる人が日本の宣伝を間接的にやってるんですよ。これは日本にとってすごいプラスになると思うんですよね。今ゼロだったものが、プラスの働きをしているものだから。
岡田:じゃあ、海外の人たちがニコ動を見ていることによるお金とかそういう外貨みたいなものが、今ニコ動を盛り上げている人たちに対して返ってくる仕組みができていればベストな感じですよね。
川上:ベストですよね。今は宣伝しているだけで、金にはなってないというのが現状なんですよね。でも、それがお金になるようなエンジンができれば、これがたぶん日本の経済にとってもあっていいっていう話になると思うんです。もう一歩。
岡田:上手くいけばこれまた将来の夢的なことかもしれないですけど、世界中の人がニコ動を見て彼らが薄く少額を払うことによって、また、世界中もしくは主に日本でネットが生きがいの人たちがそれに参加したり作ったり盛り上げたりすることで、何かペイが返ってくるような仕組みができればいいですね。
川上:できればいいです。そう、それができれば外貨を稼げるわけじゃないですか。やっぱり、日本って資源がない国だから、そしたらこのニートが資源になったらすごいですよね。
岡田:じゃあ、ニコ動全体がコミケ&同人誌みたいな物になって、世界中がコミケに来る買う専用のお客さんみたいな感じになるわけ?
川上:例えばね、成功のシナリオとしてはそういうのはイメージできるわけですよ。
岡田:それでいうと今はどの段階ですか? それが成功の100段階だったら、100点としたら今何点ぐらいの所にいるんですか?
川上:30点ぐらいの所ですかね。
岡田:30点ぐらい。そこそこ行ってますね。つまり、60とか70とか行ったら、もうみんな成功が見えたりどうやって行くのかわかるわけじゃないですか。じゃあ、もう後は折り返し点が1回か2回あれば一気にそこまで伸びていく?
川上:そうですね。ひとつはニコ動、ドワンゴ自体が儲かることですよ。たぶん海外進出することに何がネックになっているかって言ったら、やっぱり利益が少ないんですよね。売りの利益って言ったら今季でも20億くらいかな。
それで海外に行くには足らないんですよね。でもこれが100億、200億くらいになっていくとそういうお金がかけられるようになってくる。
岡田:その場合のネットユーザーっていうのは、日本人はたぶん指さないですよね。そうじゃなくてニコ生、ニコ動に参加してて、一緒に盛り上げてくれる人で、別に国籍が日本じゃなくても世界中の人がネットユーザー側になってそれを見て楽しむだけの人というのが、お金を運ぶお客さんになるわけですか?
川上:あぁその話で思い出した。そうそう、押井さんのやつですよ。あれ酷いですよね。
岡田:なになに? 急に何を言い出したの?(笑)
川上:いや押井さんの発言でね、僕を叩かないで欲しいですよね。あれ押井さんの発言なんで。
岡田:何でしたっけ? 今ネットにいるのは最下層のやつだとかってそういうこと?
川上:日本は最下層の人間がネットをやっているから日本はダメなんだ、って発言を僕が言ったってことになってるんですけど、それちょっと違うんですよ。
岡田:違うんですか。さっきみたいな言い訳にならないですね? この話。
川上:ちょっと違うんです。言い訳というよりこれはずっと言っていた話で、別に言ってるし書いてるんで、それどういう話なのかというと、日本は要するにニートとか社会的には本来ネットにつなげられないような人たちっていうのが、日本の場合はネットにつなぐお金がある人たちが多いんですよ。
日本は親に寄生できる豊かな国だから、普通無職でニートだったらネットにつなぐお金すらないはずなんだけど、日本の場合はネットにつなぐお金ぐらいはもってるニートっていうのが多い。
だから、日本の二次創作だったりネットの活動をする人がすごいアクティブなユーザーが多くて、いろんな文化ができてるっていうのが現状分析で、それは世界の中では日本が一番進んでるっていうのが僕の主張なんです。
川上:それで進んでるっていうのは、だから日本はダメなんだっていうんじゃなくて、世界中がそうなるんですよ。世界中の傾向としたら貧者のメディアにだんだんなってくるんですよ。インターネットっていうのは誰でもどんな社会階層の人でも使えるようなメディアになっていきますよ。
実際アメリカとかもそういう風になっていて、2ちゃんねるの3~5年後かな? 「4ch」っていうサイトができましたし、アメリカにも日本と同じような濃いネットユーザーっていうのは、日本よりは割合少ないんだけれどもやっぱり増えてきているんですよ。
で、これ世界的にそうなんです。中国とかも。だから僕は日本はネット文化の先進国だと言っているんですよ。だから、ダメだって話はしてないんですよ。
岡田:ちょっと待ってください。整理すると、世界中にもちろん最下層の人はいると。で、日本では貧富の差はそんなに激しくない。
川上:そうですね。
岡田:日本の中での経済的な最下層というよりは、コミュニケーション能力が少なくて阻害されがちな人たちっていうのが……。
川上:職業についてない人ですね。ニートで、職業についてない人でネットにつなげられる人っていう割合が高いんですよ、日本は。
岡田:で、日本のネット文化っていうのはそういう風な人たちが中心で作ってると。
川上:そうですね。
岡田:ところが、海外を見たら、そこまでネットが進んでない。まず全員に行きわたってない。
川上:行きわたってない。
岡田:だから最下層の人たちはネットに触れるどころか、おそらくそのデバイス見てもまず識字率が低いから扱うこともできない。ただこれは徐々に徐々に海外も日本と同じようになってくる。
川上:同じようにだんだんなってくるはずだっていう。
岡田:つまり、貧富の差がゆっくりと縮んでいくだろうし、最下層の人も……。
川上:ネットコストも下がってくるんですよね。
岡田:で、もっと簡単な字が読めなくても使えるようなネットデバイスも広まるだろうと。
川上:はい。
岡田:じゃあ、なんでそこの発言が、日本は最下層のやつらがネットをやってるから日本のネット文化は最低だって話になっちゃうんですか?
川上:いや、だから僕はそれは言ってないんですよ(笑)。日本が罵詈雑言が多いのは、そういう人たちが多いからだと言っているんですよね。
岡田:結構それっぽいことは言っているんですね。
川上:だから日本は最低だというんじゃなくて、そんなもんだって言っているんですよ。そんなもんだし世界もそうなるって言ってるんですよ。
岡田:はいはい。わかった。
川上:だから微妙に違うんですよ。
岡田:じゃあ、日本の国のネット文化が下品なのは、下品なやつでもネットに入れる豊かな国だからだってことですよね。
川上:そうですよ、簡単に言うと。
岡田:よその国はネットに入れるような奴はあらかじめ足きり済みだから、そんなネットに下品な罵詈雑言が溢れないだけであって、それはよその国の貧富の差が激しくてネット文化が制限されていることを証明していると?
川上:人間が上品っていうことよりは、たぶんリアルな社会に居場所があるかどうかですよね。リアルな場所というか、要するにネットをツールとして使ってる人たちにはリアルがあって、社交の場だから社交的な発言しかしないんですよ。
岡田:なるほど、リアルに足場がある人は。
川上:ない人は基本、現実社会に多少なりとも恨みを持ってるからやっぱりいろいろ言っちゃうわけですよ。そういうもんじゃないですか?
岡田:高級住宅街でお互い顔が見える範囲内の公園のトイレって割ときれいだけども、スラム街のトイレってどんどん汚くなるのと同じですよね。現実社会に足場がない人間たちになるとネットの言葉となると社交辞令とかを抜きにして、逆に言えば単刀直入な議論みたいなことも生産的なことも起こるかもわからないんだけど、かなり罵詈雑言みたいなのに流れる。
川上:いや、罵詈雑言ってきっかけみたいなものですよね。だって、今1番汚いところって言ったら、Yahoo知恵袋とか小町とか(笑)。Yahooニュースのコメントとか、2ちゃんねるはきれいでしょ? 本当に冷静に見ている人は2ちゃんねるっていうのはそんなに汚いところじゃないって知ってるんですよ。
荒れてるのってほんの一部の話であって、そういうふうに最下層の人たちが恨みを持っているって言っても、そういう人たちが毎日恨みばっかり言ってるかって言ったらそんなことは全然なくって、そういうのが何かのきっかけで爆発することがあるっていうだけなんですよ。
岡田:じゃあ、彼らの居場所をつくりたいというのは、日本でいえば下層の方たちになるんですよね? 仕事がなくてっていう。今の話とさっきの話をつなげると。
川上:まぁそうかもしれないですね。
岡田:その彼らはコミュニケーション能力がないから自分の仕事場に恵まれなかったりすることで、現実との接点が少なくなる。だから、彼らの居場所として、ニコ動が現実との接点も提供しなきゃダメなんですよね?
川上:いや、だからそれをやっているのが超会議ですよね。
岡田:でも、超会議は現実との接点にはならないですよね。
川上:どうしてですか?
岡田:現実との接点のシンボルにはなりますけども現実の接点にはならないじゃないですか。
川上:現実との接点ってどういうものですか?
岡田:現実との接点っていうのはさっきおっしゃった、なんでリア充の人たちのネットのコミュニケーションが荒れないのかっていうと、お互いに顔見知りであったり、社会的なポジションがあるから、それがフックになって荒れないと。社交辞令がちゃんと回るから。
川上:それは違っていて、岡田さんもオタク側だと思ってたんですけど、岡田さんはコミュニケーション強者じゃないですかね。
岡田:えっ(笑)。僕はたぶんすごい口が上手いからコミュニケーション強者ですけども、コミュニケーション強者であることとオタクであることは……。
川上:弱者の痛みをわかってないんですよ。
岡田:わかんないです。僕はオタクの痛みはわかりますけど、弱者の痛みはわかんないです。
川上:でね、そのコミュニケーションができないっていう人は、じゃあオタク同士集まってコミュニケーションとれっていってもやらないんですよ。あの2ちゃんねるで言われるセリフあるじゃないですか。敵に回すと恐ろしいけど味方にすると頼りない(笑)。
つまり、集まっても連帯感は基本的に生まれないんですよ。そこでね、現実との接点っていうのをね、いきなりそんなリアルの顔見知りとかいう濃い関係を期待するのも難しくって、別にみんなで集まってゆるい連帯感を感じてればそれでいいんですよ。だってコミケだってそうじゃないですか。
岡田:ちょっと待って、腕組んで開き直らない(笑)。一気にここで行けると思って行かないで(笑)。
川上:だってね、現実の接点ってそんな濃いのって無理だって。いきなり。
岡田:でも、そこ目指すんでしょ? 彼らに居場所をつくるってことは?
川上:そうですよ。
岡田:今現実との接点っていうのはほとんど親だけとか、もしくはないような人たちにとって、超会議みたいなものを僕はシンボルだって言ったのは、無意味だって意味じゃないんですよ。
それはシンボルに過ぎなくて、じゃあそれをどうやって彼らの日常に持ってくるかってやらないと。この間、東さんの原発のアート化に関してはですね、言葉をすごくソフト化して言いましたけど、バカ野郎って言ったんですよね。
原発をアートとして残すなんて、情けないこと考えてんだと。そうじゃなくてって話をして、僕はそういうシンボルとしてやっとけば後は何とかなるってあんまり好きじゃないんですよ。
川上:いや、シンボルっていうよりはそこに関してはすごい冷めていて、僕は全員っていうのは助けられないって最初から思ってるんですよね。一部の人しか助けられないんですよ。本来はコミュニケーション弱者みたいな人が集まって、その中にヒーローが生まれると。現実の。
そういう人たちはそういう人たちで集まって、何か現実の接点を取り戻していい感じになると。そういう人が一定数生まれればそれでOKだと思ってるんですよ。全員はそもそも救えないと思ってるから。僕はそこまでは無理ですね。
一部の人が救える場所を作ればそれでいい。で救える、救えないって言ってもね、2つあってニコ動って参加することで精神的には救えるんですよ。かなり普遍性をもって救える。でも、それを社会的に救えるかというと、それはやっぱり今のところ限定された人数しか救えないんですよ。僕はそれでいいって思ってるんですよね。
岡田:ふーん。(スタッフに)ちょっとコーヒー入れて。チョコ食いながら良くしゃべれるなと思って(笑)。ほぼチョコがなくなりつつあります。
川上:本当、昼間の羽生さんとの対談で疲れて、めちゃめちゃ頭を使って糖分が欲しくてしょうがないんですよ(笑)。
岡田:糖分が欲しくて欲しくてしょうがない。でも、川上さんと今話しながら、岡田さんは強者ですよねって言って、つまり弱者のコミュニケーションが取れない立場で言いながらも弱者切り捨てるのも語ってたじゃないですか。
川上:ええ、そうですよ。
岡田:それはOKなんですか?
川上:それは全然問題ないですよ。
岡田:そこでOKだと思ってないから、声が荒ぶるわけですよね。
川上:いやぁそんなことないですよ。だから、荒ぶるとしたらそれは全員救いたい気持ちはあるんですよ。あるんだけど、それはやっぱり無理だから割り切ろうということですよね。
岡田:でも、正直それ目指しますよね? つまり、全員救いたいっていうのは本当は腹にあるわけですよね。実際は。全員っていうのは本当に1人1人全員っていうのではなくて、可能な限りできるだけたくさんの人に。だから、居場所をつくりたいっていうのは、そこに出てきたわけですよね。
川上:まぁ、そうですよね。ただ、そこをいろいろ考えたんですよ。
岡田:何で自分の心の中には愛情があるのに、そこで打算みたいなふりをするんですか?
川上:いや、そうじゃなくってやっぱり僕もね、定量的に考えるんですよ。みんな好きとかみんな愛してるとかいう言葉は嫌いで、その言葉が本当だとしたら1人1人に向けられている愛情はどれぐらいの大きさなのかっていうのをちゃんと僕は計算したいんですよ。
岡田:今たぶん画面見てる人全員、川上ツンデレだーって(笑)。
川上:そうしないと不公平じゃないですか。僕にとって親友がいて、ニコニコのただのユーザーがいて、もしくはニコ動のアンチがいて、彼らの命の重さっていうのは僕にとっては正確にいうとどれぐらいなのかっていうのを考えるわけですよ。
岡田:数値化して(笑)。
川上:数値化して。そうすると、やっぱり1対100とかって出るわけですよ。例えば僕の友達が幸せになって僕の知らない人が100人泣いてもまぁ知らない人ならOKかなとなるわけですよ。
岡田:でも、それがネットユーザーっていう部族じゃないですか。それはよその世界の人たちより大事なわけでしょ?
川上:あっそうですね。リアルな人たちよりは大事ですよ。
岡田:それに対して、何かここの話やってもたぶん水掛け論みたいになっちゃうな。やっぱり僕の言い方になっちゃうんですけど、川上さんは国づくりだと思っちゃいましたね。国民の1人1人までは面倒は見るわけじゃないんだけれども、最大多数の最大幸福だとおっしゃってるんですよね?
川上:いや、そうは思ってないですよ。
岡田:思ってないの?
川上:思ってない。いや最大多数っていうのを冷静に考えたら、やっぱり身内の方に幸せになって欲しいもん。それは。みんな平等とかって思ってないんですよね。
岡田:身内っていうのはネットユーザーってのが身内なわけでしょ?
川上:最大幸福は狙ってますよ。最大幸福が最大多数とは限らないですよね。
岡田:はいはい。
協力:岡田斗司夫とFREEex(公式ブログ)岡田斗司夫のトークや文章起こしは、こちらでもお楽しみいただけます。・岡田斗司夫チャンネル
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