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近頃の若者はなぜダメなのか ひろゆき×原田曜平(全5記事)

恋人と別れてはいけない!? ひろゆきもビックリの、現代の若者が守るべき9つのルールとは?

スマホとSNSの浸透によって、人との繋がりが無限に増殖していく現代。若者たちはそのネットワークを利用しつつも、"空気を読む"ことの重圧に苦しんでいるといいます。ひろゆきこと西村博之氏が、若者研究の第一人者である原田曜平氏とともに、これからの「つながり」を考えます。

新「村社会」で上手に生きていくには

ひろゆき:じゃあ次、「村八分にならないためのルール」。村八分……。村なんですね。

原田:昔の村と違って、携帯で繋がって村になってるので、当然新しい村八分が起こってるわけですよね。

ひろゆき:そうなると、賢い人ほど有利に立ち回れますよね。例えば僕が原田さんと殴り合って揉めるとするじゃないですか。それで僕が「うわ、原田さんに殴られたよ」って言ったら、わかんないままみんな僕の方を信じるじゃないですか。次の日、原田さんが突然悪い人認定されたりとか。

原田:そうだと思いますよ。人間関係とか情報操作がうまい人がこの村の中で長になるというか。

ひろゆき:結構、僕やっていけそうだわ。

原田:じゃあ、是非今から始めてください(笑)。

ひろゆき:ルールってどんなのがあるんですか?

原田:本の中で書かせていただいたのは、まず「①愛想笑いを絶やしちゃいけない」。誰かに好かれてないと、喧嘩した時とか悪い噂が出回りやすくなるんで。最近、友達カップルの3か月記念のお祝いをメールで送る高校生がいたりとか。

ひろゆき:3か月おめでとうみたいな? 1か月も2か月も3か月も、毎回おめでとうって言うんですか?

原田:そういう高校生もいますね。

ひろゆき:400人いたら、一日に何回もそんなの送る事になるんじゃないですか!

原田:腱鞘炎になりますよね。ひろゆきさんだったら完全になってると思うんですけど。

ひろゆき:ホストみたいですね(笑)。

原田:本当に本当に。そういう子も中にはいますからね。

ひろゆき:①に戻ると、愛想笑いなんですか? 面白くて笑ってるわけではない?

原田:面白くて笑ってる事ももちろんあるんでしょうけど、人と会ってる時は笑顔を絶やしちゃいけない、メールの文面でも笑顔じゃないといけないっていうルールはあるようですね。

ひろゆき:「② 弱っている村人を励まさないといけない」。

原田:最近、鬱日記とか病み日記とかで「私、最近鬱〜」とか「辛い〜」とか書く子がいて。twitterでもmixiでも何でもいいんですけど、それに返信しないと無視してるとかね。「大丈夫?」とか「俺が力になるよ」とか、嫌でも渋々でも書かないといけないとか。

ひろゆき:それマイミク多いと、コメント100とか200とかぶわーってくるわけですよね? それ読む方もウザイですよね。

原田:そうかもしれないですね。でもその人は読んで欲しいと思って書いてるわけですから。でもあんまり書きすぎちゃうと、重いなって引かれちゃう子もいるみたいですけれどもね。そこはバランスを取らないといけない。

ひろゆき:「③ 一体感を演出しなくてはいけない」。

原田:色んな人が繋がってるから、中には自分と合わない人も繋がってるので、基本的には話を合わせないといけないと。例えばAKBの話をしてたとすると、AKBを知らないって言ったら話が止まっちゃいますよね。だから知らなくても知ってるフリをしないといけないとか。みんなが「いいよね」って言ってる中で、俺は「嫌い」って言いにくくなってたりとか。

ひろゆき:でもどこがいいの? って聞く中で、えーそうなんだってのも生まれてきて、納得する中で知識が増えていったりとかするじゃないですか。

原田:ポジティブな話を乗っけていくのはいいと思うんですけど、知らないとか……。

ひろゆき:「AKB不細工じゃん」みたいな事を言うと、えーって?

原田:どんな流れかにもよると思うんですけど、場の流れと逆の話が非常にしにくくなってるみたいですね。

"伊達マスク"が流行っているワケ

ひろゆき:「④会話を途切れさせてはいけない」。

原田:空気を読むって事は沈黙を作らないって事ですから、基本的には相づちや合いの手だったりとか。最近は東京中心部の子供たちで「えっちだね」っていうのを使うらしいんですね。これは「どんだけー」とかと同じ一緒の相づちで、「へー」とか「ふーん」と同じなんですけど。沈黙を作らないために「俺なんとかなんだよ」って言うと「へー、えっちだね」とか……。

ひろゆき:それ全然関係なくても「えっちだね」って言うんですか?

原田:エロティックとかムラムラとか、というわけじゃないんですよね。

ひろゆき:「いやー今日寒いねー」「えっちだねー」って言うんですか? すごいね。それ会話として成り立ってるんですか?

原田:それは意味がないじゃないですか。だからお互いわかってれば、成り立ってるんです。

ひろゆき:シュールですよね。吉田戦車もびっくりだ。

原田:それだけじゃないんですけど、そういう言葉が高校生の中で開発されてるっていうのは、それは沈黙が嫌になってるという事なんですよね。

ひろゆき:「⑤共通話題を作り出さないといけない」というのは、みんなが分かる言葉とか?

原田:そうですね。テレビ離れなんて言われてますけど、実際に「最近流行ってるニュースって何?」って高校生に聞くと、結構ニュースの一番メジャーな話題が出てくるんですよね。桑田佳祐さんが癌で入院したとかって事が起これば、みんな桑田さんの事をアンケートに書いたりとか。昔より王道の事を書くようになってるんです。それって、みんなが多様化してる中で共通話題になりやすいっていうか……。

ひろゆき:みんなが知ってる事が少ないから、逆に一番メジャーどころをみんな知ってるとか。

原田:だからアンケート書いてもらってても、ベタな回答が多くなってきちゃってて、なかなか深く話を聞かないと若者分析がやりづらくなってるんですよね。

ひろゆき:すごいですね。そういう、みんなの間で流行ってる問題も勉強してるんですね。

原田:そうですね。しないとKYになっちゃいますもんね。

ひろゆき:「⑥正しい事より空気に従わないといけない」。

原田:例えばみんなが「これやっちゃえ」って悪い話をしている時に、「それはいけない」って倫理的な話をするのも、空気を乱す事に、KYになっちゃうわけです。

ひろゆき:それは大人の社会でもありますよね。

原田:そうですね。だから大人の人より日本人っぽくなってる、ならざるを得ないって事なんですよね。

ひろゆき:「⑦コンプレックスを隠さなくてはいけない」。これは何ですか?

原田:みんなでナンパ行こうよってなってる時に、「いや俺、女の子苦手だから女の子に声かけられない」って非常に言いにくくなってるという。得意なフリをしないといけないとかそういう事。僕がこの本に書いて、最近、朝日新聞とか『とくダネ!』とか色んなメディアに取り上げられてすごく話題になってる事があるんです。最近、マスクする子が増えてるんですよね。マスクしてると表情を読み取られないから、色んな人と色んな人間関係の中で生活する上で楽だと。

ひろゆき:それはインフルエンザ予防とかではなく、"伊達マスク"的な……。

原田:そう、伊達マスクなんですよ。メイク隠しで女性がする事もあるんですけど。

ひろゆき:それは死ぬほど不細工だったりするんですか?

原田:そんな事ないんですけど、人間関係が辛いな、めんどくさいなって事でマスクをする子が全国的に増えていて……。それもやっぱりコンプレックスですね。モテるメンバーの中にいて自分だけモテないとか。わからないですけどね。グループにちょっと合わないとかっていう時、マスクしてると、楽にそのコミュニティに溶け込めるとか。

ひろゆき:溶け込めるんですか? 無意味にマスクしてる人の方が、僕としてはあんまり。

原田:そうかもしれないですね。完全に溶け込めているのかはわかりませんけど、本人は楽とか、居心地がいいってので、マスクしてる子が多いというか。

「まるでホストの営業ルールじゃないですか」

ひろゆき:「⑧だよね会話をしなくてはいけない」。

原田:ひろゆきさんとはそれこそ同世代ですけど、高校生くらいの時に「EAST END×YURI 」の『DA.YO.NE』って流行りましたよね。それが今、完全に定着していると。歌がっていう事じゃないんですけど。「ひろゆき、それ違うよ」って言っちゃったら引かれちゃう村社会なわけですから、何を言っても「だよね」「だよね」「いいよね」と相手を肯定しながら会話を回していくと。そういうお作法が出来てるんです。

最近よく色んな会社の人事の人に相談受けるんですね。どういう若者を採ったらいいのとか。今就活の時期なんで、見てる人は本当切実かもしれないですけど。

その時、人事の人がよく言うのが、今の若い人は面接が上手くなってるらしいんですよ。それこそ普段から色んな人と接して会話慣れしてるので、プレゼンテーションは上手くなってると。あと、自己PRのマニュアル本とかもありますし、塾も色々ありますから、すごく上手くなってる。ところが集団ディスカッションさせると、昔よりレベルが顕著に落ちてるって言うんですよね。

ひろゆき:自分の事をしゃべるのは出来るけど、ディスカッションみたいのは出来ないと。

原田:集団でやらせちゃうと「俺はこれがいいと思うから、これにしようぜ」ってまとめ役がいなくなっちゃってて、「いいよね」「いいよね」って言い合って、20分で話をまとめないといけないのに時間なくなっちゃったりとか。そういう事を人事の方が悩まれてる。

ひろゆき:じゃあ会話とか雑談は得意だけど、議論っていうのが得意じゃない?

原田:そうですね。調和を保つのは多分すごく上手くなってるんですけど、何かを一つの方向にまとめていくとか、強引に自分の意見を持って話すとかが……。たぶんむしろ上の世代がKYだったんだと思うんですけど、そういう所を人事の人は不満に思ってしまうようですね。

ひろゆき:昔から日本人は議論下手とか言われてますもんね。「⑨恋人と別れてはいけない」。

原田:別れてはいけないって事はないですけど、変な別れ方をしてしまうと噂が立ってしまうと。例えば、女の子がひろゆきにひどいフられ方をしたと。「ひろゆきは人でなしよ!」 って言ったら、それが出回ってしまうので。

ひろゆき:綺麗に別れないといけないんですね。フるよりフられた方が楽とか。わざとちょっと嫌な事してフられて、「あーやっと清々した」と。

原田:例えばひどい別れ方をしてしまうと、次の出会いを求めて合コンに行った時、情報が筒抜けでひどい人扱いされてしまうとか。なかなか別れにくくなってるんですよね。

ひろゆき:なんかこのルールって、ホストの営業のルールみたいに見えるんですけど。

原田:そうですよね。空気を読むってそういう事ですから。相手を快適にさせたりとか、気持ちよくさせるって点で、ホストとか営業マンによく似ていますね。

ひろゆき:優秀ですね。10代でこんな経験を積んで生きているなんて。

原田:ひろゆきさんとは違う傾向が出てきていると(笑)。

一生ウンコマン!? 村八分より怖い"村十分"

ひろゆき:じゃあ村八分の特徴があるという事で、特徴出してもらっていいですか。

原田:まず「①晒される」ってのはよくある話で、個人情報が晒されたりとか。

ひろゆき:どこに晒されるんですか?

原田:色んな所がありますね。プロフィールで携帯番号載せられちゃうとか。高校生でよくありますけどね。

ひろゆき:僕も前に、携帯番号をゲイの出会い系サイトに貼られて、すごい電話がたくさんかかってきたことがありましたけどね。

原田:それが楽しめればいいんですけど、思春期だと傷ついちゃう子もいますからね。軽い噂話とかもあるみたいです。あと恋愛関係の嫉妬とか多いみたいですね。あの女は尻軽女だとか、男に媚を売ってるとか書かれちゃう子も結構いるみたいで。

ひろゆき:村八分の特徴の一つが「②村十分」ってのも、よくわかんないですけどね。

原田:「むらじゅうぶ」ですね。

ひろゆき:あー! 村八分じゃなくて完全にって事? 葬式とか結婚式にも呼ばれないという。

原田:そうですそうです。イジメられて隣の学校に行っても、その情報が回ってきちゃうとか。

ひろゆき:転校しても調べが繋がっちゃうんだ。

原田:あと家の中でほっとしたいと思っても、携帯開くとなんか変なメールが出されてたりとか。

ひろゆき:家帰っても嫌がらせのメールとか来るし、転校しても「あいつイジメられっ子だったよ」みたいのがくるって事か。

原田:そうです。それは本当に辛い状況なんです。

ひろゆき:じゃ授業中うんこしたみたいのが、一生回るわけですね。あいつ小学校の時うんこ漏らしたとか。

原田:はい、うんこキャラとして。

ひろゆき:すごいですね、その情報網。

原田:すごいと思います。

ひろゆき:「③縦社会の崩壊」。

原田:上の世代が優しくなってるというのもあって、傲慢な先輩が減ってると。あんまりやりすぎちゃうと、あいつウザイってのが後輩の間で回っちゃうとか。パン買って来いよくらいならいいかもしれないけど、パン買ってあげちゃう先輩がいたりとか。

ひろゆき:じゃあ、突然意味もなく殴られるとかなくなってるんですか?

原田:あるとは思いますけど、減ってるとは思いますね。昔に比べると。

ひろゆき:じゃあ権力が民衆に移ったんですね。

原田:そう捉える事もできますね。

村八分に加担する親たち

ひろゆき:「④親も参加する」。

原田:親も携帯を持ってるじゃないですか。だから「あの子良くない」っていうのがあったりすると、親社会の中で回ったりするだとか、親経由で「あんた最近評判悪いわよ」っていうのを言われたりとか。

ひろゆき:子どもの喧嘩に親が出るって、モンスターペアレンツ的なものなんですか? それとも普通の人でもそんな感じとか?

原田:みんながみんなそうじゃないとは思うんですけど、モンスターペアレンツ系はこういうのに関わってたりするみたいですね。

ひろゆき:そんなに自分の息子や娘が好き?

原田:関係は深くなってると思います。

ひろゆき:子供が喧嘩するなんて当たり前じゃないですか。親側もほっときゃいいのに、ってならないんですか?

原田:うーん、ならないんじゃないですかね。「友達親子」なんて言われて、親と子の関係が非常に深く親密になってたりするので。特に最近、お母さんの権力がすごく強くなってきてるみたいで、うちの博報堂のデータ見ても、お母さんを尊敬するって子がすごい増えてきてるみたいなんですよね。

ひろゆき:お母さんを尊敬している。その理由は?

原田:やっぱり一番身近でよく接しているので尊敬していると。『アメトーーク』とかでも、お母さん大好き芸人とかが、いかにお母さんが好きかってよく話してるじゃないですか。おじさんたちから見ると「マザコンだー」なんて思うんですけど、若い子たちから見ると結構よくわかる話があったりして。

ひろゆき:それって尊敬する人じゃなくて、一番近しい人って事じゃないんですか?

原田:近しいし、本音を打ち明けられたりだとか。最近マーケティングの世界では「母娘消費」ってよく言われていて、母と娘に買い物をさせようと。例えば同じような服を着せたりとか。それは10年前から言われてたんですが、最近は「母息子消費」って言って、お母さんと息子が一緒に旅行に行ったりとか。この前はすごいギャル男の男の子が「月に一回、新大久保の韓流のライブに行くんだよ」って言ってたりとか。

ひろゆき:それは親孝行なんですか?

原田:本人は親孝行のつもりなんでしょうけど、それくらい関係が近くなってるというのは確か。女の子もお母さんにべったりというか、男の子だって僕たちくらいの時は「冬彦さん」とか「マザコン」って言われてたけど、今はもう「姑と嫁」みたいのはなくなっちゃってるってのが前提にあって。今はお母さんと仲良くしてる男の子に、女の子も好感を持ってるっていうのもあるみたいです。

ひろゆき:へー、そんな感じになってるんですか。

近頃の若者はなぜダメなのか(書籍版)

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