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Inside the Tiny Ecosystems Hiding in Glaciers(全1記事)

氷河の生態系 小さな水たまりに潜む生物たち

巨大な氷の塊である氷河。普通の生き物が生息する場所とは程遠い過酷な環境ですが、そのなかにも生態系が存在します。厳しい環境で生物が繁殖するカギとなるのが、石の粒子などからできているクリオコナイトという黒い塵です。太陽の光を吸収し、氷河表面の氷を溶かし、水たまりを作ります。深さ十数センチの水たまりの中に、氷河ならではの生態系が広がっているのです。今回のYouTube科学系チャンネル「SciShow」では、知られざる氷河の生態系について解説します。

氷河の生態系

オリビア・ゴードン氏:氷河は無生物の氷の広がりと思われるかもしれませんが、 実はこの凍った氷の大地はとてもユニークな生態系の支えとなっているのです。

水溜まりの沈積物に隠れて、微生物の食物網がどうにか繁殖しています。そしてある日、氷河が溶けて、露わになった土地へ定着することができるのです。

クリオコナイトは風によって飛ばされ、氷河の上に蓄積した黒い塵のことで、石の粒子やすす、時には微生物からなっています。

クリオコナイトは文字通り“冷たい石の塵”という意味で、1870年にグリーンランドの氷上を横断中に、ほこりで覆われたものを発見した北極探検家のA.Eノルデンシェルドによって名づけられました。

クリオコナイトの黒い色は、夏に黒いTシャツを着ているときのように、太陽からの光を吸収します。そして、黒い部分の下の氷が溶け、底に沈積物のある小さな水たまりを作ります。こうして、クリオコナイトホールができるのです。通常は、15~20センチメートルの深さしかありませんが、数メートルの長さに渡って広がることもあります。

氷河の表面で生息することはできなくても、安全な場所と水は、特別な微小生息域を作り出し、そこへすぐに生命体が移動してきます。

最初に定着するのは、風に乗ってやって来た藍菌と呼ばれる光合成微生物です。これらは太陽のエネルギーをバイオマスに変えて、他の生命体の糧となります。そして、そこから菌類、藻やその他の細菌は藍菌を食べ、今度はそれらが小さな生物に食べられるといったように、生態系が始まるのです。

2014年に発表された研究では、五大陸のクリオコナイトホールから5つに枝分かれした異なる動物界から25種類もの無脊椎動物と見つけたと発表されました。この中には虫の幼虫やミミズなどはもちろんのこと、他のあまりよく知られていない生物も含まれていました。

例えば、微生物のワムシは車輪のような繊毛の輪が口の周りについていました。また、研究員は、スポンジボブに出てくるプランクトンのモデルになった、小さな甲殻類であるカイアシも見つけました。そして、みんなさんもご存知の小さくてかわいく、筋金入りの緩歩動物であるクマムシもいました。

クリオコナイトホール以外では、見られたことのない種もいましたし、まだ、生態系の研究が進んでいないので、おそらくまだ発見されていない種もたくさんあるかもしれません。

クリオコナイトホールでは、土に埋めなければ発芽しないとはいえ、長年に渡って生存力を持ったままの植物の種さえも発見されています。

1999年、科学者は南極半島の先端にある離島の氷穴から、堆積物を収集しました。そして彼は、採取した種子の中から完全に予想外の植物を発芽させました。おそらく、風で飛ばされたであろうその種子はアフリカに原生するシダだったのです。

クリオコナイトホールは、さまざまな種類の生き物が生き延びる環境を作っています。しかし、氷河が溶けるのをより早めることで、その環境は変わりつつあるのかもしれません。

この穴に住んでいる種族の多くは、紫外線から身を守るためと太陽の熱をより吸収しやすいように黒い色をしています。穴が多くできることで、黒い熱を吸収する生物がやって来ていっぱいになり、氷をより急速に溶かすことで、さらに移住する穴を作っていくのです。

しばらくは、より多くの穴は多くが生命体の住みかとなり、増殖を助長します。しかし、氷河の表面が縮小し続ければ、問題が起きてくるかもしれません。それでもクリオコナイトホールは、氷河が溶けたとしても、その下のむき出しになった土地から、新しい生態系を生み出すと考える専門家もいます。もし、クリコナイトの堆積物の微生物や休眠中の種、その他の小さな命が、氷河の住みかが溶けると共に、土に埋まれば、そこに根を下ろして、そこからまた成長するかもしれません。

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