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Can I Die From Too Much Water? Blood? Oxygen?(全1記事)

水、酸素、抗酸化物質… 必要不可欠なものを摂取しすぎるとどうなる?

身体は絶妙なバランスの上で動いていて、生きるのに必要な物質である水分、塩分、酸素、さらには血液細胞を、まさにちょうどいいレベルに維持しています。 水分や空気、ビタミンや栄養素といった物質の摂取が極端に少ないのは、例えば命取りになることもあるくらい、医学的によくないことだというのは、みなさんもすでにご存じだと思います。 しかし、健康的だとか有益、あるいは必要不可欠だと考えられているものでも、量を誤れば、危険なものになり得ます。実のところ、生命の維持に欠かせない物質の多くは、ほんの少しの過剰摂取であなたをダメにしてしまうこともあるのです。

水中毒は都市伝説ではない

ハンク・グリーン氏:みなさん、身体ってすごいですよね。あらゆる複雑なことを行って、こうしてみなさんを生かしているんですから。身体は絶妙なバランスの上で動いていて、生きるのに必要な物質である水分、塩分、酸素、さらには血液細胞を、まさにちょうどいいレベルに維持しています。

水分や空気、ビタミンや栄養素といった物質の摂取が極端に少ないのは、例えば命取りになることもあるくらい、医学的によくないことだというのは、みなさんもすでにご存じだと思います。

しかし反面、健康的だとか有益、あるいは必要不可欠だと考えられているものでも、量を誤れば、危険なものになり得ます。実のところ、生命の維持に欠かせない物質の多くは、ほんの少しの過剰摂取であなたをダメにしてしまうこともあるのです。

……たった今、あなたが飲んだり食べたりしているものもそうですよ! ですので、ぜひ注意を向けてみてください。

水分が身体にとってどれだけ大切なものかというのは、周知の事実ですよね。全体重の60パーセントを水分が占めていることを考えれば、「みなさんはほぼ水でできている」のだといえます。そして、体内の水分は多くの大切な機能を果たしています。

なかでも重要な機能は、溶解したナトリウムやカリウムなどの無機物のイオン、すなわち、おそらくみなさんご存じの「電解質」と結びついた時に起こるものです。細胞はさまざまな濃度のこうした電解質を利用して、正と負の電荷を引き起こし、体内の電気系の働きを調整します。

動く、考えるなど、みなさんの身体のあらゆる動きの動力となっているのが、この機能です。ですから、脱水症はしゃれにならないことです。十分な水分がなければ、電解質を失って、生物版「停電」状態に陥り、生命維持に欠かせない脳や心臓といった臓器から電気が奪われてしまうのです。

しかしながら、みなさんにあまり自覚されていないのは、水の飲みすぎも同様に危険がある、ということです。そうなんです、「水の飲みすぎで亡くなった人がいる」という都市伝説は単なる伝説ではなく、水中毒による死というのは本当に起こることなのです。

脱水症と水中毒は同じメカニズム

学生社交クラブでの通過儀礼のしごき、ラジオ局のコンテストなどによる水の一気飲みで、実際にこれまでに死亡者が出ています。また、マラソン、炎天下でのハイキング、薬物を伴う長時間のダンスパーティの後の過剰な水分補給も、同様の結果を生んできました。

この症状は低ナトリウム血症といわれ、血中の塩分が不足している状態で、つまり、血液を薄めすぎてしまった結果、電解質がなんの役にも立たなくなっていることを意味しています。座りながら6リットルの水を一気飲みすれば、高い確率で腎臓の洗浄速度が追いつかず、適切なバランスを回復させることができなくなります。

代わりに、過剰状態の水は、特にナトリウムイオンなどの細胞内の高濃度の電解質を見つけ出し、それによって細胞を水風船のように膨らませます。電源不足という状態だけでも大変な問題なのですが、細胞には、そんなに水分を取り込めないものもあるわけです。

例えば脳内の神経細胞は、頭蓋骨の内部にめいっぱい詰まっており、膨張できるスペースがほとんどありません。そのため、水のとりすぎによる脳腫脹、すなわち脳浮腫は非常に危険なのです。発作、昏睡状態、脳損傷、さらには死につながることもあります。

結局、脱水症死と水中毒死には多くの共通した症状があり、メカニズムも同じものです。なぜなら両方とも、体内の水分と電解質バランスの崩壊という、同じ問題から発生しているからです。

抗酸化物質の摂りすぎもよくない

ほかにも、「薬も過ぎれば毒となる」可能性があるのは、抗酸化物質です。昨今、ありとあらゆる食品ラベルで大げさに宣伝されていますよね。しかし、そもそも抗酸化物質とはいったいどういったもので、なぜ摂取する必要があるんでしょうか?

抗酸化物質とは、簡単に言えば、酸化によるある種の細胞傷害が起こるのを阻止したり、少なくとも遅らせるよう助けたりする分子です。この働きを理解するには、まず始めに、抗酸化物質が制圧している、健康を脅かす存在「フリーラジカル(遊離基)」についてお話しなければなりません。

90年代のガレージバンドみたいな響きのこの「フリーラジカル」ですが、対になっていない電子(不対電子)を余分に持つ原子・分子のことで、危険をはらんでいます。フリーラジカルは、ペアを組めない不対電子があるために孤独で不安定になっており、どうにかしてどこかの電子を奪ってやろうと血眼になって探します。

そして実際にほかの分子、例えばみなさんの細胞の1つから電子を取り込む際には、分子を酸化させる、すなわち、分子から1個の電子を失わせて奪い去ってしまいます。こうした電子の強奪が酸化ストレスを引き起こし、DNAなどの細胞や細胞構造に損傷を与えます。

ありがたいことに、私たちの身体は、フリーラジカルの多数撤去に活躍する抗酸化物質を産出しています。また、ある種の食物から摂取する抗酸化物質にも除去を助けてもらっています。それは果物や野菜で、βカロチン、ルテイン、ビタミンA・C・Eなど、たくさんの天然の抗酸化物質を含んでいます。

こうした天然化合物は、フリーラジカルに自身の電子を与えることで、言ってしまえば「黙らせ」て、破壊的な暴挙に終止符を打ちます。それゆえ、抗酸化物質は有益なものだと考えられており、食事における抗酸化物質のとりすぎについての懸念など、これまでほとんど挙げられていません。

しかしながら、抗酸化物質をサプリメントからとることに関しては、同様に有益だと言うことはできません。ブルーベリーやダークチョコレートを食べる場合、いくつもの違った種類の抗酸化物質を摂取することになるのですが、抗酸化物質の働きには、そうした異なる種類のものが力を合わせる必要があることがわかっているのです。

つまり、抗酸化物質がフリーラジカルに1つの電子を与えると、一時的に不安定な状態になりますが、ほかの抗酸化物質が周りにいれば、そこから電子をもらうことができます。そして電子を与えた抗酸化物質は、さらにほかの抗酸化物質に電子をせがむ……という流れになります。こうした自由な電子の交換というのは、異なる種類の抗酸化物質間でもっともうまく機能するのです。

一方で、ビタミンCなど1種類だけの抗酸化物質が大量に摂取された場合、ビタミンC分子がフリーラジカル制圧の仕事をしても、周囲に再安定化の手助けをしてくれるほかの種類の抗酸化物質がいないわけです。つまり、サプリ摂取前よりもさらに多くの不安定な分子が体内を漂うことになり、そもそもの目的とは正反対の状態に陥ってしまいます。

ですから、サプリメントが命取りになるとまでは言わないのですが、極端な酸化ストレスが絶えず害をもたらすことは間違いありません。これについては後ほどご説明することにして、まず知っておきたいのは、フリーラジカルと抗酸化物質のバランスは私たちが考えていた以上に複雑なもので、抗酸化物質サプリメントを大量に摂取することは、そのバランスをめちゃくちゃにしてしまうということです。

血液のバランスも重要

では、外から摂取するものではなく、考えを向けもしないようなものについて、適切なバランスを保つこととは? 例えば……自分の血液はどうでしょうか。

血液は、栄養素を送り届け、老廃物を取り除き、さらには傷口を固めたり、感染症を防いだりしています。こうしたすべての機能を、バランスの取れた4つの成分を使って行っています。

酸素を全身に運搬するのは赤血球で、白血球は感染防衛のために戦い、血小板は血液の凝固を行います。そしてこれらの成分は、水分、糖分、ナトリウム、タンパク質、脂質などでできた血漿中を漂っています。標準的な成人の血液保有量は5リットルで、みなさんご存じのように、血液を大量に失えば即死してしまいます。

適切な量の血液を保持することは、非常に重要なことです。以前の動画で、プロスポーツの世界での「血液ドーピング」について、血液量を意図的に操作するものだとお伝えしたことがありましたが、適切な量の血液細胞を持つことも、体内バランスを維持する上で鍵となることです。

血液細胞量において起きるアンバランスはたいがい、なんらかの疾患によって引き起こされています。血液細胞数の低下はがんやHIV/エイズなどの病気の兆候を示している場合があるというのは、みなさんも聞いたことがあるのではないでしょうか。

しかし、増加についても、血液細胞に関してはまったくいいことだとは言えません。例えば、白血球が過剰産生された状態は白血球増加症として知られており、免疫システムの「白い騎士」である白血球ですが、この症状は逆に免疫反応を抑制してしまうのです。

白血病は、白血球の過剰増加に関連した疾患としてもっともよく知られている病気でしょう。白血病は血液のがんで、骨髄中で幼若かつ異常な状態の白血球が増殖することによって引き起こされます。

健康な状態の細胞とは違い、こうした白血球は感染に立ち向かうことができない上に、死滅すべき時に死滅することなく分裂・増加を繰り返し、最終的に健康な赤血球や血小板を追いやってしまいます。結果として、身体が感染に対して十分に戦うことができなくなり、酸素を運ぶことも、止血することもできなくなってしまいます。

同様に、骨髄中での突然変異によって、赤血球が過剰産生されることもあります。例えば、別の種類の血液がんである、真性赤血球増加症(真性多血症)と呼ばれる疾患があります。健康体であれば、赤血球の割合は血液中の約45パーセントですが、こうした疾患では血液が過剰に濃くなり、血栓や心臓発作、脳卒中などを引き起こす可能性があります。

酸素の摂りすぎで脳が損傷?

ここで酸素の話に移りますが、酸素こそは、とりすぎが害になるなんてこと、あり得ないと思いますよね? ええ、わかりますよその気持ち! でも正直、もうみなさんこれを聞いて驚かないでほしいのですが要は……「バランス」が命なのです!

全般的に酸素はいいものだということで満場一致するところだと思いますし、事実、確実に生きる上でもっとも重要なものです。食べ物なしで数週間、水なしで数日は、そうせざるを得ない場合、なんとか生き延びられますが、酸素なしでは数分で息絶えてしまいます。

私たちが呼吸し取り込んでいる空気は約21パーセントが酸素でできています。空気を吸い込むと、赤血球が肺から酸素をつかみ取り、ほかの細胞に受け渡します。ほかの細胞は細胞呼吸のためにこの酸素を使うのですが、細胞呼吸により糖分を分解する過程が化学エネルギーを生み出します。

つまり、酸素がなければ、細胞が活動するのに必要なエネルギーをまったく得られないということになります。それにもかかわらず細胞は、十分な酸素がなければすぐに死滅してしまう一方で、酸素がありすぎるとむしろもっと早く死んでしまう場合があるのです。

これはいわゆる「酸素中毒」といわれる症状で、酸素が急速に取り込まれ体内にあふれかえってしまった時に起こります。たいていは病院などの場所で、心臓発作や脳卒中からの蘇生中、あるいは未熟児への呼吸補助の際などに発生することがあります。

ここでのリスクはつまるところ、私たちの宿敵、酸化ストレスです。電子を奪い取れるのであれば、辺り構わずとにかくなんでも酸化してしまうフリーラジカルのもたらす脅威についてはすでにご存じのとおり。しかしなによりも酸化の力を持っているのは……酸素そのものです!

酸素自体、外殻の電子に2個空きがあるため、ものすごく飢えた状態で、空きを埋めたくて仕方ありません。酸素の単独行動であれば、体内でフリーラジカルを作って回り、そのフリーラジカルがほかの分子から電子を盗み続けます。

そこでもちろん私たちの身体は抗酸化物質を作り出し、酸素によるこうしたダメージを修復するわけです。私たちは21パーセントの酸素を含む環境に暮らし、そこから受けるストレスに対処することに慣れていますよね。でも、100パーセントの酸素ではありません!

ここ10年ほどの間に、科学者たちの発見によって、患者に100パーセントの酸素を与えると、多数のフリーラジカルが生み出され、さまざまな組織障害が引き起こされることが明らかになりました。例えば2008年、テキサスの研究者たちは、酸素不足の新生仔マウスを100パーセントの酸素で治療したところ、マウスに脳の損傷や脳性まひに似た症状が認められたことを発見しました。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか? すべての酸素がフリーラジカルの波を作り、それによって強烈な酸化ストレスが引き起こされると、とくに、神経細胞を取り囲み絶縁体の役割をしている脂質に富んだ物質「ミエリン」を作る細胞にダメージが加わるからです。しかし研究者たちは、マウスに抗酸化物質を与えることで、有害作用のうちいくつかを治療することができました。もちろん、適切な量を使って。

ここで覚えておきたい重要なことは、身体は正当な理由があって特有のバランスを保っているのだということです。みなさんは、特別かつ貴重な量の生き抜くのに必要なものとともに、複雑な世界に生きており、必要なものだけを取り入れ、取り入れたものだけを使うようにできています。

ですから、水、酸素、抗酸化物質、自分自身の血液細胞に関して言えば、取りすぎはかえって健康を損なうことにもなり得るのです。

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