2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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岡田斗司夫氏(以下、岡田): 本業はSF映画なんですか?
高橋信之氏(以下、高橋):そうです。
岡田:評論家。
高橋:ちょっと、書いたもの持ってきていいですか?
岡田:はいはいはい。
高橋:最近の仕事、持ってきますんで。
岡田:(コメントにて)「高橋さんの貫禄やべえ」って出てきてる、超貫禄(笑)。
高橋:いや、黒いだけだから(笑)。
岡田:そうなの? ほんとにそうなの?(笑)。
高橋:こんな本を作りまして、最近。
高橋:実はジョージ・ルーカスはルーカスフィルムという会社をディズニーに460億円ぐらいで売却しまして。今はディズニーグループなんですね。当然、こういう本を作りたいときっていうのは、ディズニージャパンというところを通して、ライツを通して本の申請をしたりします。
ですが、たまたまこの本はロンドンの出版社の『SFX』という雑誌と、『トータル・フィルム』という出版をやってるフューチャー社という会社があって。出版社の名前がフューチャー社。かっこいいでしょ?
岡田:かっこいいっすね。
高橋:ちょっとここと仕事してみたいなと思ってたんですね。そこが臨時創刊で去年の5月に出した本なんですよ、この本は。今年、もともとの原書版はここのなかにあるんですけど。こんな表紙ですね。一応、表紙も載せときましたんで。
高橋:こっちが原書版の表紙なんですね。
岡田:はいはいはい。まあ、『スター・ウォーズ』中心というか、ルーカスフィルム全般。
高橋:全般の本です。ジョージ・ルーカスの本を紹介するのと、作品を紹介するという目標で来たんで、「あ、これ買おう」と。で、買って、ロンドンにメールしたところ、非常に優秀な友達がいてですね、ネゴシエーターがいるんです。
このネゴシエーターがハリウッド経由でお願いしたら、「いいよ」ということで、この本のライセンスを取りますよということで、ジョージ・ルーカスさん、個人的にはOKみたいなんですけど、ルーカスフィルムとかですね、ディズニーに関係なく日本で翻訳版が出ちゃったという。
岡田:ほう! それはすごいですね! 普通、日本でいわゆるルーカスフィルムとか『スター・ウォーズ』とかジョージ・ルーカスのやつを出そうと思ったら、日本のディズニーに問い合わせしないとダメですよね。まあ、講談社がだいたい独占販権持ってる場合がすごく多いですが。
高橋:角川と講談社。
岡田:角川と講談社ですか。これは、つまり、ロンドンで出た本だから、そっちの出版権翻訳権を取ってしまって、日本のディズニーをパスしちゃった。それやっても、トラブルにはならないんですか?
高橋:裏ワザですな。はい、ディズニーに連絡したところ、「自分たちを、ロサンゼルスとかハリウッドを通してないものに関しては、我々もわからないんで何も言えません」ということで、「じゃあ、やります」と。
岡田:黙認ですね。
高橋:まあ、そういうことですね。
岡田:へえ、そういうやり方もあるんですね。
高橋:たまたま、この『SFX』っていう雑誌と『トータルフィルム』っていう雑誌が、英語圏においては世界中の空港の売店に全部並んでる映画雑誌なんですよ。映画のジャーナリズムとしては、非常に大きいんですね。
なので、ルーカスとかハリウッドメジャーも、「まあ、あそこならしょうがねえだろう」みたいな、ところの日本版ということでやらせていただいて。
岡田:なるほどなあ。
高橋:おもしろいのは、決してこの本がですね、ジョージ・ルーカスや『スター・ウォーズ』のことを良く書いてない部分があるんです。
岡田:(笑)。
高橋:イギリス人はすごいなと思って。このね、ダークなウィットというかですね、たくさんたくさん、例えば『ハワード・ザ・ダック』とか特集やってて。
岡田:それはいじわるですね!
岡田:ああっ、すごいね! この「そろそろ『ハワード・ザ・ダック』にチャンスをあげても良いのではないか?」とか(笑)。良くないわ! 『ハワード・ザ・ダック』にチャンスあげても。つまんない映画だったよ(笑)。
高橋:ちょっとね、映画批評的なにおいを感じるんですよ。
岡田:これ、別にこの本を作ってる人が、そう思ってるわけではないんですね。
高橋:ないんです。
岡田:「ジョージ・ルーカスもこんなどスベリしたこと、みんな覚えてる?」っていう内容を、イギリス人向けの遠回しなユーモアで書くとこうなるわけですよ(笑)。
高橋:ダークな(笑)。これ言っていいのかどうかわかんないけど、もう1つね、『ウィロー』っていう映画がありまして、これも失敗してるんですけど。
岡田:はいはい。『ウィロー』も、失敗でしたね。
高橋:この『ウィロー』もですね、……ちょっとですね。
高橋:タイトルがですね、「ショートストーリー」ってなってる。これ、短編って意味じゃないんですね。ショートっていうのは、背が小さいという(笑)。
岡田:『ウィロー』に出てるのが、小人ばっかりだからと(笑)。ひどいね!(笑)
高橋:ダークだなと(笑)。「なんだ、この本!」て思って。たぶんこれは、イギリスにおける映画批評なんだなと思って。
岡田:そうですねえ。
高橋:この本はぜひ。で、また、「インダストリアル・ライト&マジック」とかもあるんですけどね、これジェームズ・キャメロン出てるんですけど。
岡田:でも、そういう内容の本だっていうのは、この表紙からはぜんぜんわかんないですね。
高橋:わかんないですね。
岡田:どう見ても、ジョージ・ルーカス万歳本に見えるんだけど(笑)。
高橋:きれいに作ってるんですよね。でも、愛はあふれてます、愛は。
岡田:買うと、イギリス人のダークなユーモアがわかるという本ですね(笑)。
高橋:もう1つ、これも「アート・オブ・フィルム」ということで、これは『スター・ウォーズ』のトリビュートブックということで。
岡田:いろんなアーティストの人が、『スター・ウォーズ』のアートをやったというわけですね。
高橋:こんなたくさんのアーティストの人がやったものを集めてきたと。これも基本的には、これもジョージ・ルーカスに話して、「アーティストってそれぞれ発表権ってあるよね」と。この発表権ってのをルーカスがフリーにしている、「どうぞ発表してください」と、そういうものだけを集めてきたと。
岡田:これ確か、描いた人たちってあれですよね、世界公開の3日前のプレミアに呼んでもらったんですよね。
高橋:あー、そうです。
岡田:『スター・ウォーズ』の。あれはちょっと、かなりうらやましかったです。
高橋:これも誰かの権利ではなく、イギリスのライセスで取っていると。実は、イギリスというのは『スター・ウォーズ』の聖地巡礼の場所なんですね。
岡田:あー、パインウッド・スタジオがあるから。
高橋:そうですね。クールブリタニアというクールジャパンのもとになった……。
岡田:高橋さんと話すの、何が大変かって言ったら、『スター・ウォーズ』の聖地の1つって言って、「なんでだろう? ……パインウッド・スタジオだ! 『帝国の逆襲』を撮影したスタジオがあるからだ!」って。なんでこんなに脳に負担かけないと行けないんですか!(笑)
高橋:それでね、ピカデリーサーカスってところに、あそこにクールブリタニアっていうお店があるんです。実はクールジャパンって経産省が言ってるあの言葉はイギリスの政治家が言い出して、イギリスで言い出したクールブリタニアっていう言葉がもとなんですね。
で、クールブリタニアのオフィシャルショップっていうのができてるんですよ。そこに行くと、『スター・ウォーズ』の作品の人形とかが山ほど置いてあるわけですよ。
岡田:クールブリタニアに?
高橋:イギリス人は、あれはおれらのもんだと思ってるから(笑)。
岡田:えーっ(笑)。すごいなあ!
高橋:これって……、ハッと気づいて、確かに言われてみれば、撮影は全部バインウッドだと。で、役者も全部、帝国の役者はね、大英帝国を模してるから、全部……。
岡田:おまけに我々はアレック・ギネスを貸し出したと、ハリウッド映画風情に(笑)。アレック・ギネス貸し出したと!
高橋:イギリス人はね、あの映画をハリウッド映画と思ってないんです。
岡田:(笑)。
高橋:すげーな、と思って。
岡田:『007』もハリウッド映画と思ってないんでしょうね。
高橋:あれは全然、完全に、逆にイーオン・プロダクションズはイギリスの会社なんで。ちなみにですね、イーオン・プロダクションズとはこないだ、ちょっとやり合いまして、私。実は、日本で「ボンドガール」という商標を私が取りまして。
岡田:取ったんですか!
高橋:ジャンル的にはアパレルですね。女の子のアパレルで、ジャージとかにボンドガールって入ってたらかっこいいかなと思って、見てみたら商標が空いてたんですね。
あとは出版物でボンドガールっていうタイトルで、本を作ろうと思って。ボンドガールアドベンチャーみたいな。で、商標出したら取れたんですね。それに対して、ダンジャックという、いわゆるイーオン・プロダクションズのプロデューサー連中が作った、ライツ管理会社……。
岡田:(コメントにて)「とんだハイエナだな!」って書かれてますよ(笑)、今コメントに!
高橋:そのとおり!(笑)
岡田:(笑)。
高橋:もうちょっとかっこよく言うと、ライツ・シャークと呼びます。
岡田:(コメントにて)「火事場泥棒」とか書いてある(笑)。火事場は、火事起こってないじゃん、別に!
高橋:ライツシャークというね、権利のサメというね。
岡田:はいはいはい、ライツシャーク。
高橋:それで、ボンドガール取ったんですね。ダンジャック(注:ジェームズ・ボンドの著作権を保有しているイギリスの企業)から「ダメだ。おまえ、勝手に取んな」と、きたんですけど。実はですね、これ、イアン・フレミングさんというのが亡くなられて、『007』の小説というのはすべてパブリックドメインなんですね。
岡田:あ、そうなんですか?
高橋:亡くなられたのが、……1964年だ。
岡田:はいはい。じゃあ、もう死後50年経ってるので、ちゃんと言ってください(笑)。『007』の原作者のイアン・フレミングっていうMI6に勤めてた小説家が、死後50年たってるので、著作権フリーになっちゃったと。小説、原作のほうが。
高橋:小説と原作に出てくるものを、どうアレンジしてもよいと。で、映画に出てきたものはダメなんですね。例えば、『サンダーボール作戦』に出てきた水中戦車だとか、そういうものは全部、映画の権利なんです。ただ、小説のものは使っても大丈夫。
岡田:例えば、『ユア・アイズ・オンリー』というタイトルであるとか。
高橋:はい、中身であるとか、自由に使えるんです。こういうものは、僕はどんどん使えばいいんじゃないかなと思っていて、いわゆるスピンオフの小説をみんなが考えたりとか、あるいは007が日本に来る話を作っても、誰も叱らないんだよということを。
岡田:あ、そうか。そういうことまでOKになるのか。じゃあ、もう去年切れたから、今年オンエアーの『名探偵コナン』あたりに出てきても、ぜんぜん不思議じゃないわけですね。
高橋:叱られないです。
岡田:ルパン3世出したら怒られるけど、007出しても怒られないという、なぜか不思議なことが起きてしまうわけですね(笑)。
高橋:そうそうそうそう。やればいいじゃないかと。
岡田:やればいいですよね。
高橋:あとは『チキ・チキ・バン・バン』も実はイアン・フレミングなので、チキ・チキ・バン・バンも好きに作れるんです。
岡田:ディズニーの自動車のデザインとかはダメだけども、チキ・チキ・バン・バンという名前だとかは、もう大丈夫?
高橋:新しいマシーンを作ってもいい。
岡田:『チキチキマシン猛レース』もできる。
高橋:はいはいはい。そういうことやればいいじゃないかと思っていて。
岡田:ほんとですね。
高橋:こういうことを教えなきゃいけないのに、なんかライツっていうのは誰か偉い人が管理してて、みんなそこで握られちゃってると思っている。例えば、ディズニーも勝手にやったら怖いんじゃないかとか。
そういうことはないよと。みんな使えるものはあるんだよと。法的には使えるものがあるんだよということで、1つその話をするために、ボンドガールという商標をハイエナのように取りました(笑)。
岡田:結局はハイエナのように(笑)。
高橋:これからアパレルメーカーに売り込みをするんです(笑)。
岡田:(笑)。
高橋:ボンドガールオーディションとかもやろうと思ってて。
岡田:いいですね、それも(笑)。
高橋:アパレルのモデルをね。東京ガールズコレクションとか、そういうことをやろうと思って。
岡田:なんで、そういうことを思いつくんですか?
高橋:うーん、なんだろうなあ。商標とかね、好きなんですね。見てくのがね。けっこうゲームメーカーとかがですね、自分ところのゲームで出そうと思ったものを、事前に商標を出しとくんですね。
岡田:はいはいはい。
高橋:ずっと見てるとですね、「あ、こんなのやる気あるのかな」とか、そういうのもあったりとか。あと、僕以上にハイエナの会社があって、まあコナミという会社があるんですけど。
岡田:(笑)。
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