2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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小:まさに善とか道徳って観点から批判したんですね。
ひ:確かに会社の経営がものすごく優秀であれば、別にコスト以上の働きをするんだから良いじゃないかっていうのが。
小:リバタリアン。
ひ:その人がなんか一生懸命プライベートじゃないところで、時間をつぶして、仕事につかえないんだったらその時間を仕事に使ってもらった方が効率良いよねっていうんじゃなく。あくまでジェット機乗るなよ、むかつくっていうところから言ったっていう。
小:それはモラルの問題じゃなかろうかと。だから日本でも自己責任論っていうのは、リバタリアン的な論理が強力な時に非常に有利なんですね。だからイラクの人質問題なんかの時も自己責任論ってすごく重要だったんですけど、これはリバタリアンの論理と関係する論理ですね。
ひ:関係してるんですか?
小:やっぱり自己責任、自己決定っていうのはリバタリアン的論理ですね。
ひ:イラクの人質事件。自分たちで行ったんだから、外務省のお金を使わないで死んで来いっていうのを、外務省のお金で助けようよ、だってかわいそうだもんみたいな。
小:あの時に家族が謝ったりしたわけですけど、それは自己責任論が非常に強力だったので、他の国民の方々に申し訳ないって言って家族が謝ったとか。これはたとえば、海外から見てもちょっとおかしいんじゃないの?っていう議論があったわけですね。
ひ:家族は関係ないだろっていうのはありますね、二十歳すぎてるし。
小:また一方コミュニティの観点から見ると、日本国民の一員なんだからやっぱり救ってあげるべきじゃないの、自己責任で突き放すべきではないんじゃないのっていう議論が出てくるんですね。
ひ:そういう意味では確かに自己責任論が強かったんですけど、今も強いんですかね、日本も。
小:リバタリアンの影響力ってまだ相当強いですから、自己責任論を取ってる方も多数いると。他方しかし最近はリーマンショック以来日本でも、その議論に対する批判とか、逆に元リバタリアンだった人が懺悔するとかそういう例もありますよね。
ひ:ある程度助けるべきだと思うんですけど、そうするとどこまでの馬鹿は助けるべきで、こっから下の馬鹿は助けなくていいっていうのになるわけじゃないですか。最初一回助けてもう一回イラクで捕まったらもう助けなくていいみたいな。二回やるくらい馬鹿だったらもういいよみたいなところで、ある程度助けるラインを決めなければいけないという。みんなの道徳のラインをちゃんと切らないといけないですよね。
小:仰ることがかなりリベラルに近いと思うんですけど、リバタリアンではないと。でリベラルでどこまで救おうかという理論ですよね。
ひ:やっぱりリベラルなんですね。そんなつもりはないんですけどね。じゃ次のパワーポイントいってみましょうか。
ひ:人間改造反対論。
小:これはサンデル教授が書かれて、先ほど話に出たブッシュ委員会の時の生命倫理に関する委員会の彼の議論を後でまとめて本にしたものですね。それがエンハンスメント人間改造という風に簡単に書きましたけど、それに対する反対論で。
ひ:つまり、エンハンスメントをしない方がいいよっていう話。
小:その論理としてサンデルはですね、人間の生命を考えてみると、それは贈り物なんだと。
ひ:薬で強化したりだったりとか、手術をして身長を伸ばすっとかっていう、体を治すための医学ではなくて、なんかしらの能力を成長させるためのドーピングだったりっていうのはやるべきじゃないよねっていう。
小:そうです。ですからSFなんかの世界たとえばガンダムとかいろんなところで、超人間みたいなものが遺伝子工学の成果出てくるっていうストーリーが出てますけど、そういった世界そっちの方向ですね。
ひ:じゃあワンピースとかドラゴンボールとか嫌いなんですね、サンデルさんは。
小:それに対する危険性を指摘しているというわけですね。
ひ:そうするとコボちゃんとかみたいな何にもない普通の人の展開の方が好きみたいな。
小:まあナチュラルな方が大事とする感じですかね。
ひ:コボちゃん派なんですね。これはでも結局ただ高地トレーニングとか、ある程度自然な感じに見えるけども、通常の状態ではありえないようなことをやるわけじゃないですか。マラソン選手が高地3,000メートルのところで訓練して帰ってきたら、その酸素の吸収量が良いから強いみたいな。手術はしないけどあまりにも日常というか現実の延長線上にはないことをやってるわけじゃないですか。それはサンデルさん的にはそっちもだめなんですか。
小:そこにもやはり危険性の芽を見てるという感じですね。これはたとえば、すごい過保護なお母さんがすごい受験勉強させるとか。それも遺伝子工学は使ってないけど、強引に能力を高めようとしてるわけだから、賛成派から見れば、教授だってやってるんだから、遺伝子工学使ってもいいんじゃないかっていう議論になるわけだけど、サンデルの議論はそうじゃなくて、教授だってやりすぎるのは良くないんだとこういう議論なんですね。
ひ:やりすぎよくない論なんですね。何をもってやりすぎと決めるんですか?
小:そこのところの基準がよく議論されるところですけど。先ほどのエンハンスメントであれば病期治療か健常な人をさらに伸ばすかっていうそういう議論ですね。
ひ:ドーピングは副作用があるかもしれないから、制限したほうがいいよねってなるんですけど。副作用のない人間改造はしてもいいと思いますか?
小:これ、いい重要な論点ですね。
ひ:副作用のない人間改造はしてもいいと思いますか? というアンケート。サンデルさんは副作用がなくてもNG?
小:遺伝子工学に対する反対論としては、今の段階としては副作用の弊害があるという理論があるんですけど、仮にそれが克服されても問題ではないかという。そういう問題提起。
ひ:たとえばビタミンCの錠剤を飲むのだって、昔は存在しなかった技術だったわけじゃないですか。それで食べ物以外でビタミンを摂取するっていうのをやっているから、それもエンハンスメントになるっちゃなるんですよね。
小:そこは普通エンハンスメントに入れないで、健康食品として考えてるわけですけど、その辺のボーダーラインがどうかっていう議論になってくるんですね。どこまで認められて、認められないか。
ひ:プロテインを飲むとかっていうのも特殊ですよね。副作用のない人間改造はやってもいいか? はい、いいえ。プロテインって抽出した者としてありますけど、自然界にはないじゃないですか、そのものは。あれを毎晩毎晩飲んで筋トレするっていうのは、サンデルさん的には?
小:それについては、はっきりと書いてないのでわからないんですけど。彼がはっきりと言ってるのは、遺伝子工学の応用なんですよね。
ひ:遺伝子工学はまずいと?
小:はい。彼はそういう風に主張しています。他の様々な薬品とかね、記憶増強とか。それはどうだろうかっていうボーダーラインがいろいろと論じられているところですね。
ひ:副作用のない人間改造はやっていいか? 「はい」が68%!
小:人間改造が多いですね。アメリカではそんな極端にそういうのを超人間と言ってて、スーパーヒューマンを作るっていうことを主張してるグループや人間がいますので。
ひ:ゴルゴ13を作るみたいな。
小:そうですね。そういう感じですよね。
ひ:みんなOKなんだ。
小:基本的にリバタリアンやリベラルはOKの人が多いので、その傾向が出てますね。
ひ:受験勉強の時に、記憶能力が良くなるドラッグを飲んでもいいのか?
小:これも面白いですね。
ひ:受験勉強の時に、記憶力が良くなるドラッグを飲んでいいか? で、副作用はないと。
小:これは実際にやれることですからね、今の日本で。
ひ:実際にやってる人いっぱいいますからね。
小:そうですね。
ひ:僕の友達も大学受けるときやりましたからね。あとなんかアメリカの大学受ける人も結構やるっていう話も聞きますよね。暗記パンみたいなものですよね、大体それです。スマートドラッグと呼ばれるものですけど。さっきの話で行くと、記憶力の良くなる薬を飲んでよいか? はいかいいえで。さっきで行くと、人間改造OK論だから、7割くらいがOKというはずですよね。副作用のない薬なんですから。
スマートドラッグで検索するといろいろ出てきますけど。法律的にも微妙だし、モラル的にも微妙なんで僕は進めてるわけではありません。一応そこだけは。実際本当に効くのかどうかもわかんですしね。むしろダメな理由はなんだ。(結果を見ながら)あー! いいんだ。65%。
小:大体先ほどと同じような意見が出てますね。
ひ:割とみんな超人間OK。
小:超人間ってのはもっと先にいくんですけどね。
ひ:副作用が問題であると。副作用がないんだったら何やってもいいよっていう。そういう意味でサンデルとは少し違う。
小:その立場の人ですよね。もっと徹底した状況について、違法論とか反対論を展開してるわけですけど、これはその前提になるような出発点の話ですね。
ひ:徹底した状況っていうのは、たとえばその脳にコンピューターを入れるとか?
小:具体的にはそういうことも論じられてるわけですよね。普通はもうちょっと遺伝子工学によって、より優れた人間を作るとか。
ひ:優生学。
小:優生学的な発想。実はこれを新優生学という風にサンデル自身述べていて、昔の優生学っていうのはナチスドイツのように強制的に手術してしまうわけですけど、新しい優生学は私情でやるわけですね。だから、お金を出してより優れた人間に。
ひ:昔だとたとえば、障碍者が生まれてしまいましたというと、殺してしまえと。ナチス、優生学って批判されてますけど、日本だと産婆さんがやってたりします。生まれた瞬間に締めちゃうっていうので。日本とドイツは実はそういう思想をもっていたけども、今表向きはなかったことになってますよって、優生学と違う新優生学だと。
小:典型的には男女の産み分けですよね。それに遺伝子的な技術を使って、産み分けようって。お金を出して。
ひ:中国だとそうするって言いますね。一人っ子政策だから女の方が生まれたら捨てるとか締めるとかいうけど、男の子だったらそのまま育てるという。
小:それはもっと先進的な遺伝子技術を使えば、生まれた後殺さなくても始めから選別して出来るという話ですね。
ひ:そうすると殺さなくていいわけだから、むしろいいじゃんて話ですよね。
小:という議論が出てくるわけですよ。果たしてそれでいいかとサンデルが議論してるわけですが。
ひ:子どもはやっぱり自由に生まれてきてそのまま育つべきであるという、自然な状態が良いというサンデルさん。
男性:超人は人間と言えるんですか?
ひ:人間とは何ぞやっていう定義になっちゃいますよね。脳だけあって身体のパーツが全部なくなってしまった人を人間と呼ぶかみたいな。
小:哲学的にはそういうことも論じられています。
ひ:ちなみにそれはどちらだと思います?
小:定義問題だと思うので、人間をどう考えるかという問題なんですけれど。そうあるべきではないと私は思いますね。
ひ:「銃夢」っていう漫画でそんな話がありますね。完全な人間と、脳が人間で身体が不完全なアンドロイドだったりっていう人たちと、脳がチップで身体が生身っていう人たちでどっちが人間なんだっていう問いがその漫画の最後の方で、ネタバレしましたけど、そういうのがありますよ。
小:ハーピットっていう哲学者もそういう問題を論じていて、何が人間かって。意識の継続性が人間じゃないかっていう風になっていくんですね。身体じゃなくて。
ひ:意識が継続してる限りそれは人間であると。そうすると記憶喪失なった時点でその人は死んだと。
小:とまで議論してたか覚えてないけど、そういう論理の可能性をはらみますね。
ひ:サンデルさん割と保守的なんですね。
小:この点では文化的に保守主義と同じ陣円なんですね。ただし政治的には保守的ではないです。
ひ:なんでそこだけ保守的なんですかね。
小:基本的に彼は善とか美徳を非常に大事だと思ってるんで、リベラルやリバタリアンは善とか美徳ということを政治に関わらせないわけですね。関わらせるべきだ! という点では道徳的な保守派とサンデルは同じ論調を取ってる場合があると。特に生命倫理の前そうなんですね。
ひ:でも善とか美徳の定義をしてしまうということは実は危険なことのような気もしてしまうんですけど。
小:まさにリベラルリバタリアンはそういう風に言ってる(笑)。
ひ:次のパワーポイントいってみましょうか。
ひ:サンデルの政治哲学の本質とは?
小:今言ったことと関係あるんですが、私は二つあると。一つは今言った善、美徳ですね。これと関わらせて正義を考えるべきだという風に言っているので、リベラル、リバタリアンはその価値を考えない。そういう意味では世俗的な議論だと思うんですが、サンデルたちの議論はですね、精神性あるいは倫理性を強調すると。これが一つと。もう一つはですね、リベラル、リバタリアンは個人をあくまでも中心に考えるわけですね。個人の自己決定、自己責任。それに対して、共同性ですね。コミュニティにおける共同性、共通性。そういったものを充実するのが、コミュニタリアンと言われる人たちの特徴なので。
ひ:共同性。
小:共に生きる。共に何かをするっていう。
ひ:リベラルとかでも他の人と一緒にやった方が効率良いよねっていうところでは、共同っていうか周りを意識しますよね。そういうのとは違うんですか?
小:アイデンティティに関わる共通性っていうんですね。たとえばある集団の一員だというような共通性。だから力を合わせてやっていこうっていう。
ひ:ネトウヨの人が俺日本人だからみたいな。
小:それもそれの中に入りますよね。ロールズの場合には、福祉をする場合でもあくまでも自分のための福祉ですよね。無知のベールをかけて自分自身がこうなったら困るから、正義に合意しようって。
ひ:あくまでも自分がこうなったら困るよねっていうのと、同じ日本人同士なんだからそもそも助けないといけないよねって、そういう考え方?
小:そうなんです。だからリベラリズムの場合は他の人には無関係な自己利益を追求する、そういう人間を想定する。それをコミュニタリアンの場合には共通性、共同性が大事だと考えるから、共に生きるとか、ともに行動するとか、あるいは他の人のためにどうするっていう判断が強く出るんですね。
ひ:逆に自分がそうなる可能性とかを意識しないで、単に自分が同じコミュニティ、同じ県の出身の同じ国の出身だから助けるという論理。
小:仮にコミュニタリアンの場合ですね、自分がコミュニティの中で豊かであってもこの人見捨てられないから、やっぱり福祉やろうっていう話になるんですね。仮に重税かかってきたとしても。
ひ:逆に物事を考えなくていいから、楽ですね。
小:その意味では魔術を解くとコミュニタリアンになるという話ってことですね。伏線の方が素直な話じゃないかと。
ひ:何も考えなくてかわいそうだからとか、自分と同じグループだから助けないといけないよね、そういう責任になるよねっていう。
小:ある意味では素直な考え方で、昔の宗教なんかではそういう発想のとこもあるんですね。
ひ:サンデルさんはそっち側になっていると。
小:そうです。今リベラル、リバタリアンという風になっていると、道徳とか善とか議論しない。その結果ですね、レーガン時代とかブッシュ政権の時のような道徳的保守主義が、政治的保守主義になってしまうわけですね。アメリカではモラルマジョリティとキリスト教の原理主義や、政治上置き換えてしまったわけですけど、それは危険だと。
ひ:リョーリベと言われている人たちですか?
小:これはキリスト教原理主義。道徳的保守主義です。それが政治的保守主義。それに対して、道徳とか善とかについてしっかりとみんなで議論していこうよ、そうすれば福祉の擁護なりなんなり、政治的な進歩につながっていくという風に考えるわけですね。
ひ:素直なモラルが正しいよってなると議論もいらないわけですよね?
小:何が素直なモラルかっていうことは今日非常にたくさんの議論があるので、これは議論しないと決まらないと。昔だったら宗教的にこうだって決めたものがですね、同性結婚をどう考えるかですね。さまざまな生命倫理もそうですけど、意見が分かれてくるわけだから、これは誰かこれだと決められないので、みんなで議論しようと。しかしこれは道徳的問題として議論することが大事だということですね。
ひ:すごい役に立った感じがするんですけど。でも人は正解を求めるじゃないですか。たぶんサンデルさんが言うことは正しいんだ! っていう。ここでサンデルさんのいうことが正しいっていう方向に来ちゃう。だから人間楽じゃないですか。っていう方向に言っちゃえばいいやっていう感じでもないんですか?
小:というかサンデル自身の白熱教室は、彼自身の立場はあんまり強く言わないで、今お話しできるのは色んな立場からどういう議論ができるかっていうのをみんなに議論してもらってるわけですよね。だから対話型をその人がその人の考え方を進展させて進化させていくということを目指してる。われわれってサンデル自身がどう考えてるかも知りたいやって気持ちもあるから、さすがに答えと同じ本を書いてサンデル自身の主張はこうだっていうことを書いてるわけですね。
ひ:ようやく。でもサンデルさんって普通の人がちょろって聞かれた時の、さっきの列車の問題とかもいろいろすでに想定して、たとえば5人殺した方がいいでーすって言ったら、でもこれってこうだからこうだよねって、彼頭の中で全て終わったうえで言ってるじゃないですか。とすると、普通の人は聞いて、やっぱ5人殺すのはなんだなと考えが変わってくるじゃないですか。っていうことをいろんなことを考えた最終形がサンデルだとすると、サンデルさんの考えってきっとステキな考えなんだってなりがちじゃないですか。
小:講義自体としたらやはりサンデルが批判的なところから、というか現代の主流思想から始まって、順番に批判をして、彼自身の考え方に近い思想を最後に論じるようになっています。だからそれを素直に全部ついてけば、サンデル派に近づくわけだけど、なかなか学生はそうはいかなくてリバタリアンとかリベラルの人たちも頑張って、しかもサンデルも場合によっては自分自身がコミュニタリアンに反対するグループになって議論を活性化したりしているので、その辺は必ずしもサンデル派にならない人も多いですね。
ひ:学問って普通体系立ててこういうものですよって正解を作って終わるじゃないですか。そういう意味で哲学って正解に至らないじゃないですか。そうするとなんかこの人は何のためにやってるんだろうっていうモチベーションとか動機とかで、たぶんサンデルはこういう思想広めたいんだみたいな感じにすると理解しやすいじゃないですかっていうことでもないんですか。
小:これはですね。サンデルにしても自分自身の思想を主張したいという気持ちも一方であると思うだろうけど、他方で哲学的な議論を進化させたいという思いもあって、哲学史の中でたとえばソクラテスなんかの議論は彼自身の結論は良くわからない対話戦をずっとやっているわけですね。哲学のある局面で結論を必ずしも提示しないで議論を進化させるというそれに重要な要素があり、その部分を白熱教室でやっていると。でも他方彼の書いた学術書では自分自身の意見を言っていると。
ひ:といったところでメールがきてるっぽいので、Q&Aでもいきましょうか。
スタッフ:メールいくつか読ませてもらいます。山梨県の方。フランスでイスラム教の格好で学校に通うことが禁止されたという話があります。サンデルさんならどういう風に考えるのでしょうか。
ひ:いや、ここにサンデルいないし! サンデルさんならどう考えますかって聞かれても、いないから!
小:フランスの中でまさにそういう発想をする人のことをですね、フランス共和主義の思想と言われてるんですね。これ禁止する側のことですよね。それに対して、それぞれのコミュニティの価値観を強調することをフランスのコミュニタリアンと言ったりしますよね。サンデルはアメリカですので、フランスとは若干違うので、多元的なことを非常に強調しますから、サンデルの場合はですね、禁止すべきだという立場には汲みしないと思いますね。
ひ:全裸はみんな禁止するじゃないですか。全裸教とかあったら、サンデルOKなんですか?
小:おそらくそれはモラルとか善の観点から、議論すると反対派が多いだろうっていう議論に発展してくと思いますね。
ひ:でも自然状態って全裸じゃないですか。ナチュラル派で行こうぜ、生まれたままの僕っていう。
小:それは昔のギリシャとかだったらOKだったかもしれないわけ。そうするとそういう価値観の多いところの場合は、それが正義でOKだという立場のコミュニタリアンもいますね。
ひ:沢尻エリカが全裸教になったら僕全面的に賛成しますよ。美人が全裸教に入るとか言ったら、男性みんな賛成すると思うんですけど、そうしたら世間的に女性の全裸教はOKという話になるじゃないですか。
小:そういうような話が主流の場合は、それにしたがってOKだというのがいわゆるコミュニタリアンの立場。それに対して、サンデルの場合は必ずしもそうはいわないよ、っと。たとえば昔ね、黒人奴隷がみんな悪いとされた時、それを正義だと言ってしまうと今から見て問題なので、その地域のコミュニティの多数派が認めるからといって、必ずしも正義とは言えない。やっぱり我々の立場から議論していこうっていうのがサンデルの立場ですね。
ひ:と、いうことです。
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