2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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齋藤精一氏(以下、齋藤精):こんばんは。というか、こんにちは。
今日は齋藤(貴弘)弁護士と坂口(修一郎)さんにおいでいただきました。タイトルにもありましたように、風営法改正というのが6月23日に施行されるということで、そのセンターで活動されていた齋藤さんのほうに、いろいろそのお話もいただきたいと思います。
そして、ちょうど先週ですかね、「ナイトメイヤーサミット」って。アムステルダムで行われたナイトメイヤーという、あとで説明があると思うので今は説明しませんが、そういうサミットがあって、そこでどういうことが話されたのか。
僕も、前に2度かな、お会いしたことがあります。去年のアートナイトにもちょうど1年前に来ていただいて、ナイトメイヤーの話題になって。「文化は夜から始まる」というので、ものすごいアクティブに活動されていて。「おもしろいなあ」と思って聞いていたんです。
そこらへんのお話もいただきつつ、まず最初に2人に自己紹介をしていただいて、そのあとに風営法の話を少ししていただきます。
実際、坂口さんはそれこそベニューを作ったりとか、ミュージシャンとしていろんな活動をされていると思うので、そういう観点からもお話をいただけたらなと思っています。
じゃあ、まずは自己紹介をお願いします。
齋藤貴弘氏(以下、齋藤弁護士):弁護士の齋藤貴弘と申します。ここのすぐ近くの六本木の飯倉片町という交差点のところで事務所をやっています。
今ご紹介いただいた通り、もちろん普通の弁護士としていろんな企業とお仕事をしているんですけれども、ここ3、4年くらい風営法という法律の改正に関わっていて、業界の代表として、国会だったり、いろんな行政だったりと折衝しています。
去年の6月に法律が改正され、今年の6月23日からその改正された法律が施行されるという段階になります。
簡単に風営法の話を。風営法が変わる前と後でどうなるかというところです。2016年6月23日、法施行日の前と後でですね。
(法施行日の)前は、ダンス営業は風俗営業として、夜の12時以降の営業が風営法で禁止されておりました。 ダンス営業というのは、いわゆるナイトクラブだったり、ディスコだったり、DJバーみたいなところですね。
夜の12時前も「許可を取らないと営業できない」というかたちになっていて。許可を取るためにけっこうめんどうな手続きがあって、ほとんどが許可を取れてなかったという状況です。
もう1つ、風営法にはダンス以外に大きな規制があって。飲食店は夜12時以降、「遊興」と書いてあるんですけれども、エンターテイメントを提供してはいけない。夜12時以降の飲食店での深夜遊興の提供は禁止という規定がありました。夜12時以降、飲み食いはいいけれども、遊びはいけないというかたちだったんですね。遊興の範囲は、ライブやショー、DJ、かなり広いものが含まれていました。
1948年というかなり古い時代にできた法律なんですけれども、その法律がずっと残っていて。夜は基本的には遊んではいけないというのが、法律の建てつけだったんです。
齋藤精:なるほど。世の中がどんどん変わっていったと。このあとにお話を聞きたいのが、じゃあどういうふうに変わってきたのか。やっぱり風営法改正というと……昔は僕も六本木だ、渋谷だ、と。クラブがたくさんあったじゃないですか。ライゾマ(株式会社ライゾマティクス)もクラブの仲間でできてるようなものなんですね、実は。
(風営法改正というと)クラブみたいなものをたぶん連想するんですけど、それだけではなくて、もっといろいろなことができたり、もしくは今までよりももっと大きな規模でできたり、長い時間できたりというのが。そのへんをあとでお話をさせていただければなと思います。
坂口さん、いろいろやばいケースもやられてますし、UNITの設立も携わったし。
坂口修一郎氏(以下、坂口):そうなんですよ。いろいろやってきて。ちょっと簡単に振り返ります。
齋藤さんとは今いろいろ、僕らがエンターテインメントに関わるにあたって、法律的な相談をしていたり。まあ、軽く……。
齋藤弁護士:齋藤さんって2人いますからね(笑)。
坂口:齋藤弁護士。弁護士の齋藤さんです。
齋藤精:僕、齋藤Aでもなんでもいいので(笑)。
坂口:ということで、ここに呼んでいただいたんですけど。僕、もともとトランペッターとしてミュージシャンとして活動してまして。ですが、そのバンドも下北沢にあるZOOというクラブから始まったんですね。
もう20年以上前ですが、「自分たちが好きな音楽を一晩中楽しもう」ということで始めたイベントで、みんなが聴いていた音楽を実際に演奏するバンドとして始めたんです。
それが音楽活動の始まりなんですけど、先ほども言われたように、風営法の問題とかいろいろあって、活動がグレーなままですよね。
ということで、このままだと、なかなかクラブが長続きしないという現状があったので、「自分で作ってしまえ」ということになって。それで、代官山にUNITというクラブを立ち上げた。
齋藤精:クラブの画像ってありますか?
(スライドにクラブの画像が映る)
坂口:ここですね。代官山の鎗ヶ崎という交差点に2004年に作ったんですけど。この時もやっぱり風営法があったので、いろいろ戦いがありました。どうやって、こういうエンターテインメントを深夜もやり続けたか、ということがいろいろあったんですが、そのへんはあとでまた話すとして。
これ(UNIT)は2003年から準備して、2004年に立ち上げて。
そのあと、こういうニューウェーブの頃のESGを招聘したりとか、いろんなイベントをプロデュースしたんですけれども、なかなかその、法律だけじゃないんですけども、いろんな限界を感じました。
それで、もともと僕出身は鹿児島なんですけれども、「GOOD NEIGHBORS JAMBOREE」という名前で鹿児島でフェスティバルを立ち上げました。6~7年やってます。これは森のなかで、完全に昼間のイベントですね。
でも、やっぱりDJはいるし、夜はこういったかたちで。鹿児島でやってますけれども、県外・海外からもけっこう人が来ます。2,000人ぐらい集まって、毎年やっています。
こういう活動をしながら、自分はミュージシャンとしてではなく、裏方としてイベントをプロデュースするほうにずっと回っているという感じなんですが、最近はやっぱりミュージシャンであってもDJでも活動する場所がどうしても必要になるので。
「クラブ」というのは一度やりました。ただ、穴蔵のなかに潜ってアンダーグラウンドでやり続けるというだけでは限界があるんじゃないかということで、もっといろんなところに外に出ていこうというような活動をしています。
わりと最近やったことでいうと、「ON THE MARKS」という川崎にあるホテルです。ここに今、アナログレコードのライブラリーを作って。DJというよりは、そこに来た人がもっと身近にクラブミュージックとか、ダンスミュージックに触れるような仕掛けを作ったりしています。
齋藤精:話しながら、「こういう曲とかないんですか?」とか。
坂口:そうですね。そういうのもやりますね。持ち込んで聞いてもらったり。ライブラリーがあると、会話が生まれたり、音楽をハブにして、なにか新しく生まれるというような。そういう「場作りをする」というのをだんだんやるようになっています。
それで、今ここヒルズ(アークヒルズ)ですけれども、森ビルさんの虎の門ヒルズのイベント広場でマーケットのイベントだったり、あとはコンサートを一緒にやったことがありますし。
そういう公園とか公開空地とか、いわゆるベニューじゃないところにエンターテインメントとかコンテンツのほうから出て行って、新しい出会いを作る。そういう「場作り」というのを今は中心にやっているところです。
齋藤精:なるほど。いろんなことをやられていますね。でも、そのなかでも今だと例えば虎ノ門だとか、戦略特区とか、公開空地。やっぱりベニューじゃないところをべニューにするとなるということをやっていると、いろんな法律が……やっぱりいろんな問題にぶちあたるじゃないですか。
夜、音出しちゃいけないとか。それは「近隣の方の……」というのもあるし。道路占有でダメだとか。文化プログラムだったらいいんじゃないかとか。いろいろあると思うんですけど。
そういう意味で、とくに僕は風営法も含めてぜんぜん法律の知見がなくて、よくわからないけど、企画したらおもしろそうだなと思うものってあるんだけど、知らないうちにそれを諦めるじゃないですか。「あそこは絶対無理だろうな」と。
もう少し突っ込んだ話をいろいろ聞きたいんですけど、風営法が改正されると、どういう不可能なことが可能になって、それがどういうふうに街を変えていくというか、夜のシーンを変えていくみたいな、今回の法案を作るにあたってなにか具体的にイメージされましたか?
齋藤弁護士:まず、そもそも風俗営業なので。風俗営業というのは場所が限定されてるんですよね。営業許可を取れるところじゃないと、DJをやったりライブをやったりというのはできない、ということなんです。
なので、街のなかで、さっきのホテルだったりパブリックスペースだったりというところで、DJをやるのは法的にはなかなか難しいという状況があった。風俗営業の枠のなかにDJが閉じ込められていて、そこから外に出ていけない状況です。
まずそこが1つ変わった点ですね。風俗営業の枠から出ていけるようになった。そのなかでいろいろクラブじゃないところでもできるようになった。
齋藤精:これからですか?
齋藤弁護士:これからなんです。6月23日からですね。
あと、そういうのは夜間帯に限らずの話ですけれども、今まで深夜帯はそもそも、風俗営業だったとしても、営業許可を取ったとしても、どこであってもできなかったんですね。クラブでも深夜はできなかったところなので。それが深夜帯も営業ができるようになった。
時間が制限が外れたということと、場所の制限が外れたということ。細かなルールはいろいろあるとはいえ、そこが開かれたというところです。
齋藤精:なるほど。うちの真鍋(大度)君、僕のパートナーも、踊っちゃいけないから、うどんを踏みながらというイベント……。知ってます?
齋藤弁護士:ありましたね。
齋藤精:要は12時過ぎたら踊っちゃいけないから、みなさんうどんを踏みながら、こねながら、その上で踏んでるんだと。踊ってはいないよと。うどんを作ってるんだよという。あれもうまいなと思ったんですけど。
坂口:僕らもうまい棒を大量に用意して、なんかあった時はみんなに配って、「『食事をしてるんだ』と言って」というのもやったことあります(笑)。
齋藤:ちなみに、UNITを作られる時に、なにかそういう風営法絡みのことってありました? しがらみというか難しかったところとか。
坂口:僕らとしては、たしか興行場で申請をしてるんですよね。要は深夜の映画と同じ扱いで。
ただ、どういうタイミングでなにが来るかわからないので、さっき言ったように、うまい棒はなかばギャグですけど、でも、本気でやったこともあって。西麻布とかでいろんなクラブが摘発されたことがあって、その時はやっぱり注意していました。
入口に警察の方が来られた時に対応する時間を取らないといけないので、フロアのほうにどうやって知らせるかというので、ボタン押したらフラッシュがつくとかですね。そういう仕掛けを作ろうと。だけど、「それつけたら、余計盛り上がっちゃうんじゃないの?」とか、いろいろあって、そこはやりませんでしたけど。
やっぱり非常にグレーだったと思うんですよね。僕らが興行場として申請しているにも関わらず、なにか問題があると差し込まれるというのがあって。おかしくはないはずなんだけども、そんなに変なことはしてないし、悪いことはしてないんだけども、グレーであるというだけでかなり気を遣って営業してきた。
そうすると、パーティ自体、イベント自体が中止になってしまったりすることもあるし。そうすると、リスクを一方的にオーガナイザーが負うことになってしまう。そこはすごく注意しているところですよね。
齋藤精:そう考えると、ちょうど僕この前、HIFANAのチームの人とちょっと立ち話したんですけど。
今ってクラブとか箱は増えてるんですよね。世の中的に、今までのクラブでみると、場所は増えてるらしいんですね。もしかしたら、去年でしたっけ、CDとかの収入よりもイベントの興行の収入のほうが初めて上回ったということもあると思うんですけど。
ナイトシーンってクラブだけじゃないという話はたぶんこれからしていくとして。僕としては一番最初に、若い時によくも悪くもいろんなことを学んだところが、クラブというか。ライブハウスも含めてですね。
とりわけ、ライゾマの場合はみんなそこで出会ったというのがあって。もともと中目黒のモンタージュという、ベッカーズの隣の地下にあったところで、「Love Sick」っていうクラブイベントを大学の2年頃から月1でずっとやってたんですね。
そこで知り合った人が、例えばうちの税理士だったり、今うちの会計の子だったり、いろいろしてるんですね。
そういう文化は、学生の時は違うかもしれないですけど、昼間スーツ来て会った時と、夜1杯ひっかけながらというか、Jazzを聞きに来てるとかそういう同じ嗜好性を持ったところで会った人とは、ちょっと溶け込み方が違うじゃないですか。
だから、今までもあったと思うんですけど、ミュージックシーンを含めて、そういう方向にいろんなものが変わっていくのかなという感じ。
そのほかに変わってきそうなものというのは?
齋藤弁護士:坂口さんがおっしゃったように、夜になにかエンターテイメントとかビジネスをするというのは非常に高いリスクを伴っていたんですよね。なので、ある程度大きなお金をかけて参入するだとか、大きな企業はコンプライアンスの観点から参入が難しいような状況でした。
それが法的にクリアになるので、わりと大きな企業も参入しやすくなる。才能のある子たちがたくさんいる世界だと思うんですね。その子たちをちゃんとサポートできる企業が参入できて、ちゃんと経済的な生態系が機能し出せばいいなと思います。
齋藤精:ということは、大企業でがっちり法律も加味して参入するというよりは、もう少し小さい、言い方はあれかもしれないですけど、スタートアップみたいなところが、いい曲を聞くだけの小さいクラブを作りたいとか、場を作りたいとか、そういうものも、参入しやすくはなるってことですよね。
齋藤弁護士:そうですね。今までもたぶん小さな、本当に好きな人たちは、法的なリスクというよりも「やりたい」という思いでいろいろやってたんだと思うんですよね。なので、いいクラブはたくさんあったと思うんですけれども。
そういうところはまだ引き続き残ると思いますし、増えると思いますし。さらにわりと大きなところも入ってきやすくなるというところです。
齋藤精:なるほど。おもしろいですね。そうなると、夜のナイトシーン、例えば今だと海外から来られる方とか多いじゃないですか。この前おもしろかったのが、海外から来た人に「これからクラブ行きたいんだけど、どこ行ったらいい?」って言われたんですけど。
日本のクラブって「いつ行ってもここは……」という感じではなくて、「なんのイベントをやってるから、どこへいく」という感じじゃないですか。だから、場所とコンテンツが噛み合ってないと、そこを紹介できないというか。そういう感じがあるんですよね。
なにかありますか?
坂口:そうですよね。紹介して、行ってみたらものすごいアニメっぽくやってたりとか、そういうこともある。マッチングが難しいというのもあったりするので、そこは難しいですね。
それと、海外の事情だといろんなパターンがあると思うので、なんとも言えないんですけど、今日本もすごくIDチェックをするんですよね。IDがない人はダメだと。
そうすると、海外の人の場合はパスポートを必ず持ち歩くかっていう話になって。どうみてもおじいさんのような人が来ても、断らないといけないというのがあるんですよね。
それも、IDチェックが厳しいところとそうじゃなくやってるところとあって。おすすめして、海外のゲストが10人ぐらいで来たけど、2人入れなかったとか。けっこうそういうことがあったりします。
今のところ、日本のクラブをおすすめして、「ここがいいよ」というのはなかなか難しい現状があります。
齋藤精:そういう意味では、もしかしたら風営法改正というのは、もちろん「合法的にやる」というのも1つですけど、これから参入する、もしくは今までグレーだったからあまり大きな声で「うちやってます!」とか「うち、こういうイベントを実はやってます!」みたいなことを言えなかったのが、正々堂々とプロモーションできたりする。
もしくは、昔リミックスみたいなものもたくさんやってたじゃないですか。ああいうふうになにかまとまったものとか、カルチャーがもう少し根付いていくことができるんですかね。
齋藤弁護士:クラブのインフォメーションを見れるプラットフォームサービスが、風営法改正を目前にさっそく立ち上がったりということがありました。
定額でクラブ行き放題。月に2,000、3,000円とか払えば行き放題っていう。チャラいんですけれども(笑)。音楽配信、デジタルで聞くのはもう聴き放題サービスって定着してますけれども、それのリアルスペース版っていうんですかね。
まあ、クラブへの導線として色気があるかどうかはけっこう重要だと思うので、その点でのインターフェースということですよね。けっこう重要だと思うんですけれども、そういうのをちゃんとクリアできればおもしろいかもしれません。
齋藤精:そういうのができ始めていると。
齋藤弁護士:そこはたぶん風営法改正の1つの経済効果になりますかね。今まで表に出られなかった人たちがそういうプラットフォームでお客さんがちゃんとアクセスできるようにするという。
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