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WOWOWぷらすと公開収録「フランス映画が好きすぎる」(全6記事)

映画解説者おすすめの1本 チャップリンの孫が実在の大道芸人を演じる『ショコラ!』

映画解説者の中井圭氏と、ぷらすとガールズの福永マリカ氏でお送りするWOWOWぷらすと「フランス映画が好きすぎる」。映画評論家・松崎健夫氏、TIFFプログラミングディレクター・矢田部吉彦氏をゲストに迎え、フランス映画についてトークを繰り広げました。今年のフランス映画祭で公開された作品のなかで、中井氏が選んだ1本は『ショコラ』。さまざまな議論を呼び起こすこの作品が持つ意味とは?

フランス映画入門に最適な1本

スタッフ:「シンクル」さんのほうでもコメントいっぱいきてますよ。

中井圭氏(以下、中井):ほう。

スタッフ:見てみましょう。

(コメント「『アスファルト』、PTAマグノリア的な、突拍子もない出来事が物語を作るんですね。」に対して)そんな感じなんですか? 

中井:蛙は降ってこない? 

矢田部吉彦氏(以下、矢田部):蛙は降らない(笑)。蛙は降らないけど、あれが降ってきた。空からなにか降ってきましたね。

中井:なるほどね。なんとなく、矢田部さんのお好きなものってわかってきますよね。

矢田部:いやっ……。うーん。

中井:(笑)。もちろん、傾向はぜんぜん違うものだと思うんですけど。ぜんぜん違うんだけど、共通する芯みたいなものをなんとなく感じますけどね。

矢田部:あー。そうですね。こういうの嫌いになれないですね。どうしても、ついつい手が伸びちゃうのはあります。

中井:たぶん、僕らも好きだと思いますね。見てみたいと思いますね。

スタッフ:ニコ生でも、これなら行けるかもって。

福永マリカ氏(以下、福永):スケジュール的なことですか。

矢田部:そうか、土曜の夜だし。

スタッフ:あと、あれじゃない? フランス映画というと、難しいって思いこんでらっしゃる方が多いけど、そういう方にもね。まずここから入るというのも手ですね。

矢田部:そうですね。マイケル・ピットも出てますし。

松崎健夫氏(以下、松崎):マイケル・ピット出てますもんね。

中井:なるほど。ぜひ、チェックしてください。

福永:はい。

白人と黒人の大道芸人コンビを描く『ショコラ!』

中井:ってことで、僕のほうから1本。けっこうね、「リストのなかで1本選んで」って言われて、僕は後出しになっちゃって。みんなこれもう選んでて。ワッてなったんですけど。ちょっと方向性を変えようと思って、1本選びました。

『ショコラ!』を僕はお勧めします。予告編のほうをご覧ください。どうぞ。

(予告編が流れる)

中井:はい。ということでね、『ショコラ!』という作品ですけれども。たぶんね、映画よく見ている人はパッと見た時に、「あれ、見たことあるやつだな」と思ったと思う。

松崎:最近、恐竜に追っかけられてましたよね。

中井:そうですね。いろんな、なんとなくだいたい技巧的な感じのが多いと思うんですけど。オマール・シーですね。『最強のふたり』が日本でも大ヒットしたので、記憶にも新しいかなとも思いますし、『サンバ』とかも公開になっていましたし。

オマール・シーが出ているんですけど。これどういう話かというと、1800年代後半ですね。1890年代から1920年代とかそれくらいまでの期間の話なんですけど。

フランスで、大道芸人といいますか、道化師といいますか。サーカスで芸を見せる芸人さんがいるんですけども、そのなかでもいろいろいるじゃないですか。ピエロやる人もいれば動物とかいるんですけど。

当時、黒人というのが差別待遇にあったというところで、サーカスのなかでも未開の人の役。言葉が通じない未開の人という出し物で使われることもあったんですけど。そんな彼を白人のパートナーが見い出して、一緒にコンビ組まないかということで、一緒にコンビを組んで、ブレイクしていくと。

当時白人と黒人のコンビなんかなかったので、それでみんなの笑いをとってブレイクしていきますよという、実話のお話なんですけども。

『ショコラ!』で描写される黒人差別

なんていうか、印象としては、すごく明るく楽しそうな映画ではあるんですけど、そんな単純なものじゃないというところにすごく惹かれていて。

テーマに、差別の問題があると思うんです。例えば、白人と黒人が組みますよとなった時に、どういう時に笑いが起きるかというのが、1つポイントになっていて。黒人のオマール・シーが白人に蹴り飛ばされるシーンになると笑う。

白人と同じように地位が上がっていった、というふうに見られるかもしれないんだけど、実際はそうではない。実際の位置付けとしては、それでもやっぱり(白人から)上から見られている。

笑いのなかに包まれていくんだけど、そういうことの悲しみだったりがすごく繊細に描かれているなというのが、1つ僕がおもしろいなと思ったところです。

あともう1つは、その時代的に考えた時に、映画史と重なってくるというのが非常に大きい。

相方がいるんですけど。この相方、あのー、ジェームス・ティエレさんという白人のほうですね。彼はチャップリンの実際の孫であると。ちょうど、たぶん、健夫さんも矢田部さんもお気づきだと思うんですけど、シネマトグラフのシーンが途中で入ってくるんですよ。

シネマトグラフってリュミエール兄弟の発明した、1895年の『列車の到着』とか『工場の出口』とかで、(ハンドルを)手で回して映画を初めて作ります。

当時、シネマトグラフって普通に起きているものをそのまま撮るということだったんだけど、それだと芸がないから、いろんなことをさせるわけですよね。

例えば、芸人さんに芸をさせてそれを撮るとかというシーンが入ってきているわけなんですよね。ちょうどフランスで生まれた映画というものを映画史になぞらえながら、しかもイギリスのチャップリンの孫が、フランスの実際の芸人を演じているというところとか。

映画史とリンクさせながら見ていくことができるというのも、このフランス映画ならではのおもしろさの部分があるんではないかなと。

『ショコラ!』というタイトルの狙い

スタッフ:圭ちゃんね、ニコ生ではね、「『ショコラ!』というタイトルが失礼なんじゃないか?」みたいな感じでザワザワしてるんだけど。

中井:はいはい。

スタッフ:そもそもこれは、なんだろう。失礼とかという話ではなくて、ショコラという道化師の話なんだよね? 

中井:そうなんです。

スタッフ:要は、「チョコレート」というふうに蔑称を付けられた道化師の話というところからスタートしているので、このタイトルうんぬんというのは、当時の目線で語られた道化師の話だから、ショコラだと。

中井:そうですね。ショコラという名前自体もこの作品のなかでどういう位置付けなのかということも描かれているところとか、僕はいいと思います。

スタッフ:なんかね、みんなね、ニコ生見ていらっしゃる方は、「どうなんだ?」みたいな感じでね。もうちょっと、ピリピリしたムードが漂っているんだけど。

中井:ピリピリしていますか? みなさん。

スタッフ:でも、そこに対して訴えかけている映画ですよね? 

矢田部:まさにそこが狙いですよね。狙って付けたタイトル。

中井:いかがでした? 健夫さんは。

松崎:今ちょっと、怒りが……。

中井:(コメントに対する)健夫さんの沸点が今。じゃあ、矢田部さん、僕とお話しましょうか。マリカちゃんお話しましょうか。

福永:はい。

スタッフ:マリカちゃんこの映画大好きだって言ってたよね。

チャップリンの孫をキャスティングした意味

福永:すごい好きです。あと、いい予告ですねこれ。予告がいいのって私にとって大事で。リズムのある予告というか、センスがいいし。あと、音楽とかいいですよね。リズム感のある映画で見やすいですし。やっぱりちゃんと痛いし。そのリズムがあるからこそ、運ばれて一緒に落とされるみたいなところもありますし。本当にいい映画ですね。

中井:矢田部さんは?

矢田部:そうですね。最初、道化師として成功して、という話なのかなと思ったら、ショコラ本人が「ウケているけど、こういうことじゃないんじゃないか」って目覚めていく過程というのは、非常にスリリングというか、心に訴えかけてくるものがありますね。

これ言わないでおこうかな。やめとこう。彼がどうしてそういうとこに気付いていくかというのには理由があるんですけど。見てもらうとして。やっぱり意識を持つことの重要さ、あるいはきっかけということを上手く描いているなあというところが、見応えがありますね。

スタッフ:人種というところに着目されがちなんだけど、最初は。ただ、最終的にはすごくちゃんと人間ドラマになっているし。2人の芸人さんの、すごい人生の話でもあるなっていう。で、すごい甘い話じゃないです。決してね。

中井:甘い話じゃないです。僕、この映画はね、もう1個レイヤーを上げて見た時に、すごくフェアだなと思ったんです。つまり、もちろん人種差別の問題を描いている。その問題はそれとして、問題であると。

一方、生き方の問題としては、それはどうなのかということに関して、丸めなかったということも含め、僕はすごくバランスを取っていると思います。実際の話ということも重要だと思うんですけど。そこに至る悲しみもあるんだけど、丸めずにちゃんと捉えていることで、すごくフェアな映画だなって。僕は思いましたね。

健夫さん、落ち着きました? 

松崎:はい。僕は、今見た時に思ったことなんですけど。チャップリンが日本に来た時の映像の姿と比べると、すっごい似ているんです。

チャップリンの孫をキャスティングするという意味を考えた時に、こういう大道芸って結局、この後廃れていきますよね。フランスではグラン・ギニョールとかずっとそういう歴史があったのに、それもなくなっていく。

1898年という映画が生まれたちょっと後の時代から物語が始まるんですけど。

まさに映画の撮影のシーンも間にあって、その後のこの2人の関係どうなっていくのかということと、これから映画のほうが盛り上がっていくというところに、チャップリンの孫を置いている。中井さんがおっしゃるように、エンターテイメントってなにかなと思わせるところも魅力だと思います。

中井:そうですね。なるほど。わりと多重的に作られている作品だなと。

オマール・シーという俳優が世に出たからこそ実現した

松崎:すごく残酷なのは、チャップリンという彼のおじいさんは天才なわけじゃないですか。それと比べられるんですよね。

中井:そうですね。

松崎:チャップリンは当時の撮影方法の問題もあったけども、1カットで撮る。レンズの問題とかいろいろあってそう撮らざるをえない。ところが、今回の映画はカットを割っているというところが、すごく残酷だというふうに感じたんですよね。

でも、本人はそれを求められるのわかっていて出ているんです。そこもすごいし。それはそれで、すごくいい演技をしているので。

スタッフ:最初はね、白人の道化師が黒人の道化師を利用するんだよね、最初はね。ただ、その関係が徐々に変貌していって、というところに人間のドラマが生まれてくるので。だからみなさんが想像してたものとまたちょっと違う展開があるのかなと思いますよね。すごいよかったこれ。

松崎:さっきも言ったけど、これやりようによっては、めっちゃヒットしますよね。日本で。

中井:そうですよね。どう見せるのか。

矢田部:おそらく、オマール・シーという俳優が世に出たからこそ実現した映画でもあるでしょうから、本当に我々はオマール・シーに感謝しなきゃいけないな。こういう映画が誕生できたことに。

中井:そうですね。『ショコラ!』のほうは、6月25日日曜日のお昼14時10分から朝日ホールで。

福永:見てほしいですね。

中井:そうですよね。公開は決まっているけど、来年なんですよね。かなり先なんで、今の内に。

スタッフ:これ先なの? うわっ、これはこの機会に。これは早めに見たほうがいいですよ。

福永:見て判断してほしいですね。見てほしい。

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