2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
Resurrection Biology: How to Bring Animals Back From Extinction(全1記事)
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ハンク・グリーン氏:2013年の5月、ロシアの研究者たちはシベリアの島で保存状態が完璧な毛深いマンモスの死体を見つけました。
まるで倉庫から出したての肉のように、その体には新鮮な赤い筋肉組織が残されていて、しかも、凍っていない血液まで残されていたのです!
この雌のマンモスは研究者たちに掘り出されるまでの4,000年~10,000年の間、ふさふさの眉に再び日の光を感じ、息を吹き返せるのは今か今かとずっと待ち続けていたのです。まるで白雪姫のように、氷の棺に身を横たえていたのです!
研究者たちは残されたマンモスの毛から採取された遺伝情報を解読したのですが、動物のクローンは生きている細胞からでないと造れないので、このマンモスはどうなのか、研究結果が待たれるところです。
例え、クローンにできるかもしれない細胞をマンモスから見つけられなかったとしても、あらゆる方法を試せばなんらかの方法があるかもしれませんし、現代の科学技術をもってすれば、絶滅した生き物を蘇らせる方法はどこかにあるでしょう。
なにもないところから絶滅種を蘇らせるという考えは、『ジュラシック・パーク』でずる賢いヴェロキラプトルがドアノブをがちゃがちゃするずっと以前から、研究者たちの間で考えられていたことです。
これは復活生物学、もっと詩的に言うならば、蘇る生命の生物学と呼ばれるもので、ここのところのにわかに注目を浴びている生物学なのです。
どうでしょうか、この先、ステゴザウルスの赤ちゃんに餌やりをする日は来るのでしょうか?
……なさそうですね。残念ですが。
『ジュラシック・パーク』がまったく夢物語なのではありませんが、絶滅種の復活には生物学上の限界が存在するのです。時間が経つとDNAは変質するのすが、無傷の遺伝子物質がゲノムの再構築には必要不可欠なのですから。
研究者たちが最近出した結論によると、DNAは608万年を超えると無傷ではいられないのだそうです。完全な傷物というわけではないでしょうが、恐竜が650万年もの間存在していたことを考えると、幸か不幸かはともかく、私たちがヴェロキラプトルから逃げることは考えなくてもよさそうです。
私たちが復活させられる絶滅種はここ数万年の間、比較的最近死んだとされる種だけなのです。それはちょうど人類が存在し、狩りを覚え、その勢力を拡大し、生物を支配する存在になっていった頃と同じ時代です。
絶滅してしまった種が存在するのは、人類のせいなのではないかと提唱する人は大勢います。となると、可能なら、それらの種を復活させるのは私たちの債務なのでしょう。
では、実際のところどうやって絶滅種を復活させるのでしょうか。今現在可能だとされてる方法は3つあります。遺伝子を再建する方法、クローンを作る方法、そして戻し交配させるという方法です
2003年のことを思い出してください。フランスとスペインの科学者たちは死に絶えしまった生物を10分間蘇らせることに成功しています。
1990年代終わりに狩りによって絶滅させられるまでスペインとフランスの間に位置する山々を悠然と駆け上っていた、大きくて雄大な角を持つ野生のヤギ。ブカルドとしても知られるピレネー・アイベックスです。
科学者たちは最後のブカルドとして知られるセリアと名づけられた雌から採取されていた凍結された細胞から、クローン生成における核移動方法を用いて新しい胚をつくり出したのです。この方法は1996年に成体細胞から世界で最初に造られたほ乳類のクローンとして知られる、クローン羊のドリーに用いられたのと同じ方法です。
研究者たちはブカルドの細胞から採取した核をDNAを取り出されたヤギの卵子に注射し、母ヤギの体内にその卵子を戻したのです。実験台となった60匹近いヤギのうち、クローンの妊娠に成功したのはたったの7匹で、さらに出産予定日まで持ちこたえたのはたったの1匹でした。悲しいことですが、そのクローンの赤ちゃんは不完全体として生まれ、生きることはできませんでした。
絶滅した動物の命を再びこの世に吹き返させるという点からすると、科学者たちは復活の生物学研究所が求める水準以上の働きをしたと言えるでしょうが。
ブカルドのような比較的最近絶滅した種ではなく、毛深いマンモスのような絶滅した動物のクローンを再び生き返らせるのはどうでしょうか。
研究者たちはすでにマンモスの骨髄や頭皮、筋肉組織、脂肪、そして前に言いましたが、血液などの利用ができそうな残骸を見つけています。
劣化のない凍った細胞が見つかったことで、クローン作成のシナリオが開かれようとしているのです。
最後にマンモスが絶滅したのは4,000年近く前のことですが、永久凍土が遺伝物質の保存に一役買ってくれたことは否めないでしょう。ドードーがかつて最後の地として生息していた南国の地よりも、はるかにいい働きをしてくれたのです。
とは言え、ほとんどの科学者たちはシベリアのツンドラ下で何千年もの間動物の細胞が生き残れるわけはないと思っています。
そこで考えられるのが、けっして実現不可能ではない第2の試みです。科学者たちが発見した遺伝的視点から生存できる可能性があるマンモスの細胞から核を取り除き、核を取り除いたゾウの卵子に移植する、など。
ゾウは現存する生物のなかでもっともマンモスに近い存在です。しかし、ゾウは5年に1度しか排卵しないという問題がありますし、卵子を取り出すには3メートルもの長さの生殖器が必要ではあります。すっごく大変でしょ?
それに、マンモスの生体を1体つくり出そうとしたら、何百もの卵子が必要なってきます。そのハードルを、まずは乗り越えなければなりません。DNAは健康そのものなのですから。
ゾウの卵子を化学的に操作するか、電子操作するかすると、細胞分裂が起こるでしょうから、「愛のテーマ」でもかけながらその卵子を代理母ゾウに移植すればいいのです。
移植から2年ほど経つと、赤ちゃんマンモスが誕生するでしょう。たぶんね。
しかし、クローン作成に必要な生きた細胞や核がなければ、ほかの方法を用いて別の蘇らせ方を検討しなければなりません。
それは遺伝的にゲノムを再生する方法です。このまったく新しいDNA技術は髪の毛や角、毛や羽など、博物館見本にあるようなほんの少しの欠片さえあればできるという最新技術なのです。
絶滅した種のDNAの羅列と連鎖をリョコウバトと河原鳩のようなありふれた鳩とを比べてみると、近い遺伝子を持っていることがわかります。
遺伝子を照らし合わせた上でリョコウバトのDNAの塊を普通の鳩の細胞に移植すると、その結果、異なる種を併せ持った肝細胞が卵子と精子にうまく組み込まれ、クローン生成が可能な鳩を生み出すことができるようになるのです。そのうち、リョコウバトそのもののDNAは持たなくても、リョコウバトにほど近い生きた鳩にお目にかかることになるでしょう。
可能性が低い方法、絶滅種を生き返らせる方法としては気の長い方法になるのですが、“戻し交配”を試す方法があります。戻し交配とは、種を退化させる技術で犬のブリーダーが体型や外皮の色を操作したい時によく使われる方法です。ブリーダーは、その対象となる動物の祖先がもっていたものを再び蘇らせるのです。
以前アジアやヨーロッパで牛の元祖である巨大な野獣であるオーロックスが見つかりました。研究者たちはオーロックスの血脈のDNAが家畜牛のなかに流れていると突き止めています。それはちょうど人類の血に1~4パーセントのネアンデルタール人のDNAが流れているようなものです。
ヨーロッパのタウロス計画所は、現存する牛にオーロックスの血統が混じっていることを突き止め、以前の姿が現れるように選別して交配しました。
オーロックスにたどり着くまでにはさまざまな世代を逆行していかなければなりませんが、研究者たちはオーロックスにより近い種を生み出し、野生に放とうと考えているのです。
馬鹿げた、イカレた、正気とは思えない話ですよね。同じ方法でネアンデルタール人を蘇らせることだってできるのでしょうから。でもまあ、人間が性的に成熟するには10年、20年とかかります。この交配方法を実現するにはとてつもなく長い時間がかかるでしょうし、今日の考えからすると、人にこの方法を用いるのは道徳に反している、正気の沙汰とはとても言えない行いとされるでしょう。
それに、私たち人間には復活生物学における目に見える問題が存在しますよね。試験管の中で実験的につくられた赤ちゃんは生まれつき奇形でどっちつかずな姿になるのではないか、という問題が。
批評家たちは復活させられた種は貧弱な遺伝変異に悩まされると警鐘を鳴らしています。科学者が1つの卵子から20羽ものオオウミガラスを造り出したとしたらどうでしょうか?
遺伝的な多様性がないため、種を先導するものを新たに生み出すことはないでしょうし、生存競争に勝ち抜く種となることはないのではないでしょうか。同じタイプの遺伝子を持つ生き物をたくさん揃えたところで、それはその種を救うことにはならないのです。
それに、オオウミガラスの一群を造ることに成功したとしても、生息地が確保出来なかったらどうするのでしょうか? どこでどのようにして生かすのか、また、どこでどのようにして暮らさせるのかというのは必ずついて回る問題です。
絶滅していった生物たちにも、かつて安住の地がありました。しかし、人類の手によって絶滅へと追いやられ、住処を失くしてしまった今、それらの生物に残された安住の地はどこにもないのです。
広大な平地を住処とし、自由に歩き回るバイソン、もしくはアフリカの農民を悩ます暴れ回るゾウを復活させたらどうなるでしょうか? 現実を見た時、誰もが諸手を上げてマンモスを歓迎するでしょうか?
それに、マンモスを生み出したところで、マンモスがマンモスたるためにはどうすればいいのか、誰が教えられるというのでしょうか。
なにを食料とし、どんな行動をし、どんな思考を持つのか。毛むくじゃらのコートを着たゾウに仕立て上げられたマンモスたちをシベリアに送るのですか?
知りたいことは全部パンドラの箱の中にあるのです。批評家たちは長い間この世に存在し得なかった絶滅種を現世に再登場させる事によって生じる将棋倒し効果も懸念しています。
リョコウバトは現存する鳥たちの存在を脅かし、勢力を拡大してゆくでしょうし、かつてのように空を席巻し、真っ黒に染めるくらいになったらどうでしょうか。ニューヨーカーたちのオシャレな靴は鳩のウンチ爆弾で汚されることを覚悟しなくてはいけないでしょう。
こういうことは私たちが巨額の資金と時間を投じ、絶滅種を復活させる研究を押し進める前に考えなければいけないことなのです。
しかし、研究者側の主張によれば、絶滅種を復活させたいと願い、その研究を支持する人は多く、賛同する人は後を絶たないのだとか。
科学技術の力を使えば、十分に進化していける可能性があるものの、現段階では生命力が弱く、絶滅危惧種の部類に入っている生物を保護し、守ってゆくことができるから、という考えからです。
また、研究は絶滅した種からしか知り得ない貴重な情報を得ることができる場でもあります。
私たちはすでに1つの生命を復活させています。かつて5,000万もの人々を死に追いやった、スペイン風邪として悪名高いウイルスを、です。学術研究の目的で蘇らせたのです。
2005年にそのウイルスのクローンを作成をしたのは連邦防疫センターの研究者たちで、研究のおかげで、このウイルスがどのように進化し、人々を死に至らしめるほどの猛威を振るったのかを知ることができたのです。それはこの先に起こるかもしれない伝染病予防に大いに役立つことですよね。
また、ある種が消滅してしまうといういことは、その生物が担っていた働きが機能しなくなるということです。そのことが自然環境に及ぼす影響は計り知れません。
絶滅種復活を支持する人々は、かつて永久凍土層の木々を切り倒し、草を茂らせ、マンモスを復活させようとした北極の研究者たちのように生態系を正そうと夢見ているのです。
もしくは、永久凍土層が溶け出し、大量のメタンが大気中に放出したことで永久凍土層をそのままにしておくのが最良の選択だと気付き始めているのでしょうか。
研究者の考えによれば、そんな環境下でもマンモスは大丈夫なようですが。
復活生物学を受け入れてしまえば、こんなイカしてることはありませんけどね。巨大な地上ナマケモノがこの世に蘇り、実際目にすることが出来るのですから。ワクワクしちゃいますよね。
今一度考えましょう。もはや私たちの科学技術能力は私たちの理解が及ばないところにまで進んでいて、なにが正しくて、なにがそうでないのかがわからなくなってきています。
あなたが個人的に絶滅種の復活について感じることはさておき、もはやそれができるかどうかを考える時代ではありません。私たちがするかしないかの時代なのです。
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