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鈴木みそ先生 新連載記念イベント 就活はクソゲーだ!『内定ゲーム』(全4記事)

新卒採用は一人3億円の投資--鈴木みそ『内定ゲーム』が描く、就活のおもしろさ

就職活動をテーマにした鈴木みそ氏のマンガ『内定ゲーム』の連載開始を記念して、マンガサロン「トリガー」がイベントを開催。トリガーオーナーの小林琢磨氏の司会のもと、鈴木みそ氏、曽和利光氏が現代のリアルな就活事情について語り合いました。今回の『内定ゲーム』は、鈴木氏にとって久々の連載。これを期にソフトをコミックスタジオからクリップスタジオへと一新したり、背景を3D 化したり、積極的に新しいことに挑戦する鈴木氏の様子がうかがえます。また、鈴木氏が取材を進めて感じた就活のおもしろさとは? 採用のプロ・曽和氏はこのマンガを読んでどんな感想を持ったのか? 就活生ならずとも気になる内容です。

「就活はクソゲーだ!」

小林琢磨氏(以下、小林):皆さん、こんにちは!

(会場拍手)

小林:マンガサロン「トリガー」オーナーの小林琢磨です。よろしくお願いします。本日は鈴木みそ先生の新連載記念イベント「就活はクソゲーだ!」ということで、『内定ゲーム』という新連載の、Present by eBookJapanさんでお送りしたいと思います。よろしくお願いします。

(会場拍手)

小林:今日は2部構成で展開させていただこうと思います。最初の1時間は鈴木みそ先生と曽和さんに、あとで自己紹介もしていただくんですが、就活をテーマにトークをしていただきまして、後半は懇親会を予定しております。

第2部では『内定ゲーム』に関する重大な告知も行う予定ですので、ぜひお楽しみにしていただければと思います。

早速ではあるんですけれども、本日は『銭』や『ナナのリテラシー』で知られる漫画家の鈴木みそ先生と、株式会社人材研究所の代表取締役・曽和利光さんがゲストになっております。よろしくお願いします。

(会場拍手)

鈴木みそ氏(以下、鈴木):よろしくお願いします。

曽和利光氏(以下、曽和):よろしくお願いします。

先ほど入稿したばかり、久々の新連載です

小林:では早速ではあるんですけども、鈴木みそ先生から、まず今回の新連載『内定ゲーム』の簡単な紹介をしていただければと思うんですけれども。

鈴木:これ、さっき入れたんですね(笑)。日記を僕はちょこちょこネットでも書いているんですけれども、1週間くらい、いや1ヶ月くらい前からずっと、「やってるやってる」って言いながらあまり進まなかったのですが、最後の3日ぐらいでものすごく進みまして。

本当は昨日入れないといけなかったやつが、こんなに。あそこで……(会場に)泣いてる編集がいますけども、全体のこのうちの、このくらい(ほとんど)が真っ白で、「え、このまま出すんですか?」っていう。

泣いて、待ってもらいました。半分だけ入れて。今日、やっとその後ろを完パケできて。朝ずっとやってたんですけれども、12時……13時くらいに出て。もう今、完璧なやつを売ってますね。

ということで、今『KATANA』1冊100円になりますが、そちらを買っていただけると今回の新連載が全部読めるということになっております。

この漫画なんですが、『ナナのリテラシー』が終わったのは……去年の3月に単行本なんですけど、連載が終わったのがちょうど12月か1月くらいだったんですね。まるまる1年間、20ページ越える漫画って描いてなかったんですよ。

ということで久しぶりにやって。それまで2ページとか、4ページくらいの漫画しかやらなかったところを、久しぶりに大きな取材もあって「連載でやりましょう、単行本も出しましょう」みたいな。

そういう大きな仕事でやるのは久しぶりなもので、筆が進まなくて進まなくて、これが!(笑)。

新しいソフトにチャレンジ

あとは新しいソフトをいっぱい導入しまして、こんなときにやらなきゃいいんですけど(笑)。これでもかというばかりに。今まで使っていた「コミックスタジオ」っていう漫画描くソフトを、10何年使ってきたやつを「クリップスタジオ」という。「クリスタ」に変えたんですね。

これがまた、ペンは素晴らしく描きやすいんですけど、フォルダの位置やいろんなものが、「どこにあるんだこれは」っていうので、わかんなくて。これを使うのに1ヶ月ぐらい、やっぱり。ずーっと「ああでもない、こうでもない」ってやって。

小林:なんで新連載の前にそれ入れちゃったんですか?

(会場笑)

鈴木:せっかく新しいことやるから、そしたらいろいろやりたいことが全部できるじゃないですか? 忙しいときってみんなね、漫画家が新しいことやらないのなぜかっていうと、忙しすぎるからですよ。

新連載を始めるっていって、今までの仕事もやってどんどん始めるときは、使ってた使い慣れたものしか使わないから、だからみんな紙とスクリーントーンしか使わないですよ。

どっかで泣きながら覚えるデジタルの期間があって、それのときに泣きながら投資をするんですよ。

小林:それをすると作家も泣くし、編集も泣くっていう。

鈴木:みんな泣くんです。でもそのあとにきっと笑えるんじゃないかなと思って。だから、来年再来年に「あのとき耐えてよかった」と。

そのときに、漫画は「クリスタ」を使っているんですけど、バックに3Dを今回導入しまして、全部モデリングを3Dで作って、ぐるぐる回して、ギューンて回したやつをバックに貼りつけるんですよ。ということで、漫画のバックを描かなくていいからすごく楽になるんじゃないかと。

就活はおもしろい 娘とのエピソード

小林:みそ先生、漫画の紹介してもらってもいいですか?

鈴木:すいません! 細かい話ばっかりして(笑)。

(会場笑)

小林:ちょうど今日なんですよね。今日、eBookJapanさんで発行している「KATANA」っていう雑誌に1話目が入ってるかたちですね。

鈴木:これが表紙なんですけど、先ほどですね、入れたてほやほやの。就職活動を皆さん大学卒業のときはするんですが、卒業(前)の3年生のときから始めていくんですけど、実は大学受験のときほど真剣にやってないよねっていう話があって。

本当はもっと人生のなかで真剣に取り組むべきことが、就職ではないかっていう話が。僕の娘がちょうど大学生で(就職活動は)まだまだ先なんですけど、18歳になるときに、僕は「大学に行く4年間は無駄じゃないか」と思ったんですね。

「4年間行くんだったら、そのときにたぶん700万円か800万円かかる。今ここで現金ボンと渡して、これでどっちに行くのもいい。大学に行くのもいいし、そのままお金を持って海外に旅行に行ってもいい。それで4年くらいフラフラして帰ってきたら、きっとおもしろいことを見つけてそれが就職するときにプラスになるんじゃないかと。もしくは就職なんかしようと思わないかもしれない。というくらいに考え方が変わるかもしれないから、どっちを選ぶ?」って言ったら、「えー!?」って言って大学に行ったんですね。

小林:へー! おもしろいですね。

鈴木:これをツイートしたらすごい反響がきて。大学に一生懸命行った人たちがみんな怒るんですけどね。

ということで、それを見ていたところが今回のヒントにもなっていて。だから娘が今度は大学終わったあと、どんな就職をするかっていうときにいろいろ考えると思うんですよ。就職って実はかなりおもしろい。

ということで、今回の漫画は今まで僕がずっといろんな取材をして「おもしろいな」っていうのを漫画にしてるんですけど、この話は絶対漫画にしたらどんどんふくらんでいくし、おもしろいから、これから一ジャンルとして出てくる可能性もあるなと。

小林:「就活」っていうのが、一ジャンルになりえると。

鈴木:就活生、必死ですからね。ということで、就活生にものすごく使える情報をてんこ盛りにして、それを「少なくとも単行本1冊分くらいはきっちり書きましょう」というお話を今回やったときに、この僕の原稿料が高いので(笑)。

小林:高いんですよね。鈴木みそ先生、高いんですよ(笑)。

鈴木:そんなに高いわけじゃないですよ。僕としてはそう思ってないですけどね(笑)。ということでこれをキープするためには、出版社が今までは雑誌を出して、雑誌は赤字でも単行本を出すことによって解消するっていう仕組みが動かなくなってきたので、今や出版不況ということで。

そういうことで今回はWebサイトで。これは電子出版で出すわけですね。最終的に紙の出版も考えるんですが、そこで電子のほうからお金を調達したいということで、読者は今まで一律600円くらいでしか買わなかったものを、もうちょっと……みたいなことも考えつつ、いろんな新しい仕掛けを突っ込んだのがこの漫画です。そういうことです。

曽和氏は新卒採用のエキスパート

小林:ありがとうございます。そこの話ものちほどさせていただきたいと思うんですが。キーポイントとなる「就活を題材にしている漫画ということであれば」というかたちで、本日は人材研究所の曽和社長にきていただきました。

曽和さんの事業紹介を簡単に、ご説明していただいてもよろしいでしょうか?

曽和:「人材研究所」という、ちょっと怪しい名前の会社の代表やってます。曽和と申します。どうぞよろしくお願いします。

(会場拍手)

曽和:私がやっているのは人事の採用だけじゃなくていろいろやってるんですけども、主には採用をお手伝いしていることが多くて。

特に私自身のキャリアでいうと、今44才なんですけど、20何歳のときから20年くらい新卒採用をずっと見てきているというのもありまして。

定点観測をずっとしてきていることもあってなにかお役に立てたらと思いまして、小林社長とも縁がありましたので、今日はお呼びいただきました。よろしくお願いいたします。

小林:よろしくお願いします。『内定ゲーム』を作る前に1回、(鈴木先生は)人材研究所さんに取材にいかれているんですよね。

鈴木:ここ(曽和氏)の下の、女性の部下の方がキレキレで。いや、すごい。その話聞いたときに、「主人公の位置関係の話に振るべきだ」と。

いろんな話を聞いたときに、学生からも聞くし会社のほうからも聞くしって思ったときに、この間に入っている人たちの話が非常におもしろかった。いろんな多角的な方向から見るんですけども、すごく絡みがあるんですよ。

曽和:今日聞いたんですけれども、実は(笑)。私も今、部下というかバイトで働いている学生くんで、今4年生で、内定もらっている人が。

小林:学生なんですか?

鈴木:それはまた別の話で。

曽和:彼が先生の取材を受けたっていうことを今日聞きまして、「それ先に言ってくれよ」みたいな話じゃないですか(笑)。

鈴木:内定の決まった優秀な子の話も聞こうと思って、話を聞こうと思ったらここ(曽和氏のところ)でやってるという話で。

小林:えー、すごい縁ですね。

曽和:今日はなにかあるんじゃないかなと。

大企業の内定率は1パーセント

小林:今日はなにかありそうですね。そんなお2人をゲストに招きまして、『内定ゲーム』のところにも話を持っていきたいと思うんですけれども。曽和さんは『内定ゲーム』をもう1話目、読んでいただいたということで。

ちなみにここにきてるお客様のなかで「『内定ゲーム』読んできたよ」っていう方いらっしゃいますか?

小林:皆さん「KATANA」100円で売ってますので、100円なので買っていただければと思ってるんですけれども(笑)。

(会場笑)

小林:でも、曽和さんは読んでいただいたということで。どうでした?

曽和:さすがにうちに取材にきていただいてるということもあって、「かなりリアリティがあるな」と思いました(笑)。

ちょっと誤解もあるのかもしれないんですけど、たとえば最初のほうで「98社、断られた」みたいなことってあるんですけれど。まぁ誇張だろう、っていう話もあると思うんですけど、実際、今の大企業の内定率ってだいたい1パーセントくらいなんですよ。

つまり100人受けて99人は受からないということでいうと……たぶん本当は98社落ちる前に方向転換すると思うので、実際はないと思うんですけれども(笑)。

確率論を単純計算すると、結構これくらいの難易度に大手企業とかはなっているのが事実だったりするんですよね。

鈴木:一応この主人公が、99社受けて98社目が駄目でっていうのでガックリきているときに、この女の子が声をかけて、そこのところで話が展開するっていうのが今回の漫画のキモなんで。

鈴木:この兄ちゃんっていうのはずーっと就職活動してるけど、全然うまくいっていないという、そういう話です。

「1匹3億円」採用側の覚悟

曽和:なので結構、1つひとつ出てくる、たとえば「1人あたり3億円とか4億円くらいの投資の感覚で内定を出すんだ」っていうのも、実際人事の……私、最終面接とかリクルートでしていたので、やっぱりそれくらいの気持ちなんですよね。まぁ、もちろん僕が出すわけじゃないんですけれども(笑)。

小林:(笑)。

曽和:ていうことだったりとか。

鈴木:僕、別のとこで取材したときに「1匹3億」って言ったんですよ。この「『1匹3億』(というフレーズは)いい!」って思って、それをそのまま使わせていただいたんですけどね。

曽和:そのボタン押すっていうのは、実際そういう認識はあります。一方で、結構これずっと読み進めると、この主人公の人、ちょっと賢すぎて受からないっていうところが、なにか(笑)。

「これくらいだと全然通る、うち欲しいな」みたいな感じだったんで。逆にそこはダメ過ぎても漫画として成り立たないですからね。

鈴木:最初、この漫画の主人公の男の子、もう少し賢くして。すると、もっとアホにしないとストーリー成り立たないよっていって。

アホなことをすごい賢い女の子が……この子は中学生くらいなんですけど、その子が絡むっていう話をして。これでも賢いっていうとキャラクターの設定的に「ちょっとまだ甘さがあるな」っていう反省があります。

小林:『銭』のときも、「詳しい人」と「チョキン(注:『銭』の登場人物)」みたいな、詳しくない人の掛け合いみたいなところで、物語がこう……。

鈴木:チョキン、アホですからね。

小林:チョキンよりかは確かに賢そうな。

鈴木:そうなんですよね。

曽和:(内定ゲームの主人公は)話が成り立っているんで、もうすでに大丈夫だと思うんですよね。

小林:落ちる人は成り立たないんですか?

曽和:たとえば「なんでうちを受けたんですか?」って話に対して「おもしろそうだったからです」って。「当たり前だろう!」みたいな。そういうケースって、要は話の中身がないわけなんですけど、そんなのが結構多いんですよね。

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